鉄塔全景  京都駅、ないしは京都タワー展望台から山科方面を見ると山の上に鉄塔が見えます。関西地区には中波放送として、NHK大阪・京都の他、朝日放送・毎日放送・大阪放送・京都放送・ラジオ関西・和歌山放送があります。このうち関西広域放送として朝日・毎日・大阪の各局は大阪府内に50kWの送信所を擁していますが、盆地の京都市向けに中継局を設置しています。

 左図は新幹線東山トンネルのほぼ真上(地図上)にある朝日・毎日・大阪各局の中継局です。送信周波数は3局とも本局と同じ周波数ですので、同期放送となっています。また出力は300Wと市内にあるNHK京都(1kW)や京都放送(20kW)に比べいくぶん低めと思いますが、同期放送では等電界地帯の問題も発生するので資金任せに増力できないジレンマもあるかと思います(本局とこの局のカバー領域には宅地でない場所を探すのがタイヘンではないかと思います)。

 アンテナは1本ですが、ここから3波が送信されています。アンテナの形式は副導線式傘付というものだそうで、鉄塔自体はワイヤーの支えとSTL用パラボラの台として機能しています。副導線式は札幌テレビ放送苫小牧ラジオ送信所などで見た構造で、傘付とは支線の一部をアンテナとして機能(傘の骨の様な格好)させているものです。基部、及び局舎はこの位置からでは見ることができませんでした。


傘部分  塔頂の部分を拡大してみました。6角形の輪っかのそれぞれの角に下側から副導線が到達し、それらが一番上の支線として3方向に展開しています。左図で斜めに見えている部分が「傘」を構成し、中段にある6角形の輪っかとの中間点付近で1本に接続されています。鉄塔自身の支線は鉄塔直近に碍子があり、副導線部分と傘部分に電気的に影響を与えない様にしているみたいです。副導線及び傘は3方向にあるのでそれぞれ1つが各局の周波数に同調しているのか、3方向ひっくるめて1つの送信アンテナとして、各局はそれぞれこのアンテナの固有周波数に同調させているのかは不詳ですが、前者だと局ごとに(傘が張られている方向に少しばかりの)指向性が出てきそうなので後者でしょうか?

 (このテの)傘付のアンテナも接地型アンテナに分類され、これから放射される電波は垂直偏波になります。また接地型ということは接地の状態もアンテナ効率に大きな影響を与えます。概ね中波の送信所は川の近くや水田の中の様な、なんとなく牧歌的な景色の中にあります(故に気に入っているのです)。ここは山の頂上だったので水はけが良さそうに見えますが、周囲は局舎が見えないほど木々が生い茂っているので接地点はじめっとしているのでしょうか?


おわんの背景  送信プログラムはマイクロで送りつけられている様です。山科方から見ているので、パラボラの方向は南西方です。3局あるのに2枚しかないのでどれかとどれかが共用しているものと思いますが、これも不詳です。

 上側のパラボラでは反射鏡からの出てきた導波管が90度ベンドされ、黒い導波管(…同軸かも)に接続されなだらかな曲線を描いて局舎方へ延びています。基部絶縁型の鉄塔にパラボラが設置されていると、導波管を局舎内に引き込む時に大掛かりなフィルタ(というか、中波トラップ)を設置する必要があるみたいですが(例:これとかこれなんか)、ここの様な場合はどんなもんでしょうか?

京都駅方面 高台にありますのでこの様な感じで京都市街が展望できます。


 ここの中継局は1997年4月に運用が開始されていたとのことですが、2023年10月末に廃止されるとのことです。京都の中波局としては二条城近くにあったNHK京都放送局が烏丸御池に移転する際にNHK京都第一がなくなっています(当該ページ、おいおい訂正等します)。京都から帰る際に京都駅の通路から帰る方向を見ると山の上に鉄塔が見えてますが、これも廃止後解体されてしまうのでしょうか。

 放送技術2023年10月号のAMプラザ(P93)「京都中継局の思い出 ~26年半の感謝を込めて~」に開設前や運用開始後のエリアの調査、同期放送の調整のことなどの記事があります。

撮影:2006.11.26
初稿:2006.12.06
追記:2023.10.01

ひとつもどります