映画館がやってきた! 映画鑑賞記

もののけ姫

■DATA
監督:宮崎 駿

Story

 動乱の戦国時代、山の神(もののけ)と、人のなわばり争いに巻き込まれた、 少年(アシタカ)と少女(サン)の物語。

感想

★音響について
 わが家は90インチ画面にドルビーデジタル5.1ch完備。
 しし神の森に踏み込むと、こだまの「カタカタカタ…」という音に取り囲まれて、 ひえ〜っという感じです(笑)
 低音もバリバリ入っているので、見終わったらへとへと(^^;

 自分で手を掛けて組み上げたホームシアターなのでそうとう「自己満足」入っ てますが、近所の小さな映画館で見たときには感じなかった迫力や臨場感を感じ て満足しました。
 特に、鬼モードのアシタカの矢の飛ぶ音、たたら場に潜入したサンが短刀を 操る細かな金属音などは、劇場のぐわんと響く音響(の記憶)よりキリリと鮮明に 聞こえて、ぐっと来ます。

★絵、画質
 アシタカ視点で走っていくシーンや、サンがえぼしに迫るシーンなど、 CGによる奥行き方向スクロールあるいは、超ズームアップが多用されていますが、こういう シーンはやはり大きな画面だとのめり込みます。従来作品よりずっと映画的な カメラワークを意識してるんでしょうね。

 しかし、しし神の池の360度パンは、目眩が…酔いました(^^;

 各所で疑問の声が上がっている「ジブリ(徳間)のLDの画質」については、 彩度は驚くほど高いのですが、TVを調節すればよい範囲かと思います。
 ナウシカやラピュタのLDで感じた浅い感じ、不安定な感じは、本作では感じま せんでした。少なくとも私はこれと言った不満を感じませんでした。

 それから、Disk1/2の切れめは、もっと前だったら良かったのにと思いました。
 盛り上がっている最中に切れてる感じがしてなんだか…。

★その他(作品について)
 作品について、劇場で見たときにはなんだか尻切れとんぼ、竜頭蛇尾な感じが して、それは、前半の人間ドラマの緻密さに対して、後半のもののけ、でいだら ぼっちとの戦いが、主人公たる「アシタカ」の手に負えない世界に行ってしまっ た無力さが、観客にも釈然としない気分を残したのだろうと思うのです。
 しかし、今回繰りかえし見て「何度も見るにふさわしい面白さ」が確かにある と感じることが出来ました。
 「でいだらぼっち」の暴走で何もかもぶちこわして、後にはただ緑の山だけが残される。 実に、空っぽな気分になるエンディングも、繰りかえし見れば「ゼロから出発しよう」 という気持が沸いてくるのかも知れません。
 ただ「緑が美しい」という優しい気持になれるかどうかが、この映画を見た人の 評価を分けるのか。…そこで一枚の絵の持つ訴える力が問われるのかも知れません。
 これは、私が見たジブリ作品の中では、「紅の豚」に匹敵する繰り返し耐久度だと思い ます。作品の重量感は全然違いますけれど。
 世界配給を狙うだけ有って、作画も凄いと思います。
 後半の無力感はやはり辛いと思いますが、前半のスピーディーな展開に見られ る監督の力も凄いですし。
 音楽は、至る所ラピュタとか過去の作品の断片を感じましたが、それが悪い方 には行っていないと思います。絵柄が宮崎駿で有るのと同じように久石譲なんだ なあと思います。しっくりくる。

 さらに繰りかえし見たときにやってくる発見が楽しみです。(1998.6.28)

■DVD鑑賞記
[2001.11.22] 『もののけ姫』DVD鑑賞 ☆
 本編および特典ディスク2のクロマがずれている。セル画の輪郭線1.5本分くらい色信号が 遅いのでたとえば赤く塗られた色がはみ出して、黒い輪郭線が赤くなっている。
 ど頭のととろマークがすでに輪郭二重線状態になってかなり汚いんだけれど、 こういうの作っていて気がつかないかな?
 特典ディスク1の絵コンテの裏の本編には、上記のずれが無い。
 絵コンテ集のディスクのスタッフは気がついて直したということだろうか?
 LDと比較したら非常に安定感のある絵だが、クロマずれのおかげで輪郭がもやもやと汚くて どうもすっきりしない。こりゃ回収交換してもらえないものか?

『もののけ姫』特典の英語版を鑑賞。
 ナレーションとか、途中の登場人物のせりふの追加で世界観を補足しているようだが、 やっぱり一神教であるキリスト教世界と「八百万の神」の世界はなんかしっくり来ない ものが残るな。

・見返して気がついたこと
 アシタカって実は死んでるんじゃないの?
 銃で撃たれたアシタカをシシ神様に治してもらう下り。Chp.14でアシタカの顔に滴が垂れて 波紋が広がるが、ということは彼は水没しているのだ。てことは、死んでないか?
 水没シーンで血のようなものが流れ出しているところを見るとまだ心臓は動いているの かもしれないが、真夜中から朝まで何時間もあの勢いで血が流れ出て生きていられるとは 思えない。そう言うことなのだろうか。
 英語のサンは"going back life again"といっているようにも聞こえるし。
 乙事主にシシ神の池に案内させようというストーリーになっているが、 ジゴ坊たちは前の日に山の上からダイダラボッチからシシ神に変化する場所を確認して いるはず。案内させる必要は全然無かったのでは?
 乙事主のどろどろに巻き込まれてサンが生きていたのは何故だろう? 怒りの対象にしか 効果がないのかな?
 モロはいつ首だけになったのか?
 おトキさんが鉄砲を修理する病気の女から食べ物を手渡してもらって食べるシーンは 意図的に挿入したと思うが、タタラの中でもエボシさま以外近寄らぬ隔離された一角に 住む彼らに、おトキもまた偏見がないのか、それとも非常時の中で全体と融和したのか どっちなんだろう?
 シシ神の首桶、閉めるときと開けるときで閂の形状が違う。ま、いいけど(^^;
 ダイダラボッチの倒壊の後、緑が蘇るのと同時に病気の女が「完治した」ように 見えるが、「生き物すべて」が元気になるとすると病原菌も元気になるdかもしれない…。

『もののけ姫』クロマずれ問題、その2
 もしやと思い、『となりのトトロ』も改めて見たら、やはり輪郭線1本分ほど遅れあり。
まとめて、アニメを調べちゃう

 結局ざっと見たところ、色ズレがある作品は、『トトロ』と『もののけ』だけ。
 『魔女の宅急便』は購入していないのでわからない。
 それにしても「特典ディスクは色ズレしていない」というのが「おかしいじゃないか」と 思う。いったいどの段階でこのズレは発生しているのか。MPEGのエンコーダが高転送レートに 耐えられないとか?

 これまでの色ズレソフトの代表格というと『レオン』だが、あれは「色信号が進んでいた」 ので、プレイヤーの「クロマディレイ」で補正できるのだが、DVP-S9000ESは、進める方向への補正は 出来ないので「色信号が遅れている」ディスクはちょっと困るぞ。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!