解雇権濫用法理の類推適用

富士市 社会保険労務士川口 徹

日々雇用職員である非常勤職員の場合

雇用と解雇の考察・解雇権濫用法理 kaikoky.htm

解雇雇い止めroudou/kaiko.htm#3 roudou/kaiko.htm 解雇 雇い止め
解雇kaiko.htm

自治体の臨時職員rinshk.htm
非正社員HelloWork/kohiseiki.htm
公務員の臨時職員HelloWork/kosoudann.htm
パートpa-tonenkin.htm
パートpa-to.htm

憲法kenpou.htm 
幸福追求権kenpou.htm#kp13 憲法第13条kenpou.htm#kp13

飯田橋ハローワーク高年齢雇用継続給付
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/04/tp0425-1.html
社会保険法 shahohou.htm
〔労働災害〕平成14年労働災害データが確定した。全国 死亡災害 1,658人 休業災害125,918人
(詳細は以下に掲載)
http://www.campus.ne.jp/~labor/sokuhou.html

女性パートの平均年収は152万円  152万円以上 35% 130万円未満 21%
http://www.tokyo-hellowork.go.jp/iidabashi/riyou/kounenreikeizoku.htm

雇用保険 適用事業所第5条 kyhkh.htm#h5
/kyhkh.htm
http://www.bekkoame.ne.jp/~bozhi/ 茶壷

 

日々雇用職員である非常勤職員

第二 事案の概要
一 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨によって明らかな事実)
1 原告は,平成9年10月22日,岡山中央郵便局総務課を訪れ,アルバイトをしたい旨申し出たところ,同総務課担当者は,原告から希望職種等を聞き,採用申込書を提出させ,
その後第2集配課において,同課担当者が原告を面接した上,同課における一般的な業務内容等の説明を行い,採用の可否については,後日,連絡する旨伝えた。

 岡山中央郵便局長は,同月24日,原告を,任期1日,予定雇用期間を平成9年11月29日までとして,岡山中央郵便局非常勤職員として同月27日から採用することを決定し,
原告は同日から,第2集配課(平成11年7月16日普通郵便局の組織改正により「第2集配営業課」となる。)において,勤務を開始した。
2 原告の任用については,予定雇用期間満了後も,発令日の属する会計年度内の範囲内で
2か月程度の予定雇用期間が明示され,日々雇用職員
として同様の再採用が繰り返された後,
平成12年5月29日,任期を1日,予定雇用期間を同年7月29日までの非常勤職員として再採用された。


3 
原告は,同年6月1日,岡山市役所の地下駐車場において,市公用車の運転手と口論になる事件を起こした。

4 被告は,予定雇用期間満了後は原告を再採用しないことにし,
同月2日,原告に予定雇用期間満了の同年7月29日に退職となる旨の同年6月2日付の退職予告通知書(以下「第1回通知書」という。)を手渡し,同人はこれを見たが,受け取らなかった。
 被告は,同年6月5日,原告に対して同年7月5日をもって雇用を終了する旨の同年6月5日付退職予告通知書(以下「第2回通知書」という。)を手交した。
 被告は,同月13日,原告に対し,「退職予告通知を行う。期間満了となる7月29日に退職となる。第2回通知書は取り消す」旨通告し,予定雇用期間満了の同年7月29日に退職となる旨の同年6月13日付退職予告通知書(以下「第3回通知書」という。)を手交した(以下「本件雇止め」という。)。
 原告は,同年7月29日,勤務終了後,被告担当者から給料を受け取るよう促されたがこれを拒否し,退室した。その後原告は,同月31日から同年8月4日まで郵便局に赴いて就労の意思を示したが,被告はこれを拒否した。

 

5 本件請求
 
原告は,
(一)主位的請求として,
本件採用は私法上の雇用契約と解すべく,本件雇止めは,解雇権の濫用として無効であるから,
原告が被告に対し,労働契約上の従業員たる地位を有することの確認を求め,

(二)予備的請求1として,仮に本件採用が公法上の任用であるとすれば,
@期限付任用は国家公務員法(以下「国公法」という。)上,許容されず,
任期を一日とする旨の附款は重大かつ明白な瑕疵にあたり無効であって,
附款のない行政行為として効力を生じると解すべきであるから,
本件採用は期限の定めのない任用となる
A本件雇止めは,解雇権濫用の法理の類推適用により,社会通念上の相当性を有しないから,
重大かつ明白な瑕疵がある免職処分に相当し,無効であると主張して,
原告が岡山中央郵便局の非常勤職員たる地位にあることの確認を求め,
(三)予備的請求2として
@本件雇止めが原告の任用継続の期待権を侵害したことにより
原告は精神的苦痛を受け,これを慰謝するには慰謝料100万円が相当であると主張し,
A岡山中央郵便局総務課長等が
原告に対し,長時間に亘る事情聴取をなし,「誓約書」「始末書」の作成を強要し,
退職予定日を数回変更し,その理由についても十分な回答をしなかったために
原告は精神的苦痛を受け,これを慰謝するには慰謝料30万円が相当であると主張して,
国家賠償法に基づき,慰謝料合計130万円及び
これに対する本件雇止めの日の翌日である平成12年7月30日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた。

三 争点
1 主位的請求について
(一) 本件採用が私法上の雇用契約と解されるか。
(二) 本件雇止めは,解雇権の濫用として無効か。

2 予備的請求1について
(一) 本件採用が期限の定めのない任用となるか。
(二) 本件雇止めは,解雇権濫用の法理の類推適用により,
社会通念上の相当性を有しないものとして,無効であるか。

3 予備的請求2について
(一) 本件雇止めは,原告の任用継続の期待権を侵害したものとして違法であるか。
(二) 岡山中央郵便局総務課長等が原告に対し,
長時間に亘る事情聴取をなし,「誓約書」「始末書」の作成を強要し,
退職予定日を数回変更し,その理由についても十分な回答をしなかった不法行為が成立するか。

(三) 上記各行為によって原告の受けた精禅的苦痛に対する慰謝料額

 

四 争点についての当事者の主張
1 本件採用が私法上の雇用契約と解されるか。
 本件採用が仮に公法上の任用であるとして,任用行為の附款としての期限の付与が無効とされ,期限の定めのない公法上の任用となるか。

(一) 原告の主張
 国公法上,国家公務員の任用は期限の定めがないのが原則であり,
条件付任用(国公法59条),臨時的任用(同法60条)はあくまでも例外である。

国公法附則13条は,一般職職員に関し特例を法律又は人事院規則で定めることができると規定し,
人事院規則において非常勤職員等に関する特例が定められているが,
期限付任用にかかる非常勤職員の採用は,任期の定めを必要とする特段の事情,例えば,年末繁忙期の業務の一時的,臨時的増大がある等,緊急・臨時的な必要性がある場合に限られる。
したがって,恒常的業務について,長期の任用を予定しながら,任期を一日等と定めることは職員の身分保障の点からも許されず,法的根拠もないから,
本件採用は,公法上の任用としては効力がなく,原告と被告との間の法律関係は,私法上の雇用契約に基づくものと解するほかない。

 また仮に,本件採用が公法上の任用であるとしても,任用に付された附款は,
国公法1条,同法附則13条による期限付きで任用するための要件を充たさず,
その附款が行政行為の重要な要素でない場合には,附款が無効となるだけで
附款のない行政行為として効力を生ずるから,原告の本件採用は期限の定めのない任用となる。


(二) 被告の主張
 郵政職員は,一般職に属する国家公務員たる身分を有するところ,
国営企業労働関係法
(以下「国労法」という。平成11年法律第104号第24条により「国営企業及び特定行政法人の労働関係に関する法律」と名称を改正)
2条,国公法2条4項は,
一般職に属するすべての職に同法の規定を適用するとしている。そして,郵政職員の勤務関係の根幹をなす試験及び任免,分限,懲戒及び保障並びに服務に関する国公法の各規定は,
同法附則13条,国労法40条により除外されることなく適用され,
常勤の郵政職員の任用は,能力の実証に基づいて行われるところ(国公法33条1項),
採用は競争試験によることとされ(国公法36条1項),
試験についても規則8−12(職員の任免)29条ないし41条に規定される等,国公法,規則等による厳格な公法的規制のもとに置かれている。
 一般職に属する国家公務員につき,国公法60条に定める臨時的任用以外に期限付き任用を行うことは,
同法が国民に対して公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的とし(同法1条),
職員の身分保障規定等を定めていることからすれば,
それが公務の能率的運営を阻害し,身分保障の趣旨に反する場合には許されない。

しかし,同法が職員の期限付任用を禁じていないこと,
同法附則13条が同法の特例を設けることを許しており,規則8−12(職員の任免)は,
一定の要件の下で常勤職員についても期限付任用を許容し(15条の2),
日々雇い入れられる職員の任用の更新及び任期満了による当然退職(74条1項3号,2項)について定めていること,
規則8−14(非常勤職員等の任用に関する特例)1条では
非常勤職員の採用は競争試験又は選考のいずれかにもよらないで行うことができる旨定め,
同15−15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)等において期限付き任用を前提とする規定が設けられていること等からすれば,上記のような弊害のない場合は,期限付任用も一般的には禁止されていないものと解さ・れる。
そして,郵政省(中央省庁等改革基本法,平成11年法律第90号による改正後の国家行政組織法3条2項,4項等により,現在は総務省の外局として置かれる郵政事業庁)
においては,事務繁忙期に一時的に定員内の職員で事務を処理し得ない状況が生ずるにとどまらず,
郵政事業全体の業務量が常勤職員のみによって処理することができる範囲を超えており,
かつ直ちに常勤職員の定員を増加することは困難であって,
このことは岡山中央郵便局においても同様であり,
原告を含む期限付任用に係る非常勤職員の任用を必要とする特段の事由があった。
また,岡山中央郵便局第2集配課における常勤職員の職務内容が,
複数の配達担当区を日によって循環して担当する点,
多数且つ散在する配達箇所に効率的に配達できるように道順組立てをした上で,
これらの配達箇所に正確に郵便物を配達しなければならない点,
配達資料整備も担当している点,勤務時間も仕事によって不定である点等において
難易度も負担も高いものであるのに対し,
原告を含む非常勤職員の職務内容は,勤務時間が決まっていること,
配達箇所が大口事業所等に国定されており,配達自体にさほどの長時間を要するものではなく,
複雑な道順組立ても要しないものであること等からすれば,作業の難易度及び負担の点において,
常勤職員とは本質的な相違があり,
あくまで全体の業務量を緩和するという補助的かつ軽微なものであったと認められるので,
かかる事務の処理について日々雇用の非常勤職員を任用することが,
国公法上の身分保障の趣旨に反するということもできない。

 したがって,原告と被告との間の法律関係を私法上の雇用関係と解することは何ら根拠がなく,
原告の本件採用は公法上の任用としてなされたものである。

 また,被告が,任期1日の非常勤職員とする旨の附款を附して任用した行為は,
国公法及び規則等の規定により,国家公務員の任期について認められる附款の要件を満たしている

原告が主張する期限の定めのない非常勤職員という任用類型は,
法律上存在しないものであり,
公法的規制下にある非常勤職員の任用について,これに反する任用類型は存在し得ない。

2 本件雇止めが解雇権の濫用にあたるものとして無効か。
本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用され,
本件雇止めが社会通念上相当性を欠いた重大かつ明白な瑕疵のある免職処分に相当するものとして無効か。
(1) 原告の主張
@ 岡山中央郵便局職員約1000人のうち約500人が非常勤職員であるが,
非常勤職員の中で原告のみが,雇止めとして,再採用を許否された。

A 市役所でのトラブルは,駐車場所変更の周知がなされていなかったことによって起こったもので,
その責めの大半は,市役所が上記周知を怠つたにもかかわらず,
従前の駐車場所に郵便車を駐車していたことで原告に謝罪を強要し,
原告の出口を公用車で封鎖したまま立ち去ろうとした市役所の公用車運転手にある。
 原告は,その後の配達時間の遅滞や職務遂行の妨害に対し,
公用車の撤去を要求する際に,思わず声を荒げてしまったものである。
 ところが岡山中央郵便局は,市役所から苦情を受けるや,
市役所庁舎への出入りを禁止されることを恐れる余り,
原告の非違行為として原告を処分したものである。

B 遅刻回数が原告よりも多い非常勤職員はいるにもかかわらず,
岡山中央郵便局は,遅刻回数を理由に原告のみを不利益処分したものであり,不公平である。

C 原告ら非常勤職員が,
再採用において全く任用権者の胸先三寸ともいえる裁量的判断次第で
労働する権利,生活権を奪われてしまうのは不当である。
D したがって,本件雇止めは,
本件採用が,私的労働契約に当たるものであれば,
解雇権の濫用に当たるものとして,無効であり,
仮に本件採用が期限の定めのない公法上の任用であるとしても,
本件雇止めは原告に対する免職処分というべきであり,
衡平の見地から解雇権濫用法理が類推適用され,
私法上の雇用契約において
雇止めが許される場合と同等の社会通念上の相当性を要すると解されるが,
その要件が充たされていないことは明らかであり,
瑕疵が重大かつ明白な免職処分に相当するものとして無効である。

(2) 被告の主張
 非常勤職員が予定雇用期間の満了により退職した場合は,
公法上の手続の下に当然退職しているものであり,
本件雇止めを免職処分であるとか,
これについて解雇制限の法理と同様の社会通念上の相当性を要するなどと解する余地は全くない。

その後の再任用は,任命権者の行う特殊の行政処分による一方的行為としての採用であり,
かつ任命権者に再採用を義務づける法的根拠は何ら存在せず,
当該非常勤職員を再任用するかどうかは任命権者の自由裁量に属する。
 民間の臨時工の雇止めの効力の判断にあたって,
解雇に関する法理の類推適用を認めるべきであるとした判例があるが,
これは,当該事案における当事者の合理的意思解釈によって上記のような結論を導いているものであって,
当事者双方の合理的な意思解釈によってその内容を定めることが予定されていない行政処分
(非常勤職員の期限付任用)について,上記のような考え方を当てはめることは法的に困難である上,
期間の定めのある任用と定めのない任用とは別個の任用行為であるとされており,明示的に期間の定めのない任用行為がない限り,期間の定めのない任用関係が成立するとは解されないことに加え,
人事院規則8−12・74条1項3号によれば,
日々雇用職員については,任期が満了したときに当然退職すると定められていること等に照らすと,
期間の定めのある雇用が繰り返されたからといって,
これが期間の定めのない任用に転化するとか,
予定雇用期間満了後の任用について
解雇に関する法理が類推適用されると解する余地は全くない。
 

原告を再採用しなかったのは,市役所におけるトラブルの苦情申告と,
著しい遅刻回数等原告の平素の勤務態度等を総合的に勘案した結果によるものであり,相当な理由があるものである。


3 本件雇止めが原告の期待権の侵害として国賠法上の違法性を有するか。
(1) 原告の主張
 任命権者が非常勤職員に対して,任用期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬと認められる行為をした場合には,職員がそのような期待を抱いたことによる損害につき賠償すべきところ,岡山中央郵便局は,次のとおり,予定雇用期間満了後も原告を雇用することを確約ないし保障するなど,期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと認められる行為をした。
@ 原告の採用時,原告が長期のアルバイトを希望する旨回答していたが,それに対して,対応した第2集配課長らから否定的な言動はなかった。
A 原告の採用時において,発令簿及び採用通知書を原告は受領していない。
B 原告の非常勤職員の地位の更新の際,説明もなく形式的に辞令簿に押印させている程度であり,このような杜撰な方法では,非常勤職員らは自分が任期の定めのある雇用であることを認識し得ない。
C 小林総務課長は本件雇止めに先立ち,原告に対し,「もし6月29日までに市役所側が君の態度が良くなったと言ったならば,7月29日以降のことも考える。」旨述べた。
D 原告の岡山中央郵便局における職務内容は,常勤職員と同じものであり,かつ郵便局の運営にとって重要なもので,しかも臨時的なものでなく,恒常的なものである。岡山中央局の場合,常勤職員が約496名,非常勤職員が約477名でほぼ同数になっており,非常勤職員の多くが恒常的な業務を担当し,また非常勤職員の存在に依存して業務を行っており,非常勤職員の中には勤続6,7年に及ぶ者さえいる。そのような内容の業務を何年間も担当させていたこと自体が,長期の雇用であることを保障し,かつ,期待させる行為と評価されるべきである。

(2) 被告の主張
 期限の定めのない非常勤職員という任用類型が国公法上存在しないこと,
非常勤職員の任用方法が法律によって厳格に規定されているものであり任命権者の合理的意思解釈によって決定しうるものでないことからすれば,任用期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬと認められる特別の事情があるというためには,任命権者が非常勤職員に対して,予定雇用期間満了後も任用を続けることの確認ないし保障等の行為を明示的にしたことが必要であると解すべきである。

 当初の原告採用時においては,任命権者である局長は,予定雇用期間の範囲内という期限付非常勤職員として原告を採用したものであって,期限の定めのない任用を原告に約束したことはなく,岡山中央郵便局を含む郵政事業庁の下部機関においては,非常勤職員と常勤職員の任用の違いを前提とした採用試験の奨励をしていることに照らすと,上記特別の事情があると評価されるような事態はおよそ想定しがたい。

 また,原告が掲記する事実に対する被告の反論は次のとおりである。
@ 原告は採用時,被告担当者に対し,具体的にいつ頃まで働きたい旨の希望を述べておらず,同担当者の方も長期であったとしてもいつまでというようなことを原告に告げておらず,原告の方でも具体的な任用期間については考えていなかった。平成9年10月22日,岡山中央郵便局総務課において担当者は原告に対し,「長期のアルバイトを希望するのか年末だけを希望するのか」と聞いているが,これは原告の予定雇用期間を定めるにあたって参考として原告の意向を確認したものに過ぎず,原告が採用時に認識していたところは,単なる原告個人の主観的予測ないしは希望であり,任命権者たる局長においては,原告に任用の継続を確約ないし保障するなどの行為を何らしていない。

A 原告は,その採用時において発令簿及び採用通知書を原告は受領していない旨主張しているが,10月24日には原告に係る任免辞令簿及び採用通知書の決裁が終了したと認められるところ,決裁が終了し,しかも採用初日に原告に対する勤務にあたっての一般的な注意事項の説明を終了し,勤務にもついているにもかかわらず,任免辞令簿への押印及び採用通知書の交付が遅れるような特段の理由を認めうる証拠はなく,任命辞令簿への押印及び採用通知書の交付が同月27日に行われたことが優に認められる。
B 被告担当者は,再採用日に予定雇用期間と同期間が自動更新しない旨を記載した任命辞令簿の記載内容を原告本人に確認させた上,原告から押印をもらい予定雇用期間等を記載した採用通知書を交付している上,原告自身も,更新の際に担当者に更新の手続きの意味について質問したところ,2か月ごとに任免辞令簿に押印してもらって,採用通知書を渡しておりこの期間採用する意味である旨の説明を受けた旨供述しており,原告が予定雇用期間の意味を理解していたと認められる。
C 小林総務課長は,原告に対し,「こんな調子では,雇用を続ける訳にはいかない。1か月前の雇用終了通告がいるから6月29日までに通告する。但し7月29日の満了までに何か問題があれば,途中であっても解雇する」と説明したものであり,原告主張のようなことは言っていない。

D 原告の配達区域は,大口配達で担当区域が1つのみであり,配達資料整備等も課せられず常勤職員よりもその業務が軽減されていたのであるから,常勤職員と同一の業務を担当していたことはないのみならず,たとえ同一の業務を担当させていたとしても,それをもって任命権者が非常勤職員に再採用を確約ないし保障したとは言えない。

 そして,原告が何年間も当該業務を担当していたとか,勤続6,7年に及ぶ者がいたとの点については,予定雇用期間満了後の再採用を繰り返した結果,勤続が長期に及んだに過ぎない。また原告を含む非常勤職員については,再採用の都度,予定雇用期間及び同期間は自動更新しない旨明記した任命辞令簿に本人の確認の印を押し,採用通知書を交付することによっても予定雇用期間を理解させており,期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと見られる行為を被告が行ったことはない。


4 原告に対する岡山中央郵便局総務課長らの一連の行為が,
原告に対する不法行為として国家賠償法上違法性を有するか。
(1) 原告の主張
 岡山中央郵便局総務課長らは,原告に対し,長時間に亘り事情聴取した上,誓約書や始末書の作成を強要し,また,退職の予定日を一方的に数回に亘って変更し,その理由を問うもきちんとした回答さえしなかった。上記一連の行為は,労働者である原告に対する不誠実かつ違法な行為であり,原告はこれによって精神的若痛を受けた。

(2) 被告の主張
@ 被侵害権利ないし被侵害利益
 原告の上記主張によっては,いかなる権利又は法的利益が侵害されたとするのか明らかでなく,主張自体失当である。
A 不誠実かつ違法な行為め存否について
 被告らが行った事情聴取は,いずれも原告の岡山市役所でのトラブルについての事情聴取として必要かつ相当な範囲内のものであり,不当に長時間拘束したものとはいえない。
 また誓約書や始末書についても原告の同意を得て原告自らの意思により作成したものであり強要したとはいえない。
 さらに退職予定日の変更については,第2回通知書により退職予定日を7月29日から同月5日に変更したのは,あらかじめ同月29日の満了までに何か問題があれば,予定雇用期間途中であっても雇用を終了させる旨通告,説明しているにもかかわらず,原告がそれまで再三繰り返していた遅刻を再度しており,原告の態度が改まらないこと等の理由によるものであり,かつその理由については小林総務課長が口頭で原告に説明している。第3回通知書により再度退職予定日が7月5日から同月29日に変更されたのは,原告が6月2日の安達集配課長の事情聴取を拒否したこと,同月1日の岡山市役所のトラブルの内容を適正に審査する必要があったこと,原告が審査に協力的ではなく審査に相当時間がかかることが考えられ,仮に非違事項の審査が終わらないうちに退職されると,人事権の適正な行使の確保ができなくなること等の理由によるものであり,原告に対しても岡山市役所でのトラブルの内容について審査中であり7月5日まで間に合わない旨小林総務課長から口頭で説明されたためである。
B 職務上の法的義務違反について
 原告の主張する被侵害権利ないし利益の実定法上の根拠が明らかでないこと,書面の作成等の強要の事実が認められないこと,職員の非違行為に関する審査については任命権者の適正かつ合理的な裁量に委ねられており,事情聴取の時間,態様等について一定のものを義務づける法令は存在しないこと,個別の職員に対する更新拒絶に関する方針の変更等が生じた場合にその理由をどこまで説明すべきかについては法令上の規定はなく任命権者の裁量の範囲内に属すると解されること,本件における原告の採用,再採用及び退職に至る手続及び経緯に照らして国賠法上の違法評価の対象となる条理上の作為義務が生じると解するのも困難であること等からすれば,原告が主張する一連の行為について,個別の国民に対して負担する職務上の法的義務違反というものを観念することはできない。

第三 争点に対する判断
一 本件採用が私法上の雇用契約と解されるか。
 本件採用が仮に公法上の任用であるとして,
任用行為の附款としての期限の付与が無効とされ,期限の定めのない公法上の任用となるか。
1 国公法上,条件付任用(国公法59条),臨時的任用(同法60条)が例外として規定されるほか,
国家公務員の任用は期限の定めがないのが原則とされているが,
国公法附則13条は,一般職職員に関し特例を法律又は人事院規則で定めることができると規定し,
人事院規則において非常勤職員等に関する特例が定められている。
期限付任用にかかる非常勤職員の採用は,上記特例に係るものであるが,
前記の国家公務員の任期が原則として無期限とされた趣旨が,
職員の身分保障をし,職務に専念させる趣旨であることに鑑みると,
任期の定めを必要とする特段の事情,
例えば,年末繁忙期の業務の一時的,臨時的増大がある等,
緊急・臨時的な必要性がある場合等を想定したものと解される。

本件は,上記の本来想定された態様とは異なり,
恒常的,継続的な定員不足を補うために
日々雇用職員として原告を採用したものであることは
弁論の全趣旨から明らかであって,その適法性に疑問が生じるところである。

2 しかしながら,一方で,国公法が職員の期限付任用を禁じてはおらず,
同法附則13条が同法の特例を設けることを許しており,
規則8−12(職員の任免)は,一定の要件の下で常勤職員についても期限付任用を許容し(15条の2),
日々雇い入れられる職員の任用の更新及び任期満了による当然退職(74条1項3号,2項)について定めていること,
規則8−14(非常勤職員等の任用に関する特例)1条では
非常勤職員の採用は競争試験又は選考のいずれかにもよらないで行うことができる旨定め,
同15−15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)等において
期限付任用を前提とする規定が設けられていること等からすれば,
公務の民主的かつ能率的な運営(国公法1条)を阻害することなく,職員の身分保障を妨げない限りは,
本件の期限付任用である日々雇用職員としての採用が違法であるとまではにわかに認定し難い上,
仮に任用行為の瑕疵に当たるとしても,
その瑕疵が任用行為自体の不存在と同視しなければならないような重大なものとして無効事由に当たるものとはいえない。しかも,原告主張のように,本件採用が私法上の労働契約としての効力を有するとすれば,
かえって,国公法1条6項の趣旨に抵触することとなるし

また,附款としての期限の付与部分を無効として期限の定めのない任用になるとすると,
試験又は選考という正規任用の手続も採られていないのに,
日々雇用の非常勤職員として採用された者に常勤職員と異ならない地位を認める結果になり,
採用過程の公正・公平を損ない,国公法に反することなる。

3 そうすると,本件採用は,
期限付任用にかかる非常勤職員としての公法上の任用としての効力を有するものというほかなく,この点に関する原告の主張は採用できない。
 したがって,
本件採用が私法上の労働契約の効力を有することを前提にする原告の主位的請求は理由がないことに帰する。

二 本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用され,本件雇止めが社会通念上相当性を欠いた重大かつ明白な項痕のある免職処分として無効か。
1 一に説示したとおり,
本件の期限付任用は,国公法上の根拠があるかどうかにつき疑問がある一方,
公務の民主的かつ能率的な運営を阻害することなく,職員の身分保障を妨げないことが前提とされる限りで,
違法とまではいえないと認定できるところであり,

したがって,
本件の期限付任用の内容は職員の身分保障を妨げないものでなければならず,

信義則や,権利濫用が許されない旨の民法1条所定の法規整が及ぶものというべきであって,

本件雇止めにも解雇権濫用法理の類推適用の余地がある。

 そこで、上記観点から、本件雇止めの効力につき検討する。
2 甲第1ないし第3号証,第5ないし第7号証,第9,第17号証,乙第3ないし第21号証,第27ないし第30号証(いずれも枝番の表示を省略)証人小林良宣,同安達洋昌の各証言及び原告本人尋問の結果(但しいずれの証拠についても下記認定に反する部分を除く)並びに弁論の全趣旨を総合すると、
以下の事実が認められる。
(一) 原告の採用手続き,再採用に伴う手続き,
 原告は,平成9年10月22日,岡山中央局総務課を訪れ,アルバイトをしたい旨申し出て面接を受け,
総務課の担当者は原告に長期のアルバイトを希望するのか年末だけを希望するのかと訪ねたところ,
原告は長期のアルバイトを希望する旨答え,被告担当職員に非常勤職員採用申込書を提出した。
同月24日,岡山中央郵便局長は,同月27日から岡山中央郵便局非常勤職員として原告を採用し,
勤務時間を1日6時間,任期を1日,予定雇用期間を同年11月29日までとすることを決定した。
同月27日原告は,非常勤職員任免辞令簿に押印し,採用通知書の交付を受けた。
 非常勤職員任免辞令簿には不動文字で,
「非常勤職員を命ずる,任期は1日とする,予定雇用期間は平成年月日までとする,但し,予定雇用期間は自動更新しない」旨,「予定雇用期間満了により非常勤職員を免ずる」旨の記載があり,採用通知書にも予定雇用期間が明示されている。
 岡山中央郵便局における非常勤職員の雇用については,
予定雇用期間満了後も,
2か月程度で予定雇用期間を明示し,同様の再採用を繰り返し,再採用を行うに当たっては,
その都度事前に非常勤職員を雇用するための文書伺いを行い決済を受けた上、
非常勤職員任免辞令簿に各非常勤職員から押印を受け,採用通知書を交付しており,
原告についても同様の手続きを行っていた。
 平成12年5月29日の原告の再採用では非常勤職員辞令簿には,予定雇用期間は平成12年7月29日までとする,
但し予定雇用期間は自動更新しないとの記載があり,
原告はこれに押印し,予定雇用期間を記載した採用通知書の交付を受けた。

(二) 原告の「非違行為」等
 原告は,平成10年7月7日午後2時ころ,岡山市役所に郵便物を配達するため,市役所地下1階の通路を郵便物運搬用の籠付き台車を引っ張りながら通行しようとした際,
通路で電話帳の仕分けの作業をしていた女性職員の足に台車をぶつけたのに,謝らなかったため,
市役所の職員が注意したところ,原告はこれに腹を立て,暴言を浴びせて口論となり,
口論の後,帰りに守衛室に立ち寄るように言われたが,
「寄るか,ぼけ。」などと更に暴言を吐いて守衛室に立ち寄らなかった。この件で原告は訓告処分を受けた。
 原告は,平成12年6月1日、岡山市役所駐車場において、駐車場所変更の周知がなされていなかったために、
従前の駐車場所に郵便車を駐車していたところ、
市役所の公用車運転手に不法駐車であると答められて謝罪を求められたことから、口論となり、
原告の出口を公用車で封鎖したまま立ち去ろうとした上記運転手に対し、
「待て,ボケ,コラ,どけろ。」と大声で怒鳴ったことで、
同日午前11時ころ岡山市役所から岡山中央郵便局に対し,
「2年前にトラブルを起こした郵便職員が再度トラブルを起こしている」旨、電話通報された。
 同日午後1時半ころ岡山市役所から岡山中央郵便局に対して、
トラブルを起こした郵便職員の件で来庁されたい旨の電話があり,
午後2時ころ同局若林上席課長代理が岡山市役所の守衛長を訪ねたところ,
同人から原告が起こしたトラブルについて説明があり,
同じ郵便局職員が再度トラブルを起こしたこと,
さらに市役所庁舎で一般市民とエレベーター内において口論していたと指摘され、
郵便配達の担当者を替えるよう抗議を受け,若林上席課長代理は陳謝した。
 同日午後4時12分ころから岡山中央郵便局6階衛生室において,
小林総務課長が,原告に対して同日の市役所でのトラブルについて事情聴取を行い,
その際立会者として若林上席課長代理,赤迫課長代理が同席した。
 その際小林総務課長が1回目の市役所でのトラブルについても説明を求めると,
原告は「済んだことです。」と答え,再度説明を求めても、「済んだことですよ。何でですか。」などといってこれに応じなかった。
 小林総務課長は,原告に対し,「こんな調子では雇用を続ける訳にはいかない。
1か月前の雇用終了通告がいるから6月29日までには通告する。
但し7月29日の満了までに何か問題があれば途中であっても解雇する」旨通告した。
 そして,原告は,小林総務課長の求めに応じて同課長の指導に従い誓約書を書き始めたところ,
途中で同課長が指導した誓約書の表現内容について抗議し,誓約書を作成中の午後5時15分ころ,第2集配課主任の東主任と同山元職員が入室して原告に「何しよるん。帰りましょう。」などと行って事情聴取を妨害し,
原告は同課長の制止にもかかわらず退室しようとしたので,同課長は「池田君,さっきの約束を覚えとるな。」と言うと,
原告は「7月29日で終わりということでしょ。」と答えて東主任,山元とともに退室した。
 原告は,平成9年度5回,平成10年度38回,平成11年度72回,平成12年度5月末までに18回と遅刻を繰り返していた。
(三) 本件雇止めに至った経緯
 平成12年6月2日午後3時15分ころ,
安達第2集配課長が前日の市役所でのトラブルの状況について直接原告から話を聞こうとすると,原告は「昨日話しました。いいです」などと話すことを拒否し,また同席を要求するなどしてこれに応じなかった。
同課長は,「君がこういう態度であれば昨日の総務課長との話し合いの中で雇用は雇用期間満了で終わる。
この通知書を渡します。受け取りなさい。」と言って原告に予定雇用期間満了の同年7月29日に退職となる旨の6月2日付け退職予告通知書(第1回通知書)を手渡した。
原告は第1回通知書の内容を見た後、テーブルの上に投げ捨てるようにして立ちあがり,その後同課長が原告を追いかけて第1回通知書を受け取るように促したが,原告は受け取らなかった。
 同月5日,原告は5分遅刻したため,安達第2集配課長は原告に対し注意指導した。
そして,同課長より原告が遅刻した旨の連絡を受けた小林総務課長は同日午前8時10分ころ岡山中央郵便局長に対して原告の態度が改まらないことを理由に7月5日付けで雇用を終了する旨を口頭で伺ったところ了承を得たので,
7月5日をもって雇用を終了する旨の6月5日付け退職予告通知書(第2回通知書)を作成した。
 午前8時13分ころ,安達第2集配課長が原告を総務課に連れて行き,小林総務課長は原告に対し,7月5日をもって雇用を終了する旨説明し,第2回通知書を手交した。
 同月8日午後3時43分ころ,原告は,第2回通知書及び退職する意思はなく退職理由を具体的に記載した文書を求める旨の文書を安達第2集配課長に渡した。
 同月13日午前8時5分ころ,岡山中央郵便局小会議室において,小林総務課長は原告に対し,「退職予告通知を行う,期間満了となる7月29日が退職となる。7月5日付けの(で退職となる)の通知書は取り消す。」旨通告し,予定雇用期間満了の7月29日に退職となる旨の6月13日付け退職予告通知書(第3回通知書)を手交した。
原告が退職日が7月5日から同月29日に変更となった理由を質問し,同課長は第2回通知書の件は審査が間に合わなかったなどと説明した。
また原告は退職理由を文書で回答するよう要求したが同課長は法的に文書で回答する義務はなく口頭で足りる旨を説明し,市役所でのトラブルによる苦情申立と遅刻が理由である旨通告した。
 同月8時17分ころから,6月1日に行った事情聴取の内容確認のため,原告に6月1日付け聴取書を見せ,原告はこれを確認し,署名押印した。
その際,原告は小林総務課長が「6月29日までに君へ退職する通告をしなければならないことになっているが,それまでに君の態度が改まったということを市役所側が認めたならば7月29日以降,その時考えようじやないか。」と言ったなどと主張し,双方の認識が相違したため原告からその旨申し出があったことを追記した。
 同日午前9時50分ころ,原告は岡田総務課長代理とともに6階の衛生室に移動し,同人から始末書を書くよう求められ,始末書を作成した。この際、原告は第2回通知書と退職不同意書の返却を求め返却を受けた。
 同月19日,原告は小林総務課長に対し,第3回通知書と退職取消不同意書の入った封筒を提出し,同課長が第3回通知書は既に原告が受領したものであること,7月29日の期間満了で退職となることを説明し,封筒を返そうとしたが,原告は同封筒を置いて退室した。
 同月29日,岡山中央局長は原告が同月1日市役所において市役所職員に対し暴言を浴びせたことを理由として原告を訓告に処した。
 同年7月14日,原告から岡山中央局長宛に,予定雇用期間満了による退職の意思がないこと,平成12年7月29日以降引き続き雇用することをやめた理由等を7月17日までに文書で回答を求める旨の同月13日付け配達証明付き内容証明郵便が送付された。
 同月29日午前9時6分ころ,深井第2集配課長は原告に対し,今日で雇用期間が終了すること及び給料については勤務終了後支給する旨通告し,午後2時35分ころ同課長は原告に給料を渡すので印鑑を持ってくるように言ったが,原告は無言で立ち去り,同40分ころ再度給料を受け取るよう促すと,原告は組合の方が今交渉中なのでそのような物を受け取るなと言われています等と言って受取りを拒否した上退室した。

3 そして、甲第27,第28号証,乙第30号証,証人安達洋昌の証言及び原告本人尋問の結果(但しいずれの証拠についても下記認定に反する部分を除く)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

@ 原告のような非常勤職員も常勤職員も配達すべき郵便物を区分し,道順組み立てをして配達するという作業に従事する点では差異はなく,非常勤職員の中には常勤職員と同様に配達資料整備の作業を担当している者もいるが、配達区を複数覚えている職員が多数を占めている。
 非常勤職員の業務と常勤職員の業務内容には重なり合う点が多く業務内容の違いは相対化しており、岡山中央郵便局の場合,常勤職員と非常勤職員がそれぞれ約500名とほぼ同数になっている。

非常勤職員の中には勤続10年を超えている者もおり,予定雇用期間満了後も再採用されることが常態化していた。

A 他方,常勤職員は
日によって配達担当区が変わるため複数の配達担当区を覚えなければならず,
担当する配達区も2区ないし3区について道順組み立てという内務作業と
それぞれの郵便物を配達するという外務作業を併せて覚えなければならない上、
配達担当区を1週間単位で交代して担当することがあり,
混合担務(速達や小包郵便物の配達と通常郵便物の配達を循環して担当)の場合には
勤務時間に遅出や日曜日の勤務に就くことがあるのに対し,

非常勤職員は定時に勤務し,
その職務内容は大口配達すなわち,原告の場合住友生命ビル宛の郵便物を会社別に区分し,
更に他の職員が区分した配達先ビルあての郵便物を配達する内容であり,
配達区域がある程度固定されている(もっとも担当業務の変更を経験している者が半数いる。)。
原告から後任者への引継は10日前後の間で行われ,
原告の供述するところによっても1か月程度で覚えられる業務内容であった。
法制度上も郵政省における非常勤職員の任用に関しては,
郵政省非常勤職員任用規程(乙22の1《乙26の1により一部改正》,23の1《新任用規程》)が制定されており,

非常勤職員は軽微な通常の事務を処理するために雇用する者を(任用規程2条3号)
同事務を処理する能力を有する者のうちから,
人物試験その他必要と認める方法(任用規程4条,新任用規程5条)により任用することとされ、
非常勤職員の業務内容は,補助的代替的業務にとどまっていた。

B 郵政省非常勤職員任用規程によれば,
その任期は1日とするが,
予定雇用期間内においては,
任命権者が別段の意思表示を行わない限り,
その任期は更新される旨規定され(任用規程3条,新任用規程4条),
郵政省非常勤職員任用規程の運用について
(乙22の2 《任用規程運用方針》),23の2 《新任用規程運用方針》)によれば,
予定雇用期間の満了日においては当然退職となるものとする(任用規程運用方針3条関係の1,新任用規程運用方針4条関係の2)とされている。

 以上認定したところによれば、
原告は、期限付の非常勤職員として採用されたものの、
期間の定めは形式的なもので、更新拒絶の意思表示がない限り、
従前の任用と同様のものとして順次更新していくという暗黙の了解が双方にあったものと認められるが

行政処分においては
私法上の契約関係と異なり当事者の合理的意思解釈によって、その内容を定めることが予定されておらず、
再採用の継続により,日々雇用の非常勤職員としての任用が期限の定めのない非常勤職員としての任用に転化することを認めることは,
国公法上存在しない期限の定めのない非常勤職員を認めることになり,
任用の要件,手続,効果等についてそれぞれ法律によって定められている国公法等の規定の趣旨を潜脱する結果となり許されないこと,
期間の定めのある任用と定めのない任用は別個の任用行為とされており,(規則8−12・75条の3号の2)
明示的に期間の定めのない任用行為がない限り期間の定めのない任用関係が成立すると解することは
困難であることからすれば,
期間の定めのない非常勤職員としての任用に転化するものとは認定できない。

 しかしながら、それ故に、
期間満了によって、当然に任用関係が消滅し、
あるいは、被告の自由裁量によって更新拒絶をなしうるものではなく、
前記1に説示したことに照らし、
更新拒絶が権利濫用に係るものでないことが必要である。

 而して、前記認定したところによると、その原因にかかわらず、
原告は岡山市役所の職員と諍いが生じた際に、大声で暴言を吐き、市役所における従前の暴言事件とも併せて、顧客である市役所職員との信頼関係を損ね、岡山中央郵便局の職務の円滑な遂行を阻害し、
また、遅刻を重ねて職務を懈怠したものであり、これに対し、被告は、予告解雇に相当する手続きをとって、
原告との任用関係を解消したものであって、
被告の本件雇止めは相当であるものと言わざるを得ず、解雇権濫用と見られるべき点は認められない。

4 そうすると、原告の予備的請求1は理由がないことに帰する。

三 本件雇止めが原告の期待権の侵害として国賠法上の違法性を有するか。
 前示認定のとおり,原告は,予定雇用期間満了時に任用を終了したこととなり、
上記終了はやむを得ないものであり、
さらに、任命権者が日々雇用の非常勤職員に対して,
予定雇用期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,
上記期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと認められる行為をしたというような
特別の事情を認めるに足る証拠はない。
 したがって、原告の任用継続の期待権侵害に基づく慰蒋料請求は理由がない。

四 原告に対する岡山中央郵便局総務課長らの一連の行為が,
原告に対する不法行為として国家賠償法上違法性を有するか

 前記認定の原告の雇止めの経緯によれば,
@岡山中央局総務課長らが原告に対して行った事情聴取はいずれも許容範囲内の行為であり,
A誓約書や始末書の作成についても違法に強要したと評価できるものではなく,
B退職予定日の変更についても、原告の権利を侵害するような行為ではないものと認められる
 すなわち,平成12年6月1日に小林総務課長が衛生室において事情聴取を行ったのは,同日午後4時12分ころから同日午後5時29分ころまでの約77分間であり,しかも東主任らが事情聴取をしている同室に入りこれを妨害して同課長が引き止めるにもかかわらず退室したものであること,
同月13日午前8時5分からの小会議室での事情聴取は,同日午前8時5分ころから午前9時50分ころまでの約105分間であり,原告がこれらの事情聴取に対して反抗的な態度を取っていたことを併せ考えると,
これらは原告の岡山市役所でのトラブルについての事情聴取として
必要且つ相当な範囲内ものであり
原告を不当に長期間拘束したものとは評価できない。
 また,誓約書や始末書についても,6月1日に作成した誓約書については,
事情聴取に際して原告は反抗的な態度に終始しており,誓約書の作成を強要するような状況にあったとは認められず,
また誓約書作成途中に東主任らが入室して事情聴取を妨害していること,
6月13日に作成した始末書について言えば原告作成のノート(甲6)には,6月13日の岡田課長代理とのやりとりが書かれており,「岡田に始末書を書くように言われる。岡田「始末書には君の言いたいことを書けばよい。強要はしない。」以前の市役所での口論の際私が書いた始末書のコピーを出され,まあこんな感じでと言われる。
岡田に書式や文章の表現などについてたずねながら書く。」との記載があることに照らすと,
いずれも原告の本心から書かれたかは別にして,原告自らの意思で作成したことが認められる。
 そして,退職日の変更については,変更により原告のいかなる権利が侵害されたのか主張自体明らかではなく,
仮に再度変更されたことによる不愉快な感情が被侵害利益だとすると,
国家賠償法により法的に保護される利益とは認められない。
また前記認定の通り第2回通知書により退職予定日を7月29日から7月5日に変更したのは,
あらかじめ7月29日の終了までに何か問題があれば,予定雇用期間途中であっても雇用を終了させる旨通告していたところ,原告が再度遅刻し,その態度が改まらないためであり,かつその理由は口頭で原告に説明されていること,第3回通知書に再度退職予定日が7月5日から7月29日に変更されたのは,岡山市役所でのトラブルについて審査中であり,7月5日までに間に合わない可能性があったからであり,
その理由はやはり口頭で原告に説明されていることに照らすと違法と評価できるものではなく,
いずれにしても原告の主張は採用できない。
 したがって、予備的請求2は理由がないことに帰する。

第四 結論
 以上の次第であり,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。

岡山地方裁判所第1民事部
裁判長裁判官 金馬健二
裁判官 金光秀明
裁判官 潮海二郎

育児の社会化を目指して
働く女性 仕事と出産・育児

社会保険労務士 川口 徹  

http://www.gender.go.jp/e-challenge/ 女性情報

野村のコース別人事違法判決

インセンティブ 誘因

家庭内労働の外部化

 

●1ヶ月単位(第32条の2) ●1年単位(第32条の4) ●一斉休憩の例外(第34条) ●時間外労働の抑制(第36条)

はじめに

労働契約 解釈

労働契約

/kyhkh.htm#h5

なぜですか  所定給付日数が少なくなった
失業給付の受給資格と期間の計算の仕方 同一会社 別会社 あれれ??
有期契約者の育児休業

http://www.bekkoame.ne.jp/~tk-o/roudou/kyikuji.htm#2

 

厚生労働省 雇用保険の適用拡大のコピーです
雇用保険の適用が拡大されます!  
働き方の多様化に対応して、平成13年度から、登録型派遣労働者、パートタイム労働者の方について雇用保険の適用基準が緩和されます。
改正の要点(平成13年4月から)

登録型派遣労働者についての適用基準の緩和
 適用基準のうち、次のものが撤廃され、適用拡大が図られます。
 年収要件(年収が90万円以上見込まれる場合にのみ適用するという要件)
 1か月当たりの所定労働日に関する要件(1か月11日以上就労する場合にのみ適用するという要件)

 なお、派遣先での就業が1年を超えない短期のものや派遣先が異なる場合であっても、
同じ派遣元から反復継続して1年以上派遣されることが見込まれる場合には適用されますので、御留意ください。

パートタイム労働者についての適用基準の緩和
 適用基準のうち、年収要件(年収が90万円以上見込まれる場合にのみ適用するという要件)が撤廃され、適用拡大が図られます。

登録型派遣労働者の雇用保険の適用基準が緩和されます。
 (1)新しい適用基準(平成13年4月1日から)

 登録型派遣労働者に関する雇用保険の適用基準が以下のように改正されます
(すでに雇用されている労働者で従前の基準では適用されなかった方も、新しい基準に該当する場合には、平成13年4月1日から適用されることになります。)。

【新適用基準】
登録型派遣労働者については、次の(イ)及び(ロ)いずれにも該当する場合に被保険者となります。
(イ)
反復継続して派遣就業するものであること
次の 又は に該当する場合、これに当たります。

一の派遣元事業主に1年以上引き続き雇用されることが見込まれるとき。

一の派遣元事業主との間の雇用契約が1年未満でに当たらない場合であっても雇用契約と次の雇用契約の間隔が短く(下の(例)参照)、その状態が通算して1年以上続く見込みがあるとき。
 この場合、雇用契約については派遣先が変わっても差し支えありません。
(例)

イ  雇用契約期間2か月程度以上の派遣就業を1か月程度以内の間隔で繰り返し行うこととなっている者

ロ 雇用契約期間1か月以内の派遣就業を数日以内の間隔で繰り返し行うこととなっている者

(ロ)
1週間の所定労働時間が20時間以上であること

(2)改正のポイント
改正のポイントをまとめると以下のとおりです。
 年収要件(年収が90万円以上見込まれる場合にのみ適用するという要件)がなくなります
1か月当たりの所定労働日に関する要件(1か月11日以上就労する場合にのみ適用するという要件)がなくなります。
※なお、派遣先での就業が1年を超えない短期のものや派遣先が異なる場合であっても、同じ派遣元から反復継続して1年以上派遣されることが見込まれる場合には適用されるので、御留意ください。
雇用保険の適用は派遣先ではなく派遣元事業主との雇用関係で判断されます。

3)適用される場合の具体例
具体的には以下のような場合等に適用されることとなります
同じ派遣元A社から、派遣先B社に6か月、派遣先C社に6か月と、通算して1年以上派遣されることが見込まれる場合
同じ派遣元A社から、派遣先B社、C社及びD社に2か月ずつ1か月程度の間をあけて、
通算して1年以上派遣されることが見込まれる場合
同じ派遣元A社から、派遣先B社、C社及びD社に1か月以内の期間ずつ数日の間をあけて、通算して1年以上派遣されることが見込まれる場合
労働者の持っている技能やその業務の派遣需要などを考慮し、当初の雇入時から1年以上反復して雇用されることが見込まれる場合には、当初の雇入時から雇用保険が適用されます。

当初の雇入時には1年以上反復して雇用することが見込まれない場合であっても、
その後の就労実績等から考えて、1年以上反復して雇用することが見込まれる場合には、
その時点から雇用保険が適用されます。

なお、常用型の派遣労働者については、雇用期間に関わりなく雇用保険が適用されることになります。
失業した場合の基本手当の受給期間は、受給資格に係る離職日の翌日から原則1年間です。
このため、失業して再度短期間の派遣就業をした後、離職した場合は、前の受給資格に基づく支給残日数分の基本手当が受給できる場合があります。

2 パートタイム労働者の雇用保険の適用基準が緩和されます。
(1)新しい適用基準(平成13年4月1日から)
パートタイム労働者に関する雇用保険の適用基準が以下のように改正されます(すでに雇用されている労働者で従前の基準では適用されなかった方も、新しい基準に該当する場合には、平成13年4月1日から適用されることになります。
新適用基準】  パートタイム労働者については、次のいずれにも該当するときは、短時間労働被保険者となります。反復継続して就労する者であること 具体的には、
(イ)1年以上引き続き雇用されることが見込まれる場合です。
(ロ)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
※短時間労働被保険者とは、1週間の所定労働時間が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ、30時間未満である者をいいます。
(2)改正のポイント
年収要件(年収が90万円以上見込まれる場合にのみ適用するという要件)がなくなります。
(参考)「1年以上引き続き雇用されることが見込まれる場合」とは。
 今回改正されませんが、「1年以上引き続き雇用されることが見込まれる場合」は
次の場合で期間の定めがなく雇用される場合
雇用期間が1年である場合 
3か月、6か月など短期の期間を定めて雇用される場合であって、
雇用契約においてその更新規定が設けられているとき(1年未満の雇止規定がある場合を除きます。)
3か月、6か月など短期の期間を定めて雇用される場合であって、雇い入れの目的、その事業所の同様の雇用契約に基づき雇用される者の過去の就労実績等からみて、契約を1年以上にわたって反復更新することが見込まれるとき
(注 当初の雇入時には1年以上反復して雇用されることが見込まれない場合であっても、その後の就労実績等から考えて、1年以上反復して雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。)

詳しくは、都道府県労働局職業安定部又はお近くの公共職業安定所(ハローワーク)にお問い合わせ下さい。

ご自分が雇用保険に入っているかご確認を!
雇用保険は、労働者が失業状態になったときなどに保険給付を行う国の運営する保険制度で
、適用基準を満たす労働者は、事業主やご本人の意思に関係なく加入することとなる制度です。
雇用保険の手続をとられていない場合には
不利益を被る場合がありますので、ご自分が雇用保険に入っているかどうかをご確認下さい。

雇用保険に加入されている場合には「雇用保険被保険者証」が事業主を通じて交付されます。
事業主から「雇用保険被保険者証」を渡されていない方は、事業主にご確認下さい
まだ雇用保険が適用されていない方で、ご自分が雇用保険の適用となると思われる方は、事業主又はハローワークにご相談下さい。
 適用基準を満たしている方は、一定期間遡って雇用保険に加入することもできます
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