丹頂 -春-
春は、にぎやかな季節です。新しいメンバーが加わってきます。湿原に緑が萌え出てきて、少し前までの枯れ色一色の世界が華やかになります。自然の生命力を感じる、というより、その力を目に見えて知しらされます。冬が長いため、春の力を一層感じることができます。これから数ヶ月の間、親鳥の警戒心が最も強くなる時です。自然は、我々には美しさで、目を喜ばせてくれますが、その世界に生きるものには、とても厳しい。丹頂にとっては、キツネやカラス、テンなどが主な天敵です。卵が取られ、雛がその餌食になる。これから、雛が自由に飛べるようになるまで、親鳥の気苦労は休まることがありません。
親鳥は、一度に一個か二個の卵を産み、一羽か二羽の雛を孵します。一度に、と断ったのは、状況により、何度か卵を産むことがあるからです。今年1999年に多く見られたように、繁殖期には丹頂は湿原に居ますが、大雨により水位が上昇し、営巣した場所が水没すると、一度作った巣を捨て、新たに巣を作り直すことがあるからです。これは、卵を温めている時でも同じです。抱卵中に巣が水没すると、巣を捨てます。そしてしばらくして、また巣を作り直し、新たに卵を生むことがあります。キツネやカラスに卵を取られたり、こわされたりしても、同じく卵を新たに生むことがあります。今年は、厚岸水鳥館の前に営巣していた番いが、やはり大雨のため巣が水没したため、営巣しなおし、新たに卵を生み、雛を孵したそうです。丹頂自然公園では、この大雨の被害のため、今年(1999年)は、一羽も雛の姿が見られませんでした。天候も、自然界に生きるものには、天敵となるのです。このようなわけで、雛が孵るのは、当たり前のように思われますが、とても大変なことなのです。まして、二羽の雛が孵り、そして育っていく確率は相当低いのです。 大昔に、ロンドン動物園と上野動物園で、それぞれ別個に、丹頂が一体どの位卵を産むのか、調べてみたそうです。番いが卵を産んでは、それを取り去り続ける、ということを続けると、どちらかの動物園で、9個というのを一シーズンに記録したそうです。
浜中町、June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
生後2〜3週間のヒナが、親鳥が餌の小魚を採ると、先を争って、泳ぐ。これは、一週間の観察中初めてのことでした。それまで、ヒナは、水の深みには入らず、せいぜいが足の下半分が浸かる深さにはいるだけで、親が浅いところに来るのを待っていました。この日、親鳥のほうは、餌を採って深みをゆっくり歩むだけで、ヒナのほうは、待ちきれず、先を争って泳ぎ始めたのです。餌をえさにして、親鳥がヒナに泳ぎを教える姿を見ることができました。一度泳ぎを覚えてしまうと、昨日までとは打って変わって、ヒナは水をこわがらなくなりました。 浜中町、June, 1999 |
釧路動物園、June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
親鳥が、翼を羽ばたかせて見せると、ヒナのほうも必死に真似をします。 こんな時期から、飛ぶことを教える第一歩が始まっているのです。 浜中町、June, 1999 |
浜中町、June, 1999 |
霧多布湿原、 June, 1999 |
このヒナの姿を二羽そろって見たのは、この日が最後でした。7月に、一週間観察を続けても、どうしても一羽しか確認できなかったのです。親鳥が二羽のヒナをずうっと見やりながら、湿原の奥深くに帰っていく光景が忘れられません。 霧多布湿原、 June, 1999 |
丹頂 秋 1
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