映画館がやってきた!

ビーズ・スクリーンと天吊りプロジェクタの相性

〜 過去の定説を検証しよう 〜

なぜ、ビーズは天吊りに向かないと言われ続けるのか

■定説の復習

 プロジェクターの設置方法と、スクリーンの種類について以前から  と言われています。主に雑誌「HiVi」なんかに執筆している評論家たちのあいだでは。
 しかし、それは本当でしょうか?
 ビーズスクリーンには、「迷光に強い」というリビング・シアターにとっては最強の 特徴があるわけで、「ビーズは天吊りでは使えない」という定説の為にホワイトを 選択して、その結果、迷光による低コントラストに悩む人が居てはいけないと思うので、 実例で検証したいと思います。
 実際にはメーカーサイドも以前は「床置きはビーズ」「天吊りはホワイト」と カタログに書いていたようですが、たとえば現在のキクチのカタログ(2000.10)では プロジェクターの設置方法との相性には言及されていません。外部の光の影響の 強さだけが述べられています。評論家たちは、ちょっと遅れているようです。

実験

■検証方法

 ビーズ・スクリーン(ゲイン2.4)の隅、字幕の出るあたりに白い紙を置きます。 これが「ホワイトマット」のスクリーンと同じ、ほぼゲイン1.0です。
 原理的に、白紙はどの角度から見てもほぼ一定の輝度で見えます。
 天吊り設置のプロジェクターからの白い光を当て、ビーズと白紙の輝度の差を 観察することで、角度によるビーズの輝度変化が把握できるわけです。
 投影している白画面は、THX Optimizerの白飛びチェック画面です。

■垂直方向の視野角検証

1800
1200
500
1800(数字は床からの距離(mm)) ほぼ、天吊りにしたレンズと同じ 高さからデジカメで撮影した、スクリーンと白紙。デジカメによる撮影のため 肉眼による印象より輝度差が強調されていますが、ゲイン2.4と1.0の差が この明るさの差ということになります。
 実際にレンズにくっついて見ることはあまり無いと思いますが、これが 最大輝度です。

1200 少し高めの椅子に座って鑑賞した場合の高さ。
 反射角にしたら15度くらい。輝度はほんの少し下がっている(見かけでは、 白紙の方が少しだけ明るくなったような感じ)ことが分かります。
 また、床にプロジェクターを置いて椅子に座ってみる関係と反射角は 全く同じなので、「天吊りでも、床置きでも条件は変わらない」という 事がわかると思います。

500 こんどは「床に寝そべって手で頭を支えて見る」というくらいの 高さから。これ以上低いとセンタースピーカーが干渉して画面がケラレます。
 反射角は約30度。この場合は、ほとんど白紙とビーズが同じ輝度です。 ということは、寝そべってビーズスクリーンを見るのはホワイトマットを 使用するのと同じ感覚ということになります。
 ここまで角度が離れても、輝度の点でホワイトマットより不利になる ことは無いということです。

 では、次に水平方向の見え方を検証しましょう。

■水平方向の視野角検証

60
45
30
60(数字は、反射角) 60度というのは、かなりの「かぶりつき」で、 まさか家庭内鑑賞でここまで画面に近づいてみることは無いだろうと思います。 メインスピーカーに近すぎてうるさいし。
 ともあれ、輝度の点では白紙の方がややビーズより明るいことが分かります が、極端な差ではありません。

45 今度はプロジェクターとスクリーンの中間点で部屋の壁沿いという シチュエーション。これは、お客さんが多いとありうる配置。
 白紙とビーズの輝度差は僅差で、60度とあまり変わりません。

30 最後に、プロジェクターとほぼ同じ距離で壁際。
 垂直方向のごろ寝視聴と反射角上はおなじ関係。
 ほとんど白紙と同じ。つまりゲイン1.0。ホワイトマットのスクリーンと同じ明るさということになります。

まとめ

 こうして、視聴場所による見え方の違いを確認してみると、  などが明らかです。
 最後に重要な利点は、  ということです。
 この二つの性質の為にビーズスクリーンは周囲の壁が暗く、視覚的に邪魔が 少なくすみ、総合的なコントラストが高く取れます。これは実際の鑑賞では非常に大切なことです。

 さて、最後に「それなのになぜ、評論家は昔の常識を未だに語りつづけるのか」の謎です。 私が推測する限りは、「自宅でビーズスクリーンを天吊りで使っている評論家が居ない」から ではないでしょうか。
 彼らも駆け出しの頃は、暗い液晶プロジェクターにハイゲインのビーズスクリーンを 組み合わせて自宅に導入してみた経験は有るでしょうが、恐らくそこで彼らの経験は終わっ ているのでしょう。
 しかも彼らは今はハイエンドの人で専用ルームに、三管、マットスクリーン。たいていは。
 そう考えると、「一般ホームシアター評論家」という別のカテゴリーが必要なのかな って考えちゃいますね。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!