民法条文

minpou2.htm
http://www.bekkoame.ne.jp/~tk-o/minpou2.htm#h628
(債務不履行による損害賠償) 第四百十五条
第五章 不法行為
第709条

第623条  第624条  第625条 
うつ病utu.htm

  第623条 雇傭ハ当事者ノ一方カ相手方ニ対シテ労務ニ服スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其報酬ヲ与フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス  

  第624条 労務者ハ其約シタル労務ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
 期間ヲ以テ定メタル報酬ハ其期間ノ経過シタル後之ヲ請求スルコトヲ得  

  第625条 使用者ハ労務者ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス  労務者ハ使用者ノ承諾アルニ非サレハ第三者ヲシテ自己ニ代ハリテ労務ニ服セシムルコトヲ得ス  労務者カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ労務ニ服セシメタルトキハ使用者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得

 第626条 

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
民法627条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2  期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3  六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない

(やむを得ない事由による雇用の解除) 第628条  
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

(雇用の更新の推定等) 第629条   雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
2  従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。

(雇用の解除の効力) 第六百三十条   第六百二十条の規定は、雇用について準用する。

(雇用の解除の効力) 第六百三十条 第六百二十条の規定は、雇用について準用する。

http://www.zenroren.gr.jp/jp/roudo/d_box/yuuki.html

(使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ) 第六百三十一条  
使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、
雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、 第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。

第四章 不当利得

第七百三条  法律上ノ原因ナクシテ他人ノ財産又ハ労務ニ因リ利益ヲ受ケ之カ為メニ他人ニ損失ヲ及ホシタル者ハ其利益ノ存スル限度ニ於テ之ヲ返還スル義務ヲ負フ

第七百四条  悪意ノ受益者ハ其受ケタル利益ニ利息ヲ附シテ之ヲ返還スルコトヲ要ス尚ホ損害アリタルトキハ其賠償ノ責ニ任ス

第七百五条  債務ノ弁済トシテ給付ヲ為シタル者カ其当時債務ノ存在セサルコトヲ知リタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス

第七百六条  債務者カ弁済期ニ在ラサル債務ノ弁済トシテ給付ヲ為シタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス但債務者カ錯誤ニ因リテ其給付ヲ為シタルトキハ債権者ハ之ニ因リテ得タル利益ヲ返還スルコトヲ要ス

第七百七条  債務者ニ非サル者カ錯誤ニ因リテ債務ノ弁済ヲ為シタル場合ニ於テ債権者カ善意ニテ証書ヲ毀滅シ、担保ヲ抛棄シ又ハ時効ニ因リテ其債権ヲ失ヒタルトキハ弁済者ハ返還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス ○2 前項ノ規定ハ弁済者ヨリ債務者ニ対スル求償権ノ行使ヲ妨ケス

第七百八条  不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス但不法ノ原因カ受益者ニ付テノミ存シタルトキハ此限ニ在ラス

第五章 不法行為
第709条
 故意又は過失に因りて他人の権利を侵害したる者は之に因りて生したる損害を賠償する責に任す
710
 他人の身体、自由又は名誉を害したる場合と財産権を害したる場合とを問はす前条の規定に依りて損害賠償の責に任する者は財産以外の損害に対しても其賠償を為すことを要す
711
 他人の生命を害したる者は被害者の父母、配偶者及ひ子に対しては其財産権を害せられさりし場合に於ても損害の賠償を為すことを要す
712
 未成年者か他人に損害を加へたる場合に於て其行為の責任を弁識するに足るへき知能を具へさりしときは其行為に付き賠償の責に任せす
713
 精神上の障害に因り自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態に在る間に他人に損害を加へたる者は賠償の責に任せす但故意又は過失に因りて一時其状態を招きたるときは此限に在らす
714
 前二条の規定に依り無能力者に責任なき場合に於て之を監督すへき法定の義務ある者は其無能力者か第三者に加へたる損害を賠償する責に任す但監督義務者か其義務を怠らさりしときは此限に在らす
 監督義務者に代はりて無能力者を監督する者も亦前項の責に任す
715
 或事業の為めに他人を使用する者は被用者か其事業の執行に付き第三者に加へたる損害を賠償する責に任す但使用者か被用者の選任及ひ其事業の監督に付き相当の注意を為したるとき又は相当の注意を為すも損害か生すへかりしときは此限に在らす
 使用者に代はりて事業を監督する者も亦前項の責に任す
 前二項の規定は使用者又は監督者より被用者に対する求償権の行使を妨けす
716
 注文者は請負人か其仕事に付き第三者に加へたる損害を賠償する責に任せす但注文又は指図に付き注文者に過失ありたるときは此限に在らす
717
 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵あるに因りて他人に損害を生したるときは其工作物の占有者は被害者に対して損害賠償の責に任す但占有者か損害の発生を防止するに必要なる注意を為したるときは其損害は所有者之を賠償することを要す
 前項の規定は竹木の栽植又は支持に瑕疵ある場合に之を準用す
 前二項の場合に於て他に損害の原因に付き其責に任すへき者あるときは占有者又は所有者は之に対して求償権を行使することを得
718
 動物の占有者は其動物か他人に加へたる損害を賠償する責に任す但動物の種類及ひ性質に従ひ相当の注意を以て其保管を為したるときは此限に在らす
 占有者に代はりて動物を保管する者も亦前項の責に任す
719
 数人か共同の不法行為に因りて他人に損害を加へたるときは各自連帯にて其賠償の責に任す共同行為者中の孰れか其損害を加へたるかを知ること能はさるとき亦同し
 教唆者及ひ幇助者は之を共同行為者と看做す
720
 他人の不法行為に対し自己又は第三者の権利を防衛する為め已むことを得すして加害行為を為したる者は損害賠償の責に任せす但被害者より不法行為を為したる者に対する損害賠償の請求を妨けす
 前項の規定は他人の物より生したる急迫の危難を避くる為め其物を毀損したる場合に之を準用す
721
 胎児は損害賠償の請求権に付ては既に生まれたるものと看做す
722
第四百十七条 の規定は不法行為に因る損害の賠償に之を準用す
 被害者に過失ありたるときは裁判所は損害賠償の額を定むるに付き之を斟酌することを得
民法417条

723
 他人の名誉を毀損したる者に対しては裁判所は被害者の請求に因り損害賠償に代へ又は損害賠償と共に名誉を回復するに適当なる処分を命することを得
724
 不法行為に因る損害賠償の請求権は被害者又は其法定代理人か損害及ひ加害者を知りたる時より三年間之を行はさるときは時効に因りて消滅す不法行為の時より二十年を経過したるとき亦同し

憲法kenpou.htm

社会保険法
shahohou.htm

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi

民法 宝庫
http://www.houko.com/00/01/M29/089B.HTM#s3.2

http://www.itojuku.co.jp/i/joubun/minpou/index.html

民法条文

民法1条 民法90条 公序良俗の原則 民法91条 民法92条 民法93条 民法94条 民法95条 民法96条 民法97条 民法98条 民法99条

民法100条 民法101条 民法152条 民法153条 民法154条 民法155条 民法417条 民法521条
申し込み 
民法533条 民法540条解除権の行使 民法541条履行遅滞の解除権 
民法536条 履行不能反対給付請求権 労基法26条休業手当

民法626条 民法627条 民法628条 民法629条 民法630条 民法631条 民法632条請負 民法697条事務管理 民法703条不当利得

民法709条 不法行為 民法710条非財産的損害 民法711条生命侵害 民法712条未成年者 民法713条心身喪失 
民法714条責任無能力者の監督責任

民法715条使用者責任 民法716条注文者 民法717条占有者 所有者 民法718条動物 民法719条共同不法行為

民法720条正当防衛緊急避難 民法721条 民法722条 (重婚の禁止) 第732条 

労働三審制の案に代わり民事調停と裁判の中間的な裁定制度を新設予定

裁判外紛争解決制度sdr.htm SDR

http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/shihokai/kihonteigen.html 日弁連

参審制度検討会 労働裁判制度見直し議論

http://www.jtuc-rengo.or.jp/new/download/2001-2003b/2-5.htm 連合

http://www.srkoyanagi.com/news/kakonews/news_1411.htm

第一編 総則    第一章 通則

民法1条
(基本原則) 第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
 権利の濫用は、これを許さない。

民法2条
(解釈の基準) 第二条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

   第二章 人     第一節 権利能力

第三条  私権の享有は、出生に始まる。  外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

    第二節 行為能力 (成年)

第四条  年齢二十歳をもって、成年とする。

(未成年者の法律行為) 第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。  前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。  第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

(未成年者の営業の許可) 第六条  一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。  前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

(後見開始の審判) 第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(成年被後見人及び成年後見人) 第八条  後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

(成年被後見人の法律行為) 第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

(後見開始の審判の取消し) 第十条  第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

(保佐開始の審判) 第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

(被保佐人及び保佐人) 第十二条  保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

(保佐人の同意を要する行為等) 第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。  元本を領収し、又は利用すること。  借財又は保証をすること。  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。  訴訟行為をすること。  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。  新築、改築、増築又は大修繕をすること。  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(保佐開始の審判等の取消し) 第十四条  第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。  家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

(補助開始の審判) 第十五条  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。  補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項 の審判とともにしなければならない。

(被補助人及び補助人) 第十六条  補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(補助人の同意を要する旨の審判等) 第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(補助開始の審判等の取消し) 第十八条  第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。  家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。  前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項 の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

(審判相互の関係) 第十九条  後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。  前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

(制限行為能力者の相手方の催告権) 第二十条  制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。  制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。  特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。  制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

(制限行為能力者の詐術) 第二十一条  制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

    第三節 住所

(住所) 第二十二条  各人の生活の本拠をその者の住所とする。

(居所) 第二十三条  住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。  日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、法例 (明治三十一年法律第十号)その他準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

(仮住所) 第二十四条  ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

    第四節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告

(不在者の財産の管理) 第二十五条  従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。  前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

(管理人の改任) 第二十六条  不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

(管理人の職務) 第二十七条  前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。  不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。  前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(管理人の権限) 第二十八条  管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(管理人の担保提供及び報酬) 第二十九条  家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。  家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

(失踪の宣告) 第三十条  不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(失踪の宣告の効力) 第三十一条  前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

(失踪の宣告の取消し) 第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。  失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

    第五節 同時死亡の推定

第三十二条の二  数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

   第三章 法人     第一節 法人の設立

(法人の成立) 第三十三条  法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

(公益法人の設立) 第三十四条  学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。

(名称の使用制限) 第三十五条  社団法人又は財団法人でない者は、その名称中に社団法人若しくは財団法人という文字又はこれらと誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(外国法人) 第三十六条  外国法人は、国、国の行政区画及び商事会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。  前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

(定款) 第三十七条  社団法人を設立しようとする者は、定款を作成し、次に掲げる事項を記載しなければならない。  目的  名称  事務所の所在地  資産に関する規定  理事の任免に関する規定  社員の資格の得喪に関する規定

(定款の変更) 第三十八条  定款は、総社員の四分の三以上の同意があるときに限り、変更することができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。  定款の変更は、主務官庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

(寄附行為) 第三十九条  財団法人を設立しようとする者は、その設立を目的とする寄附行為で、第三十七条第一号から第五号までに掲げる事項を定めなければならない。

(裁判所による名称等の定め) 第四十条  財団法人を設立しようとする者が、その名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、これを定めなければならない。

(贈与又は遺贈に関する規定の準用) 第四十一条  生前の処分で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、贈与に関する規定を準用する。  遺言で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

(寄附財産の帰属時期) 第四十二条  生前の処分で寄附行為をしたときは、寄附財産は、法人の設立の許可があった時から法人に帰属する。  遺言で寄附行為をしたときは、寄附財産は、遺言が効力を生じた時から法人に帰属したものとみなす。

(法人の能力) 第四十三条  法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

(法人の不法行為能力等) 第四十四条  法人は、理事その他の代理人がその職務を行うについて他人に加えた損害を賠償する責任を負う。  法人の目的の範囲を超える行為によって他人に損害を加えたときは、その行為に係る事項の決議に賛成した社員及び理事並びにその決議を履行した理事その他の代理人は、連帯してその損害を賠償する責任を負う。

(法人の設立の登記等) 第四十五条  法人は、その設立の日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、登記をしなければならない。  法人の設立は、その主たる事務所の所在地において登記をしなければ、第三者に対抗することができない。  法人の設立後に新たに事務所を設けたときは、その事務所の所在地においては三週間以内に、登記をしなければならない。

(設立の登記の登記事項及び変更の登記等) 第四十六条  法人の設立の登記において登記すべき事項は、次のとおりとする。  目的  名称  事務所の所在地  設立の許可の年月日  存立時期を定めたときは、その時期  資産の総額  出資の方法を定めたときは、その方法  理事の氏名及び住所  前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、それぞれ登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。  理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあったときは、主たる事務所及びその他の事務所の所在地においてその登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

(登記の期間の計算) 第四十七条  第四十五条第一項及び前条の規定により登記すべき事項であって、官庁の許可を要するものは、その許可書が到達した時から登記の期間を起算する。

(事務所の移転の登記) 第四十八条  法人が主たる事務所を移転したときは、二週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては第四十六条第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。  法人が主たる事務所以外の事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第四十六条第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。  同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

(外国法人の登記) 第四十九条  第四十五条第三項、第四十六条及び前条の規定は、外国法人が日本に事務所を設ける場合について準用する。ただし、外国において生じた事項については、その通知が到達した時から登記の期間を起算する。  外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

(法人の住所) 第五十条  法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

(財産目録及び社員名簿) 第五十一条  法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。  社団法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。

    第二節 法人の管理

(理事) 第五十二条  法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

(法人の代表) 第五十三条  理事は、法人のすべての事務について、法人を代表する。ただし、定款の規定又は寄附行為の趣旨に反することはできず、また、社団法人にあっては総会の決議に従わなければならない。

(理事の代理権の制限) 第五十四条  理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(理事の代理行為の委任) 第五十五条  理事は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

(仮理事) 第五十六条  理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。

(利益相反行為) 第五十七条  法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない。この場合においては、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、特別代理人を選任しなければならない。

(監事) 第五十八条  法人には、定款、寄附行為又は総会の決議で、一人又は数人の監事を置くことができる。

(監事の職務) 第五十九条  監事の職務は、次のとおりとする。  法人の財産の状況を監査すること。  理事の業務の執行の状況を監査すること。  財産の状況又は業務の執行について、法令、定款若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、総会又は主務官庁に報告をすること。  前号の報告をするため必要があるときは、総会を招集すること。

(通常総会) 第六十条  社団法人の理事は、少なくとも毎年一回、社員の通常総会を開かなければならない。

(臨時総会) 第六十一条  社団法人の理事は、必要があると認めるときは、いつでも臨時総会を招集することができる。  総社員の五分の一以上から会議の目的である事項を示して請求があったときは、理事は、臨時総会を招集しなければならない。ただし、総社員の五分の一の割合については、定款でこれと異なる割合を定めることができる。

(総会の招集) 第六十二条  総会の招集の通知は、会日より少なくとも五日前に、その会議の目的である事項を示し、定款で定めた方法に従ってしなければならない。

(社団法人の事務の執行) 第六十三条  社団法人の事務は、定款で理事その他の役員に委任したものを除き、すべて総会の決議によって行う。

(総会の決議事項) 第六十四条  総会においては、第六十二条の規定によりあらかじめ通知をした事項についてのみ、決議をすることができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。

(社員の表決権) 第六十五条  各社員の表決権は、平等とする。  総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によって表決をすることができる。  前二項の規定は、定款に別段の定めがある場合には、適用しない。

(表決権のない場合) 第六十六条  社団法人と特定の社員との関係について議決をする場合には、その社員は、表決権を有しない。

(法人の業務の監督) 第六十七条  法人の業務は、主務官庁の監督に属する。  主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる。  主務官庁は、職権で、いつでも法人の業務及び財産の状況を検査することができる。

    第三節 法人の解散

(法人の解散事由) 第六十八条  法人は、次に掲げる事由によって解散する。  定款又は寄附行為で定めた解散事由の発生  法人の目的である事業の成功又はその成功の不能  破産手続開始の決定  設立の許可の取消し  社団法人は、前項各号に掲げる事由のほか、次に掲げる事由によって解散する。  総会の決議  社員が欠けたこと。

(法人の解散の決議) 第六十九条  社団法人は、総社員の四分の三以上の賛成がなければ、解散の決議をすることができない。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。

(法人についての破産手続の開始) 第七十条  法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、裁判所は、理事若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。  前項に規定する場合には、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

(法人の設立の許可の取消し) 第七十一条  法人がその目的以外の事業をし、又は設立の許可を得た条件若しくは主務官庁の監督上の命令に違反し、その他公益を害すべき行為をした場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。正当な事由なく引き続き三年以上事業をしないときも、同様とする。

(残余財産の帰属) 第七十二条  解散した法人の財産は、定款又は寄附行為で指定した者に帰属する。  定款又は寄附行為で権利の帰属すべき者を指定せず、又はその者を指定する方法を定めなかったときは、理事は、主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似する目的のために、その財産を処分することができる。ただし、社団法人にあっては、総会の決議を経なければならない。  前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

(清算法人) 第七十三条  解散した法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなす。

(清算人) 第七十四条  法人が解散したときは、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、定款若しくは寄附行為に別段の定めがあるとき、又は総会において理事以外の者を選任したときは、この限りでない。

(裁判所による清算人の選任) 第七十五条  前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。

(清算人の解任) 第七十六条  重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。

(清算人及び解散の登記及び届出) 第七十七条  清算人は、破産手続開始の決定及び設立の許可の取消しの場合を除き、解散後主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、その氏名及び住所並びに解散の原因及び年月日の登記をし、かつ、これらの事項を主務官庁に届け出なければならない。  清算中に就職した清算人は、就職後主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、その氏名及び住所の登記をし、かつ、これらの事項を主務官庁に届け出なければならない。  前項の規定は、設立の許可の取消しによる解散の際に就職した清算人について準用する。

(清算人の職務及び権限) 第七十八条  清算人の職務は、次のとおりとする。  現務の結了  債権の取立て及び債務の弁済  残余財産の引渡し  清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。

(債権の申出の催告等) 第七十九条  清算人は、その就職の日から二箇月以内に、少なくとも三回の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。  前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは、その債権は清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。  清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

(期間経過後の債権の申出) 第八十条  前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。

(清算法人についての破産手続の開始) 第八十一条  清算中に法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。  清算人は、清算中の法人が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。  前項に規定する場合において、清算中の法人が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。

(裁判所による監督) 第八十二条  法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する。  裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。

(清算結了の届出) 第八十三条  清算が結了したときは、清算人は、その旨を主務官庁に届け出なければならない。

    第四節 補則

(主務官庁の権限の委任) 第八十四条  この章に規定する主務官庁の権限は、政令で定めるところにより、その全部又は一部を国に所属する行政庁に委任することができる。

(都道府県の執行機関による主務官庁の事務の処理) 第八十四条の二  この章に規定する主務官庁の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、都道府県の知事その他の執行機関(以下「都道府県の執行機関」という。)においてその全部又は一部を処理することとすることができる。  前項の場合において、主務官庁は、政令で定めるところにより、法人に対する監督上の命令又は設立の許可の取消しについて、都道府県の執行機関に対し指示をすることができる。  第一項の場合において、主務官庁は、都道府県の執行機関がその事務を処理するに当たってよるべき基準を定めることができる。  主務官庁が前項の基準を定めたときは、これを告示しなければならない。

    第五節 罰則

第八十四条の三  法人の理事、監事又は清算人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、五十万円以下の過料に処する。  この章に規定する登記を怠ったとき。  第五十一条の規定に違反し、又は財産目録若しくは社員名簿に不正の記載をしたとき。  第六十七条第三項又は第八十二条第二項の規定による主務官庁、その権限の委任を受けた国に所属する行政庁若しくはその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は裁判所の検査を妨げたとき。  第六十七条第二項の規定による主務官庁又はその権限の委任を受けた国に所属する行政庁若しくはその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関の監督上の命令に違反したとき。  官庁、主務官庁の権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は総会に対し、不実の申立てをし、又は事実を隠ぺいしたとき。  第七十条第二項又は第八十一条第一項の規定による破産手続開始の申立てを怠ったとき。  第七十九条第一項又は第八十一条第一項の公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。  第三十五条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。

   第四章 物

(定義) 第八十五条  この法律において「物」とは、有体物をいう。

(不動産及び動産) 第八十六条  土地及びその定着物は、不動産とする。  不動産以外の物は、すべて動産とする。  無記名債権は、動産とみなす。

(主物及び従物) 第八十七条  物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。  従物は、主物の処分に従う。

(天然果実及び法定果実) 第八十八条  物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。  物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

(果実の帰属) 第八十九条  天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。  法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

   第五章 法律行為           第一節 総則

第90条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス

第91条 法律行為ノ当事者カ法令中ノ公ノ秩序ニ関セサル規定ニ異ナリタル意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ従フ

第92条  法令中ノ公ノ秩序ニ関セサル規定ニ異ナリタル慣習アル場合ニ於テ法律行為ノ当事者カ之ニ依ル意思ヲ有セルモノト認ムヘキトキハ其慣習ニ従フ

    第二節 意思表示

第九十三条  意思表示ハ表意者カ其真意ニ非サルコトヲ知リテ之ヲ為シタル為メ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ但相手方カ表意者ノ真意ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ其意思表示ハ無効トス

(心裡留保)第九十三条 
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

第九十四条  相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ハ無効トス ○2 前項ノ意思表示ノ無効ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

(虚偽表示)第九十四条 
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第九十五条  意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

(錯誤)第九十五条 
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

第九十六条  詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得 ○2 或人ニ対スル意思表示ニ付キ第三者カ詐欺ヲ行ヒタル場合ニ於テハ相手方カ其事実ヲ知リタルトキニ限リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得 ○3 詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

(詐欺又は強迫)第九十六条 
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

第九十七条  隔地者ニ対スル意思表示ハ其通知ノ相手方ニ到達シタル時ヨリ其効力ヲ生ス ○2 表意者カ通知ヲ発シタル後ニ死亡シ又ハ能力ヲ失フモ意思表示ハ之カ為メニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ

第九十七条ノ二  意思表示ハ表意者カ相手方ヲ知ルコト能ハス又ハ其所在ヲ知ルコト能ハサルトキハ公示ノ方法ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得 ○2 前項ノ公示ハ公示送達ニ関スル民事訴訟法 ノ規定ニ従ヒ裁判所ノ掲示場ニ掲示シ且其掲示アリタルコトヲ官報及ヒ新聞紙ニ少クモ一回掲載シテ之ヲ為ス但裁判所相当ト認ムルトキハ官報及ヒ新聞紙ノ掲載ニ代ヘ市役所、町村役場又ハ之ニ準スヘキ施設ノ掲示場ニ掲示スヘキコトヲ命スルコトヲ得 ○3 公示ニ依ル意思表示ハ最後ニ官報若クハ新聞紙ニ掲載シタル日又ハ其掲載ニ代ハル掲示ヲ始メタル日ヨリ二週間ヲ経過シタル時ニ相手方ニ到達シタルモノト看做ス但表意者カ相手方ヲ知ラス又ハ其所在ヲ知ラサルニ付キ過失アリタルトキハ到達ノ効力ヲ生セス ○4 公示ニ関スル手続ハ相手方ヲ知ルコト能ハサル場合ニ於テハ表意者ノ住所地、相手方ノ所在ヲ知ルコト能ハサル場合ニ於テハ相手方ノ最後ノ住所地ノ簡易裁判所ノ管轄ニ属ス ○5 裁判所ハ表意者ヲシテ公示ニ関スル費用ヲ予納セシムルコトヲ要ス

第九十八条  意思表示ノ相手方カ之ヲ受ケタル時ニ未成年者又ハ成年被後見人ナリシトキハ其意思表示ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ス但其法定代理人カ之ヲ知リタル後ハ此限ニ在ラス

    第三節 代理

第九十九条  代理人カ其権限内ニ於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタル意思表示ハ直接ニ本人ニ対シテ其効力ヲ生ス ○2 前項ノ規定ハ第三者カ代理人ニ対シテ為シタル意思表示ニ之ヲ準用ス

第百条  代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示ハ自己ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看做ス但相手方カ其本人ノ為メニスルコトヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ前条第一項ノ規定ヲ準用ス

第百一条  意思表示ノ効力カ意思ノ欠缺、詐欺、強迫又ハ或事情ヲ知リタルコト若クハ之ヲ知ラサル過失アリタルコトニ因リテ影響ヲ受クヘキ場合ニ於テ其事実ノ有無ハ代理人ニ付キ之ヲ定ム ○2 特定ノ法律行為ヲ為スコトヲ委託セラレタル場合ニ於テ代理人カ本人ノ指図ニ従ヒ其行為ヲ為シタルトキハ本人ハ其自ラ知リタル事情ニ付キ代理人ノ不知ヲ主張スルコトヲ得ス其過失ニ因リテ知ラサリシ事情ニ付キ亦同シ

第百二条  代理人ハ能力者タルコトヲ要セス

第百三条  権限ノ定ナキ代理人ハ左ノ行為ノミヲ為ス権限ヲ有ス  保存行為  代理ノ目的タル物又ハ権利ノ性質ヲ変セサル範囲内ニ於テ其利用又ハ改良ヲ目的トスル行為

第百四条  委任ニ因ル代理人ハ本人ノ許諾ヲ得タルトキ又ハ已ムコトヲ得サル事由アルトキニ非サレハ復代理人ヲ選任スルコトヲ得ス

第百五条  代理人カ前条ノ場合ニ於テ復代理人ヲ選任シタルトキハ選任及ヒ監督ニ付キ本人ニ対シテ其責ニ任ス ○2 代理人カ本人ノ指名ニ従ヒテ復代理人ヲ選任シタルトキハ其不適任又ハ不誠実ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス

第百六条  法定代理人ハ其責任ヲ以テ復代理人ヲ選任スルコトヲ得但已ムコトヲ得サル事由アリタルトキハ前条第一項ニ定メタル責任ノミヲ負フ

第百七条  復代理人ハ其権限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス ○2 復代理人ハ本人及ヒ第三者ニ対シテ代理人ト同一ノ権利義務ヲ有ス

第百八条  何人ト雖モ同一ノ法律行為ニ付キ其相手方ノ代理人ト為リ又ハ当事者双方ノ代理人ト為ルコトヲ得ス但債務ノ履行ニ付テハ此限ニ在ラス

第百九条  第三者ニ対シテ他人ニ代理権ヲ与ヘタル旨ヲ表示シタル者ハ其代理権ノ範囲内ニ於テ其他人ト第三者トノ間ニ為シタル行為ニ付キ其責ニ任ス

第百十条  代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其権限アリト信スヘキ正当ノ理由ヲ有セシトキハ前条ノ規定ヲ準用ス

第百十一条  代理権ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス  本人ノ死亡  代理人ノ死亡若クハ破産又ハ代理人ガ後見開始ノ審判ヲ受ケタルコト ○2 此他委任ニ因ル代理権ハ委任ノ終了ニ因リテ消滅ス

第百十二条  代理権ノ消滅ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス但第三者カ過失ニ因リテ其事実ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス

第百十三条  代理権ヲ有セサル者カ他人ノ代理人トシテ為シタル契約ハ本人カ其追認ヲ為スニ非サレハ之ニ対シテ其効力ヲ生セス ○2 追認又ハ其拒絶ハ相手方ニ対シテ之ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ其相手方ニ対抗スルコトヲ得ス但相手方カ其事実ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス

第百十四条  前条ノ場合ニ於テ相手方ハ相当ノ期間ヲ定メ其期間内ニ追認ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ本人ニ催告スルコトヲ得若シ本人カ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ追認ヲ拒絶シタルモノト看做ス

第百十五条  代理権ヲ有セサル者ノ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ間ハ相手方ニ於テ之ヲ取消スコトヲ得但契約ノ当時相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス

第百十六条  追認ハ別段ノ意思表示ナキトキハ契約ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス

第百十七条  他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其代理権ヲ証明スルコト能ハス且本人ノ追認ヲ得サリシトキハ相手方ノ選択ニ従ヒ之ニ対シテ履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ス ○2 前項ノ規定ハ相手方カ代理権ナキコトヲ知リタルトキ若クハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキ又ハ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其能力ヲ有セサリシトキハ之ヲ適用セス

第百十八条  単独行為ニ付テハ其行為ノ当時相手方カ代理人ト称スル者ノ代理権ナクシテ之ヲ為スコトニ同意シ又ハ其代理権ヲ争ハサリシトキニ限リ前五条ノ規定ヲ準用ス代理権ヲ有セサル者ニ対シ其同意ヲ得テ単独行為ヲ為シタルトキ亦同シ

    第四節 無効及ヒ取消

第百十九条  無効ノ行為ハ追認ニ因リテ其効力ヲ生セス但当事者カ其無効ナルコトヲ知リテ追認ヲ為シタルトキハ新ナル行為ヲ為シタルモノト看做ス

第百二十条  能力ノ制限ニ因リテ取消シ得ヘキ行為ハ制限能力者又ハ其代理人、承継人若クハ同意ヲ為スコトヲ得ル者ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得 ○2 詐欺又ハ強迫ニ因リテ取消シ得ベキ行為ハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者又ハ其代理人若クハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得

第百二十一条  取消シタル行為ハ初ヨリ無効ナリシモノト看做ス但制限能力者ハ其行為ニ因リテ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ償還ノ義務ヲ負フ

第百二十二条  取消シ得ヘキ行為ハ第百二十条ニ掲ケタル者カ之ヲ追認シタルトキハ初ヨリ有効ナリシモノト看做ス但第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス

第百二十三条  取消シ得ヘキ行為ノ相手方カ確定セル場合ニ於テ其取消又ハ追認ハ相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス

第百二十四条  追認ハ取消ノ原因タル情況ノ止ミタル後之ヲ為スニ非サレハ其効ナシ ○2 成年被後見人ガ能力者ト為リタル後其行為ヲ了知シタルトキハ其了知シタル後ニ非サレハ追認ヲ為スコトヲ得ス ○3 前二項ノ規定ハ法定代理人又ハ制限能力者ノ保佐人若クハ補助人カ追認ヲ為ス場合ニハ之ヲ適用セス

第百二十五条  前条ノ規定ニ依リ追認ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ後取消シ得ヘキ行為ニ付キ左ノ事実アリタルトキハ追認ヲ為シタルモノト看做ス但異議ヲ留メタルトキハ此限ニ在ラス  全部又ハ一部ノ履行  履行ノ請求  更改  担保ノ供与  取消シ得ヘキ行為ニ因リテ取得シタル権利ノ全部又ハ一部ノ譲渡  強制執行

第百二十六条  取消権ハ追認ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ五年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス行為ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ

    第五節 条件及ヒ期限

第百二十七条  停止条件附法律行為ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ生ス ○2 解除条件附法律行為ハ条件成就ノ時ヨリ其効力ヲ失フ ○3 当事者カ条件成就ノ効果ヲ其成就以前ニ遡ラシムル意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ従フ

第百二十八条  条件附法律行為ノ各当事者ハ条件ノ成否未定ノ間ニ於テ条件ノ成就ニ因リ其行為ヨリ生スヘキ相手方ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス

第百二十九条  条件ノ成否未定ノ間ニ於ケル当事者ノ権利義務ハ一般ノ規定ニ従ヒ之ヲ処分、相続、保存又ハ担保スルコトヲ得

第百三十条  条件ノ成就ニ因リテ不利益ヲ受クヘキ当事者カ故意ニ其条件ノ成就ヲ妨ケタルトキハ相手方ハ其条件ヲ成就シタルモノト看做スコトヲ得

第百三十一条  条件カ法律行為ノ当時既ニ成就セル場合ニ於テ其条件カ停止条件ナルトキハ其法律行為ハ無条件トシ解除条件ナルトキハ無効トス ○2 条件ノ不成就カ法律行為ノ当時既ニ確定セル場合ニ於テ其条件カ停止条件ナルトキハ其法律行為ハ無効トシ解除条件ナルトキハ無条件トス ○3 前二項ノ場合ニ於テ当事者カ条件ノ成就又ハ不成就ヲ知ラサル間ハ第百二十八条及ヒ第百二十九条ノ規定ヲ準用ス

第百三十二条  不法ノ条件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス不法行為ヲ為ササルヲ以テ条件トスルモノ亦同シ

第百三十三条  不能ノ停止条件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス ○2 不能ノ解除条件ヲ附シタル法律行為ハ無条件トス

第百三十四条  停止条件附法律行為ハ其条件カ単ニ債務者ノ意思ノミニ係ルトキハ無効トス

第百三十五条  法律行為ニ始期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ履行ハ期限ノ到来スルマテ之ヲ請求スルコトヲ得ス ○2 法律行為ニ終期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ効力ハ期限ノ到来シタル時ニ於テ消滅ス

第百三十六条  期限ハ債務者ノ利益ノ為メニ定メタルモノト推定ス ○2 期限ノ利益ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得但之カ為メニ相手方ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス

第百三十七条  左ノ場合ニ於テハ債務者ハ期限ノ利益ヲ主張スルコトヲ得ス  債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ  債務者カ担保ヲ毀滅シ又ハ之ヲ減少シタルトキ  債務者カ担保ヲ供スル義務ヲ負フ場合ニ於テ之ヲ供セサルトキ

   第五章 期間

第百三十八条  期間ノ計算法ハ法令、裁判上ノ命令又ハ法律行為ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外本章ノ規定ニ従フ

第百三十九条  期間ヲ定ムルニ時ヲ以テシタルトキハ即時ヨリ之ヲ起算ス

第百四十条  期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初日ハ之ヲ算入セス但其期間カ午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス

第百四十一条  前条ノ場合ニ於テハ期間ノ末日ノ終了ヲ以テ期間ノ満了トス

第百四十二条  期間ノ末日カ大祭日、日曜日其他ノ休日ニ当タルトキハ其日ニ取引ヲ為ササル慣習アル場合ニ限リ期間ハ其翌日ヲ以テ満了ス

第百四十三条  期間ヲ定ムルニ週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ暦ニ従ヒテ之ヲ算ス ○2 週、月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其期間ハ最後ノ週、月又ハ年ニ於テ其起算日ニ応当スル日ノ前日ヲ以テ満了ス但月又ハ年ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ於テ最後ノ月ニ応当日ナキトキハ其月ノ末日ヲ以テ満期日トス

   第六章 時効

    第一節 総則

第百四十四条  時効ノ効力ハ其起算日ニ遡ル

第百四十五条  時効ハ当事者カ之ヲ援用スルニ非サレハ裁判所之ニ依リテ裁判ヲ為スコトヲ得ス

第百四十六条  時効ノ利益ハ予メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス

第百四十七条  時効ハ左ノ事由ニ因リテ中断ス  請求  差押、仮差押又ハ仮処分  承認

第百四十八条  前条ノ時効中断ハ当事者及ヒ其承継人ノ間ニ於テノミ其効力ヲ有ス

第百四十九条  裁判上ノ請求ハ訴ノ却下又ハ取下ノ場合ニ於テハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十条  支払督促ハ債権者カ法定ノ期間内ニ仮執行ノ宣言ノ申立ヲ為ササルニ因リ其効力ヲ失フトキハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十一条  和解ノ為メニスル呼出ハ相手方カ出頭セス又ハ和解ノ調ハサルトキハ一个月内ニ訴ヲ提起スルニ非サレハ時効中断ノ効力ヲ生セス任意出頭ノ場合ニ於テ和解ノ調ハサルトキ亦同シ

第百五十二条  破産手続参加ハ債権者カ之ヲ取消シ又ハ其請求カ却下セラレタルトキハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十三条  催告ハ六个月内ニ裁判上ノ請求、和解ノ為メニスル呼出若クハ任意出頭、破産手続参加、差押、仮差押又ハ仮処分ヲ為スニ非サレハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十四条  差押、仮差押及ヒ仮処分ハ権利者ノ請求ニ因リ又ハ法律ノ規定ニ従ハサルニ因リテ取消サレタルトキハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十五条  差押、仮差押及ヒ仮処分ハ時効ノ利益ヲ受クル者ニ対シテ之ヲ為ササルトキハ之ヲ其者ニ通知シタル後ニ非サレハ時効中断ノ効力ヲ生セス

第百五十六条  時効中断ノ効力ヲ生スヘキ承認ヲ為スニハ相手方ノ権利ニ付キ処分ノ能力又ハ権限アルコトヲ要セス

第百五十七条  中断シタル時効ハ其中断ノ事由ノ終了シタル時ヨリ更ニ其進行ヲ始ム ○2 裁判上ノ請求ニ因リテ中断シタル時効ハ裁判ノ確定シタル時ヨリ更ニ其進行ヲ始ム

第百五十八条  時効ノ期間満了前六箇月内ニ於テ未成年者又ハ成年被後見人カ法定代理人ヲ有セサリシトキハ其者カ能力者ト為リ又ハ法定代理人カ就職シタル時ヨリ六箇月内ハ之ニ対シテ時効完成セス

第百五十九条  未成年者又ハ成年被後見人カ其財産ヲ管理スル父、母又ハ後見人ニ対シテ有スル権利ニ付テハ其者カ能力者ト為リ又ハ後任ノ法定代理人カ就職シタル時ヨリ六箇月内ハ時効完成セス

第百五十九条ノ二  夫婦ノ一方カ他ノ一方ニ対シテ有スル権利ニ付テハ婚姻解消ノ時ヨリ六个月内ハ時効完成セス

第百六十条  相続財産ニ関シテハ相続人ノ確定シ、管理人ノ選任セラレ又ハ破産ノ宣告アリタル時ヨリ六个月内ハ時効完成セス

第百六十一条  時効ノ期間満了ノ時ニ当タリ天災其他避クヘカラサル事変ノ為メ時効ヲ中断スルコト能ハサルトキハ其妨碍ノ止ミタル時ヨリ二週間内ハ時効完成セス

    第二節 取得時効

第百六十二条  二十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ物ヲ占有シタル者ハ其所有権ヲ取得ス ○2 十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ不動産ヲ占有シタル者カ其占有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシトキハ其不動産ノ所有権ヲ取得ス

第百六十三条  所有権以外ノ財産権ヲ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ平穏且公然ニ行使スル者ハ前条ノ区別ニ従ヒ二十年又ハ十年ノ後其権利ヲ取得ス

第百六十四条  第百六十二条ノ時効ハ占有者カ任意ニ其占有ヲ中止シ又ハ他人ノ為メニ之ヲ奪ハレタルトキハ中断ス

第百六十五条  前条ノ規定ハ第百六十三条ノ場合ニ之ヲ準用ス

    第三節 消滅時効

第百六十六条  消滅時効ハ権利ヲ行使スルコトヲ得ル時ヨリ進行ス ○2 前項ノ規定ハ始期附又ハ停止条件附権利ノ目的物ヲ占有スル第三者ノ為メニ其占有ノ時ヨリ取得時効ノ進行スルコトヲ妨ケス但権利者ハ其時効ヲ中断スル為メ何時ニテモ占有者ノ承認ヲ求ムルコトヲ得

第百六十七条  債権ハ十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス ○2 債権又ハ所有権ニ非サル財産権ハ二十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス

第百六十八条  定期金ノ債権ハ第一回ノ弁済期ヨリ二十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス最後ノ弁済期ヨリ十年間之ヲ行ハサルトキ亦同シ ○2 定期金ノ債権者ハ時効中断ノ証ヲ得ル為メ何時ニテモ其債務者ノ承認書ヲ求ムルコトヲ得

第百六十九条  年又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル金銭其他ノ物ノ給付ヲ目的トスル債権ハ五年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス

第百七十条  左ニ掲ケタル債権ハ三年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス  医師、産婆及ヒ薬剤師ノ治術、勤労及ヒ調剤ニ関スル債権  技師、棟梁及ヒ請負人ノ工事ニ関スル債権但此時効ハ其負担シタル工事終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス

第百七十一条  弁護士又ハ弁護士法人ハ事件終了ノ時ヨリ公証人ハ其職務執行ノ時ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ其職務ニ関シテ受取リタル書類ニ付キ其責ヲ免ル

第百七十二条  弁護士、弁護士法人及ビ公証人ノ職務ニ関スル債権ハ其原因タル事件終了ノ時ヨリ二年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス但其事件中ノ各事項終了ノ時ヨリ五年ヲ経過シタルトキハ右ノ期間内ト雖モ其事項ニ関スル債権ハ消滅ス

第百七十三条  左ニ掲ケタル債権ハ二年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス  生産者、卸売商人及ヒ小売商人カ売却シタル産物及ヒ商品ノ代価  居職人及ヒ製造人ノ仕事ニ関スル債権  生徒及ヒ習業者ノ教育、衣食及ヒ止宿ノ代料ニ関スル校主、塾主、教師及ヒ師匠ノ債権

第百七十四条  左ニ掲ケタル債権ハ一年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス  月又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル雇人ノ給料  労力者及ヒ芸人ノ賃金並ニ其供給シタル物ノ代価  運送賃  旅店、料理店、貸席及ヒ娯遊場ノ宿泊料、飲食料、席料、木戸銭、消費物代価並ニ立替金  動産ノ損料

第百七十四条ノ二  確定判決ニ依リテ確定シタル権利ハ十年ヨリ短キ時効期間ノ定アルモノト雖モ其時効期間ハ之ヲ十年トス裁判上ノ和解、調停其他確定判決ト同一ノ効力ヲ有スルモノニ依リテ確定シタル権利ニ付キ亦同シ ○2 前項ノ規定ハ確定ノ当時未タ弁済期ノ到来セサル債権ニハ之ヲ適用セス

(公序良俗) 第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

(任意規定と異なる意思表示) 第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

(任意規定と異なる慣習) 第九十二条  法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

    第二節 意思表示

(心裡留保) 第九十三条  意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

(虚偽表示) 第九十四条  相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。  前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

(錯誤) 第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

(詐欺又は強迫) 第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

(隔地者に対する意思表示) 第九十七条  隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。  隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

(公示による意思表示) 第九十八条  意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。  前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。  公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。  公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。  裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

(意思表示の受領能力) 第九十八条の二  意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。

    第三節 代理

(代理行為の要件及び効果) 第九十九条  代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。  前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

(本人のためにすることを示さない意思表示) 第百条  代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

(代理行為の瑕疵) 第百一条  意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。  特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

(代理人の行為能力) 第百二条  代理人は、行為能力者であることを要しない。

(権限の定めのない代理人の権限) 第百三条  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。  保存行為  代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(任意代理人による復代理人の選任) 第百四条  委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

(復代理人を選任した代理人の責任) 第百五条  代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。  代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

(法定代理人による復代理人の選任) 第百六条  法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

(復代理人の権限等) 第百七条  復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。  復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

(自己契約及び双方代理) 第百八条  同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

(代理権授与の表示による表見代理) 第百九条  第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理) 第百十条  前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

(代理権の消滅事由) 第百十一条  代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。  本人の死亡  代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。  委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

(代理権消滅後の表見代理) 第百十二条  代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

(無権代理) 第百十三条  代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。  追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

(無権代理の相手方の催告権) 第百十四条  前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

(無権代理の相手方の取消権) 第百十五条  代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

(無権代理行為の追認) 第百十六条  追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

(無権代理人の責任) 第百十七条  他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。  前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

(単独行為の無権代理) 第百十八条  単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

    第四節 無効及び取消し

(無効な行為の追認) 第百十九条  無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

(取消権者) 第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

(取消しの効果) 第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

(取り消すことができる行為の追認) 第百二十二条  取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

(取消し及び追認の方法) 第百二十三条  取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。

(追認の要件) 第百二十四条  追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。  成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。  前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。

(法定追認) 第百二十五条  前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。  全部又は一部の履行  履行の請求  更改  担保の供与  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡  強制執行

(取消権の期間の制限) 第百二十六条  取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

    第五節 条件及び期限

(条件が成就した場合の効果) 第百二十七条  停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。  解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。  当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止) 第百二十八条  条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

(条件の成否未定の間における権利の処分等) 第百二十九条  条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

(条件の成就の妨害) 第百三十条  条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

(既成条件) 第百三十一条  条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。  条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。  前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。

(不法条件) 第百三十二条  不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

(不能条件) 第百三十三条  不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。  不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

(随意条件) 第百三十四条  停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

(期限の到来の効果) 第百三十五条  法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。  法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

(期限の利益及びその放棄) 第百三十六条  期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。  期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

(期限の利益の喪失) 第百三十七条  次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。  債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。  債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。  債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

   第六章 期間の計算

(期間の計算の通則) 第百三十八条  期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。

(期間の起算) 第百三十九条  時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第百四十条  日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

(期間の満了) 第百四十一条  前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

第百四十二条  期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

(暦による期間の計算) 第百四十三条  週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。  週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

   第七章 時効

    第一節 総則

(時効の効力) 第百四十四条  時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

(時効の援用) 第百四十五条  時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

(時効の利益の放棄) 第百四十六条  時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

(時効の中断事由) 第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。  請求  差押え、仮差押え又は仮処分  承認

(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲) 第百四十八条  前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

(裁判上の請求) 第百四十九条  裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

(支払督促) 第百五十条  支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条 に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。

(和解及び調停の申立て) 第百五十一条  和解の申立て又は民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。

(破産手続参加等) 第百五十二条  破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。

(催告) 第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

(差押え、仮差押え及び仮処分) 第百五十四条  差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。

第百五十五条  差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

(承認) 第百五十六条  時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。

(中断後の時効の進行) 第百五十七条  中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。  裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

(未成年者又は成年被後見人と時効の停止) 第百五十八条  時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。  未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

(夫婦間の権利の時効の停止) 第百五十九条  夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(相続財産に関する時効の停止) 第百六十条  相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(天災等による時効の停止) 第百六十一条  時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

    第二節 取得時効

(所有権の取得時効) 第百六十二条  二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

(所有権以外の財産権の取得時効) 第百六十三条  所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

(占有の中止等による取得時効の中断) 第百六十四条  第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。

第百六十五条  前条の規定は、第百六十三条の場合について準用する。

    第三節 消滅時効

(消滅時効の進行等) 第百六十六条  消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(債権等の消滅時効) 第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

(定期金債権の消滅時効) 第百六十八条  定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。  定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

(定期給付債権の短期消滅時効) 第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

(三年の短期消滅時効) 第百七十条  次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。  医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権  工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

第百七十一条  弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。

(二年の短期消滅時効) 第百七十二条  弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。  前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。

第百七十三条  次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。  生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権  自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権  学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

(一年の短期消滅時効) 第百七十四条  次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権  自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権  運送賃に係る債権  旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権  動産の損料に係る債権

(判決で確定した権利の消滅時効) 第百七十四条の二  確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。  前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。   第二編 物権

   第一章 総則

(物権の創設) 第百七十五条  物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

(物権の設定及び移転) 第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件) 第百七十八条  動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

(混同) 第百七十九条  同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。  所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。  前二項の規定は、占有権については、適用しない。

   第二章 占有権

    第一節 占有権の取得

(占有権の取得) 第百八十条  占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

(代理占有) 第百八十一条  占有権は、代理人によって取得することができる。

(現実の引渡し及び簡易の引渡し) 第百八十二条  占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。  譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

(占有改定) 第百八十三条  代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

(指図による占有移転) 第百八十四条  代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

(占有の性質の変更) 第百八十五条  権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

(占有の態様等に関する推定) 第百八十六条  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。  前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

(占有の承継) 第百八十七条  占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。  前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

    第二節 占有権の効力

(占有物について行使する権利の適法の推定) 第百八十八条  占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

(善意の占有者による果実の取得等) 第百八十九条  善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。  善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

(悪意の占有者による果実の返還等) 第百九十条  悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。  前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

(占有者による損害賠償) 第百九十一条  占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

(即時取得) 第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

(盗品又は遺失物の回復) 第百九十三条  前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

第百九十四条  占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

(動物の占有による権利の取得) 第百九十五条  家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

(占有者による費用の償還請求) 第百九十六条  占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。  占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(占有の訴え) 第百九十七条  占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

(占有保持の訴え) 第百九十八条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

(占有保全の訴え) 第百九十九条  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

(占有回収の訴え) 第二百条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

(占有の訴えの提起期間) 第二百一条  占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。  占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。  占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。

(本権の訴えとの関係) 第二百二条  占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。  占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

    第三節 占有権の消滅

(占有権の消滅事由) 第二百三条  占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。

(代理占有権の消滅事由) 第二百四条  代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。  本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。  代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。  代理人が占有物の所持を失ったこと。  占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。

    第四節 準占有

第二百五条  この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。

   第三章 所有権

    第一節 所有権の限界

     第一款 所有権の内容及び範囲

(所有権の内容) 第二百六条  所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

(土地所有権の範囲) 第二百七条  土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

第二百八条  削除

     第二款 相隣関係

(隣地の使用請求) 第二百九条  土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。  前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

(公道に至るための他の土地の通行権) 第二百十条  他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。  池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

第二百十一条  前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。  前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

第二百十二条  第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

第二百十三条  分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。  前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

(自然水流に対する妨害の禁止) 第二百十四条  土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。

(水流の障害の除去) 第二百十五条  水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。

(水流に関する工作物の修繕等) 第二百十六条  他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。

(費用の負担についての慣習) 第二百十七条  前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。

(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止) 第二百十八条  土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。

(水流の変更) 第二百十九条  溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。  両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。  前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

(排水のための低地の通水) 第二百二十条  高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。

(通水用工作物の使用) 第二百二十一条  土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。  前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

(堰の設置及び使用) 第二百二十二条  水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。  対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。  前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

(境界標の設置) 第二百二十三条  土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。

(境界標の設置及び保存の費用) 第二百二十四条  境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。

(囲障の設置) 第二百二十五条  二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。  当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。

(囲障の設置及び保存の費用) 第二百二十六条  前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。

(相隣者の一人による囲障の設置) 第二百二十七条  相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。

(囲障の設置等に関する慣習) 第二百二十八条  前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

(境界標等の共有の推定) 第二百二十九条  境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

第二百三十条  一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。  高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。

(共有の障壁の高さを増す工事) 第二百三十一条  相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。  前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。

第二百三十二条  前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

(竹木の枝の切除及び根の切取り) 第二百三十三条  隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。  隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

(境界線付近の建築の制限) 第二百三十四条  建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

第二百三十五条  境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。  前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

(境界線付近の建築に関する慣習) 第二百三十六条  前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

(境界線付近の掘削の制限) 第二百三十七条  井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。  導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。ただし、一メートルを超えることを要しない。

(境界線付近の掘削に関する注意義務) 第二百三十八条  境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。

    第二節 所有権の取得

(無主物の帰属) 第二百三十九条  所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。  所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

(遺失物の拾得) 第二百四十条  遺失物は、遺失物法 (明治三十二年法律第八十七号)の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。

(埋蔵物の発見) 第二百四十一条  埋蔵物は、遺失物法 の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

(不動産の付合) 第二百四十二条  不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

(動産の付合) 第二百四十三条  所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。

第二百四十四条  付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。

(混和) 第二百四十五条  前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。

(加工) 第二百四十六条  他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。  前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

(付合、混和又は加工の効果) 第二百四十七条  第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。  前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。

(付合、混和又は加工に伴う償金の請求) 第二百四十八条  第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。

    第三節 共有

(共有物の使用) 第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

(共有持分の割合の推定) 第二百五十条  各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

(共有物の変更) 第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

(共有物の管理) 第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

(共有物に関する負担) 第二百五十三条  各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。  共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

(共有物についての債権) 第二百五十四条  共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。

(持分の放棄及び共有者の死亡) 第二百五十五条  共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

(共有物の分割請求) 第二百五十六条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。

第二百五十七条  前条の規定は、第二百二十九条に規定する共有物については、適用しない。

(裁判による共有物の分割) 第二百五十八条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。  前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

(共有に関する債権の弁済) 第二百五十九条  共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。  債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。

(共有物の分割への参加) 第二百六十条  共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。  前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。

(分割における共有者の担保責任) 第二百六十一条  各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

(共有物に関する証書) 第二百六十二条  分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。  共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。  前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。  証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。

(共有の性質を有する入会権) 第二百六十三条  共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。

(準共有) 第二百六十四条  この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

   第四章 地上権

(地上権の内容) 第二百六十五条  地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。

(地代) 第二百六十六条  第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。  地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

(相隣関係の規定の準用) 第二百六十七条  前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。

(地上権の存続期間) 第二百六十八条  設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない。  地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。

(工作物等の収去等) 第二百六十九条  地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。  前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

(地下又は空間を目的とする地上権) 第二百六十九条の二  地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。  前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。

   第五章 永小作権

(永小作権の内容) 第二百七十条  永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。

(永小作人による土地の変更の制限) 第二百七十一条  永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない。

(永小作権の譲渡又は土地の賃貸) 第二百七十二条  永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。

(賃貸借に関する規定の準用) 第二百七十三条  永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

(小作料の減免) 第二百七十四条  永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。

(永小作権の放棄) 第二百七十五条  永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。

(永小作権の消滅請求) 第二百七十六条  永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。

(永小作権に関する慣習) 第二百七十七条  第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

(永小作権の存続期間) 第二百七十八条  永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。  永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。  設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、三十年とする。

(工作物等の収去等) 第二百七十九条  第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。

   第六章 地役権

(地役権の内容) 第二百八十条  地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

(地役権の付従性) 第二百八十一条  地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。  地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。

(地役権の不可分性) 第二百八十二条  土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。  土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。

(地役権の時効取得) 第二百八十三条  地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

第二百八十四条  土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。  共有者に対する時効の中断は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。  地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の停止の原因があっても、時効は、各共有者のために進行する。

(用水地役権) 第二百八十五条  用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。  同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。

(承役地の所有者の工作物の設置義務等) 第二百八十六条  設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。

第二百八十七条  承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。

(承役地の所有者の工作物の使用) 第二百八十八条  承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。  前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。

(承役地の時効取得による地役権の消滅) 第二百八十九条  承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。

第二百九十条  前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。

(地役権の消滅時効) 第二百九十一条  第百六十七条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。

第二百九十二条  要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の中断又は停止があるときは、その中断又は停止は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。

第二百九十三条  地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。

(共有の性質を有しない入会権) 第二百九十四条  共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。

   第七章 留置権

(留置権の内容) 第二百九十五条  他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。  前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

(留置権の不可分性) 第二百九十六条  留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

(留置権者による果実の収取) 第二百九十七条  留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。  前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。

(留置権者による留置物の保管等) 第二百九十八条  留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。  留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。  留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

(留置権者による費用の償還請求) 第二百九十九条  留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。  留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(留置権の行使と債権の消滅時効) 第三百条  留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

(担保の供与による留置権の消滅) 第三百一条  債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。

(占有の喪失による留置権の消滅) 第三百二条  留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。

   第八章 先取特権

    第一節 総則

(先取特権の内容) 第三百三条  先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

(物上代位) 第三百四条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

(先取特権の不可分性) 第三百五条  第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。

    第二節 先取特権の種類

     第一款 一般の先取特権

(一般の先取特権) 第三百六条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。  共益の費用  雇用関係  葬式の費用  日用品の供給

(共益費用の先取特権) 第三百七条  共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。  前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。

(雇用関係の先取特権) 第三百八条  雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。

(葬式費用の先取特権) 第三百九条  葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。  前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。

(日用品供給の先取特権) 第三百十条  日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。

     第二款 動産の先取特権

(動産の先取特権) 第三百十一条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。  不動産の賃貸借  旅館の宿泊  旅客又は荷物の運輸  動産の保存  動産の売買  種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給  農業の労務  工業の労務

(不動産賃貸の先取特権) 第三百十二条  不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。

(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲) 第三百十三条  土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。  建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。

第三百十四条  賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。

(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲) 第三百十五条  賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。

第三百十六条  賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。

(旅館宿泊の先取特権) 第三百十七条  旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。

(運輸の先取特権) 第三百十八条  運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。

(即時取得の規定の準用) 第三百十九条  第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。

(動産保存の先取特権) 第三百二十条  動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。

(動産売買の先取特権) 第三百二十一条  動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

(種苗又は肥料の供給の先取特権) 第三百二十二条  種苗又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。

(農業労務の先取特権) 第三百二十三条  農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。

(工業労務の先取特権) 第三百二十四条  工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。

     第三款 不動産の先取特権

(不動産の先取特権) 第三百二十五条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。  不動産の保存  不動産の工事  不動産の売買

(不動産保存の先取特権) 第三百二十六条  不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。

(不動産工事の先取特権) 第三百二十七条  不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。  前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

(不動産売買の先取特権) 第三百二十八条  不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。

    第三節 先取特権の順位

(一般の先取特権の順位) 第三百二十九条  一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。  一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。

(動産の先取特権の順位) 第三百三十条  同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。  不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権  動産の保存の先取特権  動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権  前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。  果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。

(不動産の先取特権の順位) 第三百三十一条  同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。  同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。

(同一順位の先取特権) 第三百三十二条  同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

    第四節 先取特権の効力

(先取特権と第三取得者) 第三百三十三条  先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。

(先取特権と動産質権との競合) 第三百三十四条  先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。

(一般の先取特権の効力) 第三百三十五条  一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。  一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。  一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。  前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。

(一般の先取特権の対抗力) 第三百三十六条  一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。

(不動産保存の先取特権の登記) 第三百三十七条  不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。

(不動産工事の先取特権の登記) 第三百三十八条  不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。  工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。

(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権) 第三百三十九条  前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。

(不動産売買の先取特権の登記) 第三百四十条  不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。

(抵当権に関する規定の準用) 第三百四十一条  先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。

   第九章 質権

    第一節 総則

(質権の内容) 第三百四十二条  質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

(質権の目的) 第三百四十三条  質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。

(質権の設定) 第三百四十四条  質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

(質権設定者による代理占有の禁止) 第三百四十五条  質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

(質権の被担保債権の範囲) 第三百四十六条  質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

(質物の留置) 第三百四十七条  質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。

(転質) 第三百四十八条  質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。

(契約による質物の処分の禁止) 第三百四十九条  質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。

(留置権及び先取特権の規定の準用) 第三百五十条  第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。

(物上保証人の求償権) 第三百五十一条  他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。

    第二節 動産質

(動産質の対抗要件) 第三百五十二条  動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。

(質物の占有の回復) 第三百五十三条  動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

(動産質権の実行) 第三百五十四条  動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。

(動産質権の順位) 第三百五十五条  同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。

    第三節 不動産質

(不動産質権者による使用及び収益) 第三百五十六条  不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。

(不動産質権者による管理の費用等の負担) 第三百五十七条  不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。

(不動産質権者による利息の請求の禁止) 第三百五十八条  不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。

(設定行為に別段の定めがある場合等) 第三百五十九条  前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百八十条第二号 に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。

(不動産質権の存続期間) 第三百六十条  不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。  不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。

(抵当権の規定の準用) 第三百六十一条  不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。

    第四節 権利質

(権利質の目的等) 第三百六十二条  質権は、財産権をその目的とすることができる。  前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。

(債権質の設定) 第三百六十三条  債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。

(指名債権を目的とする質権の対抗要件) 第三百六十四条  指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。  前項の規定は、株式については、適用しない。

(記名社債を目的とする質権の対抗要件) 第三百六十五条  記名社債を質権の目的としたときは、社債の譲渡に関する規定に従い会社の帳簿に質権の設定を記入しなければ、これをもって会社その他の第三者に対抗することができない。

(指図債権を目的とする質権の対抗要件) 第三百六十六条  指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

(質権者による債権の取立て等) 第三百六十七条  質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。  債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。  前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。  債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

第三百六十八条  削除

   第十章 抵当権

    第一節 総則

(抵当権の内容) 第三百六十九条  抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。  地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

(抵当権の効力の及ぶ範囲) 第三百七十条  抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

第三百七十一条  抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

(留置権等の規定の準用) 第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。

    第二節 抵当権の効力

(抵当権の順位) 第三百七十三条  同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

(抵当権の順位の変更) 第三百七十四条  抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。  前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。

(抵当権の被担保債権の範囲) 第三百七十五条  抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

(抵当権の処分) 第三百七十六条  抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。  前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

(抵当権の処分の対抗要件) 第三百七十七条  前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。  主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。

(代価弁済) 第三百七十八条  抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

(抵当権消滅請求) 第三百七十九条  抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

第三百八十条  主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

第三百八十一条  抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

(抵当権消滅請求の時期) 第三百八十二条  抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

(抵当権消滅請求の手続) 第三百八十三条  抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。  取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面  抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)  債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

(債権者のみなし承諾) 第三百八十四条  次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。  その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。  その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。  第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。  第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条 において準用する同法第六十三条第三項 若しくは第六十八条の三第三項 の規定又は同法第百八十三条第一項第五号 の謄本が提出された場合における同条第二項 の規定による決定を除く。)が確定したとき。

(競売の申立ての通知) 第三百八十五条  第三百八十三条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第一号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。

(抵当権消滅請求の効果) 第三百八十六条  登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力) 第三百八十七条  登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。  抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

(法定地上権) 第三百八十八条  土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

(抵当地の上の建物の競売) 第三百八十九条  抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。  前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

(抵当不動産の第三取得者による買受け) 第三百九十条  抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。

(抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求) 第三百九十一条  抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。

(共同抵当における代価の配当) 第三百九十二条  債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。  債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

(共同抵当における代位の付記登記) 第三百九十三条  前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

(抵当不動産以外の財産からの弁済) 第三百九十四条  抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。  前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

(抵当建物使用者の引渡しの猶予) 第三百九十五条  抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。  競売手続の開始前から使用又は収益をする者  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者  前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

    第三節 抵当権の消滅

(抵当権の消滅時効) 第三百九十六条  抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅) 第三百九十七条  債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

(抵当権の目的である地上権等の放棄) 第三百九十八条  地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

    第四節 根抵当

(根抵当権) 第三百九十八条の二  抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。  前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。  特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

(根抵当権の被担保債権の範囲) 第三百九十八条の三  根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。  債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。  債務者の支払の停止  債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立て  抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え

(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更) 第三百九十八条の四  元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。  前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。  第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

(根抵当権の極度額の変更) 第三百九十八条の五  根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

(根抵当権の元本確定期日の定め) 第三百九十八条の六  根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。  第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。  第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。  第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。

(根抵当権の被担保債権の譲渡等) 第三百九十八条の七  元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。  元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。  元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。

(根抵当権者又は債務者の相続) 第三百九十八条の八  元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。  元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。  第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。  第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。

(根抵当権者又は債務者の合併) 第三百九十八条の九  元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。  元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。  前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。  前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。  第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。

(根抵当権者又は債務者の会社分割) 第三百九十八条の十  元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。  元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。  前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。

(根抵当権の処分) 第三百九十八条の十一  元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。  第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。

(根抵当権の譲渡) 第三百九十八条の十二  元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。  根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。  前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

(根抵当権の一部譲渡) 第三百九十八条の十三  元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

(根抵当権の共有) 第三百九十八条の十四  根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。  根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。

(抵当権の順位の譲渡又は放棄と根抵当権の譲渡又は一部譲渡) 第三百九十八条の十五  抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける。

(共同根抵当) 第三百九十八条の十六  第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

(共同根抵当の変更等) 第三百九十八条の十七  前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。  前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。

(累積根抵当) 第三百九十八条の十八  数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。

(根抵当権の元本の確定請求) 第三百九十八条の十九  根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。  根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。  前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

(根抵当権の元本の確定事由) 第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

(根抵当権の極度額の減額請求) 第三百九十八条の二十一  元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。  第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。

(根抵当権の消滅請求) 第三百九十八条の二十二  元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。  第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。  第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。   第三編 債権

   第一章 総則

    第一節 債権の目的

(債権の目的) 第三百九十九条  債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

(特定物の引渡しの場合の注意義務) 第四百条  債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

(種類債権) 第四百一条  債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。  前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

(金銭債権) 第四百二条  債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。  債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。  前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。

第四百三条  外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。

(法定利率) 第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

(利息の元本への組入れ) 第四百五条  利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

(選択債権における選択権の帰属) 第四百六条  債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。

(選択権の行使) 第四百七条  前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。  前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。

(選択権の移転) 第四百八条  債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。

(第三者の選択権) 第四百九条  第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。  前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。

(不能による選択債権の特定) 第四百十条  債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。  選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。

(選択の効力) 第四百十一条  選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

    第二節 債権の効力

     第一款 債務不履行の責任等

(履行期と履行遅滞) 第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。  債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

(受領遅滞) 第四百十三条  債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。

(履行の強制) 第四百十四条  債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。  債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。  不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。  前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

(債務不履行による損害賠償) 第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(損害賠償の範囲) 第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

(損害賠償の方法) 第四百十七条  損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

(過失相殺) 第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

(金銭債務の特則) 第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

(賠償額の予定) 第四百二十条  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。  違約金は、賠償額の予定と推定する。

第四百二十一条  前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。

(損害賠償による代位) 第四百二十二条  債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。

     第二款 債権者代位権及び詐害行為取消権

(債権者代位権) 第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

(詐害行為取消権) 第四百二十四条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

(詐害行為の取消しの効果) 第四百二十五条  前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。

(詐害行為取消権の期間の制限) 第四百二十六条  第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

    第三節 多数当事者の債権及び債務

     第一款 総則

(分割債権及び分割債務) 第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

     第二款 不可分債権及び不可分債務

(不可分債権) 第四百二十八条  債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

(不可分債権者の一人について生じた事由等の効力) 第四百二十九条  不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。  前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。

(不可分債務) 第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。

(可分債権又は可分債務への変更) 第四百三十一条  不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。

     第三款 連帯債務

(履行の請求) 第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

(連帯債務者の一人についての法律行為の無効等) 第四百三十三条  連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

(連帯債務者の一人に対する履行の請求) 第四百三十四条  連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

(連帯債務者の一人との間の更改) 第四百三十五条  連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。

(連帯債務者の一人による相殺等) 第四百三十六条  連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。  前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

(連帯債務者の一人に対する免除) 第四百三十七条  連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。

(連帯債務者の一人との間の混同) 第四百三十八条  連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(連帯債務者の一人についての時効の完成) 第四百三十九条  連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。

(相対的効力の原則) 第四百四十条  第四百三十四条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。

(連帯債務者についての破産手続の開始) 第四百四十一条  連帯債務者の全員又はそのうちの数人が破産手続開始の決定を受けたときは、債権者は、その債権の全額について各破産財団の配当に加入することができる。

(連帯債務者間の求償権) 第四百四十二条  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。  前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。

(通知を怠った連帯債務者の求償の制限) 第四百四十三条  連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。  連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは、その免責を得た連帯債務者は、自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。

(償還をする資力のない者の負担部分の分担) 第四百四十四条  連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

(連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の分担) 第四百四十五条  連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。

     第四款 保証債務

      第一目 総則

(保証人の責任等) 第四百四十六条  保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。  保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。  保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(保証債務の範囲) 第四百四十七条  保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。  保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

(保証人の負担が主たる債務より重い場合) 第四百四十八条  保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

(取り消すことができる債務の保証) 第四百四十九条  行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。

(保証人の要件) 第四百五十条  債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。  行為能力者であること。  弁済をする資力を有すること。  保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。  前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

(他の担保の供与) 第四百五十一条  債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

(催告の抗弁) 第四百五十二条  債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁) 第四百五十三条  債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

(連帯保証の場合の特則) 第四百五十四条  保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果) 第四百五十五条  第四百五十二条又は第四百五十三条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

(数人の保証人がある場合) 第四百五十六条  数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

(主たる債務者について生じた事由の効力) 第四百五十七条  主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。  保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

(連帯保証人について生じた事由の効力) 第四百五十八条  第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。

(委託を受けた保証人の求償権) 第四百五十九条  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。  第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

(委託を受けた保証人の事前の求償権) 第四百六十条  保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。  主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。  債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。  債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。

(主たる債務者が保証人に対して償還をする場合) 第四百六十一条  前二条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。  前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。

(委託を受けない保証人の求償権) 第四百六十二条  主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。  主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

(通知を怠った保証人の求償の制限) 第四百六十三条  第四百四十三条の規定は、保証人について準用する。  保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第四百四十三条の規定は、主たる債務者についても準用する。

(連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権) 第四百六十四条  連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。

(共同保証人間の求償権) 第四百六十五条  第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。  第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

      第二目 貸金等根保証契約

(貸金等根保証契約の保証人の責任等) 第四百六十五条の二  一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。  貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

(貸金等根保証契約の元本確定期日) 第四百六十五条の三  貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。  貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。  貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。

(貸金等根保証契約の元本の確定事由) 第四百六十五条の四  次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。  債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。  主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。  主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権) 第四百六十五条の五  保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないとき、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。

    第四節 債権の譲渡

(債権の譲渡性) 第四百六十六条  債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。  前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

(指名債権の譲渡の対抗要件) 第四百六十七条  指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。  前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

(指名債権の譲渡における債務者の抗弁) 第四百六十八条  債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。  譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

(指図債権の譲渡の対抗要件) 第四百六十九条  指図債権の譲渡は、その証書に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

(指図債権の債務者の調査の権利等) 第四百七十条  指図債権の債務者は、その証書の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。ただし、債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。

(記名式所持人払債権の債務者の調査の権利等) 第四百七十一条  前条の規定は、債権に関する証書に債権者を指名する記載がされているが、その証書の所持人に弁済をすべき旨が付記されている場合について準用する。

(指図債権の譲渡における債務者の抗弁の制限) 第四百七十二条  指図債権の債務者は、その証書に記載した事項及びその証書の性質から当然に生ずる結果を除き、その指図債権の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。

(無記名債権の譲渡における債務者の抗弁の制限) 第四百七十三条  前条の規定は、無記名債権について準用する。

    第五節 債権の消滅

     第一款 弁済

      第一目 総則

(第三者の弁済) 第四百七十四条  債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。  利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。

(弁済として引き渡した物の取戻し) 第四百七十五条  弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。

第四百七十六条  譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。

(弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力等) 第四百七十七条  前二条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。

(債権の準占有者に対する弁済) 第四百七十八条  債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

(受領する権限のない者に対する弁済) 第四百七十九条  前条の場合を除き、弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。

(受取証書の持参人に対する弁済) 第四百八十条  受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済) 第四百八十一条  支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。  前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。

(代物弁済) 第四百八十二条  債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

(特定物の現状による引渡し) 第四百八十三条  債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。

(弁済の場所) 第四百八十四条  弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

(弁済の費用) 第四百八十五条  弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

(受取証書の交付請求) 第四百八十六条  弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。

(債権証書の返還請求) 第四百八十七条  債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。

(弁済の充当の指定) 第四百八十八条  債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。  弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。  前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。

(法定充当) 第四百八十九条  弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。  債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。  すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。  債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。  前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。

(数個の給付をすべき場合の充当) 第四百九十条  一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前二条の規定を準用する。

(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当) 第四百九十一条  債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。  第四百八十九条の規定は、前項の場合について準用する。

(弁済の提供の効果) 第四百九十二条  債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。

(弁済の提供の方法) 第四百九十三条  弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

      第二目 弁済の目的物の供託

(供託) 第四百九十四条  債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

(供託の方法) 第四百九十五条  前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。  供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。  前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。

(供託物の取戻し) 第四百九十六条  債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。  前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。

(供託に適しない物等) 第四百九十七条  弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする。

(供託物の受領の要件) 第四百九十八条  債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。

      第三目 弁済による代位

(任意代位) 第四百九十九条  債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。  第四百六十七条の規定は、前項の場合について準用する。

(法定代位) 第五百条  弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。

(弁済による代位の効果) 第五百一条  前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。  保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。  第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。  第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。  物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。  保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。  前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。

(一部弁済による代位) 第五百二条  債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。  前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。

(債権者による債権証書の交付等) 第五百三条  代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。  債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。

(債権者による担保の喪失等) 第五百四条  第五百条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。

     第二款 相殺

(相殺の要件等) 第五百五条  二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。  前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

(相殺の方法及び効力) 第五百六条  相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。  前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

(履行地の異なる債務の相殺) 第五百七条  相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。

(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺) 第五百八条  時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止) 第五百九条  債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止) 第五百十条  債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。

(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止) 第五百十一条  支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。

(相殺の充当) 第五百十二条  第四百八十八条から第四百九十一条までの規定は、相殺について準用する。

     第三款 更改

(更改) 第五百十三条  当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。  条件付債務を無条件債務としたとき、無条件債務に条件を付したとき、又は債務の条件を変更したときは、いずれも債務の要素を変更したものとみなす。

(債務者の交替による更改) 第五百十四条  債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反するときは、この限りでない。

(債権者の交替による更改) 第五百十五条  債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。

第五百十六条  第四百六十八条第一項の規定は、債権者の交替による更改について準用する。

(更改前の債務が消滅しない場合) 第五百十七条  更改によって生じた債務が、不法な原因のため又は当事者の知らない事由によって成立せず又は取り消されたときは、更改前の債務は、消滅しない。

(更改後の債務への担保の移転) 第五百十八条  更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

     第四款 免除

第五百十九条  債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。

     第五款 混同

第五百二十条  債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

   第二章 契約

    第一節 総則

     第一款 契約の成立

(承諾の期間の定めのある申込み) 第五百二十一条  承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。  申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

(承諾の通知の延着) 第五百二十二条  前条第一項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。  申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは、承諾の通知は、前条第一項の期間内に到達したものとみなす。

(遅延した承諾の効力) 第五百二十三条  申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

(承諾の期間の定めのない申込み) 第五百二十四条  承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。

(申込者の死亡又は行為能力の喪失) 第五百二十五条  第九十七条第二項の規定は、申込者が反対の意思を表示した場合又はその相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用しない。

(隔地者間の契約の成立時期) 第五百二十六条  隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。  申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

(申込みの撤回の通知の延着) 第五百二十七条  申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。  承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。

(申込みに変更を加えた承諾) 第五百二十八条  承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

(懸賞広告) 第五百二十九条  ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この款において「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。

(懸賞広告の撤回) 第五百三十条  前条の場合において、懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。  前項本文に規定する方法によって撤回をすることができない場合には、他の方法によって撤回をすることができる。この場合において、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。  懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、その撤回をする権利を放棄したものと推定する。

(懸賞広告の報酬を受ける権利) 第五百三十一条  広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。  数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。  前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。

(優等懸賞広告) 第五百三十二条  広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。  前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。  応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。  前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。

     第二款 契約の効力

(同時履行の抗弁) 第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

(債権者の危険負担) 第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。

(停止条件付双務契約における危険負担) 第五百三十五条  前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

(債務者の危険負担等) 第五百三十六条  前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

(第三者のためにする契約) 第五百三十七条  契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。  前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

(第三者の権利の確定) 第五百三十八条  前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。

(債務者の抗弁) 第五百三十九条  債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。

     第三款 契約の解除

(解除権の行使) 第五百四十条  契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。  前項の意思表示は、撤回することができない。

(履行遅滞等による解除権) 第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

(定期行為の履行遅滞による解除権) 第五百四十二条  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。

(履行不能による解除権) 第五百四十三条  履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

(解除権の不可分性) 第五百四十四条  当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。  前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

(解除の効果) 第五百四十五条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

(契約の解除と同時履行) 第五百四十六条  第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。

(催告による解除権の消滅) 第五百四十七条  解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。

(解除権者の行為等による解除権の消滅) 第五百四十八条  解除権を有する者が自己の行為若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。  契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過失によらないで滅失し、又は損傷したときは、解除権は、消滅しない。

    第二節 贈与

(贈与) 第五百四十九条  贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

(書面によらない贈与の撤回) 第五百五十条  書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

(贈与者の担保責任) 第五百五十一条  贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。  負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

(定期贈与) 第五百五十二条  定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。

(負担付贈与) 第五百五十三条  負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

(死因贈与) 第五百五十四条  贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

    第三節 売買

民法536条

 

17

(親族の範囲) 第725条 次に掲げる者は、親族とする。 1.6親等内の血族 2.配偶者 3.3親等内の姻族
(親等の計算) 第726条 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
  傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下るまでの世代数による。
(縁組による親族関係の発生) 第727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
(離婚等による姻族関係の終了) 第728条 姻族関係は、離婚によって終了する。
 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
(離縁による親族関係の終了) 第729条 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
(親族間の扶け合い) 第730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

婚姻の成立
婚姻の要件(第731条〜第741条)婚姻の無効及び取消し(第742条〜第749条)
婚姻の効力(第750条〜第754条)
夫婦財産制(第755条〜第762条)
離 婚(第763条〜第771条)

 

第1款 婚姻の要件

(婚姻適齢) 第731条 男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。
(重婚の禁止) 第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
(再婚禁止期間) 第733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
 女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
(近親者間の婚姻の禁止) 第734条 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(直系姻族間の婚姻の禁止) 第735条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
(養親子等の間の婚姻の禁止) 第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
(未成年者の婚姻についての父母の同意) 第737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
(成年被後見人の婚姻) 第738条 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
(婚姻の届出) 第739条 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。(婚姻の届出の受理) 第740条 婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
(外国に在る日本人間の婚姻の方式) 第741条 外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前2条の規定を準用する。

第2款 婚姻の無効及び取消し

  (婚姻の無効) 第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。 1.人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
2.当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
(婚姻の取消し) 第743条 婚姻は、次条から第747条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
(不適法な婚姻の取消し) 第744条 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。
(不適齢者の婚姻の取消し) 第745条 第731条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。
 不適齢者は、適齢に達した後、なお3箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し) 第746条 第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から6箇月を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消しを請求することができない。
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し) 第747条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
(婚姻の取消しの効力) 第748条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。  婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
(離婚の規定の準用) 第749条 第728条第1項、第766条から第769条まで、第790条第1項ただし書並びに第819条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。

第2節 婚姻の効力

(夫婦の氏) 第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
(生存配偶者の復氏等) 第751条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
 第769条の規定は、前項及び第728条第2項の場合について準用する。
(同居、協力及び扶助の義務) 第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(婚姻による成年擬制)  第753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
(夫婦間の契約の取消権) 第754条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

第3節 夫婦財産制

第1款 総 則

(夫婦の財産関係) 第755条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
(夫婦財産契約の対抗要件) 第756条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第757条 削除 (夫婦の財産関係の変更の制限等) 第758条 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。  夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
 共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。
(財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件) 第759条 前条の規定又は第755条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第2款 法定財産制

(婚姻費用の分担) 第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
(日常の家事に関する債務の連帯責任) 第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(夫婦間における財産の帰属) 第762条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

第4節 離 婚

第1款 協議上の離婚

(協議上の離婚) 第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
(婚姻の規定の準用) 第764条 第738条第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。 (離婚の届出の受理) 第765条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等) 第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。  前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。(離婚による復氏等) 第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。  前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
(財産分与) 第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。  前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。  前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
(離婚による復氏の際の権利の承継) 第769条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。

第2款 裁判上の離婚

(裁判上の離婚) 第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 1.配偶者に不貞な行為があったとき。 2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。 3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。 4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
(協議上の離婚の規定の準用) 第771条 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

第3章 親 子

第1節 実 子

(嫡出の推定) 第772条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
(父を定めることを目的とする訴え) 第773条 第733条第1項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
(嫡出の否認) 第774条 第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
(嫡出否認の訴え) 第775条 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
(嫡出の承認) 第776条 夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。
(嫡出否認の訴えの出訴期間) 第777条 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない。
第778条 夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。
認知) 第779条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
(認知能力) 第780条 認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。

(認知の方式) 第781条 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
 認知は、遺言によっても、することができる。
成年の子の認知) 第782条 成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。
(胎児又は死亡した子の認知) 第783条 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
 父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。
(認知の効力) 第784条 認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
(認知に対する反対の事実の主張) 第786条 子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。
(認知の訴え) 第787条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。
(認知後の子の監護に関する事項の定め等) 第788条 第766条の規定は、父が認知する場合について準用する。
(準正) 第789条 父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
 前2項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。
(子の氏) 第790条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
 嫡出でない子は、母の氏を称する。
(子の氏の変更) 第791条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前2項の行為をすることができる。
 前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

第1款 縁組の要件

(養親となる者の年齢) 第792条 成年に達した者は、養子をすることができる。
(尊属又は年長者を養子とすることの禁止) 第793条 尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。
(後見人が被後見人を養子とする縁組) 第794条 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。
(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組) 第795条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
(配偶者のある者の縁組) 第796条 配偶者のある者か縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
(15歳未満の者を養子とする縁組) 第797条 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
(未成年者を養子とする縁組) 第798条 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
(婚姻の規定の準用) 第799条 第738条及び第739条の規定は、縁組について準用する。
(縁組の届出の受理) 第800条 縁組の届出は、その縁組が第792条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
(外国に在る日本人間の縁組の方式) 第801条 外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、第799条において準用する第739条の規定及び前条の規定を準用する。

第2款 縁組の無効及び取消し

 
(縁組の無効)
第802条
 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。 1.人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。 2.当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条において準用する第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
(縁組の取消し)
第803条
 縁組は、次条から第808条までの規定によらなければ、取り消すことができない。 (養親が未成年者である場合の縁組の取消し)
第804条
 第792条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

(養子が尊属又は年長者である場合の縁組の取消し)
第805条 第793条の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。

(後見人と被後見人との間の無許可縁組の取消し)
第806条
 第794条の規定に違反した縁組は、養子又はその実方の親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、管理の計算が終わった後、養子が追認をし、又は6箇月を経過したときは、この限りでない。

 前項ただし書の追認は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した後にしなければ、その効力を生じない。
 養子が、成年に達せず、又は行為能力を回復しない間に、管理の計算が終わった場合には、第1項ただし書の期間は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した時から起算する。
(配偶者の同意のない縁組等の取消し)
第806条の2 第796条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を知った後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
 詐欺又は強迫によって第796条の同意をした者は、その縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
(子の監護をすべき者の同意のない縁組等の取消し)
第806条の3
 第797条第2項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が15歳に達した後6箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
 前条第2項の規定は、詐欺又は強迫によって第797条第2項の同意をした者について準用する。
(養子が未成年者である場合の無許可縁組の取消し)
第807条 第798条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養子が、成年に達した後6箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。

(婚姻の取消し等の規定の準用)
第808条
 第747条及び第748条の規定は、縁組について準用する。この場合において、第747条第2項中「3箇月」とあるのは、「6箇月」と読み替えるものとする。
 第769条及び第816条の規定は、縁組の取消しについて準用する。

第3款 縁組の効力

(嫡出子の身分の取得) 第809条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
(養子の氏) 第810条 養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。

第4款 離 縁

(協議上の離縁等) 第811条 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
 養子が15歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。  前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
 第2項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
(夫婦である養親と未成年者との離縁)
第811条の2 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が供にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
(婚姻の規定の準用)
第812条 
第738条第739条及び第747条の規定は、協議上の離縁について準用する。この場合において、同条第2項中「3箇月」とあるのは、「6箇月」と読み替えるものとする。
(離縁の届出の受理)
第813条 離縁の届出は、その離縁が前条において準用する第739条第2項の規定並びに第811条及び第811条の2の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
 離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離縁は、そのためにその効力を妨げられない。
(裁判上の離縁)
第814条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。 1.他の一方から悪意て遺棄されたとき。 2.他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。 3.その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
 第770条第2項の規定は、前項第1号及び第2号に掲げる場合について準用する。
(養子が15歳未満である場合の離縁の訴えの当事者)
第815条 養子が15歳に達しない間は、第811条の規定により養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴えを提起することができる。
(離縁による復氏等)
第816条 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
 縁組の日から7年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
(離縁による復氏の際の権利の承継)
第817条 第769条の規定は、離縁について準用する。

第5款 特別養子

(特別養子縁組の成立)
第817条の2 家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
 前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。
(養親の夫婦共同縁組)
第817条の3 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
(養親となる者の年齢)
第817条の4
 25歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても、その者が20歳に達しているときは、この限りでない。
(養子となる者の年齢) 第817条の5 第817条の2に規定する請求の時に6歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が8歳未満であって6歳に達する前から引き続き養観となる者に監護されている場合は、この限りでない。
(父母の同意) 第817条の6 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
(子の利益のための特別の必要性) 第817条の7 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
(監護の状況) 第817条の8 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を6箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
 前項の期間は、第817条の2に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
(実方との親族関係の終了) 第817条の9 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第817条の3第2項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
(特別養子縁組の離縁) 第817条の10 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。 1.養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。 2.実父母が相当の監護をすることができること。
 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない
(離縁による実方との親族関係の回復) 第817条の11 養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。

第4章 親 権

第1節 総 則

(親権者) 第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
(離婚又は認知の場合の親権者) 第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

第2節 親権の効力

(監護及び教育の権利義務) 第820条 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。(居所の指定) 第821条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
(懲戒) 第822条 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。  子を懲戒場に入れる期間は、6箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。
(職業の許可) 第823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。  親権を行う者は、第6条第2項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。 (財産の管理及び代表) 第824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
(父母の一方が共同の名義でした行為の効力) 第825条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
(利益相反行為) 第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
(財産の管理における注意義務) 第827条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。
(財産の管理の計算)  第828条 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。
第829条 前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。
(第三者が無償で子に与えた財産の管理) 第830条 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
 第27条から第29条までの規定は、前2項の場合について準用する。
(委任の規定の準用) 第831条 第654条及び第655条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。
(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効) 第832条 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から5年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。
(子に代わる親権の行使) 第833条 親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。

第3節 親権の喪失

(親権の喪失の宣告) 第834条 父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。
(管理権の喪失の宣告) 第835条 親権を行う父又は母が、管理が失当であったことによってその子の財産を危うくしたときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その管理権の喪失を宣告することができる。
(親権又は管理権の喪失の宣告の取消し) 第836条 前2条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、前2条の規定による親権又は管理権の喪失の宣告を取り消すことができる。
(親権又は管理権の辞任及び回復) 第837条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

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 静岡県富士市 社会保険労務士 川口徹

 

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裁定制度 労働参審制の代案

労働紛争に裁定制度 参審制度検討会 

労働参審制の案の代わりに民事調停と裁判の中間的な参審制度を新設

労使の代表が裁判官と共に労働紛争の解決を図る制度の実現を目指す

新設が提案されている裁定制度は 審理回数を制限するなど裁判に比べて手続きを簡略化してスピードアップを狙う

民事調停よりも実行性の有る紛争解決を目指し 裁定結果には 一定のの法的拘束力を持たせる案が有力で

裁定の結論に不服が有れば 当事者は裁判に移行することも出来る

労働検討会ではすでに労働紛争を扱う民事調停で労使の代表が調停委員に加わる労働調停の導入を合意している

裁定制度の新設とあわせ 解雇や給与未払い等の労働紛争の法的解決を企業の人事制度や労働形態についての現場の声を反映させる仕組みへ改めるように提案することになる 来春の通常国会に提出する予定

 

裁定制度見直し議論

労働裁判制度見直し議論

労働問題をめぐる訴訟の急増  地裁扱い2002年労働関係訴訟は2309件

1992年の2.6倍 労働組合と企業の争いから 最近は企業のリストラや倒産の増加 成果主義の導入などの結果 解雇や賃金未払いといった企業と個人の個別労使紛争の割合が増加している

労働者側  裁判制度への不信 判決のぶれが裁判所不信 民事調停を活用

 

 

 

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静岡県富士市 社会保険労務士 川口徹

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