映画館がやってきた! 映画鑑賞記

タイタニック

■DATA
監督:J.キャメロン(1998年/アメリカ)
キャスト:L.ディカプリオ(ジャック),K.ウィンスレット(ローズ)

Story

 タイタニック沈没の史実を、ポーカーに勝ってタイタニックのチケットを手に入れたジャックと、 望まぬ結婚から逃げだそうとしている没落名家の娘ローズの二人の恋人の目を通して描く。

感想

■タイタニック(TVサイズ/輸入盤)('98)について
●鑑賞の事情
 日記のコーナーにも書いたが、最近妻が"タイタニック・マニア"である。
 夏休み。私が留守の間に遅ればせで見に行ったと思ったら、いつの間にか タイタニック・オタクの私設掲示板に参加して、先の土曜は「タイタニック 引き上げ展・オフ」に参加。
 そこで、さらに共鳴してしまい、「字幕に気を取られずにじっくり鑑賞する」 という目的で輸入盤ビデオ購入に踏み切る。

 それもともかく、(原語)ビデオはTVサイズを買って、11/20のLD発売日には WIDE版(日本語字幕)を買うという意気込みで、理由は
 「TVサイズは監督の丹念な再編集が施されていてWIDE版で写っていない部分が 写っているから。」
 おぉそれはスーパー35方式というものでキャメロン監督は…と話しかけると
 「そおそお、それそれ。言おうと思っていたのよ」…だと。
 このように妻がオタク化していく場合、たじろぐ夫はどうすればよいのでしょう(^^;
 スクリーンを引き出して映画館モードに入り上映開始。後ろで眺めていたら
 「気が散るわ!」という理由で追い出されてしまいました。

 どうやら、このままAV機器の操作法もマスターしそうな勢い。 ゆくゆく上映プログラムの奪い合いになったら困るぞ…(^^;;
 こういうはまり方をしたのは「エヴァンゲリオン」以来です。(変わった夫婦かも)

●…で、タイタニック鑑賞
 実は私は映画館で見ていないし、英語が得意でもないのですが、まあ、 大体要点はちゃんと何言ってるのかつかめたので、曖昧なりに納得がいく程度に 分かりました。
 なんでこんなにみんなが"はまる"のか、見てみたら確かにわかったような気が します。
 ターミネーター2あたりまではCGを売りにするような映像だったけれど、 タイタニックではどこがCGでどこまでが現実の映像なのか、わが家の90インチ スクリーンにかじりついてもまったく判らない。
 コンタクト(DVD版)の特典映像で、海洋物の特撮について細かく解説している のを見たので、たぶんタイタニックを航海させるのにも同じような技術を使って いるのだろうなあと、想像は付くのですが、もはやSFXに限界はないですね。

 しかし、タイタニックが凄いのは結局のとこSFXが完全に裏方にまわって、 ドラマそのものが見事だということですね。
 とにかく、三時間どこにも気の抜けることが無いというのは凄いことです。
 デカプリオの演技が優れてるとも思わないし、女優もすごい美人というわけ ではない。これはいったいなんなんだろうと思ってしまう。もちろん、ヘロヘロ なヒアリング能力でも楽しめたのだから、セリフ回しが感動的だからというわけ でもない。
 AデッキからEデッキまでの階級、貧富の差による生々しい人間ドラマ、 アイルランド差別。愛もあるし。
 他方、タイタニックの中を歩けるという仮想現実感が見事に実現し ていることもある。とにかく豪華だし珍しいから。
 ほとんど余談ですが、エンジンルームの描写もとっても迫力があって格好 良かったですね。私は心の底で「宇宙戦艦ヤマト」のエンジンルームを思いだし、 別な感慨に耽ってしまいました(笑)
 その他、ラスト付近での甲板から人がこぼれていくシーンの細かい描写。
 あの辺は、こだわりと書き込みの勝利と言えるかも知れません。
 要素は沢山あると思うのですが、最後はやっぱり、監督の手柄かなあ。

 最近では、ポール・バーホーヴェンが「宇宙の戦士」を映画にし、エメリッヒ が、「ゴジラ」を映画化しましたが、今度こそぜひ、キャメロン監督で原作付き SFのビッグ・タイトルを映画化してみてもらいたいところです。
 J.P.ホーガンの「未来の二つの顔」なんか、ドラマも映像もいけるんじゃない かと思うなあ。
 とにかく、キャメロンの次回"SF"作品が楽しみですね。(1998.9.13)


■国内版LDについて
公式バナー ●字幕のスッキリしないところ研究(タイタニックの英語を読む)
 日本語字幕がしっくりこない部分や、英語の慣用句について、英語字幕を たよりに辞書を引いて自分なりに原文に忠実な訳を調べてみました。
(解決しなかったことも書いています)
・引き上げシーン(Lovetto)
That's Hockley's bed.
That's where the son of a bitch slept.
→ son of a bitch(サノバビッチ)=野郎。
 現代米語ではごく親しい男同士の間で気軽に使われるので、ののしっている
わけではなく、「ここで奴が眠っていたんだ」というほどの意味。

・金庫を開けて
This same thing happend to geraldo, and his career never recovered.
→ 「よくあることさ」というような訳が付いているが、どういう語源なのか不明。

・電話をしながら
Hang on second.
→ "hang on"で電話を切らないでいる、という意味だそうな。つかまっている
わけじゃないんだな…。

・Old Roseが絵を見て(Rose)
dish
→ 「グラマーでしょ」と訳されるが、dish=魅力的な女性。
 もちろんお皿のことだが、お皿にグラマーという含みがあるのか…?
(初期シナリオのhot numberの方が下品な言い方か?)

・鏡を見つめて(Rose)
The reflection has changed a bit.
→ 字幕「映る姿は変わったわ」だが、"a bit"とあるので、
「ちょっと変わったわ」という程度。字幕ではがっかりしたような感じを受ける
が、台詞はあまりがっかりした感じが無くちょっとした軽口程度に聞こえる。

・沈むタイタニックの説明
berg=氷山,bow=船首,stern=船尾
→ 概ね、ボーディンの口調はデリカシー無し(^^)

・Bodineの説明を聞いて(Old Rose)
... somewhat difference.
→ ちょっと違う
 字幕は「とてもそんなものでは…」となっていて、Bodineの説明を否定するよ
うなイメージが強いが、台詞はもっと控えめなイメージがある。

・CalがダイニングでRoseを呼ぶとき
sweet pea
→ 植物の「スイトピー」 字幕は単に「ローズ」という呼びかけになっている
が、たぶん「ハニー」などと呼びかけるのと同じなのだろう。が、辞書には無い??

・お夕食だわ。騎兵隊の突撃ラッパみたい(Molly)
→ 直訳すると、「いつもひどいラッパを押しつける」というような、非難する
調子が強い。
・JJに紹介されてJack
Chippewa Falls Dawsons.(字幕:ウィスコンシンのドーソンです)
→ 調べたところ、ウィスコンシンにChippewa Fallsという都市がある。 (ちなみに、Chippewaはインディアンの種族名(妻から))
 写真の載っているホームページもある→ A Photo Album of the Chippewa Falls Area
 風光明媚な観光都市という感じで、もちろん冬はIce Fishingも出来るらしい(^^)
・OLD Rose「緊張を隠した芝居は見事だった」
He must have been nervous, but never faltered.
→ 「緊張していたはずだが、決してひるまなかった」の方が台詞に忠実では
ないかな? Jackは「素直さ全開」で乗り切ったのであり、芝居ではないし。

・母は辛辣だった
count upon
→ 辞書では「期待する」とか載っているが…

・三等船室の住み心地は?(劇場公開版字幕)Ruth
steerage
→ LDでは「そちらの船室」と変更されているが、steerageには「三等船室」の
意味なので、この変更は改悪か? Ruthならずけずけ言うに違いない。

・Jack,Ruthに答えて
Hardly any rats.
→ 字幕「ネズミはいません」だが、直訳なら「ほとんど…は、いません」
 後の沈没シーンではネズミが出てくるので、伏線として。
 それに、「ほとんど」の方が、
「三等は"実際"上品なところではないけれど住めば都だよ」という、おどけた
雰囲気が強くなる気がする。

 このあとのRuthの質問責めは、字幕の表現より実際の台詞は、嫌みできつい感じ。

・Roseが乾杯の音頭をとる
To making it count.
→ 劇場字幕「良い人生に」から「今を大切に」に変更。
(これも辞書には載っていない表現だ。)
 食後JackがRoseにメモを手渡すシーンで同じ"To making it count"が出てくる。
 劇場ではこの部分が訳されていないが、ビデオで訳すことにしたので、訳を合
わせるために変更したのだろう。が、この部分は「良い人生に」の方がしっくり
くる(刷り込みかな?)

・鉄で出来た舟は沈む。物理的真実です(アンドリュースさん)
→ mathmaticalyは"数理的"。
 字幕の"物理的"の方がしっくりくるけど、なぜ彼は数理的というのかな?
 「1+1=2と同じくらい簡単な理屈」というような含みか?

・ボートをおろすシーンで頻繁に
Steady lads!(みんな落ち着いて!)
→ "lads"は男に対する呼びかけ。先々沢山出てくる。

・Andlewsさんが、廊下でメイドさんに「君が手本になれ」
for God's sake(お願いだから)という言い回しが含まれる。
→ 単なる指示のようにきこえるシーンだが、このときメイドさんは、救命胴衣
を着用しないままに避難誘導をしている。
 だから、「お願いだから、君自身が救命胴衣を付けてみんなの手本になってくれ」
と、彼女の身を案じる気持ちが込められている。と思う。
 Andlewsさんは優しい。

・Jackを助けに行ったRoseが、助けを呼びに階上に戻って
Damn it!
→ 字幕は「いないの?」となっているが、直訳すれば「畜生!」
 全般にJackと交わってだいぶ下品な言い回しが増えた。

Can anybody hear me!(誰かいないの)
→ 沈没後救助に戻ったボートで航海士が叫んだ台詞と同じ。

・Roseを誘導しようとして逆に殴られた船員が
To hell with you!
→ 字幕は「勝手にしろ」だが、ここは「お前なんか、くたばれ!」ともっと
激しく罵っている。無理もない(^^;;

・Lightoller航海士とAndlewsさんの押し問答
Now, fill these boats, Mr. Lightoller, for God's sake, man!
→ 字幕では単に「定員ギリギリまで乗せるんだ!」とあって、全体の流れから
して激しく叱責しているような印象を受けるが、実際は「お願いだから〜」と、
ずっと丁寧に言い含める印象。
 最後まで優しく紳士的なAndlewsさんだった。

・銃で撃たれたシーンなど
Bastard!
→ このやろう!(あちこちで頻出単語になっている)
 Roseもボートに乗るの乗らないののシーンでCalに言ってますね。

・赤ん坊を抱えた女が船長に
Capitan Capitan...
→ ポルトガル語らしい

●ちょっと気になるあのシーン
・時計台シーン
 ローズの足音が止まった瞬間に、九つの鐘が鳴り始め、九つ目の鐘の余韻に
のせてJackの"So you want to go to a real party?"
 サウンド的に、ちょっと格好いい(^^)

・ピカソが好きなRoseがJackの絵をほめるはずが無いという意見について、
モネも好きだったように、結構多趣味だったんじゃないかと思う。

・斧を取って返したローズが振り下ろすシーン
どう見ても、Jackの左手首を直撃している。これは痛い(^^;;

・濁流に押し流されてゲートに激突する直前のカット
 Jackの顔に灰色に顎髭のあとがくっきり(^^;
 ここはスタントを使って顔だけCGですげ替えたと有名なシーンですが、
処理抜けも有るんですね…(^^; ローズの顔も未処理。う〜む。

・紳士として正装して死んでいったグッゲンハイム
 最後のシーンで左後ろに控えていた若者は「従者」でしょうね。
 お若いのに可哀相に…。

・タイタニックの船尾がもっとも高く持ち上がったとき(折れる直前)に落ちた
人は、落下時間=4.1秒、落下距離=約80m
 その後スクリューに膝をぶつけて痛そうな人がぶつかったタイミングは
約1.4秒、船尾からスクリューまでの落下距離は約14m。
(数学的な真実と言うことで…(^^;)

■錦糸町「リッツ劇場」にて(98年)
 今回は珍しく『いけません』の話。
 タイタニックの凄さについては、あちこちで読めるから今更触れませんが、
錦糸町「リッツ劇場」はいけません。
 タイタニックも丸一年の上映をむかえ、上映も最後だろうし、時間もある
と、気楽な気持で入ったのです。もともと、古い劇場だというのは承知して
いましたが、それにしても…と思ったので、この場で細々と訴えておきたい
と思った次第。

 まず音。看板はもとより、映画にDTSロゴがちゃんと出てくるので、設備は
間違いないと思いますが、やっぱり、フォーマットだけ対応しても、駄目で
すね。
 ロゴの部分では有る程度低音もあったように思うのですが、本編のBGMの
低音(LFEに回らない程度の50〜100Hzとおぼしき帯域)が、わが家で見る
市販ビデオで、メインSPだけ鳴っている状態でも「ドーン」と響いているの
に、リッツはすかすか。
 もちろん、サラウンド感もなんだか乏しい。
 フォーマットはDTS対応していても、スピーカーやアンプの類は、壊れる
まで古い物を使い回そうという魂胆ではないかと、疑っています。

 もっと良い劇場でお払いしてこないと寝覚めが悪いや(苦笑)
 …と思い、速攻で日比谷のみゆき座に行って来ました。

 こちらも、建物は古そうですが、音響はSRDで、まずまず。
 ほっとしました。

 次に画質について、フィルムもくたびれているのかも知れませんが、
全体的に暗いのはもともとの色調でしょうが、ハイライトの飛びがなんだか
多くて全体的に白くもやもやしている。
 さらに、ロールごとにカラーバランスが違う。肌色の赤みや、海の色が、
なんだかコロコロ変わる。(自宅で見るビデオではそんなことはない)
 いったいどんなフィルムを使っているのか、ちょっと謎です。

 全体的にセピアがかっているのは、古い時代を扱っているので、演出かも
知れないし、長い上映でフィルムがくたびれてきていると思えないこともない。
どちらとも判別が付かないのは不安です。
 あぁ、公開初期にもっと見ておけば良かった…(^^;;

■国内版DVDについて
 わが家のコンパチ機の非力なLD部のことを考えても、DVDは「買って良かった」 と思える高画質で、暗部の色乗りもしっかりしているのでもの凄い安定感が出る。
 冒頭の本物のタイタニックを撮影した水中カメラのざらざらした映像と、セット の水中撮影、通常の陸上での撮影の三つの質感の差がLDよりはっきり区別して見え る。見えすぎと言っても良いくらいかも。
 また、暗闇に突きだしたタイタニックの船尾の、白、黒い側面、船底の赤、 プロペラの真鍮などの色の鮮明感がぐっと増している。
 画質も良いが、音質も一段と良くなったようだ。  今まで気付かなかったような微細な効果音、たとえばマードックが息を呑む音 とか、そういう音が何だか聞こえる。

■ジャックの"Lucky hand"検証する
 DVDでヒトコマずつ見ると、ジャックの手札はあのシーンの頭から結構見えています。
冒頭 フルハウスと叫び
振り上げた瞬間
ファブが掛け金を
掴む瞬間の机上
クラブ5(→交換)
スペードA
スペード10

ダイヤ 10
ダイヤA
ダイヤ2

クラブ10

ダイヤ A
スペードA
スペード10
クラブ10
ダイヤ10(裏返しに飛ぶ)

 表は上に書いた物が持ったときに手前の札。
 シーン冒頭、全てのカードは見えないが、ジャックは恐らく 10のスリーカードで、競っている。
 この時点で、ツーペアより勝っているので勝ちは決まっているが、 この役自体は4人プレイなら平凡なもので、ここで競るのはやはり フルハウス待ちだろう。
 スヴェン(?)は2ペアで、2組の数字のどちらかと同じ数字が 来ればフルハウスなのでこれに賭けている。フルハウスが成立 する確立は、ジャックの2倍近いといえる。
 結果から見れば、ジャックの方に度胸と運があったと言える。 が、一瞬見えるカードの「ダイヤ2」は一体何だろう(^^;;
 もしも、冒頭からフルハウス成立までにもう一巡していて 「10のスリーカードとダイヤ2」で待っているところに 「ダイヤA」が出たとすると、ジャックは
 「ダイヤ2を人差し指で挟んで振り上げ裏向きに叩きつけ」てから ひっくり返して手札を見せているので、この瞬間に「隠していた スペードA」と入れ替えた可能性は否定できないだろう。
ポーカーの役は、弱い方から順に
『1ペア、2ペア、3カード、 ストレート、フラッシュ、フルハウス、4カード、 ストレート・フラッシュ、 ロイヤル・ストレート・フラッシュ(同マークの10,J,Q,K,A)、 ファイブカード 』

■タイタニック地上波初放送
 地上波初放送の宣伝番組をフジTVで放送中。2001.8.30
全部で三回あるうちの二回取り損ねて三回めだけ見た。
 バハスタジオ後に出来たテーマパークや、オーストラリアの「タイタニック・レストラン」 などが紹介され、ディカプリオと監督のインタビューetc.
 ディカプリオはザ・ビーチでコケて以来ぜんぜんいい噂を聞かないが、この数年で 更に「大人顔」になって子役時代の可愛い面影はすっかり無くなったようだ。今後 大人の男の役でヒットを出すことが出来るかどうか…。
 キャシーベイツを小林幸子が吹き替えるとか、ジャック、ローズ、キャルの 役者もコメント。キャルはDVDもなかなか良かったけれどTV版もなかなか行けそう だし、ジャックはDVDが「アニメ声」でなんかしっくりこないので期待しても いいんじゃないかな。訳も新訳になっているようなので聴き比べは面白いだろう。
 人騒がせ情報だった「キャメロン監督の編集」というのは、結局CMの位置の 指定のことだそうだ。(普通は曲の都合でCMの位置は決まるらしい)
 また、前後編で放映される映画に良くある「ダイジェスト版」もキャメロンが 自ら作ったとか。これは面白いかも。
 番組は大したこと無い内容…ともいえるが、まぁ結構楽しめた。
 見損ねた回はWOWWOWで公開当時放映されたメイキング映像らしい。これは悔しい。 早く特典満載で画質upしたDVDが出ない物か、すでに放送されている関連映像は 権利が色々なところに散らばっていて収録するのは大変だろうけれど、とにかく まだ豊富な映像を秘蔵しているのは確かなんで、権利のとりまとめのために多少 価格に上乗せが必要でも、メイキングDVDを出していただきたいものだ。

 この番組のキャメロンのインタビューで、なぜかまた彼は 「ケルディッシュ号」に乗り組んでおり、次回作の準備のためと 言うんだけど、いったいなにを企画して居るんだろう??
 海洋ものには間違いなさそうだけれどいったい…

『タイタニック・日本特別編集版(フジTV)』鑑賞 ★(2001.9.1)
キャスト
番組のページ1
番組のページ2
タイタニックの世界掲示板
ジャックとローズの声の吹き替えに妻夫木聡、竹内結子の期待の若手俳優2人が大抜擢
演出 小林守夫、翻訳 松崎広幸
 いまも活動しているタイタニック関連掲示板でも怒涛の書き込みがあったし、 フジTVの掲示板にも怒りの書き込みが殺到していたが、主役の若手俳優の吹き替えが 「初挑戦」ということで下手な棒読みなのはまだしも「勉強不足」。翻訳も冒頭の 乗船シーン で召使の台詞とルースの台詞を取り違えていたり、ピカソの絵をめぐる会話でローズ の感情の設定が間違っていたりと、翻訳と監督(演出家)の責任になる問題も大きかっ た。
 収録は三日間だそうだ。三時間番組だから、一時間あたり一日。
 ど・新人を使った収録なのに、これではNGを出そうにもほんの4,5回の言い回しを 試してみる間もないほどの厳しいスケジュールと言えるだろう。本当なら、 オリジナルの言い回しの研究をしたり、声優としての訓練をしたり、そういう時間も ほしかったはず。
 キャスティングについてはキャメロンのOKを貰っているという。確かに声質は あまり違和感が無い。だが、芝居は出来ていない。ジャックは感情の起伏や スピード感に欠けている。ローズは「現代日本の17才」の演技であって、 「90年前のヨーロッパ上流階級の娘」とはとても思えない乱暴さ。基本に上流階級 のマナーを感じさせなければ、「ジャックと出会って階級の枠から飛び出していく」 という最大の柱がなし崩しだ。
 局としては新人のプッシュをしたいのだろうが、あれでは彼らのキャリアに 「棒読み役者」の汚点を残して終わった気がする。コントロールすべき演出家が、 侍女と女主人の台詞の振り間違いさえ指摘できないほど、話がわかっていないの では何も期待できない。
 そこの部分は当然びっくりしたが、ジャックが舳先で当時の流行化を口ずさむ シーンが「訳詩の朗読」になっているのも意味不明で、DVDの吹き替えでは原語の 歌のままになっているが、当然そうあるべきだろう。どうしても訳すべきだと考 えるなら、そこだけ字幕でも良いし、あの歌の歌詞くらい中学校英語なんだから 訳す必要なしとも思える。
・低音が無い…
 このTV版、DVDと比較して音声がモノラルであることを差し引いても 「低音がスカスカ」でありすぎたのではないだろうか?

フジTVのBBS、タイタニックの吹き替えに対する抗議のアクセスでダウン (2001.9.5)
…だそうで(^^; そりゃそうでしょう。視聴率がなんと35%も有ったそうで、その中の 1割がアクセスしただけでも半端じゃない。(この日記を読んでいる人も数100人は アクセスしたかなぁ(笑))
 とにかく、関連掲示板は最盛期もかくやと言うほど書き込みが復活しているし、 レンタル、セルDVDもまた売れるんだろぅな。
 私は予告編で「こりゃ見たい〜」と思っていた妻夫木聡(ジャック)主演の 『ウォーターボーイズ』を見に行く気持ちがガラガラと崩れ去って、でも 同じ気分の人は全国35%の半分以上は有るんじゃないかね。冒頭の乗船シーン で聞かせたあの「へ〜ばんなセリフ」を聞いたら、「若手の注目株」という 評価は事務所の売り出しが大々的ということか?と不審を抱くよね、吹き替えと 芝居は別のものだとしても。
 そういうわけで誉める人も確かに存在するけれど、差し引きすれば 相当な「マイナスの経済効果」が発生したのは確かじゃないかな。 (あくまで最大の戦犯は演出家・小林守夫だと思うが)
 竹内結子の経済効果は、彼女の仕事を見たことがないので想像が付かない。 まあ「ハイソな役柄には向かない」 ってのは分かったから、今後そういう役は来ないのは確かだと思うけれど。

・どうせ人気俳優を使うんなら、ど〜んとキムタクと松たか子でも使ったら どうだろう。
 松たかなら出来るんじゃないかな。富裕階層の生まれだけれどヨーロッパ留学 で自由な暮らしを 経験。しかし結婚のために連れ戻され先の見えた人生に絶望している娘。 彼女の身に染み込んだ上流階層のガチガチの作法、身のこなしが、ジャック との間で解放されていく。そういう変身の妙、女が仮面を捨てるとき…というか、 血の通っていく美しさ。それを表現して欲しいな。
 政略結婚の束縛から逃げるために、家出より身投げを選ぶ。本当のローズは 自殺なんか考えられないような女の子なのに、時代の束縛が身投げを発想させた。 そんな時代。上流階級と三等船客のあいだの高い壁、それを破って巡り会う 最初の恋人たち。
 フジの吹き替えはね、どアタマから100%庶民の娘。まるきり現代日本の女子高生 の恋。なんかね、オープニングシーンは
 「うちにお金がないからって酷い迷惑〜。それにキャルって所詮は芸術も 分からない成金よね〜、チョ〜むかつくってカンジ〜」という心の声が聞こえる。 でもあの辺は「そう思いながらも完全に封印している」というシーン。
 舞台で場数を踏んだ女優でなければあんな激しく揺れ動くキャラクター は無理だと思うんだな。(でも、一度でもオリジナル音声を聞けばあれほどの ミスマッチは防げるずだが…)
 ジャックははるかに単純なキャラクターなんだけどね。それに対して、 よりドラマティックな感情の動きを持ったキャルの声は、ベテランらしく 感情の振幅の大きな演技で良かったな。
 つまり「金持ち喧嘩せず」と言うけれど、あの時代の上流階級の人間は とにかくソフトに喋って決して大きな声など出さないわけよ。それで、 新興成金のモリー・ブラウンが食堂で「がはがは」と大笑いして、話は ウケているようだけれど浮きまくっているのが見えたり、母のルースが ローズを叱ったりするときにも常に「ヒソヒソ声」だったのに、最後の ボートシーンでただ一度だけ「ローズ!」と大声で名前を呼ぶとか、 設計者のアンドリュー氏が昼食で船の自慢話をするのに「バンバン」と テーブルを叩いて「上流階級とつき合いはあるけれど、やっぱり技術者だね」 と感じたりするわけ。
 そして、キャルも最初は品良く余裕で対応していたのが、バーンと切れるところ、 女に緩急使って支配しようとするところが良いわけ。彼の場合は鉄鋼王の御曹司。 だから貴族的だけれど、作り物の貴族的立ち居振る舞いに覗く粗野なマナー ってところだね。そして悪役然としていた彼が、最後にローズに本物の愛を 感じていたところを自分でも初めて気が付いたかのように、隙間から吹き出 すように感情を表すところ。
 それを言葉で聞かせるのが本物の役者の仕事よ。


2001年リバイバル公演(メディアージュ#3 in お台場) ★★☆
[2001.11.9] 本日までということで、タイタニックのリバイバル公演がお台場であった。
 『タイタニック』が本公開されていた頃にはまだまだシネコンブームの走りで THX劇場も極めて少なかったためそのへんのヘナチョコな劇場でしか見ていなかっ た。
 そういうわけで、妻がチェックしているタイタニックのファンサイトで 公開情報を得て、最新鋭の「メディアージュ」なら是非見てみたいと思った。
 三番スクリーンはスクリーンサイズこそ大きくないものの音響的には十分 THX劇場に匹敵する静粛性を確保していて、段差の大きな客席レイアウトは 見やすいし、それに足元も横幅も広広したシートで3時間を超す映画でも 快適だった。

 さて、久しぶりの『タイタニック』だが、流石にフィルムは痛んでいて、 冒頭のセピアカラーの絵は「赤が出ない」のでまっ黄色。
 明るいシーンほど色素が少ないからか退色が目立ち、タイタニックへの乗船 シーンなんかは「日向のポスター」みたいな感じ。
 キズや埃は、これだけ使い込んだフィルムなのでそれなりに目立つが、特に 巻き始めと巻き終わりではSRD音声がドロップアウトしてアナログ音声 に落ちるブチブチが数回あってもぅ、ハラハラものであった。
 しかしそれでも、フィルムの解像度は目に精々しいし、音はあれだけ自宅で 聞き込んだはずなのに「こんな音がこんなところに入っていたか?」と 至る所であり、妻と一緒に密かに「おぉこれは…」とうめきながら聞いてし まった。不思議だ。
 というわけで考えたのは、LDに収録された音声は、こういう劇場で聞くことの 出来るタイトで情報量の多い音声と比較すると、こけおどし的にドカドカ言う バランスで収録されているんじゃないかということだ。
 明らかに、LDの音声はメーカー側でバランスを作っているPCM 2chトラック も「どかどかの低音」に汚されて「ちょっと聞きの迫力」はあるが、繊細さに 欠け、それを参考に調整したAC3音声も「腹にこたえ、鼓膜が震える」けれど 低音で塗りこめたような感じになっていた。
 今回劇場で聞いた音声は、無音に近いシーンで遠くから聞こえてくる かすかな物音がしっかり聞こえているけれど、ただ音量が大きいというわけ ではなく締まった感じで、しかしここぞと言うときにはガツガツと低音が 飛んでくるような音。
 迫力と情報量のバランス。
 これは永遠のテーマだが、なんとかホームシアターに持ち込みたい。

 場内をつつむすすり泣き。これが映画館で『タイタニック』を 見るときの楽しみでもある。いまどき『タイタニック』なんかを見に来る客は それなりに打ち込んだマニアには違いないので、客席にもなんとなく一体感 があって、人数は少ないけれど『スターウォーズ』の先行上映みたいな濃さが 感じられる。泣きにもツボというものがあるわけで(笑)
 で、今回私はどこで泣けたかと言うと、基本的にサウンドと画質の検討に 打ち込んでいたので泣くどころの暇ではなかったのだが、最後も最後、


DERECTED BY
JAMES CAMERON


 のクレジットが浮かび、ティンホイッスルのテーマ曲が流れた瞬間に どっと泣いてしまった。
 くっ、キャメロンで泣くとは。
 … やられたぜ(笑)

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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!