将棋世界8月号
2003年第74期棋聖戦第2局再考察
谷川解説検証
2003.08.10マシュダ一家

参考
ゴキゲン角換り  逆行上部開拓史
棋聖戦第2局 83桂の幻影 再び光の柱へ
棋譜付きマシュダ一家実況


将棋世界8月号は発売日から二日でどの店も売り切れとなった。8月号ならば7月1日に書店に並ぶはずである。将棋連盟は売れ残りを引き取らない為に書店は岩波文庫と同じように買い取るしかない。だから「売りきれないうちい買いに行こう」とマシュダ一家は警告したはずである。
将棋世界8月号ではマシュダ一家の幻想対談に刺激されて羽生へのインタビューが急遽掲載された。残念ながら対談ではなく羽生の独演会である。マシュダ一家対策への日本将棋連盟の慌てぶりを示す証拠として、まずこのインタビューが何時行なわれたのか故意に記載していない。次に内容。これは読めばわかる。羽生は「もっとわけのわからないことを言えるようにならなければならない」と述べている。将棋に関することで「わけのわからないことを言っている」と思われているのはマシュダ一家のみであるが、我々は一番明解なことを論理的にハッキリ言ってきたつもりである。羽生はそれを完全に理解したいのであろう。我々は棋士の感想戦ほどあてにならないものはないと立証してきた。局後の感想戦というものについて羽生は「お互いに無意識のうちに口で言っていることもあって(それがどの駒なのか)わからないこともある」と告白している。感想戦の鬼と言われている羽生でさえこのようにいい加減だった。「検討している本人も実は何を言っているかわからなくて検討してるんです」と羽生はハッキリ述べているのである。このような感想戦を拝聴して確信をもって書く観戦記者は大もとが腐っていると自覚したら良い。ゴマカし続ける人生ほど虚しいものはない。組織というものは別である。ゴマカし続けないと組織など続くものではない。

では本題。谷川が観戦記を書いた。直筆原稿である。6月24日付けの光速ノート29によれば「観戦記を書くのは何年ぶりの事か」と谷川自身が書いている。我々は谷川が観戦記などすでに書く棋士ではないと思っていた。島は当然とは言え深浦までマシュダ一家にコケにされたのでは御大将が登場するしかないという日本将棋連盟背水の陣であろう。お題は棋聖戦第2局。谷川が我々の挑戦状を受けたということである。一カ月以上遅れてしまったが谷川自身のリクエストに答えここに感想を。


36/37P=レイアウトも構成も7月号とは見違えるほど上出来。
38P=しかし写真そのものはヒドイものが多い。ピンボケの仲良し倶楽部を故意に表現している。これが写真家の皮肉とすれば炬口勝弘は相当なやり手であろう。しかしワイドレンズで康光を駄菓子屋の三角飴にした技量からすると何とも言えない。そのような写真を選択した者に問題があるのであろう。「ナアナアで飲もう」と言う態度が見えすぎている。
では谷川はどうか。谷川は無論妥協しない。依頼されたからにはキッチリ書き上げる。ゴマカしてばかりいる島など比較にならない。序文はプロ棋士としては最高の出来であろう。クリアーで無駄がない。
39P=谷川は22角成「佐藤はガッカリしたのではないか」と書く。丸山流ゴキゲン角換りは当たり前なのに谷川が故意にそのようなことを書くのは、丸山への痛烈な批判である。だから標題そのものが「打開する意志」となっている。意思ではなく「意志」とわざわざ書くのは、冷たい思想ではなく熱い志で将棋を指せと言いたいのである。しかもこの将棋を打開したのは康光だということになっている。我々は将棋界のフニャチン「意志」など信用していない。控え室で笑いながら慶太と局面検討をしている谷川の写真をわざわざ掲載しているのが将棋連盟であった。この写真を見ると「廻り将棋」で遊んでいるように見える。志のかけらもないような和やかな風景をわざわざ演出しているのである。従って谷川は孤軍奮闘で執筆していることになる。我々は熱い思想で迎えよう。


40P=ゴキゲン中飛車の第7手めを谷川はこう記す。
1=78金は軽くさばく将棋。
2=58金右は超急戦。
3=22角成は持久戦か千日手。
「この三択をすべて先手に任せる」と谷川はわざわざ付すが、これは以下の我々の見解と一致する。我々は下記においてゴキゲン中飛車が後手番戦法と呼ばれること自体がおかしいと述べ、それを証明するために第3ドメインまで論項を繰り広げてきた。

ゴキゲン中飛車分析1-10 第三ドメインの欠陥
ゴキゲン中飛車分析5 先手の制御領域ハ No: 1867 [返信][削除]
ハ投稿者:マシュダ一家 ハ03/04/02 Wed 04:07:31
20手めまでは昨年の王位戦第1局の谷川千勝局と同じである。
これ以後谷川への信頼から先手の7手め58金は指されないのではないかとさえ言われた。この7手めが分岐点でありこれで優劣が決定するかどうかという将棋になる。つまりこの将棋の全体像が見えた時に先手に58金を選択する権利があるということになる。後手番戦法であるべきゴキゲン中飛車はその制御領域においては先手の戦法になってしまうのである。


羽生が先週の王位戦第3局で第5手めに25歩ではなく48銀としたのはこのようなワケであった。谷川が書かなかった手をあえて選んだということである。だから棋士が観戦記などを書いてはいけない。
谷川の序盤解説はしかしわざと手抜きしてある。参考になるものはひとつもない。それでよろしいかと思う。
41P=我々が最も問題とした丸山の86歩について谷川はやはり何も書けない。これは問題である。マジメにやっているのか疑う。「控え室は退屈」とわざわざ書いている。有吉の顔を立てたのであろう。だから棋士が観戦記などを書いてはいけない。控え室では康光が32金-42金の「一人千日手」を甘受するしかないと考えていたと谷川は書く。これを我々はイメージ戦略と呼んでいる。何度も書くが羽生が最も得意である。康光がそのようなアホ踊りを丸山に強いられるはずがない。谷川は千日手に至るまでに先手からの地下鉄飛車を康光が91飛で受けるなどと書いているが、これは常識を疑う。そうなるとイメージ戦略どころではなく「タコ踊り」である。そのような本将棋を谷川に指せるかと逆に問いたい。それはマワリ将棋と呼ぶのである。
そこで康光の脅迫52金左となった。
42P=丸山はこの52金を放っておいて「87銀を指したかった」と谷川は書く。そして以下の変化で「手にされる」と。

棋聖戦第2局控え室▲8七銀変化
対局日:2003/06/19(木) 12:47:18
先手:丸山
後手:佐藤
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲2二角成 ▽同 銀 ▲7八銀 ▽3三銀 ▲4八銀 ▽6二玉
▲4六歩 ▽2二飛 ▲4七銀 ▽7二玉 ▲6八玉 ▽6二銀
▲7九玉 ▽7四歩 ▲5八金右 ▽6四歩 ▲6六歩 ▽6三銀
▲3六歩 ▽7三桂 ▲6七金 ▽6二金 ▲8八玉 ▽4四銀
▲5六歩 ▽3三桂 ▲9六歩 ▽9四歩 ▲8六歩 ▽8四歩
▲1六歩 ▽1四歩 ▲7七桂 ▽2一飛 ▲3七桂 ▽4二金
▲2九飛 ▽5二金左 ▲8七銀 ▽3五歩 ▲7八金 ▽4八角
▲2八角 ▽3六歩 ▲同 銀 ▽3八歩
しかし丸山が指したかったのは感想戦では言えない手である。▲8七銀など誰も指さない。指したいが指せないものを並べるのは虚しい。次に谷川が書く変化を並べて見よう。

棋聖戦第2局控え室の十字飛車狙い変化
先手:丸山
後手:佐藤
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲2二角成 ▽同 銀 ▲7八銀 ▽3三銀 ▲4八銀 ▽6二玉
▲4六歩 ▽2二飛 ▲4七銀 ▽7二玉 ▲6八玉 ▽6二銀
▲7九玉 ▽7四歩 ▲5八金右 ▽6四歩 ▲6六歩 ▽6三銀
▲3六歩 ▽7三桂 ▲6七金 ▽6二金 ▲8八玉 ▽4四銀
▲5六歩 ▽3三桂 ▲9六歩 ▽9四歩 ▲8六歩 ▽8四歩
▲1六歩 ▽1四歩 ▲7七桂 ▽2一飛 ▲3七桂 ▽4二金
▲2九飛 ▽5二金左 ▲4五歩 ▽同 桂 ▲同 桂 ▽8一飛
▲2四歩 ▽8五歩 ▲同 桂 ▽同 桂 ▲2三歩成
これはひどい。このノリは深浦以上である。次の変化はどうか。

棋聖戦第2局控え室の32角変化
先手:丸山
後手:佐藤
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲2二角成 ▽同 銀 ▲7八銀 ▽3三銀 ▲4八銀 ▽6二玉
▲4六歩 ▽2二飛 ▲4七銀 ▽7二玉 ▲6八玉 ▽6二銀
▲7九玉 ▽7四歩 ▲5八金右 ▽6四歩 ▲6六歩 ▽6三銀
▲3六歩 ▽7三桂 ▲6七金 ▽6二金 ▲8八玉 ▽4四銀
▲5六歩 ▽3三桂 ▲9六歩 ▽9四歩 ▲8六歩 ▽8四歩
▲1六歩 ▽1四歩 ▲7七桂 ▽2一飛 ▲3七桂 ▽4二金
▲2九飛 ▽5二金左 ▲4五歩 ▽同 桂 ▲同 桂 ▽同 銀
▲3七桂 ▽4四歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲4五桂 ▽同 歩
▲3二角 ▽8一飛 ▲2四飛 ▽9五歩 ▲同 歩 ▽9八歩
▲同 香 ▽8五歩
これはひどいというより終わっている。我々が実況で真っ先に指摘した13角打があるためである。因みに控え室実況では同時間に32角変化があるなどと言っている。

49手め37桂打! 投稿者:マシュダ一家  投稿日: 6月19日(木)17時04分03秒
すでに桂馬交換で千日手は回避された。康光相手だとこうなってしまうのであった。先手はすぐに32角と打てば角金交換の駒損でも飛車を成りこんで勝負できそうだが後手は手順に香車を守りつつ飛車を8筋に回り攻防の角を13に打てる。一方8筋の交換が4筋特異点における桂馬交換で逆行相転化し後手に有利となっている


我々の上記実況がすべて正解であったので谷川も反省し将棋世界では「13角の筋があるので先手玉は意外に狭い」とキチンとオトシマエをつけている。ここまでマシュダ一家の全勝である。

さて早速メインディッシュとする。当日の控え室は先手の丸山がずっと優勢で逆転された将棋と断定している。我々は同時間にずっと康光が良かったと断言している。

後手優勢 投稿者:マシュダ一家  投稿日: 6月19日(木)17時11分58秒
すでに後手優勢の結論。8筋が受からない為に玉は右辺へ脱出する以外にない。

一方産経Webに掲載された形勢判断は同じ局面、或いはさらに進んだ局面を見ながら17:44に「大勢では丸山棋王リード」と断言している。
http://www.sankei.co.jp/edit/shogi/kisei/074chukei-02.html
しかも18:08には谷川有吉は康光が逆転したと控え室で言っている。それに対して我々は「ここまで世間を愚弄するのではプロ棋士の解説など害悪である。対局者がすべて棋譜で語っていることを素直に読めばよいのであって野次馬のジョークなどどうでもよい」とまで書かなくてはならなかった。神崎日記があとで丸山はジョークがわかるなどとフォローしても遅いのである。谷川ブランドを信用した人々はあの第2局は康光が劣勢から逆転した将棋だと思い込んでいるからである。様々な電子掲示板を読んでごらんなさい。あなた方のせいで誰もがそのように信じ込み、我々のように丸山の打開後は終始康光が優勢などとは誰一人として思っていない。谷川にはそのオトシマエをつける義務があった。だから珍しく観戦記を引き受けたのであろう。

43P=いよいよ康光も丸山も参戦してのクライマックスとなる。感想戦を経て
下記が控え室の先手優利説を裏づけるエッセンスとなった。

棋聖戦第2局感想戦で有力視された33角変化
先手:丸山
後手:佐藤

▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽5四歩 ▲2五歩 ▽5二飛
▲2二角成 ▽同 銀 ▲7八銀 ▽3三銀 ▲4八銀 ▽6二玉
▲4六歩 ▽2二飛 ▲4七銀 ▽7二玉 ▲6八玉 ▽6二銀
▲7九玉 ▽7四歩 ▲5八金右 ▽6四歩 ▲6六歩 ▽6三銀
▲3六歩 ▽7三桂 ▲6七金 ▽6二金 ▲8八玉 ▽4四銀
▲5六歩 ▽3三桂 ▲9六歩 ▽9四歩 ▲8六歩 ▽8四歩
▲1六歩 ▽1四歩 ▲7七桂 ▽2一飛 ▲3七桂 ▽4二金
▲2九飛 ▽5二金左 ▲4五歩 ▽同 桂 ▲同 桂 ▽同 銀
▲3七桂 ▽4四歩 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲3三角 ▽3二桂
▲5五歩 ▽4三金 ▲4五桂 ▽同 歩 ▲2四角成 ▽同 飛
▲同 飛 ▽同 桂 ▲4一飛 ▽5二銀 ▲9一飛成 ▽4九飛
▲4四歩 ▽同 金 ▲9二龍 ▽6三玉 ▲6五歩

皮肉なことにこの変化では感想戦で誰もが驚いたらしい▽3二桂は我々がリアルタイムでも述べた桂打である。谷川紹介では▽3二桂に感嘆符まで付いている。しかも▲9一飛成までマシュダ一家サイトに既出。そこで谷川が連盟棋士の名誉を挽回するために付した感想戦変化は最後の▲4四歩と▲6五歩のコンビネーションである。康光が苦戦を認めた手順と谷川はわざわざ述べる。本当に苦戦であろうか?この変化では確かに苦戦である。谷川にはそれがわかっているから康光の言葉しか掲載できなかったのであろう。我々は▽4九飛以後がおかしいとハッキリ言おう。ここからの入玉戦術は秘伝中の秘伝となる。我々が点数合戦を考える際の中枢となるからである。

なぜか虚しい。谷川自身は局後にこれは丸山優勢と即断したのはおかしいと考えたはずである。だからこの観戦記では「大勢では丸山棋王リード」などと言える局面解説は上記のみであった。しかも上記変化では▽4九飛以後がおかしい。これはファンサービスの変化にしか読めない。そもそも感想戦では攻めあいが優先であり、徹底的な入玉手順などまずやらない。しかも谷川の読みはそこには介入していないのである。

これにてマシュダ一家の完勝となる。
我々は別に勝ち誇りたいわけではない。康光の命の52金に対して余りにいい加減なことを世間に広めるなと警告したいだけである。そして丸山への先入観がおかしいと言いたいだけある。打開したのは丸山である。そして負けた。ひとつもいい所はなかった。この真相を歪めるなと言いたかっただけである。
こんなバカげた変化にひとつひとつつき合うのはいい加減深浦でうんざりしてしまった。谷川。「控え室で大声があがった」などと書いて恥ずかしくないか?もう二度と観戦記などに手を染めないで頂きたい。自己を偽るだけとなる。王位戦で見せた谷川将棋は、谷川が書く言葉などより遥かに崇高であった。同じ人間とは思いたくない程美しい。