【07、危機管理(防災)】 (cf.0211)
1995.1.17.05.46 阪神淡路大震災は被災地に住む住民の生活に甚大な影響を与えたであろうが私自身にとっても、地方自治あるいは自治体行政に求められるものについて自らの考え方を根底からゆさぶられた事件であった。当時、区議会議員として毎月出していた広報誌『こんにちは』の1995年2月号(第16号)の冒頭の一文を掲げる。防災ないし自治体の危機管理の原点がその中に散見できるような気がする。
【『こんにちは』1995年2月号(第16号)より】
防災から地域を思う
防災は地域コミュニティ構築のキーワード
『地域が結束する最後の砦は防災ですよ。災害が起こってケンカしておれますか。行政が助けに来てくれるまで地域の住民が助けあわなければ誰が助けてくれますか。ヨソの課に怒られるかも知れないけど生命あっての文化でありくつろぎなのですよ。先生もそこを強く言って下さいよ。』1月13日、猿町排水場の近くの中川の枯れた葦の刈り取りをお願いに行った時の防災課の職員の方の言葉である。こんなに深刻に思い起そうとは思わなかった。『こんにちは』2月号の原稿を書いていてその全てが「死者5,000人」の前ではちっぽけで取るに足りないように思えて大幅に変更した。
政府・行政の対応を徹底的に批判せよ
今回の阪神淡路大震災の政府や自治体の危機管理体制の甘さが指摘される中、「批判するときでなく共に復興に対応すべきだ。」とする後向きの意見があるが、それからは反省すべき点が見えてこない。徹底的に批判しなくてはならない。批判する中から真実が見えて来るであろう。
自分の住む地域ではどうすべきなのか
国、都レベルの方策はひとまずおくとして、基礎的自治体としての区は何をしておくべきか。地震の起こり得る土地に住む以上あらゆる可能性を考えておくべきであろう。 この首長に生命あづけますか?
今回程、知事や市長の言動をイライラして見たことも少ない。『市民はすぐ役所をあてにして何もしようとしない。』という上から住民を見下ろした中川大阪府知事の発言。出身官庁の建設省の顔色を見て国道の交通規制が出来ず消防自動車や緊急車輌を立ち往生させた貝原兵庫県知事。地方自治の概念の中に「住民の安全」が完全に欠落しているお二人である。これらの知事や多くの首長は政党の足し算の保革相乗りで政策論争らしい政策論争も無しに見せかけのパフォーマンスで投票率30〜40%の中の比較多数で当選してきているのである。
私自身、選挙の際に「太古では首長と言えば、その部族全員の生死の命運を握る長(おさ)である。」と言ったが現在でも法は首長に住民の生死の命運を握る権限を与えているのである。「生命は誰だったら預けられるのか」ぐらいの意識で真面目に選挙をしてほしいものである。『適当な侯補者がいない。』というなかれ。選挙される側は、選挙する側にそうした厳しい選択の目がないが故に自らの安逸の上にあぐらをかいているのである。所詮住民の民意以上の政治家は出ないというべきであろう。
因みに先の葛飾区の投票率は、区議会議員選挙:45.97%、区長選挙:21.73%.
(1)建物が倒壊しても死者の出ない方策はないのか。その建物の中に誰が残って居るのか。いわゆる災害弱者はいないのか。きちんと把握できる体制はできているのか。
(2)火を出さない方策は無いのか。出てもすぐに消せる方策はないのか。延焼を防ぐ土地区画整理、公園整備は出来ているのか。
(3)近隣の地方自治体や警察、消防、自衛隊との連絡は密なのか。
(4)我々個々の住民はどうすべきか。自分の家を守る事が地域を守ることにつながるのである。平素からの地域の連帯が要求される所以である。
阪神淡路大震災地域の自治体首長選挙投票率 (被災は 7.1.17)
自治体 | 投票日 | 政党相乗り数 | 投票率 |
---|---|---|---|
兵庫県知事 | 6.10.30 | 8 党 | 34.35% |
大阪府知事 | 3.-4.-7 | 6 党 | 50.17% |
宝塚市長 | 7.-1.22 | 3 党 | 無投票 |
神戸市長 | 5.10.25 | 9 党 | 20.43% |
尼崎市長 | 6.11.20 | 5 党 | 37.95% |
西宮市長 | 4.11.-1 | 4 党 | 33.18% |
芦屋市長 | 3.-4.21 | 0 | 55.58% |
川西市長 | 6.10.-2 | 7 党 | 60.80% |
職員の地区内居住の意義
災害時に迅速な情報収集や対応に職員の区内在住率が高いことが望ましい、とするのも正論であろう。だが、今回の阪神大震災規模であれば区内在住の職員自身が被災者になっている可能性が高い。ならば職員の区内、区外の在住の得失は積極的な差異を見出し得ない。尊大な言い方を許して頂くならば、連絡手段を担保して職員には広域に分散居住して頂く方が望ましいような気がする。
当該自治体管内に居住する職員の比率等について(平成7年1月1日現在/下段は割合%)
区市名/対象 | 全職員 | 管理職 | 部長以上 | 防災課 職員数 | |
---|---|---|---|---|---|
東京都 | 墨田区 | 793/2,596 | 5/87 | 1/29 | 9 |
30.5% | 5.7% | 3.4% | |||
江東区 | 1,676/3,718 | 16/80 | 3/21 | 10 | |
45.1% | 20.0% | 14.3% | |||
足立区 | 2,548/5,025 | 25/132 | 5/32 | 11 | |
50.7% | 18.8% | 15.6% | |||
葛飾区 | 2,011/3,965 | 28/108 | 5/32 | 11 | |
50.7% | 25.9% | 15.6% | |||
江戸川区 | 2,889/4,472 | 24/80 | 9/25 | 16+非常勤 2 | |
64.6% | 30.0% | 36.0% | |||
埼玉県 | 三郷市 | 699/1,051 | 104/127 | 16/18 | 3 |
66.5% | 81.9% | 88.9% | |||
八潮市 | 482/735 | 59/89 | 11/16 | 14 | |
65.6% | 66.3% | 68.8% | |||
千葉県 | 松戸市 | 2,183/3,472 | 126/188 | 29/35 | 9 |
62.9% | 67.0% | 82.9% |
では、誰が対応するのか
当然、物資の運搬や避難所の確保等々数多くの重要な任務が職員には課せられていると思う。だが、今回の災害でもつぶさに検証すると、避難路の確保や情報の収集以外の任務の間には若干の時間的余裕もある。同時多発型の災害に対処するには、まず人的損害を出さないための方策であろう。それは避難と救出である。前者に対応するのは職員よりも当該地域の住民つまり町会、自治会を母体とする防災市民組織(災害対策基本法第5条2項)に期待し育成すべきである。後者は、機材と能力を有する団体の調整を果たす、これが区職員の任務であろう。
このように防災にあたる民間の組織として消防庁の下に消防団が、基礎的自治体の 下に、防災市民組織が併存することになる。現実として両者の構成員は重なるであろうが指揮系列はあいまいではないのか。事実、消防団用に町会で寄付を集めて購入した消防ポンプ車の倉庫を双方が譲り合っている。(現在は置き場がなく、団員の一人が自宅に保管している。)のを見ると機材の数はどうの、人員の数はどうの、とマニュアルが一人歩きしていると言わざるを得ない。住民の安全にとって何が大切なのかの観点からの防災策を提言して行きたい。
その時、議員は何をしていたか?
被災した自治体にも当然に県議会ないし市議会の議員が当該自治体の中にいるハズである。彼等はどう動いたのか関心がある。我々議員の災害時のマニュアルも策定しておかねばなるまい。彼の地が落着いた時点で調査してみたい。
0701、自衛隊の積極活用 |
防災セクションに葛飾区担当自衛隊員のデスクを設ける。
防災は国都区の協力体制+住民の団結が前提であるとの認識にたつ。
*自衛隊というと「憲法擁護」を叫ぶ者が必ず出て来る。現行憲法は「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」を骨子とするものであり、私自身こうした教育を受けてきたのであるから思考の基準(パラダイム)になっている。しかし、ちょっと歴史を遡ってみれば「君主主義(不平等が前提)、家産国家主義(人間は牛馬並み=不平等当然)、侵略・領土拡張主義(正戦論=戦争を前提)」が普遍的とさえ考えられていたのである。ならば現行憲法の原理が未来永劫に亘って真理であり普遍的であると言うのは現代人の不遜であろう。
憲法とて人が人を支配するための約束ごとであり他の法律等と差違はない。憲法そのものを不磨の大典としてイデオロギー的な価値観を持たせることは止めたほうがいい。一実体法として個々の条文をプラグマティック(実際に役立つよう)なテーマに切り替えて論じあえばいいのではないかと感じる。 (cf.松五郎のつぶやき「11」、「16」)
0702、東京消防庁の解組、区移管(cf.0107)、防災ヘリ、救急救命ヘリ配置 |
都レベルにはネットワーク的な調整機能のみを残しその他の権限を区に移管させる。
市民消火隊等との地域防災に取り組ませる。消防代表と区防災担当を一元化する。(cf.0708) 震災時に全ての幹線道路が遮断された場合を想定する。最悪の事態、あらゆる事態を想定した危機管理体制を構築する。(「賢人は安きに居て危うきを嘆き、愚人は危うきに居て安きを嘆く」日蓮)
防災担当セクションに消火用ヘリ2〜3機、情報収集ヘリ2機程度配置する。(ヘリ配置にしても東京消防庁では23区順次であろうし、広域に緊急事態発生時、自衛隊や消防に要請していたのでは葛飾区に回ってくるのはいつのことか解らない。他のことは我慢しても区民の命に直接関わることには「保険」を掛ける必要があろう。) 避難所とあわせてヘリポートの配置も検討する。 *上記の消火用ヘリ2〜3機、情報収集ヘリ2機が、救急救命ヘリとして使い回しが出来ないか検討する。それがダメなら救急救命ヘリの導入も検討する。(財源はスイスの民間救助団体・レガ(REGA)のように民間の会員を募る。日本のJAFの感覚。)
<行政実例・葛飾区> 急患ヘリ搬送訓錬に100人参加 葛飾 (01.04.23 読売新聞) 救急患者に応急処置を施しながら病院へ搬送する″空の救急車″「ドクターヘリ」の実動訓練が、このほど葛飾区立荒川第二野球場(四つ木3)で行われた。 ドクターヘリは、全長約12メートル、幅約10メートル。酸素ボンベ、ストレッチャー、医療機器や薬品のラックなどを装備している。都内では、江東区新木場のヘリポートに2機が常駐、医療機関の要請で飛行する。訓練は、同区医師会が主催。医師や看護学校生、保健所職員ら計約100人が参加した。初めに、看護学校生約40人が6グループに分かれ、患者役の生徒を担架からストレッチャーに移し、機体後部から機内に運び入れた。続いて医師と保健所職員計12人が3組に分かれてヘリに乗り込み、3分間ずつの体験飛行を行った。
0703、自然災害対策、災害環境、地盤強度の周知 |
自分の住んでいる地域の災害に対する弱点情報(災害環境)、および地盤の強度に関する情報、暗渠化された水路が何処にあるか等の土地の履歴を徹底して周知する。これは小中学校の教育課程にも組み込むべきである。新規の住民に対しては住民登録の際に講習を義務づけるくらいのことはしてもよい。小中学校の当該授業の講師には区の専門職員や地域の防災担当者を派遣する。
地震対策、水害対策のマニュアルを行政や町会の一部の者の間にとどめず、常に最新のものを周知徹底する。町会毎のホームページを開設して常時アクセス可能の状況にしておく。(cf.0509)
*自然災害に付随して火災の場合の「水利」「街角の消火器」などの周知も徹底しておく。 *毎年毎年、同一個所の冠水やら溢水を繰り返したり、逆に水不足を招来するのは行政の怠慢以外の何物でもない。(試験範囲を示されて出来ない学生のようなものである。)
(街角の消火器については設置希望を募る。管理が不当であれば撤去する。)
0704、防災訓練 (cf.0503) |
地域コミュニティの再生の鼎は「防災」であると認識する。
【住民サイド】 防災→災害弱者への援助=平素からの交流。町会エリアごとの災害協力隊設置(cf.江東区) 防災情報の周知、防災講習会の実施。外国籍の者に対しても参加を呼びかける。防災情報の周知、防災講習会の実施。外国籍の者に対しても参加を呼びかける。
「防災訓練」の名の下に十年一日の如きメニューで経年行事のようにやっていたのでは意味が無い(やらないよりはマシであろうが)。現在のあるべき訓練とは各回ごとに「どのような災害」に対応した訓練かをシミュレートしたものにする必要がある。避難場所ないし避難路の確認(避難路については辺りの風景を確かめながら実際に歩いてみる必要があろう。) 発災は時間と所と規模を予告しない。災害への対処(危機管理)はプリペア― フォー ザ ワースト(Prepare for the worst:最悪に備える)である。区内居住の区職員自身も被災者である可能性があるのでから自分自身を、自分の町を守るのは自分たち自身であることを想定した計画も策定する。プラン0511に予定する連合町会エリア(出張所管内)を住民の主体的参加のもとに明確に確定し(その前段として各自治町会エリアは大きな道路等で確定する)、当該連合町会エリアの住民の往来を緊密化しコミュニティ意識、所有意識を醸成する。そしてその自らのエリアはエリア内の住民が的確に対応できる態勢を整え、@発災が早朝、家人が外出する前に起こった時、A発災が昼間に起こった時、B発災が夜間、家人が帰宅後に起こった時、の場合に分けて最初の12時間の「初動」対策(防災組織、防災訓練、支援方法)をそれぞれ徹底する。 【区役所サイド】 (cf.松五郎のつぶやき「18」) 防災訓練の必須要件には災害の規模の想定とともに発災時間の想定がある。役所の機能していない時間の場合等、夜間・休日等4〜5時間間隔で想定した訓練を実施する。
0705、『区民民間防災教育センター』(仮称)の設置 |
「防災は与えられるものではなく自ら勝ち取るものである」との基本的な認識のもとに、区内に設置される「市民消火隊」や「防災組織」の中央機関、研修センターとして設置する。
◆外国人やボランティアの区民ら約30人が防災訓練に参加 北区で交流会 外国から来ている人たちに災害時の対応を学んでもらおうと、北区西ヶ原の区防災センターで27日、生活文化交流会が開かれた。あいにくの雪で、予定より15分遅れで始まった交流会には、外国人やボランティアの区民ら約30人が参加。2つの班に分かれ、消火器の使い方の説明を受け、実際に火を消す訓練に挑戦。その後、地震の揺れを再現する機械で、震度7を体験。参加者の一人、アルゼンチン国籍の義煎プドリアナさんは、「揺れるのが分かっていたので怖くなかったが、実際に地震がきたらびっくりすると思う」。香港から来ている女性は「香港には地震がないので、よい体験になった」と感想を話していた。
全ての区民(区内在住の外国籍人を含む)にここの訓練を受けてもらう。
近年、川や海で溺れている者を救助に向かった者が逆に溺れて死ぬことがよくある。こうした際の「救助方法」についてもこのセンターでの訓練科目とする。
(スイスの市民防災組織『市民民間防衛教育センター』を参考)
0706、民間と災害時援助物資・施設提供協定の締結を進める |
プラン0705に記載するように「防災は与えられるものではなく自ら勝ち取るものである」ならば、先ず区内で被災しなかった地域から被災した地域への援助物資が円滑に届けられるシステムを構築しておく。その前提として区内の民間業者、マンション管理組合、駐車場所有者、農家、幼稚園、保育園、神社、寺院等と必要物資および施設提供の協定を締結しておく。
0707、区施設の建設、改築にあたっては「避難所」への転換を織り込む |
小、中学校および区の施設(地域と規模を考慮)は勿論、増改築の場合も緊急時には直ちに避難所に転換できるように備えておく。
0708、緊急時(被災時)においては指揮系統を一元化する。 |
国、都、他府県、近隣自治体および各種NGO、NPO、ボランティア組織などの救援および救援申し入れに対する割り振り等は区長直轄で直ちに設置する「○○対策本部」が情報、権限の指揮系統を一元化して対処する。当該対策本部は原則として発災後30日で解散し、必要な対策はそれぞれの部局に引き継ぐ。(権限の集中を長期化させない。) *対策本部の直接使用する車両および対策本部が指定する車両は道路交通法第39条にいう緊急車両とみなす。(法改正を求めていく。)
0709、区施設のうち70年代構築のコンクリート構造物の把握および耐久性診断の実施 |
70年代に構築されたコンクリート構造物の崩落の危険が指摘されている。区施設のうち70年代に構築されたものの把握および耐久性診断の実施する。民間のものについても把握に努める。
*[小林一輔著『コンクリートが危ない』(岩波新書)岩波書店、1999]
0710、被災時の安否確認センターの設置 (検討課題) |
被災時の安否確認センターを区内および近県のいずれかに設置。
通勤者、通学者および外出の者、それぞれの家族との間の安否確認の留守電機能。
0711、区内事業所の「自衛消防隊」設置の推進 (cf.0704) |
消防団、市民消火隊等の職場バージョンである。地域の中の事業所として消防団、市民消火隊等と連携を図る。
0712、防災情報用のホームページを開設する (cf.0211、0308) |
防災無線に代るものとして開設。外国人向けのページ(複数の言語)も設置。(cf.0116)
情報が錯綜しないように発信情報には通しナンバーを付し、情報間の齟齬はその都度訂正する。
防災情報のチャンネルはいくつあってもよい。ラジオ、テレビ以外にも区の入手した情報を直ちに発信できるツールとしてホームページを活用する。(電気、電話等のライフラインがやられても将来はバッテリー式のパソコンも開発されるであろうし、電話も衛星通信を利用した携帯電話が普及しているであろう。)
0713、新規建築の建物すべてにスプリンクラーの設置を義務付ける条例の制定 |
火事を消すより初期の段階で火事に至るのを食い止めるため(消火より予防)。 @、新規の建物および一定規模以上の既設の建物にスプリンクラーの設置を義務付ける条例を制定する。
A、@の義務対象以外の建物の所有者あるいは管理者がスプリンクラーを設置する場合は補助金を出す。
0714、ハザードマップ(災害予測図)を作製する |
平成8〜9年にかけて区防災課に提言したがいまだに実現しないでいる。自治体全域のものに加えて、連合町会単位(中学校区単位)の住民が日々の生活に根ざしたマップ(この場合、災害予測図というより生活困難図となるかもしれない)を行政から必要十分な情報を得て作成することも検討されるべきである。この場合、取組み主体がまとまらねばそれぞれが独自のマップを作ってよいであろう。
【WORDS】 ハザードマップ(災害予測図) (00.6.16 朝日新聞朝刊)
北海道・有珠山の噴火で事前に住民に配られていたハザードマップ(災害予測図)が避難の役に立った。火砕流や泥流、火山灰の到達予想範囲、山腹噴火の可能性のある場所などが色分けで線引きされ、解説や過去の噴火例が図や写真入りで示されている。過去の実績やシュミレーションをもとにつくられ、岩手山や桜島などの14火山についてもマップが配られている。
火山だけでなく、地震で火災が広まりやすい地域、堤防決壊で浸水する場所、津波の到達範囲などの予測も防災に不可欠だ。地震の被害予測は多くの自治体が作っており、洪水は77市町村まで増えた。高潮、土砂崩れなども対象になる。
これまで、火山国のインドネシアなどで充実していたが、日本は「地価が下がる」「観光客が減る」などを理由に遅れていた。最近は、海外の噴火で有用性が認識され、阪神大震災の教訓もあり普及が進みつつある。
国土庁の作製指針では、目的別に学術、防災行政資料、住民啓発の三つに分類する。住民への周知はホームページや電話帳に掲載している例もある。とはいえ、火山では20の常時監視対象火山もそろっておらず、十分ではない。住民に公表されていない火山もある。
完全に災害を防ぐことに多額の費用がかかることから、被害を最小にする「減災」の考え方も広まり、今年の防災白書では住民が自分の身を守る「自己責任」を求めた。それには予測図の作製と配布が不可欠だ。1998年夏の豪雨で、事前に予測図を見ていた人の避難率が福島県郡山市では見ていなかった人よりピークで10ポイント高く、避難開始も早かった。防災のために、ハザードマップは今後ますます重要になってくる。
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