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帰ってきたウルトラマン 作品解説 ウルトラマンA 作品解説
ウルトラマンタロウ 作品解説 ウルトラマンレオ 作品解説

ウルトラマンA 作品解説

「帰ってきたウルトラマン」はスタッフの努力もあり、後半は視聴率20%代をコンスタントに維持して好評を得ていた。 こうしたことから次のウルトラマンを生み出すことになる。 だが同時期に放映されていた東映の「仮面ライダー」に人気でリードされていたこともあったのだろう、新作のウルトラマンは新機軸にあふれていた。

新作のウルトラマンのために市川森一、上原正三、田口成三の3人がそれぞれ企画書を提出した。 市川森一の「ウルトラハンター」では男女の性別を超えて、人間を超越してウルトラマンになるという想いから男女合体変身のアイディアがあった。

上原正三の「ウルトラファイター」では人間に恨みを持つ竹中博士が怪獣を操るという役でレギュラーとして登場するという設定があった。 (後にこれが異次元人ヤプールの設定になっていく)

田口成三の「ウルトラV」では宇宙人が地球生物と宇宙生物を合成して「超獣」という怪獣よりも強い生物を登場させるという試みがあった。

こうした企画の長所を合わせ、または練り直して作品の骨格ができてタイトルは「ウルトラA」ということでほぼ決定した。 しかし商標登録上に似た名前があって「ウルトラマンA」に変更された。

また、Aの発射するメタリウム光線はいままでの単色の光線とは違い3原色が混じっている、 また兵器開発研究員の梶が設定されたりと特撮の部分を派手にしようという意図が伺える。 また「帰ってきた」38話で初代ウルトラマンとセブンが登場した話が好評で掲載誌の方から「ウルトラ兄弟」という言葉が生まれ、 「A」から本格的にその設定が劇中に出てきて、旧作に登場したウルトラ戦士が準レギュラーとして活躍する。

こうして開始されたウルトラマンAだが1話と2話の撮影の期間中に南夕子役の関かおりが、怪我をして降板せざるを得なくなり、 星光子が南夕子を演じることになる。 (関かおりは後に7話と8話で山中隊員の婚約者のマヤを演じている) 初期は隊長や他の隊員と対立した北斗を夕子が庇うという話も多い。

また特撮面では1話と2話でAの縫ぐるみは腰のところで分割した2ピースのものだったが、コスチュームが痛みやすいため、 3話以降は従来の1ピースのものに変更された。

1話でさっそくウルトラ5兄弟が全員登場。5話でゾフィーが活躍。 (5話は後のゾフィーのイメージを決定付けたという意味でも重要だと思う。 それまではウルトラマンを迎えに来たりなど地味な役回りだったし) そしてウルトラ兄弟という設定が発展して27話にはウルトラの父が登場。

また、空を割って超獣が出現したり、ウルトラ兄弟が十字架にかけられたり、ブロンズ像にされてしまったりと次から次へと驚くシーンが続出する。

ただ何事もトントン拍子にうまくいったかというと、そうではなく超獣は子供が知っている生物の特徴を持っているためインパクトを持てると スタッフは期待したが、こうした点は意図したようにはいかなかった。 (見ていた側として、動植物の特徴を持った怪獣は過去にもたくさんいたというのが正直な意見。 もちろんドラゴリーがムルチを引き裂いたシーンは強烈だったし、インパクトのある超獣もたくさんいたが、 上記のことが超獣の特徴と思えたかといえばNOだ!)

また話が侵略ものに限定されることになってしまったためか、23話でヤプールが滅亡してしまい、また28話で夕子が月星人として地球を去ってしまう。 こういうことになった理由として子供たちの遊びに取り入れにくい(Aごっこで変身後は夕子役はいらなくなる)ことが上げられているが、 女の子がヒーローごっこに入りやすくなったというメリットもあるので、演出上の難しさも一因ではないかと思っている。 こうなるとAの個性がなくなってしまったような気もして寂しい。

27話までに夕子の正体に関して推測できる部分は全くないので、今見返しても唐突さには驚いてしまう。 (そのことからも北斗の単独変身への変更は急に決まったのだろう)

29話からウルトラの星をみることができるというダン少年が登場。 彼を通じて「真の勇気」とは何かと問い掛けるようなエピソードが多くなる。 また無鉄砲だった北斗が逆に他人をフォローするようになってくるのもこの頃。 30話では北斗自身もミスをしてしまうが、それ以上にダン少年へのフォロー役としての面を描いている。 (慢心したダンに「今のお前にウルトラの星が見えるか!」というシーンがある) この時期での作品だとおとなしい子供を好む母親を風刺したような33話や恋愛話の37話も好き。

ただダン少年がレギュラーとして定着するためには「ウルトラの星が見えて、6番目の弟と名乗る」ことは必要だったかもしれないが、 このことが次作の「タロウ」には邪魔になってレギュラーを降板になってしまうのもなんとも皮肉。

44話ではウルトラの国が初登場。47話では奈良時代でTACが活躍と終盤も見所はたくさんある。 48話では52話への伏線として女ヤプールがベロクロン2世を操って登場。 そして52話でAは生き残りのヤプールの謀略によって正体を明かさざるを得なくなり (ヤプールのAを倒すことより、精神的ダメージを与えることを優先した執念も特筆もの)

「やさしさを失わないでくれ(中略)それが何百回裏切られようと……」というメッセージを残してAは去ってゆく。

・更新日:2011/03/19・ページ製作者:トータス砲