丹頂 -冬 8-
鶴居村、February, 1999
丹頂の冬の塒
丹頂は、冬には、給餌場近くの凍らない水深の浅い、見通しの良い幅の広い川で眠ります。冬の水の中というと我々には冷たく感じられますが、厳冬期には、氷点下20度以下にも下がる外気の中で、凍らない水というのは、丹頂にとって暖かいものなのだそうです。まあ、凍らないということは、理屈では摂氏零度より、温度が高いということですが。そのなかで、頭を羽に埋めて、片足で立って寝ています。これで疲れないそうです。
外気温が下がると、地元では、けあらし、といわれている現象が起きます。川のほうが暖かいので、川から靄が立ち昇ります。このときを狙って、冬の一番寒いときに、多くのカメラマンがこの光景を撮るために、全国から、海外からもやって来ます。私もそのうちの一人です。自分も含めて、夜明け前から、氷点下20度以下の中に、立ちんぼをしているわけです。時には、氷点下30度位になることがあります。その朝、最も日本で非生産的なことをしているわけです。 気温が低ければ良いというものでもありません。前の日の気候や、その日の天気などによって、その けあらし が、出たり、出なかったりします。また、出すぎて、全く丹頂が見えないということもあります。距離にして、7〜80mから200m位の所に、二つ三つの群れを作り寝ています。最低でも、300mmのレンズが必要です。それで、やっと全景撮れるかな、という程度です。そして、しっかりした三脚が必要です。ここによく来る方たちの多くは、一眼レフでいうと、600mmのレンズが標準レンズです。その分、載せる物が重いので、三脚は足腰の強い、手に入る限り、大きく重い物を使っています。そして、凍えないための、服装、カイロなどが必需品です。こんな準備をしても、全く写真がものにならない日のほうがほとんどです。丹頂が、目覚める前までが一つ。目覚めてからのほんの短い間に、舞ったりしますので、またひとつ。これだけを狙うために、全国から集まり、夜明け前から、氷点下20度の中、ひたすら立ちんぼをしています。
この時期の丹頂の活動は遅く、午前10時になっても、まだ川にいることはめずらしくありません。しかし、写真としては余り期待できないので、この間に、カメラマンたちは宿に戻り、朝食を取ったり、少し寝直したりします。温泉のある宿なら、温泉に浸かり、心から冷えた体を生き返らせたりします。
丹頂 秋 1
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