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帰ってきたウルトラマン 作品解説

「ウルトラQ」で爆発した(第1次)怪獣ブームも「ウルトラセブン」終了する頃には下火になっていて、 妖怪ブームがそれに取って代わると言われていた。 しかし第1次怪獣ブームでメインにしていた小学生より下の幼児層には怪獣のブロマイドや怪獣人形の人気があった。 「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の再放送も18%ぐらいの視聴率を得ていたし、 その戦闘場面の編集や残っていた怪獣のぬいぐるみなどを使用して作成した「ウルトラファイト」も視聴者の評判は良かった。 (「ファイト」のスタッフは周りから色々といやみなどを言われたみたいだが)

そうしたムードも合って当初は円谷一と橋本洋二の雑談程度だったウルトラマン復活のムードが高まっていった。 そして「続・ウルトラマン」という企画ができた。

ここでは初代ウルトラマンが帰ってくるという内容で、時代はウルトラマンが地球を去ってから30年後という時代設定。 老人になったムラマツ隊長やハヤタと名乗る謎の青年が現われたりと、文字通りの続編だった。 しかし大幅に手直しした「第3案」の企画書ではカドクラ牧場で働くバンヒデキが主人公で、 その牧場のカドクラ姉弟に慕われているという設定に代わっている。 さらにカドクラ姉弟は坂田3兄妹になる等の手直しを経て実作品に至る。

また初代ウルトラマンそのままのデザインでは商品化権に問題があるため、デザインも修正された。 最初は初代ウルトラマンにラインを加えただけのものだったが、さらに体のデザインも現在のように修正された。

(ただ、スタッフもこの時点では旧作品のウルトラマンとこの作品のウルトラマンが同一人物か別人かは特に意識はしてなかったようだ。 作品が進行するにつれて両作品のムードの違いなどから徐々に「別人」という方向になり、38話の初代ウルトラマンの登場で明確になったと言えるだろう)

こうして1971年4月2日、「帰ってきたウルトラマン」が開始される。 作品は郷秀樹成長の物語という面を前面に出していく。 郷が慢心する2話、「郷VS岸田」や「MATVS長官」が明確に描かれる5話・6話などが顕著だろう。

またこの時期の怪獣はオーソドックスな地球出身の怪獣しか出ていない。 (とはいってもこの時期の野性味あふれた怪獣も魅力的だし、タッコングやツインテールのようにユニークなデザインの怪獣もいる) こうして考えるとドラマ的には旧作とは違うドラマを、怪獣的には原点回帰を目指した作品といえるだろう。

視聴率的には旧作に比べると苦戦していた。 (TBS側は30%以上を期待したらしい、旧作の頃に比べるとTV番組も視聴者も多様化しているので期待した数字が高すぎるように思えるが) そこで延長にあたっての強化案がまとめられ、18話から宇宙怪獣ベムスターが登場して怪獣もバラエティーに富んでくる。 (体がTV局の機能を持つビーコンや星を飲み込むバキューモンや動植物のハーフのレオゴン等) また新ウルトラマンもブレスレットでパワーアップ、MATも宇宙ステーションやスペースアローなど宇宙を視野にいれての装備も登場してくる。

この時期にMATの隊長が加藤隊長に代わって伊吹隊長になるが、これは加藤隊長役の塚本信夫が「帰ってきた」に出演が決まる前から、 舞台の仕事が入っていたことによるものなので、強化案とは直接関係ないらしい。

また36話のドラキュラス以降は以降は宇宙人が登場する話が多くなる。 (「帰ってきた」の宇宙人の初登場はこの時期より少し前の31話のゼラン星人で、初期の地球怪獣編では意図的に宇宙人を出さないようにしていたため、 シリーズの他の作品と比べてかなり遅い)

この時期の「番組延長に関するメモ」で「人間にとって<良いこと><悪いこと>とは何かを考えてみたい」という一文がある。 だからか「ウルトラセブン」に登場する宇宙人に比べると卑劣な手段を取る物が多い。 (坂田兄妹を殺したナックル星人や郷を罠にかけたズール星人等) こうした宇宙人の作戦がこの作品後期の見所の1つだ。

坂田兄妹を殺すようになったのは坂田アキを演じていた榊原るみのスケジュールの都合が原因だが、 だったらなしくずしに登場させなくするより劇的に演出してテンションを高めた方がということになったらしい。

これにより郷と次郎の関係も変わることになる。 坂田兄妹がいた頃、郷は次郎にとって憧れのお兄さんだけど、これからは次郎の保護者になるのだ。 41話の「バルタン星人Jrの復讐」は郷と次郎の関係が変わっていくのが良く分かる話でもある。 (郷は坂田の代わりを努めようと思うのだが、次郎に「兄ちゃんだったらそんなこといわない!」と反論される)

そして51話の「ウルトラ5つの誓い」で郷は「君もいやなもの、許せないものと戦える勇気のある男になるといい」と言って地球を去る。 初期は慢心したり、弱気になったりした時に坂田健のアドバイスを受けて立ち直っていた郷が健の弟である次郎にメッセージを残して去っていくのは見事だ。

・更新日:2011/03/19・ページ製作者:トータス砲