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ウルトラマンタロウ 作品解説 ウルトラマンレオ 作品解説

ウルトラマンタロウ 作品解説

「ウルトラマンタロウ」が作成された1973年(昭和48年)は円谷プロが誕生してから10周年にあたる。 前作の「ウルトラマンA」は設定が2転3転したためか、ここでやめようという意見も一部であったらしいが記念の年だし、 円谷プロとしては続けたかった。

ましてやこの時、円谷プロは創立10周年記念作品としてその前年(1972年)の12月に「怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス」(東宝系劇場)、 1月からは「ファイヤーマン」(日本テレビ)、「ジャンボーグA」(NET *現在のテレビ朝日)が作成されている。 こうした中で円谷プロの代名詞ともいえるウルトラシリーズがなかったらさみしい。 そこで円谷プロは新番組の企画書を作った。 (赤い表紙に金色の文字だったらしい)

企画書の内容について書いてある本を見てみると前作の「A」とは違い新機軸が、目立つということはないが、 ウルトラシリーズが持っているエンターテイメント性をこれでもか!これでもか!と強調している感じを受ける。

タイトル名は色々な候補が出たが「ウルトラマンジャック」でほぼ決まりかけた。 また今回のヒーローのデザインは人気の高いウルトラセブンを基本にして、好評だったウルトラの父の角を合わせる事にした。

ただ「ジャック」という言葉が当時、社会問題になっていたハイジャックやシージャックを連想させるという意見があって 「ウルトラマンタロウ」に変更された。

タロウという名前にはおとぎ話に多い「○○太郎」から取った。 ファンタジー性をアピールする意図が出ている。

実際スタッフは現代の「おとぎ話」や「アラビアンナイト」目指していて、1話から光太郎が(ウルトラの命を得る前に) アストロモンスにしがみついて空中で落とされるというシーンがあるし、 3話ではライブキングの下敷きになってウルトラの母に救助されるシーンは目指したものが顕著に出ている。 上記のようなシーンはウルトラシリーズでも他の作品なら即死していてもおかしくない部分だし、これをこういう形で描写するのはかなり大胆だ。

そしてこの作品は光太郎だけでなく他の人物も生身で怪獣とぶつかることが多い。 それがこの作品の特徴の一つ。 例を上げればムルロアにAZ1974爆弾を仕掛けた上野隊員やムカデンダーに立ち向かった仙吉などがある。

ZATというチームも隊員同士の対立が日常茶飯事だったMATやTACとはイメージが大幅に異なる。 (こうした対立がMATやTACの魅力の1つでもあるが) 隊員だけでなく朝日奈隊長や荒垣副隊長もユーモアのある人物だし、チームワークはウルトラシリーズの防衛チームの中でもトップクラスだろう。 こうした明るいムードを出してムードを前面に出してこの作品は展開していく。 だからZATの様々なユニークの作戦、旧作の人気怪獣の登場、ウルトラ兄弟や父や母の救援等も迷わず取り上げられている。

また一見、意外に感じるが素顔のウルトラ兄弟が勢ぞろいするのは「タロウ」の33話と34話だけなので貴重である。 (「帰ってきた」38話でウルトラマンとセブンはハヤタやダンの姿も登場するが、郷との絡みはなし)

また「タロウ」は妖怪的な怪獣が強烈なインパクトを持って登場していることがあげられる。 エンマーゴやモチロンがその代表だろう。 一度は刀でタロウの首を飛ばしたエンマーゴや餅をおいしそうに食べるモチロンは目に焼き付いている。 それまでにも妖怪的な怪獣はいるのだが(「帰ってきた」のコダイゴン、「A」のオニデビル等) どちらかといえば地味な存在だった。 しかしそんなイメージを彼らは吹き飛ばしてしまった。

後、親子や兄弟のドラマが多いのもポイント。 家族のため怪獣に立ち向かう人を描いたり、フライングライドロンまたはパンドラとチンペの話で怪獣の親子の愛情を描いている。

また人間ドラマもオブラードに包んでいるが意外とシビア。 4話と5話のトータス親子の話や45話のメモールに改造された真理の悲劇、24話の地球人の実験によるムルロア星を爆破、 46話で動物を殺すアパートの大家さん、47話のみんなに頼られる人間の孤独など。 またエコロジストを自認する人には21話の東京タワーに登って大声で鳴くキングゼミラの姿をぜひ見てほしい。

ウルトラシリーズに限らず怪獣番組は「倒される怪獣がかわいそう」という意見が出てくる。 それが反映されてか「タロウ」の終盤は怪獣が倒されない話も多い。 モットクレロン、メモール、ピッコロ、ベロン、オルフィ等だけでなく、オニバンバやドルズ星人のように悪知恵が働く奴もいるからちょっと驚くかも!

53話で光太郎はウルトラの母にバッジを返して1人の地球人として生きることを決意する。 そして「東光太郎」がバルキー星人を倒して白鳥船長の仇を打った後、ZATもやめて光太郎は再び旅に出る。 良い話なんだけど、後の作品にタロウが出れなくなったことを考えると惜しい気もする。

*後に「メビウス」でゲスト出演しているが、「レオ」38・39話にタロウが出れなかったのは、最終回の解釈が主因だろう。

・更新日:2011/03/19・ページ製作者:トータス砲