『タイタニック』をネタに画質、音質調整
昨日の「メディアージュ」の体験、良くも悪くも刺激になり、午後のひとときを
画質、音質の調整に打ち込む。
●まず画質である
タイタニックではないのだが先日買った『スターウォーズ・エピソード1』の
DVDのおまけについていたTHXの画質調整テスト・パターン(THX Optimizer)
がなかなか使えそう。
『ドルビーデジタル・エクスぺリエンス』なんぞにある白黒系のパターンは、
ステップが粗くて、かなり「感」を働かさないと使えないものなのだが、
このDVDには、高輝度、低輝度両方とも100%,0%すれすれのレベルで細かい
ステップのパターンが入っていて、微妙な変化が読み取りやすい。
メディアージュの『タイタニック』では、高輝度部分の退色が気になったので、
これの仇を討つべく、まずは徹底的にニュートラルな純白を狙う。
液晶プロジェクターVPL-VW10HTを高輝度で使おうとすると、
ゲインを上げていったときに微妙なばらつきによって100%近辺で着色が出て、
たとえば『タイタニック』の潜水艇のライトの真中だけがピンクに偏ったり、
なんてことがある。
THXの「白飛びをチェックするためのパターン」が、このあたりの厳密な
調整に役立つ。
このパターンは、100%付近の微妙な4段階の白が表示される。
まず、白飛びの確認。(本当は黒レベルの確認から始めるべきだった)
明るさと、コントラストはデフォルトにして、ゲインをR,G,B単独で0〜255まで
振って行く。
各原色単独で「白飛びチェックパターン」が飽和したら、その値で
液晶が100%全開になってしまったと分かる。
私の機械では、Gが255まで行かずに飽和したが、R,Gは255まで上げても
飛ばなかった。(これはバイアスの値で変動する。)
各原色が飽和しない最大値をセットすれば、原理的にはこのプロジェクターで
表現できる最高に明るい純白が表現できるはずだ。
ところが、実際に各色の飽和寸前の値をセットすると、カラーバランスが
不安定なようだ。100%白の領域は理屈どおりの白になっても99%のところが着色したり
する。
つまり、液晶が100%開になる近辺にリニアリティーの
低下する領域があるということらしい。
そこで、4種類の白が完全にニュートラルになるように、少しずつ
ゲインを落としていく。
こうして作った白は完全な白で、高輝度での不安定領域を回避した上で
最大のコントラストを確保した。実際プリセットの色温度よりはかなり
コントラスト比は高い。
次に黒。
これは「黒レベル確認パターン」を使う。
まず、プロジェクターの「明るさ」を目一杯上げ、プレイヤーからの信号が
黒つぶれしていないことを確認する。プレイヤーや、ビスコムなどの中間に挟む
機器によっては、最暗部の信号が無くなってしまっている事もあるので、要注意
なのだ。黒が出ていなければ、送り出し機器のレベルを持ち上げる。
それからプロジェクターの「明るさ」をデフォルトの50に戻し、色温度の
バイアスを調整する。
バイアスは、ゲインのときと同じように、R,G,B単独でそれぞれ見えるかどうか
ギリギリの値を探り、最後に三色そろえると完全な黒にごく近い値になる
ので、そこから微調整する。順番としては「緑」が人間の目の感度が高い
ので緑を基準にし、赤、青の順が良い。
黒をいじったらもう一度「白の確認」をする。
(だから、黒レベル→白レベルの順に調整する方が正解)
「明るさ」を50より上げると「彩度が低下する(白っぽくなる)」ので、
テクニックとして50の時、THX推奨値よりわずかに明るくなるようにバイアス
をセットし、実際には「明るさ」を47くらいにして使うのが良い。
そうすると「少しだけ暗部がつぶれている」というソフトを鑑賞するとき、
彩度を犠牲にせずに明るくする調整が効く。
「コントラスト」は、80の状態で限界まで明るくなるようにゲインを設定
しているので、プラスすると白が飛ぶ。もっぱら下げる方向で調整するわけ
だが、下げる(コントラストを落とす)ということはあまり無いはず。もし
明るければNDフィルターの使用も良い。
「色の濃さ」を上げたい場合は、そのぶん「コントラスト」を下げないと
色飽和が起きる。
…という具合に調整した10HTは、とにかく安定した白が出るので
なかなか気持ちが良い。これを基準に色温度を落としていけば、色気のある
肌なんかも表現できるし。
こういったことは、実は毎度の作業なのだが、精密なテストパターンが
あると素早く、厳密に調整が出来る。いままで、色々な作品中の
「絵的に厳しいパターン」を選んで使っていたが、それをしなくてもかなり
のレベルできちんと調整が出来る。まったく、テストパターン様々である。
●さて、音の調整だ。
前の家ではそれなりに設定も固まり安定して使っていたが、こんどの家では空っぽで
ぐわんぐわんに響く状況からスタートして苦難の連続である(^^;;;
しかし、昨日見た『タイタニック』で方向性は決まった。
目標は「限られた音量の枠内で可能な限りの情報量を提示する」
ということ。
同じ機械を使うなら大音量にすれば、情報量が増えるのはあたりまえ
だが、やかましいのは願い下げである。聴く者に緊張を強いることの無い
音量で迫力と情報量をバランスさせたい。
大前提の「箱(部屋)の音質」は、当初の絶望的な状況から実は
劇的に改善している。
それは、絨毯、スピーカーの後ろのカーテン、スピーカー横の壁に
設置したDVDラック(カーテン付)の効果が大きい。
特にDVDラックは、何しろ面積が大きいので拡散効果が絶大で、低音の
ブーミーな癖が劇的に解消した。
そのなんとか癖を押さえ込んだ部屋で、AVアンプやサブウーファの
コントロールで「メディアージュの印象」を再現しよう、音量以外は(^^;
というわけで、THX Optimizerの音声編をしばしいじってみた。
まず、音量の上限のある前提で情報量を稼ぐためにはどうしても
「ダイナミックレンジ圧縮」を使用する必要がある。
精神論からすれば、ダイナミックレンジは広い方が良いわけだが、
「微小レベルの情報量を確保する」というテーマを優先するなら
圧縮は必須で、イメージ的には「ダイナミックレンジ=迫力」だが、
実際のところは全く逆で、ダイナミックレンジは狭い方が平均音圧が
あがって迫力が増す。減るのは「爆発音の衝撃」などだが、家庭で
屋根が落ちてくるような音量を出せない限り、そのダイナミックレンジ
は絵に書いた餅だ。
また、AV環境ではプロジェクターノイズなどの影響で「小さな音」
は聞こえないというのも、圧縮が必要な要因だろう。
次にゆるい低音対策だが、THXのスタイルを真似て、
全スピーカーSmallに設定してみた。
これが意外にヒットで、サブウーファのつまみ一つで全スピーカーの
低音バランスをまとめてコントロールできるので思い切り低音を
抑えてバランスを見るのに役立った。
結局のところ、インテリアの工夫で低音コントロールは進んだが、
フローリングの共振による低音のふくらみを撲滅することは難しい
ため、さらに思い切り低音を絞り込むことが、全体の明瞭度の向上に大きく
貢献した。
LFEのバランスも、以前のマンションでは-6.5dbくらいで使用して
いたが、基本の-10dbにセット。
低音を絞り込むと聴感上の「うるささ」はかなり減少するので、
その状態でダイアログがくっきり聞こえて、うるさくない程度の
最大音量に持っていくと、従来9時くらいだったボリュームは
10〜11時の位置まで上げることができ、静かなシーンでも聞こえて
くる情報量を確保することが出来た。
それから、サブウーファーのボリュームを少しずつ上げて、
情報量を損なわず、インパクトのある低音の量を捜す。
最後に、アンプのLFEバランスを、必要なら-10dbより持ち上げる。
調整後の全体の印象は、最初のゆるくてうるさい音が、締まって
情報量が多い音に近づいたと思う。実際ボリューム位置はかなり
上げることが出来ているので、今まで埋もれていた音が聞こえる。
新しいマンションでの、ベースとしてこのあたりから詰めて
いこうというスタート地点としては十分だろう。