シネマ

  • 追悼黒澤明監督BBS 98.9.7〜98.9.24
  • シネマ見聞録 75作 2000.3.17
  • 1998年「映画」を振り返って 99.1.7
  • 75.「シュリ」by モノ 2000.3.17
     今年初めて劇場にて映画を見に行きました。韓国版ハリウッド映画という感じで、スケールの大きいアクションたっぷり、南北問題も大いに絡めてメッセージを込めるなど、昨年韓国で「マトリックス」を大きく離して観客動員数No1になったことがうなずけます。
    内容は、北朝鮮の特殊工作員が韓国に入り次々と重要人物を殺害して行くところから話は始まる。その工作員を追う韓国の諜報員(FBIやCIAみたいなものか)。しかしここ1,2年全く工作員の動きはなかったが、突然、工作員が動き始めると一つの目的に向けて北朝鮮のある部隊が動き出す、それがなんなのか分からないが阻止しようとする韓国側との攻防。なかなかテンポよく運ぶ話は良いと思いました。でも最初諜報員の2人組の見分けがなかなかつかなかったのが、残念でした。(似たような体型で似たような顔立ちなので)

    74.「ジャンヌダルク」by モノ 2000.1.12
     言わずとも知れたリュック・ベッソン監督の最新作です。ハァー長い!ケツいてー!後半かったるい。とケチョンケチョンですが、これもあのベッソンの作品と言うことを踏まえての話です。でも前半のオルレアンを解放するくだりはなかなか良かったです(ここが前半の盛り上げどころですが)後半の見せ場であるジャンヌダルクが教会側に捕らわれて宗教裁判にかけられている最中の心の動き(なぜか神?悪魔?としてダスティン・ホフマンが登場するが、何なのか?)は予想通りの展開で「早く火あぶりしておわんねーかな」と思うほどでしたが、ここで映像的に「死」へのイメージを見せたり、神様からの啓示を実はこういう場合もあるよと様々なケースを映像で見せるなど「コントやってんのかこのオヤジは!」と半ばあきれてしまうような所もありましたが、まあ見られます。全体的に、かったるいですが、ベッソン版オールスターキャストと言った感じで、NHKの大河ドラマを見る思いですのでこんなのが好きな方にはお勧めです。
    ベッソンは終わったかも。

    73.「ワイルド・ワイルド・ウェスト」by モノ 2000.1.12
     見なきゃ良かった・・・・。映画館で見た予告編は結構カッコ良かったので、期していったのですが、予告編を見た人は本編を見る必要なしです。話は、ケネス・プラナー演じるマッドサイエンティストが、合衆国を征服するのを止めるために、ウィル・スミスとケヴィン・クライン演じる国家保安員?が東奔西走する様を描いた娯楽大作ですが、予告編の見せ場を除いてはその見せ場見せ場をつなげるかったるい説明が続くだけなので見ていてホントにつまらなかったです。まあ出演している役者のファンの方は見るのも良いでしょう。

    72.梟の城 by 犬 1999.11.16
    今後、大島渚、市川崑、黒沢脚本作品など重要な時代劇が待機している。その一番手はかつての松竹ヌーベルバーグというよりは「極妻お志麻さん」の夫と言った方がわかりやすい篠田正浩。顔以上に作品の方が真ん丸になってしまったかつての邦画の旗手の最新作。なかなか見ごたえがあった。配役も大体成功している。音楽もいい。これもかつての前衛音楽の旗手だ。日本映画もスタッフ、原作、キャストともに底力、ここにありとう感じだ。一級の娯楽作に仕上がっている。ただ思うのは、忍者がここまで語るだろうかという事だ。忍者は口を封じている。だから忍者だ。雄弁に語る忍者。言いたいことは一杯あるのだろう。でも語らないのが忍者だと思うが。

    71.「シックス・センス」by 犬 99.11.2
    こういう映画を本当に恐い映画と呼ぶべきだ。ただ相変わらず技術にばかり走って内容がすかすかのゲテモノホラーの一種に思われてしまいそうなところがこの映画にはありそれが弱点でもある。実はまったくそうではないのだが。
    まずこの映画は寒い。そして恐い。いつの頃からだろうか、幼児虐待という問題がよく取り上げられるようになり、幼児体験が後のアダルトチルドレンとなってその後に新たな問題を誘発していくと言われるようになったのは。この映画は幼児虐待がテーマではないのかも知れない。でも随所に見えかくれする幼児虐待をしているのかどうかわからないところに恐さがあるように思える。また人間の感情の高まりというものが何をしでかすがわからない恐さもよく伝わって来た。この寒さと恐さは故キューブリック監督の空気に似ている。見なくてもいいものを強烈に見せるこの映画はこの世紀末を無軌道に暴れ回り喝采されている一連のジャンキームービーメーカーたちに強烈な一撃を加えることが出来るだろう。

    70.「マトリックス」by 犬 99.11.2
    世紀末に相応しく今後のSF映画に大きな影響を与えると思われる傑作であることは間違い無い。技術的にもストーリー的にもこれが映画だと言わんばかりのレベルである事も間違い無い。しかしである。この映画に入っていけない人も大勢いるだろう。よくよく見ればこれは、まさに「高級で残虐な殺人ゲーム」絵巻でもある。この一度くらいは真似してみたくなるような殺戮シーンをカッコよく見る人もいれば青少年に悪影響を及ぼすと見る人もいるでしょう。楽しんでみてくれれば十分満足出来る映画です。

    69.「エリザベス」by 犬 99.11.2
    歴史絵巻ものは昔からあったがどうも最近の歴史物はかつての重々しさはない傾向にある。演技陣が優れていることもあろうが最近はこの手の歴史物の脚本が特にいい。また主要な脇を主役級で固めて主役は新人がはつらつと演じるという手法も成功の一因だろう。つまり映画に元気がある。

    68.「グロリア」by 犬 99.11.2
    リメイクものだが、この際、前作とは別ものと考えれば結構見れる。比べれば比べるだけ不利になるのは目に見えている。シャロンストーンの意気込みは十分通じた。

    67.「金融腐食列島 呪縛」by 犬 99.11.2
    社会派ものいうジャンルはかつての日本映画に確立されていた。いつのころからか社会派という言葉さえも無くなってしまった。「巨悪はいつも上にいる」この繰り返しでも映画としてはかなりのレベルをキープすることがかつては出来た。しかし今はどうか。「何をいまさら、そんなことわかっているよ、現実はもっと厳しいよ」で終わりにしないで時間があれば一つのドラマとして見てもいいでしょう。

    66.「ディープ・ブルー」by モノ
    ジョーズの二番煎じみたいな映画です。レニー・ハーリンが監督しているだけあってアクションとスリルの面ではハリウッド映画の水準をクリアしています。それに「こんなシーン必要なのか?」と頭をひねってしまうユーモアシーン。
    で、やたらと鮫が出てくる出てくる。そして人をバクバク食う!この監督よっぽど鮫に人をくわえさせるのが好きらしい。
    鮫の泳いでいるシーンがCGで合成されているのが一目瞭然で「生!」という感じがなく全然怖くないんです。だって絵が動いているわけですからね。
    話も最初のお題目であった「アルツハイマー病の特効薬の開発」と言うことから鮫(この時点でもはや変!鮫の必要性が全くない!むしろほ乳類で頭がいいとされているイルカの方が適切ではないか!きっと鯨を愛するという保護団体にビビッたのであろうか?)を実験材料にして脳の再活性化を遺伝子操作なしで行うということがどっかに行ってしまい、よくある「科学者の暴走」から大惨事が起こり最後に「科学者の改心」というくくりで終わると行った筋書きで、取り立ててひねられているところもなくさらっと見られる話になっています。
    コック役の黒人がいい味だしています。大海原と鮫がお好きな方はどうぞ。

    65.「シックス・センス」by モノ
    何があのオヤジを変えたのか?今まで来日してはあっという間に帰国してしまい、配給会社の人達も頭を抱えていたと想像できるのだが、今回この作品の宣伝で来日した際はもう一人の主役である子役と中むつまじく宣伝のための取材に愛想を振りまいていたのには驚きました。この時点で気づくべきでした、この作品がすばらしいって事を。
    以前「マトリックス」を今年度ベスト1と早々と決めてしまいましたが取り下げます。これがベスト1かも知れません。
    話は小児精神科医(日本にはこんな科はあるのか?)であるブルース・ウィリスが学校の同級生などから化け物扱いされている少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント「フォレスト・ガンプ」でトム・ハンクスの息子役)の診療を行ううちに少年にある秘密を告白される。それは「死んだ人が見える」という特殊能力であった。最初のうちは「幻想が見える」「精神分裂」というまあありきたりの診断で逃げをうっていたのだが、少年の真剣な訴えに対し「幽霊の話を聞いてあげることが大事」と諭すのだった。そしてブルースの夫婦危機、少年の母子愛等織り交ぜて誠に上手くまとめられている。
    監督はインド人のM・ナイト・シャマランである。彼は本編に医者のちょい役で出ているのでチェック!
    もう何も言うことはありません。まずは見てくださいそれから話しましょう。

    64.「シン・レッド・ライン」by モノ 99.10.5
     初めてテレンス・マリック監督の作品を見ました。第二次世界大戦の話で、日本とアメリカの戦いの話をアメリカが撮るなんてとても珍しいことである。ヨーロッパ戦線は結構撮っているが太平洋戦争はあまり記憶にない。しかもあの監督だ。
     で内容はアメリカ軍の兵隊さんが戦争に参加したことにより今までの人生が変わっていってしまう様を南の島の開放的な美しい自然を舞台に繰り返されていく意味があるのかないのか判らない戦いを撮った物である。特別物語というものはないが個々の人達の人生を切り取っていき戦争とは一握りの傲慢な人間達の戦いであってそれに巻き込まれる若い兵隊さんに何の罪があるというのであろうか?と考えさせられてしまう作品です。でも、モノローグは少々退屈だが、戦闘シーンなどはしっかり娯楽作品となっているところはさすがと思う。日本人兵の描き方もきっとこうだったのであろうと納得の演出でした。まあ見ておいた方がよいと思える作品です。

    63.「スネーク・アイズ」
    by モノ 99.10.5
     ブライアン・デパルマの最新作です。期待していなかった分、結構見れました。でも「虚栄の篝火」以来の冒頭長回しはあまり効果はないでしょう。内容はボクシングの八百長試合の最中に殺された政府高官の殺人事件を解決する不良刑事とその親友で高官の側近である軍人との戦いであり、この事件を画策した、真の見えない指揮者は誰かという謎解きと、作品にちりばめられた様々な謎解きを楽しむ映画でしょう。
     題名の「スネーク・アイズ」とは「親の総取り」というゲームを仕掛けた者がすべてを握ると行った意味合いだそうなので、きっとこのゲームを画策した政府(CIA)もしくは政府高官(劇中は死亡と言うことになっていたが)のシナリオ通りであったという謎解きなのかなとも思いましたが、真相は解りません。
     と、ちょっと後味が悪いのがいいのかも知れませんが皆さんもこの謎解きに挑戦してはどうでしょうか?

    62.「永遠と一日」
    by モノ 99.10.5
    ギリシャの名監督テオ・アンゲロプロスの最新作です。まず一言「かったるい」。内容はギリシャのとある著名な詩人(余命いくばくもない)が病院へ入院のため飼っている犬を預けにうろうろする事から始まるロードムービーです。アルバニアから逃げてきた少年達の一人(アルバニアは戦争状態)との交流や昔存在したと伝えられる「言葉を買う詩人」の話、すでに他界している妻との思い出。
     と話は色々詰まっているのですが、展開がゆったりしていてテンポの速い作品になれている若者にはちょっとつらい。確かに映像はとってもすばらしいです。一場面一場面は胸にしみいるものがありまさに映像の詩人と言われるのがよくわかります。
     タイトルの意味合いは1日1日命を削っていく人の1日はそれまでに積み重ねてきた思い出を紐解いていき思い返しながら、さながら永遠にも似た時間を凝縮していると言うことなのではないかと思いました。
     私の両親ぐらいの年齢になるとこの映画は感動を呼ぶのでしょう。実際ご年輩の婦人が目をウルウルさせてエンディングロールを見つめていたのことです。

    61.「交渉人」
    by モノ 99.10.5
     今旬のサミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペイシーの競演が見物の内部告発ものです。内容は地区で一番の交渉人が警察署内の公的積立金を無断使用したとの疑いで逮捕されたことから始まる「自分の潔白証明」のための人質拉致事件。彼と敵対する立場として隣の地区のNo1交渉人を呼び交渉をしながら本当の犯人を燻りだしていくという筋書きです。結構前評判も良く話も良くまとまっているのだが、惜しいかな先が読める展開に今ひとつのめり込むことが出来なかった。一応おもしろいですので、ご覧になってもいいと思います。

    60.「ゴールデン・ボーイ」
    by モノ 99.10.5
     スティーブン・キング原作ものです。監督もあの「ユージアル・サスペクツ」のブライアン・シンガーと言うこともあり地味な作品ですがなかなか良いです。中でも元ナチの将校役のイアン・マッケランがさすがの存在感を出していました。少年に元ナチという事を見破られ、黙っている代わりに昔ユダヤ人達をなぶりものにした実体験を話すことを強要させられ、ナチの制服を着て行進のまねごとをさせられたときのだんだん生き生きとして昔を思いだして行くところはまさに鬼気迫るものがありました。
     内容はちょっと上に書きましたが、少年と元ナチ将校の関係が最初は少年がリードしていたがだんだん立場が逆転していく様が見物です。
     そして出来過ぎの結末。
     ブラッド・レンフロも青年になりいい味だしていますし、ちょっとお勧めですかね。

    59.「パラサイト」
    by モノ 99.10.5
     「エル・マリアッチ」で注目されたロバート・ロドリゲスの最新作はSFものです。結構子供だましで、おもしろくないかなーと思って見に行きましたが、やっぱりクエンティン・タランティーノのお友達。とってもオタクな台詞の連続につい微笑んでしまいました。SF小説マニアでないと「なにいってんだかわからん」状態になります。私もなぜ、ロバート・A・ハインラインのファンだと同性愛者と思われるのか解りませんでした。又、侵略してくる異星物の撃退方法を「遊星からの物体X」と同じと断定して話もそれをなぞっていくというお気楽さ。でも話のテンポがよくアメリカ学園ものとSFものとが上手く融合してなかなか見られるものに仕上がっていると思います。まあ見ても損はないでしょう。

    58.「アイズ・ワイド・シャット」
    by モノ 99.10.5
     言わずと知れたスタンリー・キューブリックの遺作です。深く見ればおもしろいのかも知れませんが、夫婦愛と危機を描いたごくごく普通の話をゴテゴテ装飾をくっつけてキューブリック風味の映像と台詞でまとめたものでした。確かにSEXシーンは過激だという向きもありますがなんかカサカサしていて「時計仕掛けのオレンジ」のレイプシーンを思い出させました。
     私はこの映画を見る価値はあると思いますが、果たしてこの先残るかというと「ダメかも知れない」というなんとも曖昧な感想しかかありません。
     色々な評論家達もなんとも歯切れの悪い評ばかり、よくニコールキッドマンの最後の台詞が色々取りざたされていますが、私に言わせれば「それがどうしたの」と言うことになります。
     怖いもの見たさとキューブリックへの最後の対面という意味で見ることをお勧めします。
     
    57.「マトリックス」
    by モノ 99.10.5
     ウォシャウスキー兄弟の2作目ですが今年度最高傑作でしょう。ビジュアル、脚本共に秀でています。世界観も上手く表現できており物語に引き込まれていってしまいます。内容はハッカーをやって小銭を稼いでいる青年がネット上で追い求めていた相手から接触を受けることから始まり自分が本当はどこにいるのか?そして世の中はどうなっているのかを知り、その世界をコントロールしているものと戦いを始めるという筋書きだ。
     詳しくは本編を見るのが良いでしょう。
    是非見ることをお勧めします。

    56.ライフ・イズ・ビューティフル by 犬 99.6.21
    アメリカアカデミー賞で主演男優賞受賞作品。かつてイタリア映画の伝統、名子役、だらしない父親、しっかりものの母親、そして厳しい現実。古くは「自転車泥棒」「鉄道員」、近年も「ニューシネマパラダイス」「イルポスティーノ」とこの伝統を受け継いている傑作があったがこれもその系列に入れてもいいだろう。ただこの映画がそれらと異なる点はイタリア人がユダヤ人収容所を舞台にして描いていることだ。戦争を扱った映画にはいつも敗戦国と戦勝国の立場が問題になる。どちらの立場から描いても常に相手の立場を考慮に入れるべきなのは当然である。歴史的にはイタリアは日独伊の伊だ。確かに地下組織でそれらに抗戦した人々もいただろう。しかし、世界的な見方はやはりイタリアはヒットラーと並ぶムッソリーニのイメージだろう。そのイタリアがユダヤ系イタリアがナチスによる収容所に送られて地獄の体験をし、それを解放してくれたのが連合軍だったという映画を作ったのである。そしてやはりこの映画に登場するドイツ人はこれまたこの手の戦争映画でよく見かけるナチスドイツ人ばかりであり、唯一、主人公と以前、親交のあったドイツ将校の医師に収容所で再会するがこの医師もまた主人公を助けるどころか「友人医師に出されたなぞなぞを解いてくれ」などど、なんともがっかりさせられる人物として描かれている。このように外面から見ればなんのことはない映画に思えるし、アメリカを初めとする戦勝国そして当時の日独伊の否定などこの映画を否定する材料はない。が何故、今またこの時代の映画を?という疑問も湧いてくる。この映画、何がしたかったのか?作者にしか分からないことだが、多分、極限状態だからこそ強く描ける「幼い息子への命を賭けた嘘のゲーム」を作りたかったのだろう。先日の「古畑任三郎」でも容疑者を目撃した少年が容疑者に高価なモノで買収したが結局少年は乗車記念に貰える飛行機の模型をくれた古畑になびいた。この映画では本物の戦車がその少年が最後迄頑張った褒美だった。この少年にとっての最高の褒美をもらうために今目の前で行われている「地獄」は全てゲームなんだと。父親である主人公は多分これで最後だろうと銃を突き付けられて連行される時でも笑顔で大きく手を振って行進していく。その場面を息子が見ているからだ。そしてそのまま、父親は銃声の後、登場しない。そして助かった少年は「自ら進んで夫と子供の追って収容所に入り、何度も息子が今無事であることを放送や音楽で知らされる」母親と再会して映画は終わるのである。
    このようにこれは決して新しい映画ではない。しかしこういう映画を見てから新しい映画を見るべきだろう。

    「北野武でカンヌ受賞ならず」 by 犬 99.5.28
    確かに評判は上々だったようだ。今回、あの派手なバイオレンスのデビットリンチも北野武と同様にその作風からバイオレンスシーンがなくなった。でも双方とも観客からは絶賛された。個人で行う映画批評ではないこうした映画祭での批評にはやはり政治的背景が作用してくる。それは今も昔も同様だ。戦争があれば戦争反対の映画がもてはやされる。作家のメッセージとその社会背景までも関係してしまうのだろう。つまり今は暴力はいらないのだろう。NATOの終わらない空爆もその大きな原因だろう。映画において社会を見据えるのは大事だろう、でも「作りたいものを作る、そしてそれを観て、評価する」とこんな簡単な事をここまで肥大化した老舗のカンヌに要求する事自体無理だろう。

    55.恋に落ちたシェイクスピア by 犬 99.5.28
    先頃発表されたアメリカアカデミー賞で作品賞以下多数受賞した作品。シェイクスピアがスランプに陥りなんとか「ロミオとジュリエット」を書き上げる迄の話であるが内容はそれよりも恋愛映画となっている。そしてこの映画は、主役よりも脇が豪華である。この豪華な演技合戦を観るだけでも十分楽しめる。特に、エリザベス女王が一番だろう。その証拠にこの演技でアカデミー助演女優賞に輝いている。そして何よりもこの映画の成功は脚本にあり。何度も映画、舞台化されているシェイクスピアものに対し、真っ向から描かず、作家シェイクスピアとして描いているところがいい。演出もその優れた脚本を流れるように撮っている。アクションあり笑いありの娯楽作としても十分に鑑賞出来る。ただ...派手なアクションを好む男性陣には少々退屈かも知れない。

    54.ラブ・レターby 犬 99.4.9
    映画よりも原作の浅田次郎の名前で見た映画。この浅田次郎、盛んに男性が読んでいるらしい。次回作として高倉健主演で「鉄道員ぽっぽや」が待機している。内容は 中国人の出稼ぎホステスと偽装結婚したチンピラヤクザの話で、このヤクザを中井貴一が演じている。この中国人を演じた女優のたどたどしい日本語と今の日本の若い女性のパワーとの差が大きいければ大きい程、或はそれを実感として持っていれば持っているほどこの映画の真の意味が見えてくるだろう。つまり騒音ガンガンの派手な若者の街を通りながらこの映画の空間に入れば一瞬ではあるが「忘れかけていた懐かしい記憶」が蘇る。そんな映画です。

    53.宋家の三姉妹by 犬 99.4.9
    この話、実話である。この3姉妹の人生がそのまま中国の近代史である。裕福な実業家に育った三姉妹、長女は孔子の末裔で裕福な銀行家へ、次女は孫文へ、三女は蒋介石へそれぞれ嫁ぐ。これを豪華なキャストで映画化した。監督が女性という事もあってとても女性の視点から描かれており、これまでよくある、夫の影に隠れている女性ではなく、夫の死後も活動する女性像なども出て来ます。女性にお勧めの映画です。そしてこの映画を見て思うことはこれだけ近代中国の重要な三姉妹になったのは何よりも親の教育方針によるものだということです。幼い頃から娘達を留学させるなどして広い世界を体験させているのです。 

    52.残侠by 犬 99.4.9
    高島政宏主演の東映やくざ映画。やくざ映画はやめたと宣言した東映だがやはりやくざ映画に帰って来た。これはその中でも正統派。まさにかつての鶴田浩二、高倉健、藤純子らの路線そのまま。ゲスト出演のようだが当然、登場するとスクリーンを喰ってしまうビートたけしが殺し屋で出ている。当然、当代の若者役者達では迫力不足で、伝統の東映やくざ映画史には残れないが、よくがんばってはいる。

    51.ユー・ガット・メールby 犬 99.4.9
    インターネット恋愛。監督・脚本はノーラ・エフロンで、主演はトム・ハンクスとメグ・ライアン。インターネットプロバイダーのAOLがバックアップしている。まあ、この手の映画にはあまり多くを望まない方がいいだろう。日本でかつてあった「ハル」などと比べ、やはり明るい雰囲気がある。ネットおたく、パソコン中毒という言葉がぴったりしていた「ハル」に比べぐっと軽い。キャストにもよるだろう。何と言っても天下のトム・ハンクスと抜群の人気女優メグ・ライアンだから。でも現実問題としてメールを使えばすぐハッピーになるとは思えない。アンハッピーな結果を体験する人だって大勢いるはずだ。

    50.レミゼラブルby 犬 99.4.9
    「シンドラー」がジャン・バルジャンを、「シャイン」がジャベールを演じている。当然この二人の演技合戦になっていて、見ごたえが有る。そしてなんといってもこの原作の凄さ。何度目の映画化かわからない。過去にはギャバンにベルモントにドパルデューも演じている。次にこれが来るとわかっていても画面に引き込まれる。

    49.フラッドby 犬 99.4.9
    洪水のパニック映画かと思って観たが、どうもそれだけはなかった。つまりこれは「火事場の泥棒」ならぬ「洪水場の泥棒」も絡んでいる。この泥棒を捕らえるはずの警察がまた曲者だった。絶対期待を裏切らないモーガンフリーマンがいい役を貰っている。その通り期待を裏切らなかった。ひと昔に流行ったパニック映画、パニック映画ではあるが結局は人間(ヒューマン)映画なんです。パニックになったときに人はどう行動するか?人間を描くにはパニックな状態にすればいいのです。

    48.ディープインパクトby 犬 99.4.9
    巨大隕石が地球に激突する話。これもパニック映画という形をかりたヒューマン映画です。ベテランと若者の対立、娘と父の確執、そして家族との別れ。大きな流れにそって物語は進みます。が、しかしこの話はある特定の地域の話ではなく地球規模の話。その割にはアメリカのみが登場する映画です。地球規模の話をする場合、全世界も視野に入れるべきでしょう。

    47.のど自慢by 犬 99.4.9
    テレビの雷波少年も手伝ってか室井滋の「ど演歌歌手」ぶりは抵抗なく見れた。尾藤イサオの「どさ回り」マネージャー役もうまく。また登場するだけで笑いを誘うのはさすがな竹中直人。カラオケの登場により今や日本は一億総歌い手の時代になった。マイクを向けられ何も歌えないのはもうそれだけで人間失格のようにされてしまう。いつもこういう場面に出くわすと思うことだが「まったく人の唄を聞いていない」のが現状である。でも唄うのである。だからこうしたのど自慢には大勢の歌い手達が群がるんでしょう。そういった心理をついた映画である。唄うという事でいろいろな人生を背負った人達が登場してくる。この映画続編もあると聞いている。

    46.踊る大捜査線by 犬 99.4.9
    かつて、刑事ドラマに登場する刑事達は子供の頃、ヒーローであった。壮絶な銃撃戦、人間味のある犯人達、そして数々の殉職シーンに名台詞。現実にはこんな刑事なんていないよとわかってはいた。そして現在。そうこんな刑事なんていないのさ。皆、サラリーマンで上司の機嫌ばかり伺っているのさ。犯人?そんなの皆異常者だ。刑事だって人間、撃たれりゃ痛いさ。これが今人気の「踊る大捜査線」だ。この現実の中で、何とか現状を現場サイドから変革しようともがいている刑事を織田裕二、組織サイドからもがいている官僚を柳葉敏郎が演じている。警視庁という本社から発せられる命令には絶対服従な一支店の湾岸署の中で起こる人間模様をコミカルに描いている。もはやここにはヒーローはいない。

    45.HANA-BIby 犬 99.4.9
    ベネチア国際映画祭グランプリ。静寂な青の中に激しい暴力と夫婦愛が描かれています。また場面場面に自作の絵画を挿入することで妙なリズムがあります。久石譲の音楽もまたいいです。どこか「レオン」のイメージに似た感性も感じられます。そしてこれまでの北野作品と違うところによく指摘されているように各所に「死」が見隠れします。必見の一作です。

    44.CUREby 犬 99.4.9
    監督は黒沢清。主演は役所広司と萩原聖人。恐い映画を作るには何も膨大な予算も要らず、特種効果も要らないということ実証した作品。萩原聖人の醒めたサイコ野郎がすごくいい。役所広司は安心して観ていられる。ただこういう系統の映画が真剣にヒューマンな映画を作ろうと努力している人達の作品よりも評価されてしまっていいのだろうか。

    43.学校3by 犬 99.4.9
    夜間中学、養護学校ときたシリーズも今回は職業訓練校が舞台。リストラ、倒産など様々な目に遇ってきた中年男性達と紅一点(大竹しのぶ)が卒業するまで。山田洋次監督が描きたかったのははたしては訓練校なのか大竹しのぶと小林捻持の恋愛なのかよくわからない。大竹しのぶの息子役の美少年の台詞のみが映画に活力を与えていた。

    42.絆by 犬 99.4.9
    今、注目している斉藤洋介がまさにはまり役で中村賀津雄も渋い演技が光った。内容は過去を消去したい男(役所広司)とそれを追う刑事(渡辺謙)の話。ただ何か物足りなさも感じます、多分、それは刑事に渡辺謙を起用したことでどうせ物わかりの良い刑事だろうと思ってしまうからでしょう。もっと悪役になろうとも犯人を追う刑事になって欲しかったし、変なところでもっと大きな圧力が出て来たりします。邦画でこういう部類の中ではなかなか傑作なんでしょう。

    41.フルモンティby 犬 99.4.9
    仕事にあぶれた男達がストリップショーを開催してひと儲けしようという内容ですが、当初のそういう目的よりはこれをきっかけとして皆だんだん元気になっていきます。多分、観ている人もそうでしょう。失業したのに妻に告白できない元管理職など結構、シリアスなテーマではあるのですが、そこに男性ストリップというところが笑えます。今の日本にも十分通用する内容だろうと思います。男性ストリップは別として。

    40.「始皇帝暗殺」by モノ 99.3.30
      やっと見ました。でかいスクリーンで見て良かったです。あの戦闘シーンのスケールの大きさはすごいの一言につきます。内容は若き日の始皇帝とその友人であり愛人である姫と天下に名前の轟く殺し屋の3人の愛憎劇です。世の中いつの時代になっても時の権力者の野望や思いつきで右にも左にも転がっていってしまうと言うことを改めて思い知らされました。この映画では始皇帝も姫も殺し屋も勝利者と言うことなのでしょう。話の先が読めてしまいますが、各人の演技が上手く話のテンポがいいので上映時間が長いですがそれほど苦痛にはなりませんでした。
     もうでかいスクリーンで見ることは難しいかも知れませんがビデオレンタルが始まりましたらば是非見ることをお勧めします。


    39.「xファイル・ザ・ムービー」
    by モノ 99.3.30
     これも見たかった1本でした。ですがTVシリーズの拡大版にちょこっと毛が生えたような内容で、もうちょっと何とかならなかったのかなーと思うのと最近見たTVシリーズの拡大版と重なってしまい、いまいち印象が薄いです。ですが裏の組織の重要人物が・・・とか組織の行おうとしていることがちらっと垣間見えたりとフリークの人達には結構ツボを押さえていてそれなりに楽しめますがTVシリーズを見ているとよりいっそう楽しめるでしょう。Xファイルファンの方は必見でしょう。


    38.「ベルベット・ゴールドマイン」
    by モノ 99.3.30
     いやー久しぶりに元気が出てくる映画に出会ったような感じです。時代はグラムロック華やからしき頃の話で実体験はしていませんが映像や書籍等で見聞きする物から情報は得ていたので特別驚くような話ではありませんでしたが、懐かしき音楽が、再現されたステージの映像が、ロック界の裏などがこの作品を支えています。
     内容はそろそろ落ち目になってきたグラムロック界のスーパースターがステージ上で狂言射殺された後、姿をくらませて10年後から話が始まり、そのスーパースターのその後を取材しようと走り回るなにやらいわく付きの記者。そしてそのスーパースターの輝ける過去を振り返りながら話は進んでいく。果たして答えは出るのか。
     ハデハデ衣装と懐かしいロックスターの若かりし頃を再現したエピソードそしてバイセクシャルな風俗。一種独特なゲイムービーといえなくもないほど男の裸が出てくる。でもなんと言っても音楽でしょう。この映画は。
     途中映倫のチャチが介入することによりモノラル音声になりちょっとがっくりしますが、ロックが好きな人は必見でしょう。そうでない人も1本の映画としておもしろくできていると思いますのでレンタル等でチェックしてもいいと思います。

    37.日本アカデミー賞発表

    犬 99.3.15

    その権威があるのかないのか日本アカデミー賞が発表されました「HANABI」の大敗、「愛を乞うひと」の圧勝でした。さてこの「愛を乞うひと」についての御感想をお聞かせ下さい。私は未見です。

    闘将 99.3.18

    その日本アカデミー賞を総なめした「愛を乞うひと」は観たことは観たが,他の「カンゾー先生」や「大捜査線」,「学校」も観てないので相対的に優れていたかはわからない.しかし,「愛を乞うひと」は力作だ.何といっても主演の原田美枝子に尽きる.ストーリーより演技的な迫力でみせる映画と思う.

    36.「6デイズ7ナイツ」by モノ 99.3.15
     ハリソン・フォードの新作です。冒険恋愛活劇というよくあるパターンのつまんない映画でした。よくハリソン・フォードがこんなつまんないのに出たのか不思議です。内容は都会でバリバリ働く編集社のキャリアウーマンが恋人と南の島にバカンス(婚前旅行)に行くことから始まり、その島に渡るのに小さい海上小型飛行艇のパイ ロットでありオーナーのハリソン・フォードととある事から無人島に不時着して助け を待ちながら海賊に襲われたりサバイバルをしながら、上手い具合に壊れた飛行艇を修理して無事に脱出し、最初は仲の悪かった2人が結局は結ばれるというマーつまん ねー話でさー。というわけでこんなん見たらお金がもったいないです。ビデオが出ても借りるのはやめましょう。でもハリソン・フォードと南の島が好きな人にはいいか も知れませんが。

    35.「もののけ姫」by モノ 99.3.15
     やっとTVで放映したので見ました。そして見終わったときの感想は、「何であれだけ騒がれたのにそれほどでもないかな」でした。前評判が高すぎたのか結構期待して見た割にはかなり肩すかしでした。なんだかあの名作?「風の谷のナウシカ」がかなりチラついてこれはあいつの役だろう。とかこの場面は・・・と思うところが多かったように思いました。映像、音響はTVで見たので今ひとつ感動にかけましたがきっと映画館で見ていたらもっと印象は良かったでしょう。まあ大人の鑑賞には耐えられるし子供には何となく理解できると思います。ですが環境問題や人と地球との関わり合いを描いている所は娯楽映画を作っている人たちよりかは一段高いところから見ているようです。それと余談ですが毎週日曜日の朝9:30より東京12chで放映している「ガサラキ」という題名のロボット物アニメを最近チェックしています。監督をしている高橋良輔という人がちょっと変わっていてロボットアニメに政治を入れたりして異質な物を作っているのでチェックしていたのですが、先週の放送で「人類はこの数百年もの間繁栄という上り坂を歩いてきたがここで胸を張って下り坂を歩く勇気が必要ではないだろうか」と言わせている。現在ガサラキの放映内容はアメリカが日本に対して何か軍事行動を起こそうとしている最中で、その裏には食糧問題が見え隠れしている。 まあかなり堅い内容なので人気は出ないでしょうがおもしろく見ています。最後に「もののけ姫」の海外での評価はいかがな物なのか知りたいですね。

    34.「BAR<バール>に灯ともる頃」by モノ 99.3.15
     今は無きマルチェロ・マストロヤンニとマッシモ・トロイージの父子劇である。内容は兵役中の息子を訪ねてきた父親との会話劇で、何とか心を通わせようと色々と話をする父親と、ちょっと父親は苦手だなと思っている息子との関係が少しづつ好転していく様を1日の出来事として描いている。久しぶりに会うがなかなか話が転がって いかないもどかしさと、ちょっとした言葉で怒ったり、悲しんだりする喜怒哀楽の表現の豊かさか加減が見所である。この映画を見て多くの男性は自分と主人公とを重ね 合わせるでしょう。私もその一人だからです。見終わったときになんだか優しくなれる。そういった1本です。是非男性には見ていただきたい。それと、息子の恋人役で「ニキータ」のアンヌ・パリローがちょこっと出ていたのには驚きました。作品は1989年の製作です。

    1998年の「映画」を振り返ってby 犬 99.1.7

    まずは邦画では「HANABI」、洋画では「プライベートライアン」がベスト、次点で「タイタニック」。今年の邦画は例年になく良質な作品が揃った年でした。また偉大な俳優、偉大な監督も失いました。特に「黒澤明の死」はいつかはその日が来るとは思っていながら日本映画いや世界映画いや世界の芸術において大きな損失です。歴代の映画関係者は「大きな壁クロサワ映画」に対し時には否定しながらも結局はその偉大さに感服して現在に至っています。またもう1人の偉大な監督「木下恵介」も亡くなりました。絶頂期のクロサワ映画とベストテンを争った程の日本映画の巨匠です。小津と並んで今日のホームドラマの基本を築いたとても日本的な監督でした。クロサワ映画が小さなテレビ画面ではその迫力が半減してしまうのに対し、木下映画こそがテレビ画面で丁度いいサイズでした。しかし、その木下映画も今の日本人にとってはそれ程魅力的には映らないでしょう。そして「淀川長治」も亡くなりました。欠点のある映画でもそのわずかないい所を大きく大きく表現して人に紹介した映画人にとってはその存在は計り知れない人物だったようです。御冥福をお祈り致します。

    以下に参考までキネマ旬報1998年ベストテンを紹介します。

    邦画

    1.HANABI

    2.愛を乞うひと

    3.がんばっていきまっしょい

    4.カンゾー先生

    5.CURE

    6.学校3

    7.犬、走る/DOG RACE

    8.愚か者/傷だらけの天使

    9.時雨の記

    10.絆

    10.中国の鳥人

    洋画

    1.LAコンフィデンシャル

    2.プライベートライアン

    3.トルーマンショー

    4.タイタニック

    5.フルモンティ

    6.桜桃の味

    7.グッドウィルハンティング/旅立ち

    8.河

    9.モンタナの風に抱かれて

    10.ブギーナイツ

    33.「TAXI」by モノ 99.1.6

     かのリュック・ベッソンが脚本と、プロデュースをかって出たという前評判も上々の作品であったので結構期待して見に行きました。いやーなんだかこれは・・・確かに車が、バイクが走り回って楽しい映画ですがストーリーがかなり貧弱でした。内容はピザの配達をしていた男が、タクシーの運転手にあこがれて、夢が叶ってめちゃくちゃスピードを出して時間に間に合わせる運ちゃんになるがひょんな事で警察に捕まって警察に協力する羽目になり銀行強盗団(メルセデスに乗っているからメルセデスとはあまりにも安直)逮捕に力を貸すことになるのだが、あまりにも警察が無能でどうしようもないのが最近の流行なのか?アクションとラブコメとゴッチャにしたような感じなのが今一歩なのかアクションシーンが少ないのが問題なのかどうも中途半端なのが決定的な欠点のような気がします。だいぶベッソンの力が落ちてきているような気がします。この次の「ジャンヌ・ダルク」がこけると致命的なことにもなりかねません。監督を務めたジェラール・ピレスはどこに行ったのかかわいそうな感じさえします。車がガンガン走るのを期待すると肩すかしを食らうこと請け合いです。

    32.「フラッド」by モノ 99.1.6

     見る前の第一印象はまあ大したこと無いかなと思っていましたが結構いけます。洪水のパニックと現金輸送車襲撃団との争いが混ざり合っておもしろい作品となっています。内容は現金輸送をしている主人公が立ち寄った町で洪水に遭い身動きできないところを襲撃団に襲われ、主人公は金をしかるべき所へ隠すが、警察に捕まって留置所にとらわれあわやと言うところで助け出されるが、襲撃団に捕らわれてしまい仕方なく金を渡そうとするが金が無くなっていて・・・・と後は見てのお楽しみ。ストーリーがよく書き込まれていて次ぎどうなるのか見えない点がこの映画をおもしろくしている要因の一つでしょうし洪水という自然災害を合わせたことによる目先の変化もこの映画をおもしろくしている要因の一つにあげられると思います。それと襲撃団のボスを演じるモーガン・フリーマンのキャラクターが主人公であるクリスチャン・スレーターを完全にしのいでいるのは仕方がないことですが、クリスチャンもよく頑張っています。ビデオになっているかちょっと分かりませんが見て楽しめると思いますのでお勧めです。

    31.「ラスト・ゲーム」by モノ 99.1.6

     スパイク・リー監督の最新作ですが地味な作品なのであまり上映している映画館がないのが残念に思われる作品です。日本のプロ野球のドラフト問題が今年とあるスカウトの死によって大きく問題視されたことは記憶に新しいと思いますがこの映画も可能性豊かな高校生を取り巻くプロ(エージェント)と大学との熾烈な争いも話の大きな軸として書かれています。私は日本のドラフトに比べてアメリカのドラフトは結構整然と行われていると思っていましたが、裏ではかなり熾烈な競争が行われていたことが分かります。(一応フィクションですが現実とそう大きな隔たりはないでしょう)それと忘れてはいけないこの映画で最も大事なテーマ親子の関係である。この点については日本もアメリカもそう違いはないように思えます。 内容は、数年前に些細なことから妻を殺してしまった父親が、ハイスクール全米一のバスケットボールプレイヤーとなった息子を刑務所長の命により、時の権力者の出身大学へ息子が入学するように説得することを条件に刑の執行期間の短縮を約束され、1週間の間にその大学への入学請願書にサインすることを命じられる。しかしこの息子はとても父のことを憎んでおり父と会おうともしないが、周りの信頼していた恋人や父親代わりのおじさん、ハイスクールのコーチなどにことごとく疑問を持ち始めるようになり大いに進路に対して迷うこととなる。そこで父の登場となり父は入学請願書のサインと引き替えに息子にゲームを挑むのであった。 見終わってみてハイスクールの生徒と高校生の生徒との間にはかなり大きな隔たりがあるように思いました。これはごく私的な考えなのですべての人達にはあてはまら無いかと思いますが、アメリカの運動選手は大学に行くことがほとんどのように感じられます。それは運動ができなくなった後のことを考えてのことだと思います。しかし日本では野球、サッカーなど高校生の時から早くプロになってお金を稼ぐこと、活躍することを第一としています。まあ日本の場合いくら大学を出ていてもほとんど勉強はしていないでしょうから、高卒と比べても50歩100歩でしょうが、アメリカは大学を出るのが難しいとよく聞くように大学を卒業すると言うことが一つのステータスであり社会的地位を得ることの一つと考えられる。よってスポーツだけでなく学問もしっかりやらないとダメであるということだと思います。 まあ話はそれましたが色々と考えさせられる映画であることは確かです。この正月映画でお勧めの一本でしょう。

    30.「ドクター・ドリトル」by モノ 99.1.6

     昨年最後の映画でした。早速ですが内容はないです。エディー・マーフィーの独り舞台です。今回は動物と子供ど言う強敵に相対してエディーがどのような位置にいるのかというのがとても興味がありましたが、何とかエディーの勝ちのようでした。まああんまり難しいことを考えずに楽しめる映画です。やはりこういう映画が年齢を問わず大人から子供まで楽しめるエンターテイメント映画という物でしょう。お金を払ってまで見る必要はないかもしれませんがレンタルされたらば気軽に見れる1本です。

  • 1998年の「映画」を振り返ってby モノ 99.1.6
  •  今年は「黒沢明」「淀川長治」「木下恵介」という大きな看板を失った年でした。改めてこれらの人達の偉大さを思い知ることでしょう。 さて記憶に残った映画といえばやはり「ゲーム」でしょう。詳細はホームページを参照してください。今年は自分にとってこの「ゲーム」を越える作品を見ていないように思います。年間20〜30本程度しか見られないのですが、その中でこの作品を選びました。中には何でこんなのを作るのかと頭をひねる物もありましたが、良い物も多かったように思います。今年は「スター・ウォーズ」の新作もあり楽しみな年となることを期待したいと思います。

    29.「始皇帝暗殺 The First Emperor」by 犬 98.12.2

     構想8年、製作費60億円、製作期間3年、タイタニックやジュラシックパークなどの作り物ではない超大作です。『紅いコーリャン』『さらば、わが愛/覇王別姫』で有名な中国第5世代監督の中心人物チェン・カイコー監督、アジア一の女優コン・リーそして現代中国映画の顔チャン・フォンイーの共演と来れば期待はまさに「紅いコーリャンよ再び」でした。しかし結果は遠く及んでいません。時には黒澤映画のように馬が走り、太鼓が鳴り響き、時には新藤映画のように人間のエゴ剥き出しに、豪快に映画は進んで行くのですが、どうも、視点がはっきりしていません。始皇帝、その妻、暗殺者の3人が中心ではあるのですが、肝心の3人についてよく分らない所が多く有り、かえって登場時間は少なくても印象に残る人物達がいます。歴史もの運命というか登場人物を説明している内に時間が来てしまい肝心のドラマに入れないのです。あるいはこのドラマ、中国では日本の忠臣蔵のようにお馴染みの題材のようですからある程度、観客に予備知識がある前提で作りあげたのかも知れません。本国での上映も大々的に完成試写会が行われていたにも関わらずその内容がイマイチ難解ということで再度、本国用に再編集している最中だそうです。この映画で必要以上にこだわっている事があります。それは独裁者始皇帝が自分の父親が誰であるかという事にこだわっています。また自分が幼い頃人質で苦しんだ思いを晴らす為にその復讐心がより残虐な殺戮戦争にエスカレートしていきます。この「父親」と「復讐」。以前、NHKテレビでチェン・カイコーが話していた事を思い出します。彼の青春=文化大革命なのです。よってその運動に無抵抗に参加させられ、その事が後の第5世代と呼ばれる文革批判の映画監督達の基本エネルギーになってはいくのですが、当時、同じように映画監督をしていた父親を糾弾する集会に参加したという事です。当時、既存の芸術家達は反革命分子とされて親子の間でも糾弾するような時代だったのです。そしてそういった知識人達は農村へ追いやられたのです。このチェン・カイコーの作品にはいつも「恨み」「復讐」「肉親」そして「赤」といったキーワードが出てくるように思います。また映像もかなりの出来です。彼は今や数少ない大画面でみるべき監督の1人でもあります。

    28.「トゥルーマン・ショウ」by モノ 98.11.26

     ジム・キャリーの独り舞台といった映画です。内容は雑誌やTVの情報番組などでさんざん宣伝されているのでおわかりと思いますが。一人の男が生まれてから現在ま での生活をすべてTV番組として全世界に放送されているという奇想天外な内容です。それがふとしたきっかけから男にこの世界はおかしいと気づかれ始める。そしてこの世界からの脱出を企てる。この話でおもしろいのは題材が新鮮であること。疑問 を持ち始めた男と、TV番組を存続させる制作側との戦いである。逆に脱出を企て今 まで海に出ることができなかった男がヨットに乗って脱出するところになると「オイ オイ今まで海を怖がってた男がどうして?」となり、ラストは「これで終わりなの」 といった感じで盛り上がりに欠ける内容でした。結構期待して見にいったのに題材は興味を引きましたが話にするにはちょっと消化不良といった感じでした。話の流れは お決まりの道をたどり結末も予想できるものでありふれていました。まあビデオで出 てからでも全然遅くないです。

    27.「アウト・オブ・サイト」by モノ 98.11.26

     いまだに代表作が「セックスと嘘とビデオテープ」のスティーブン・ソーダーバーグが監督を務め、最近注目株のジョージ・クルーニーが主役を張る恋愛犯罪映画であ る。話の進行がハリウッド映画にしてはめずらしく過去(2年前)と現在を行ったり 来たりしてなかなか考えられている。それが効果的にこの映画に効いていると思う。それとストップさせた映像。これが随所に出てきて場面場面を印象づける。しかしかえってこれを多用することによりしつこく思えてきて最後の方になると「又か」と思 わせてしまう。これはマイナス要素だ。内容は賢いが詰めの甘い銀行強盗がひょんな 事から連邦捜査官と出会い互いに惹かれ合っていき恋に落ちるがそれはお互い敵同士そんなことは許されるはずもなく最後は・・・・・まあ想像にお任せしますが。原作は「ゲット・ショーティ」「ジャッキー・ブラウ ン」のエルモア・レナードなので話はとてもおもしろい。特に人種(賢いヤツ、やばいヤツ、ちょろちょろするヤツ、金のあるヤツ)の描写がとてもわかりやすく「ああそうだろうな}と感心してしまった。それと恋愛の場面などはいわゆるベタベタの恋 愛ではなくクールになおかつ熱く激しいけれどもスタイリッシュに映像が切り替わる のであまり嫌みにならない。これは監督に力量によるものだろう。それと出演者が豪華である。「ジャッキー・ブラウン」でドジな捜査官を演じていたマイケル・キートンがほとんど同キャラで出ていたり、サミュエル・L・ジャクソンが囚人を演じていたりカレン・アレンが富豪の愛人を演じていたりそのほかきっと見逃している大物小物がいると思うが見ていて飽きない。まあこの作品は監督の再出世作となるやもしれない。それだけおもしろい物に仕上がっていると思う。私は好きですこの作品。

    26.「マーキュリー・ライジング」by モノ(98.10.29)

     さて久しぶりなのでちょっと軽めのを選びました。思った通りの展開で特別スリリングなところもなかったしありがちなハリウッド作品でした。でもやっぱり子役の子は上手いと思います。よく子供と動物を出しておけばヒットするなどと言われていますがこの子役は自閉症の子をよく演じていたと思います。まさしくブルース・ウィリスを食っていました。アレック・ボールドウィンなんてどっかに飛んじゃっています。内容はおとり捜査をしていたブルースがもう少しで犯人たちを自首させようとしていた矢先強行突入によって犯人を皆殺しにされたためその場の責任者にくってかかって左遷された後に、アレック扮するNSUという国家組織の暗号文を自閉症でパズル好きのサイモン坊やが解いてしまうことから話が始まる。このからくりが傑作で、どんな高度なコンピューターでも解き明かせなかった暗号文を「もしかしたらどこかのパズル好きなマニアックな人間が解いてしまうかもしれない」という仮定を元に暗号文作成担当者がパズル雑誌にこの暗号文を載せて解ける人がいるのかリサーチしてみる。といった具合で最近の国家的実験や陰謀がよく映画で取り上げられている背景を考えると結構「そんなこともあり得るな」と妙に納得してしまう。(「Xファイル」のいろんなエピソード、「陰謀のセオリー」のメル・ギブソンがなぜか”ライ麦畑で捕まえて”の単行本を気持ちを落ち着かせるために買うのか、「セブン」図書館でちょっとこの本を読むやつはチェックしようという国家のチェック機構、本当は法にふれることなのにね。)今やアメリカは何でもやりたい放題です。又この少年の事件を担当してなぜかこの少年とプロローグで助けられなかった犯人の少年とがだぶってしまい「何が何でも護ってやりたい」と思うブルースの気持ちには共感できますが画面からはその気持ちが全く伝わってきません。これは監督の力量がないのか、はたまたブルースが大根なのかは判断付きませんが、だんだん「なんだかつまんなくなってきたぞ」と思えるようになってきました。そして極め付きがおねーちゃんの登場です。何の脈略もなくコーヒーショップで出会ってサイモン坊やを面倒見ることになり事件へと引き込まれていく様は「ちょっと女っ気が足りねーからおねーちゃん出せよ!」といってダメだししたプロデューサーが目に浮かびます。あーあーここら辺から一気に駄作モードへ突入していき最後の見せ場も間延びしてつまらなかったです。(窓のガラスが割れてアレックの部下にふりそそぐところなんざダイハードのパクリじゃないか)まあブルース・ウィリスのファンの人ならば喜ぶかもしれませんがまあダメでしょうね。お好きな人はレンタルでどうぞ時間つぶしにはなりますがくれぐれも居眠りなどしないように。

    25.プライベートライアン by 犬 

     監督スピルバーグ、主演トムハンクス、各紙で絶賛の戦争映画。そして興行成績も好調。今年の賞レースの大本命。ざっとこの映画について批判的な記事は見掛けない。でもである。やはり戦勝国が憎っくきナチをやっつけるという映画です。それもナチは皆同一に悪として。仮面ライダーのショッカーのように。顔が皆同じ。この連合国にはお得意のパターンに、実話らしい「ある一人の二等兵を帰国させる為に8人の兵士が救出に向かう、そして帰還したがらない二等兵と共にナチと闘う」というよくよく考えれば「はてな」と思うストーリーですし、随所に黒沢の「七人の侍」が見隠れします。そういう訳でストーリーが開始する前の冒頭30分間のノルマンディ上陸作戦のシーンがこの映画の最大の見どころです。このシーンを見る為にでもこの映画に足を運ぶ価値はあります。まず、音がリアル。カメラはハンディ。またミリタリーマニアにも何かを語らせたくなるような各種の戦争グッズの数々。また感動とされている「この救出作戦の意味」についてもこれまた黒沢の「生きる」がちらつく、「何かの証」の為に闘うという事です。そしてハリウッド特有のやたら語りが挿入されています。少々黙ってくれと思えるでしょう。以上、「プラトーン」には勝ったでしょうが「フルメタル」には負けています。そんな訳でこの映画は肝心のストーリーに少々目をつむってもらえば近年の戦争映画の最高作と言えるでしょう。キャストもなかなかいいです。参謀役の軍曹、スナイパー、弱々しい兵士、そして寛容な元教師の隊長(トムハンクス)。上映時間は2時間50分と長いです是非、劇場で座って見て下さい。

    24.「グッドウィルハンティング」by  犬

     さえない友人達と一緒に居る清掃員だが大学教授をも煙に巻く程の秀才と彼をカウンセリングする教授との交流を描いた映画。ドラマは人間不信で将来の事も全く考えていないそういう秀才が段々と生きる意味や人間の素晴らしさを知って行くというそう珍しくはないストーリー。新参が古参に付いて行く内に段々と人間形成されていくという一種の道徳ものは古くからあったし例えば黒澤の大きなテーマでもあった。またこの清掃員は知識を図書館などの書物から吸収しておりそれに対しカウンセラーは「生身の人間」の話をする。情報過多の生活は確かに物事についての予想はしやすくなるだろう、しかし、生きているものについては予想(知識)通りには行かない。そんな事、何を今さらと思う人にはピンと来ないかも知れない。アメリカではこういう映画がヒットする土壌がある。日本ならば多分、文部省推薦の教育映画にされてしまうだろう。見て欲しい人に見せる機会がない教育映画。

    23.「ディアボロス」by  犬

    被告が有罪と分かっていても無罪を勝ち取り続けている若手弁護士(キアヌ・リーブス)が憧れのニューヨークの一流弁護士事務所に引き抜かれる。その後、オーナー(アル・パチーノ)によって夫人の精神状態よりも仕事を優先するほど与えられた大きな裁判にのめり込んで行く。そして夫人は自殺し、事務所の機密を握る同僚は殺される。どれもこれも悪魔オーナーの仕業。目をぎょろぎょろさせる余裕のパチーノに万年青年リーブスが挑むという展開ならまだしもどんどんパチーノの罠にはまって行くというストーリーです。またこの映画は悪魔、聖書といった我々とは普通余り馴染み無い世界の話とも言えるでしょう。登場してくる人物は殆どが「悪魔の住人」です。それを誇張する余計なSFXも少々あります、そして真実を追求しない法廷劇も少々あります。

    22.「コップランド」by  犬

    警官独自のコミュニティーである町で起きた小さな不祥事事件が大事件に発展してしまいそれをもみ消そうとする側(ハーヴェイ・カイテル)、黙認を続ける保安官(シルベスター・スタローン)、そして内務調査官(ロバート・デ・ニーロ)。最後はお決まりのスタローンがカイテルらをやっつけてデ・ニーロに真実を告げるといったストーリーです。また脇にも主役級の俳優が登場してきますが、なぜこんなにこの映画に集まったのか分りません。それほど大きな映画でもないのです。棒読み台詞で闘わないスタローン、タバコをプカプカふかしているカイテル、さほど正義感そうでもないデ・ニーロ。どうも彼等が出ているから大した映画なのかなと思わせてしまっています。

    21.「ゲーム」by  犬

    この映画を見る事自体がまさにゲームだった。ただゲームをする人、ゲームをする人を見ている人の違いによってこのゲームの味わい方が大きく違う。ゲームをする人にはまさに展開がわからないストーリーで大いに楽しめたであろうが、ゲームをする人を見ている人にとっては何をそんなにたかがゲームに熱中しているのか?と思うだろう。しかしこの映画もっと高い所から眺めれば、ここまでしてわざわざ大掛かりなショーをする必要があるのか?とも思う。最後にもっと高い所から見ればこのゲームメーカーとは一体何者なのか?洗脳集団か巨大ボランティア集団か?いや。。。。

    20.「ブレーキダウン」by  犬

    故障した車を降りた夫婦。夫は車に留まり妻は通りがかったトラックで応援を呼びに行くが、そのまま行方不明になり必死に捜す夫。いい車に乗っている小金持ちだったら誰でも良かった。昨今の海外での邦人殺害事件の原因を調査して行くと大体こういう結論に辿り着く。出だしは恐い映画である、しかし、犯人達の正体が分りあとはアクションになった段階でこの映画はまさに急ブレーキ状態。この監督、恐いのは一瞬しか登場しない腕などっと20数年前の映画で散々分かっているだろうに。

    19.「鬼畜大宴会」by  犬

    自主映画である。大阪芸術大学映像学科の卒業製作作品でありながら97年度ぴあフィルムフェスティバルの準グランプリを受賞し、その後もベルリン映画祭やトロント映画祭、タオルミナ映画祭などから招待されている。内容は70年代の学生運動グループの内部崩壊劇を血のりや内臓をたっぷり用いながらを描いている。監督は当時23歳。キャストもほぼ素人。製作指導は現役の映画監督「中島貞夫」。獄中のカリスマ的リーダー相澤の存在や彼の恋人であり実質的な指導者である雅美の体がなんとかグループを維持していた。しかし相澤の獄中自殺によって精神的支柱の崩壊と日頃から反相澤な年長者山根の裏切りによってアジトは壊滅。こうして山根に対するリンチ殺人、山根の後輩である熊谷へのリンチを経て山林や廃虚での殺戮へ。そして獄中で相澤の信望を得、終始、無言でグループと共に行動して来た藤原による幹部、新人の斬殺そして自殺によってグループは全滅する。映画はここで終わる。そして後述するように各界に衝撃を持って迎えられている。ぴあにおいても自誌のフェスティバル作という事もあって特別の扱いである。この現象はなんだろうか?それほどこの映画が凄いのか?この監督が凄いのか?このテーマが凄いのか?この役者が凄いのか?答えはノーである。どこも凄くない映画である。敢えて言えばこの衝撃の源は平和な今の世の中で平和世代の23歳が撮った映画が20数年前のあの熱かった時代の熱気が「少しだけ」表現できていることだろうそれも現代的に。賛辞を贈る論者達にもそれぞれの視点でこのテーマ/映像に興味を持つだろう。あの時代をリアル体験している世代は「この平和ぼけに若者よよくぞ撮った」であろうし、次の世代は「若者に先に撮られた」だろうし、同世代は「あの特殊効果はキテル」か或いは「全然、興味ない、何それ?昔話?関係ないよ」だ。このようにこの映画は見ている人があの時代のあの事件をどう捉えているのか?という事抜きには語れないだろう。よって少々本編の批評から離れてしまう事を御了承願いたい。以下に記す各者の意見は本映画のパンフレットより抜粋している。

    青山真治(映画監督

    シンプルかつクールな視線劇のさなか、近代日本百年のゾンビが血の海にのたうつ。単性生殖のブニュエルの孫?がどうかはどうでもいい。要はクマキリ氏がモノホンだってことさ!

    :「ちんちくりんな女性ロッカーを起用したり、時代を象徴したかの様な無国籍世界ではちゃめちゃな映画を撮って映像派!美学!などともてはやされている岩井俊二のように今流行りのストーリよりも映像重視の若手監督の発言です。この人もゾンビに興味があったようです。その通り、この映画はスプラッターになればなる程がっかりしていきます、ブニュエル的な表現は皆無です、そこまで登場人物を見つめていません。しいて言えば内臓がうにゃうにゃする子供のお遊びシーンがとんでもない意味でシュールかな?また同じ様な題材を違った役者で撮りつづけている人に何がモノホンなのか教えてもらいたい、チンピラがチョロチョロする同じ様な事を繰り返し撮るような監督が他人をモノホンなんて査定できるのか?」

    あがた森魚(ミュージシャン、映画監督)

    1974年に北海道で生まれてアイスホッケーをやっていた若者が「鬼畜大宴会」を撮っだ。大変な映画だという噂を真にうけて見たのだが、意外とすんなりと、得もいわれぬ懐かしさすら憶えて見終えた。熊切君はあの時代のことをあざ嗤っているだけかもしれないし、その真意は計りかねる。ただ、わかるのは、次々と露わになるだろう映画の鉱脈が、彼の中にものすごい量で眠っているだろうことだ。これは彼と対面しだ時の正直な直感です。

    :「あの時代に浸って懐かしんでいるようです。声をあらげないで、バイクに乗って遠巻きに「あの嵐の中に入って行った友人」を懐かしんでいるようだ。人間的で優しいんでしょう、若者にも寛大です。でもそういう腹の中ではまったくおれたちの熱い時代をスプラッターにしやがってと思っているかも」

    秋元康(作詞家)

    「鬼畜大宴会」は、問題作である。第20回ぴあフイルムフェスティバル/PFFアワード・97に正式にノミネートされていながら、劇場で一般試写ができなかった問題作である。どこが、問題なのかを是非、見て欲しい。おそらく、作品の中身か問題なのではなく、この作品を問題としたこと自体が、問題なのだとわかっていただけるだろう。若き天才、熊切監督がスクリーンの中で、“ことなかれ主義”の時代にツバを吐く。そのレジスタンスを目撃した君は、もうただの観客ではいられない。映画とは、製作者たちのエネルギーに何らかの影響を受けることである。

    :「この作品を問題とした事自体が問題というがこれは多分、過剰な暴力、残酷シーンがあったためであろう、思想的な問題で公開できなかったのではないでしょう。そうそう思想なんて言葉が思い付くシーンも台詞も皆無です。何が当面の目的で活動しているのさえまったくわかりませせんでした。最後に一体どんなエネルギーを受けたんですか?吐いたツバをごっくんして生き残っている自称仕掛屋さん!!」

    内村光良(ウッチャン)

    「鬼畜大宴会」というタイトルを目にした時からイヤーな予感はしていました。そして観終わって本当にその通りでした。

    :「妙な宴会シーンや妙な狂喜乱舞シーンがよく出てくる。それなりにその狂乱ぶりは出ていたと思う。ある意味ではこの狂乱シーンはその後の悲劇の前触れなんでしょうけど、単に酒乱が酔っているだけのようだった」

    黒沢清(映画監督)

    見事なまでにバタバタと人が殺されていく。面白い。熊切和嘉は勇敢にもその点に勝負をかけたようだ。私は動揺した。

    :「言い換えれば人を殺して内臓をえぐり出し握り潰す、こんなことがしたかったようです」

    後藤ひろひと(作家)

    世界中の子供達に見せたい。

    イヤになったら席を立てばいいんだ。

    彼等から暴力を遠ざけることより暴力に対する嫌悪を抱かせる事が重要だ。

    :「死人の内臓を玩ぶ事を子供に見せてどうなるでしょうか?こういう事はしていけない事として記憶に残るんですか?」

    斉藤綾子(作家)

    リアルな映像と演じる役者たちの迫力に、首根っこをつかまれたように身動き出来なくなる。神経を犯される覚悟で見ないと、見終わった後しばらくは体調を崩すであろう。それぐらい恐ろしく強烈に面白い作品だ。

    :「迫力はあります。でも余りにも真剣に見れば眠気も襲って来ます、その程度です。本編が終わったらさっさと帰りたくなります」

    崔洋一(映画監督)

    「鬼畜大宴会」へのブレイクアップ的共闘宣言

    よくも、まあ、こんな物語を作ってくれたものだ。一切の情感をぶった切り、人問存在への限りなき悪意に満ちた否定。これでもか、これでもかの血の噴出は、無機への助走を、見事なまでに観る者に強いる。そして、出口なきドラマの殺伐とした終焉。熊切和嘉の力技は、我等の世代をして、潜在する破壊への衝動を刺激する。諸君、この醜悪な物語は必見である。

    :「いい題材があっても台無しにする監督です、マークスの山だってこの映画と共通する部分があります。マークスの山は崔監督よってC級邦画になってしまいました。次回は熊切監督の助監をしたらどうですか?そしてもう一度マークスの山に再チャレンジしてください。松田優作の幻影に怯えながら時には親友のようなコメントの連発は止めて下さい。もう一歩先を歩んでいた人ですよ優作は」

    三枝成形(作曲家

    不意打ちだった。このシャイでふてぶてしい二十三歳の才能に振り回されっぱなしの二時間だった。荒れ狂う暴力と不可思議な静けさが画面の中で同居する。何人ももはや黙って凝視するしかない絶対的映画。

    :「せっかくの音楽家なのだからこの映画の音楽についてもコメントして欲しい。この映画の音楽担当は関西の赤犬というインディーズバンドだそうです。和太鼓の多用など音響効果は良かった。」

    篠田正浩(映画監督)

    誰にも真似のできない絶対絶命がこの映画にはあります。熊切君は絶体絶命に追い詰められた人問の浅ましさ、表れ、純粋さ、汚辱を再現されています。真似ができないのは、とても常人には正視できない世界を造形するまでの熊切君の気迫と凝視力です。

    :「松竹ニューベルバーグの中でもっとも俗物化してしまった大監督さん。言葉はイカシますが要は徹底的に虐め抜くという現代っ子に蔓延している残虐さに驚いているのだろうか?それくらい今の人は容易に徹底的に他人を侮辱します」

    田原総一朝(ジャーナリスト

    新しい世代の映画だ。今までの。日本人というものは、わりと淡白なものを好み、映画に関してもドギツイものから目を反らす作り方をしていたが、この作品には目を反らさない逞しいエネルギーを感じた。日本人が変わりつつあるのでは。

    :「でもまだまだ飼っているネコがニャーと鳴きましたなんて目の前の事を映画にしたり小説にしたりする傾向の方が多数派です」

    西川りゅうじん(マーケティングコンサルタント)

    この映画は絶対見てはいけない。もし不幸にして見てしまった人は絶対に他言してはならない。たとえ偶然見るハメになったとしても、そこで見た人・物・事を二度と思い出してはならない。さもなければ熊切和嘉の仕掛けるワナに必ずハマる。

    :「何かつい見たくなるコメントです。」

    橋口亮輔(映画監督)

    どうしても撮らねばならなかった、という作り手の必然のある映画は強い。この映画を単なるエログロでかだづけられないのは、その切迫感故だ。中盤の林の中でのリンチシーンは23歳の監督とは思えない演出力を感じる。血、殺致、腹わた、狂気。その全てに魅かれる気持、それらに酔いしれたい気持ち、自分の周りの世界、自分が過ごして来た時間の一切をぶっ壊し、ゼロから自分を再生したいと切望する想い。僕にはよく分かる。しかし、監督本人も「勢いで撮った」というように、この崩壊の劇を余りに無邪気に描いてしまった。それが許されるのは今回限りの初回特典ボーナス。次もやったらバカだ。その次を早く見せてくれ。

    :「ゼロから再生すると言ってもこれは70年代の話です。我々の時代の話では無いのです。もう全て終わった話です。さらに同志を斬殺して行く事が自分の再生になるなんてまったく意味不明なコメントです。僕にはさっぱりわかりません。崩壊の劇とは全編を通じての事ですから要は全編を勢いで撮るなということでしょうか?」

    林真理子(作家)

    「鬼畜大宴会」を観て、本当にど肝を抜かれた。これほど加減ということを知らない映画があっていいものであろうか。思いっきり残酷で、思いっきり工ロテイツクで、思いっきりおっかない映画である。アマチュアの人はプロのように、映倫だとか映画会社への思惑を考えなくてもいいという特権がある。熊切君はこの特権を充分に生かして、はちゃめちゃの映画をつくったのである。はちゃめちゃといっても、カメラワークの確かさ、自然描写の美しさ、そして時代考証のねちっこさといいすごい繊細さを彼は持っている。はちやめちやなアーティスト精神とデリケートな技術屋心を持っていたら、もう怖いものは何もない。日本映画界はもう君のものだ。

    :「スプラッターバイオレンスにしては大賛辞です。」

    宮島秀司(プ口デューサー

    PFF映画祭で上映されなかった本作の公開に大拍手!弱冠23歳の熊切監督が描く70年代のエネルギーは、久しく日本映画が忘れていた大島渚の初期傑作群を想起させる.リリシズム溢れる純愛ロードムービーを観せて欲しい.

    :「私は全く想起しませんでした、既に大島有り、時代有りでの今です。先人なし、時代読めずの時代ではないです。」

    柳ユーレイ(俳優)

    見だい奴は見ろ、見たくない奴は見るな、俺は二度と見ない。

    :「同感です」

    若松孝二(映画監督

    やろうとしている意図はわかるが表現がまだ未熟。次回作も観せてくれ!

    :「まだまだ俺の作品には近付いていないと言っているようです。そうです、若松監督作に近付こうはしていません。意識はしてると思いますが、なにせ指導の現役監督が監督ですから。」


    18.「タイタニック」by モノ

     もう公開から35週間目を迎えた化け物級のロングランですがまだまだ客の入りは良いようです。朝11時からですが約400席が埋まりました。感想はそんなにんなが絶賛するような内容かなと思いました。やっぱりジェームズ・キャメロンはアクション監督であることを確認できた作品だと思います。確かにディカプリオとウインスレットとの悲恋を軸にしていますがなんと言っても後半のタイタニック号が沈没する間際の人の右往左往する様が見せ場でしょう。水が船底から上へ上へと進んでくる様子や船が斜めになって人々が落ちていくときわざわざ手すりにぶつかったりしながら落ちていく様を細かく撮っている所などキャメロンならではの見せ場作りには思わず笑ってしまう。3時間にも及ぶ映画の中でこんなに長く人々が落ちていく様を描く必要があったのかと思いました。いい加減飽きてしまいます。しかし場面の展開の良さと現在と過去の行き来が旨いため何となく見てしまいます。昔からよくある上流階級と下層階級の男女の恋は人々の心をとらえるのが旨いと言うことでしょう。まだまだこの映画の勢いは続きそうですが、今後この映画を見た人々の記憶に残る映画となっているかはなはだ疑問です。犬氏が「死に際を考えさせられる」としていましたがその通りでありました。そして女性が自立していく時代への幕開けを予感させる写真立ての中身といった細かいところも織り交ぜているところもおもしろいところでもあるが所詮温故知新を実践したにすぎないのではないか。まるで日本音楽会の小室現象に似ていないか?。とは考えすぎであろうか。

    17.「レインメーカー」by モノ

      コッポラの作品ですが、原作があのヒットメーカー:ジョン・グリシャムと来たらきっとコッポラの入る余地なんか無いのではないかと思っていましたが半分当たっていました。このグリシャムの話はほとんど法廷劇、又はそれに関係する弁護士や、法律家のことを描いていますが話の結末が見えないのでとても見ていて旨いなあと感心する作家です。(単に法律の知識がないので弁護士大国アメリカでは当たり前のことなのかもしれませんが。あと原作の小説は一つも読んでいません)内容は弁護士を夢見る青年が初めて挑んだ法廷を軸に白血病で苦しむ青年との友情、暴力夫におびえる人妻との恋を絡めながらまじめに実直に相手の巧妙且つ手慣れた一流弁護士団と戦いながら成長していく姿を実にさわやかに描いた佳作と思います。決して二枚目とは言えないながら主人公を実にみずみずしく生き生きと演じているマット・デイモンにはとても好感が持てます。今後は善人ばかりでなく悪役も出来そうな面構えが気にいりました。そして敵役のジョン・ボイドも実に旨い、狡猾な弁護士団を率いての振る舞いは風格すらあります。(ジャングルで蛇と戦うよりよっぽどに合っている)ダニー・デビートも相変わらずちょこまかといい味だしています。他にも裁判官役のダニー・グローバー、保険会社の社長にロイ・シャイダーとちょい役にも大物が出ているのも楽しみなところです。これもコッポラのなせる技なのでしょうか、この映画を見るとアメリカの何でも裁判にする体質と、その裁判で勝って報酬を得る弁護士達に対していくらかの皮肉が混じっていると感じました。それは主人公が最後には弁護士として今後生きていくことをやめてしまうことにあります。弁護士としてではなく法律を教えていくことを選ぶのです。とても青臭い結末ですが弁護士として最初の裁判に勝ち今後も勝ちを要求されるプレッシャーを恐れてのことだと言うことと、このまま弁護士として歩んだとしてもきっとジョン・ボイトの様にならざるおえないと感じたからだというのが理由だということです。話のテンポはとてもよく2時間を超える長さを感じさせませんでした。ここいらへんがコッポラかなと思うところです。でも別にコッポラでなくても良いのではないかと感じます。私個人としてはお勧めです。でもコッポラの作品と言うことであれば去年の「ジャック」の方がお勧めです。こちらの方がコッポラ色が出ていて楽しめます。ちなみにレインメーカーとは弁護士用語?で雨を降らすがごとく金を儲ける成功した弁護士のことを指すと言うことだそうです。

    16.「不夜城」by モノ

      たぶん前売り券を頂かなかったら封切りに合わせて見に行くなんて事はなかったと思う映画でしたが内容はまあまあ見れるじゃないかといったところでしょうか、原作の方は結構な評判で以前、TV番組でこの原作者:馳星周氏なる人物が内藤陳氏(日本冒険推理小説会(?確かこんな階だったと思う)の会長)と対談しているのを見たおり内藤陳氏が「今後不夜城前と不夜城後という風な区切りができるのではないか」と誉めていたほどだ。何でもこの馳氏は新宿ゴールデン街にある内藤陳氏の飲み屋で働いていたことがあるということちょっとは影響しているのだろう。この映画で強く感じたのはとてもクール悪く言えば淡々とした一定のトーンで話が展開していくことだ。以前見たギャング映画「ミラーズ・クロッシング」となぜかだぶる。特に主人公のクールさ加減が同一に思える(ミラーズ・クロッシングの主人公はガブリエル・バーンが演じた)以前犬氏が前半は寝てしまったと書いてあるが、それもうなずける展開ではある。やはり香港の監督が撮っているため日本人が撮るのとは自ずと異なってくるのは当然だがあのゴミゴミした歌舞伎町がとてもスタイリッシュに見えてくるのはとても新鮮であったきっと日本人が撮っていたらもっと汚らしくリアルに撮っていたと思う。内容は日本という外国で暮らす台湾、香港、中国(地域によってグループが異なる)の帰化人達の歌舞伎町を巡る陣取り合戦の抗争に巻き込まれながら人間としてとても大事で時には弱点ともなる愛という感情をある謎の女性によってかなり減少させられてしまう主人公を描いた映画だと解釈している。約2時間という短い時間に一つの話をまとめるのは難しい事を裏づけるがごとく最後の方になるとかなりゴチャゴチャしてきていかにも「急いでいます」と言った感じで進んでいくのと各グループの勢力がよくわからないこと、中国残留孤児二世達の苦しんだ学生時代のことなどきっと小説には事細かに書いてあるのだろう。あとかなりがんばって謎の女を演じていた山本未来(テンション高過ぎ世界的服飾デザイナー:山本カンサイの娘)ではあったが顔がノッペリしているのも問題だが今ひとつ存在感が薄いこれは監督の意図した全体のトーンが一定な為であるがなんかかわいそうでもある。(そういえば数年前にTV朝日で放送していた日本版Xファイル、又は現代に蘇った怪奇大作戦といえる「BLUK・OUT」に出演していたときもこんな感じだったかな?)そして出番は少ないが切れた男を熱く演じていたとっても自分勝手な椎名桔平は一番光っていたかもしれません。そしてとあるグループの長老を演じている鈴木清順、このジジイはもうこのまま俳優として残りの人生を送るのでしょうきっと。まあいろいろ書きましたが作品として私はそこそこ気に入っていますので興味があればビデオ等でチェックしてください。

    15.GODZILLA by 犬

     巨大化したイグアナの話なのだから日本の伝統「ゴジラ」と比較してもしょうがないです。でも日本の「ゴジラ」だって怪獣対怪獣のお子様ランチも多数ありました。ゴジラが出て来てそれでよしとするような映画が。大の大人がゴジラのビニール人形に何十万も出すような今です。ビニールの人形ににです。ヨダレ掛けを掛けている幼児が砂場で遊ぶようなビニール人形にです。アトムやドラエモンの絵柄のネクタイをするサラリーマンもいる今です。家に帰って子供と一緒にポケモン遊びを真剣にする父親もいます。そういう幼稚化した物に敏感に興味を示すような「少年の心を持った大人」ではなく、「幼児期のままで少年にもなれない、図体だけの大人」にとって分身ゴジラのこの変わりようにはショックでしょう。そうではない人にとってこの映画はどうか。監督は「インデペンデンスデイ」、ストーリーは「ジュラシックパーク」や「ロストワールド」。これまで言えばわかると思います。そうそう追加としてジャンレノが要所要所でこの映画をかっさらっています。

    14.L.A.コンフィデンシャル by 犬

     良く無い事だが前評判が良かったり、色々な映画賞を受賞していたりすると「さてどこがそんなに評価されたのか?」「さてどこかに穴がないか?」などとちょっと構えて見てしまいます。さらに原作もベストセラーです。この映画もそうでした。その結果、評価された点は3人の刑事の人物描写の巧さで、穴は肝心なストーリーです。この双方をそれぞれ強調する事は簡単でしょう。それくらいはっきりしています。この監督の力量はその描く世界が小さければ小さい程発揮されるようで、今回もまあその方向ではありますが、まず大ベストセラー原作ありも手伝ってか、新たな挑戦というよりは、出来るだけ自分の得意な世界に持ってきてしまったという感じです。よって警察以外の人物についてはどうも描写がイマイチで、一体、何なの?という疑問が沸いて来ます。

    13.「ブラス」by 犬

    最近、元気のいいイギリス映画。この映画、評判もなかなかいい。内容は廃坑になりかけている炭坑の炭坑夫で構成されるブラスバンドがコンテストを勝ち進んで行くという感動の話です。山田洋次も推薦しています。またサントラもヒットしちょっと前のタワーレコードのクラシック売り場では大きく宣伝されていました。ここまで予備知識があればもう見るしかないとビデオを早速借りました。廃坑という不安と背中合わせのまま汗と涙の努力で勝ち進み、途中、指揮者が病気で倒れるなど、まさに山田洋次の世界です。悪人の決して登場しない山田洋次と少し違っているのはラストにきちんと「廃坑」という時代の流れに対して自分なりのメッセージを詠っていることです。「人はアシカやイルカに対してはすぐに手を差し伸べるが我々のような立場の人には手を差し伸べない」。この台詞が映画のラストで優勝トロフィーの受賞を拒否する指揮者から発せられます。これで多くの人の共感を得た映画なんでしょう。解らないでもないです。でも逆に「もののけ姫」という「アシカやイルカの側から描いた映画」にも人は多く共感します。またこういうスローガンは幼い頃から先生にも教えられ、アニメでも絵本でも描かれています。「自然を大切に」。しかしその自然を破壊する事で生計を立てている人も大勢居る訳です。食鯨やエスキモー達の生活習慣など西欧思想とは異質な食文化圏に居る人達も大勢居ます。「地球に優しく、自然を大切に」これをスローガンに押し進めるならば例外なく押し進めるべきです。炭坑が時代にとってもはや不要ならば廃坑にするのは当たり前の事と考えるのは簡単です。滅び行くものには何か哀愁が漂います。滅び行く人達もに何か哀愁が漂います。この映画、何かそういう哀愁が漂っています。ただだからと言ってラストのメッセージにコンテストの聴衆と同様に拍手を送る事は出来ません。よってこの映画にもそうそう拍手を送る事は出来ません。

    12.「ディープ・インパクト」by モノ

    行って来ましたやっぱりデカイ画面と大音響はいいです。この映画は隕石衝突という人類滅亡の危機を巡る人々の別れを主題とした内容で一大スペクタクルを期待していた人にとっては物足りないでしょうなんと言っても最大の見所は隕石が地球に衝突して大津波がニューヨークの摩天楼を飲み込むシーンだと思いますがすでにこれはコマーシャルで何度も目にしているので新鮮みが足りません(たとえ大画面大音響といえども)それに人々の別れを描いている割にはなぜかあっさりしていてとてもドライな印象を与えます。つまりお涙ちょうだいの場面でも 涙をためるまもなく別の場面へと画面が変わってしまうのが原因と思います。序盤の 隕石破壊作戦でベテラン宇宙飛行士のロバート・デュバルと若手宇宙飛行士達との対立と和解そして・・・。結論から言うとつまらないけどテンポがいいので見てしまう が内容が薄いように感じられる。まあ見るなら見れば?でも津波のシーンは良かった。

    11.「不夜城」by 犬

    映画の批評するにはその映画をどれだけ見た場合に成立するのでしょうか?この映画の1/3は寝ていました。よって2/3を観たという前提で書いています。オープニングの微かな記憶と次のシーンはもう山本未来が登場していました。その後はきちんと観ましたが。金城武についてはこれまで2枚目半の役がいい印象だったので今回のようなハードボイルドな役柄はどうかという不安を持って観ていました。結果、残念ながらその通りでした。まずはっきり言ってストーリーがつまらない。ヤクザなのか恋愛なのか歌舞伎町紹介モノなのか。意味ありげに登場し、意味も無く死んで行く人が続出する映画です。眠らない町、不夜城を眠らないで観た人の感想が聞きたいです。

    10.「ジャッカル」by 犬

    ブルースウイルスとリチャードギアの初共演。この二人、なかなかいい。ブルースウイルスはダイハードでこれまで闘って来た悪党を集約させたような残虐で変質的なスナイパー。リチャードギアはジャッカルの策略で投獄されたというの元IRA戦士。細々見て行けば少々脚本が弱いとか思うかもしれないが、そこはこの二人とFBI副長官役で登場しているシドニーポワチエ、ロシアのKGBの女捜査官役のダイアンヴェノーラの出演でそうは思わせない。ただ一国の要人暗殺を計画するのに、国際戦争級の武器にロシアンマフィアなどスケールを大きくすればする程段々と前作「ジャッカルの日」との差が開いてしまうのは残念。前作ではドゴール大統領暗殺の為、窓からライフルで射撃した。これが現代では船でドデカイ武器を輸送し、それをコンピューターを駆使して思いっきりぶっぱなし、一般市民も巻き込む惨事を引き起す。しかし、現在、こういう事が起きても不思議ではない時代になっているから怖い。

    9.「ナッシング・トゥー・ルーズ」by モノ

    ティム・ロビンスとマーティン・ローレンスのコンビによるコメディーですこれ は全体としてはいまいちかなと思わせる内容ですが出てくる人々が笑えるのです。まずはSEX関係の古物収集家の変にテンションが高い上司。めちゃくちゃビンタのスピードが速くばんばんマーティン・ローレンスを殴るとてもファンキーな母親。主人 公コンビと間違われる本物の強盗ドジ2人組。そして印象的なのがたった1度しか出てこないがラジオから流れてくる音楽に合わせて踊り、歌いまくる警備員こいつがい い!出てくるなりマグライトを拳銃に見立ててアクションを決めたりして何かやりそうな雰囲気を出している。まあ脇役が目立っちゃしょうがないがお決まりの話なので 退屈しました。

    8.「フェイス・オフ 」by モノ

    アクション・アクションの連続で細かいことを気にさせない内容でぐんぐん引っ張っていくのがこのジョン・ウー監督の持ち味でしょうが2人の主人公のジョン・トラボルタとニコラス・ケイジという今絶好調の俳優をとてもうまく使ってなかなか楽 しめる作品となっています。なーんにも考えずに画面だけを見てドンパチやって人がバタバタ死んでいくのはとてもストレス発散には好都合です。アクションシーンはペ キンパーばりにスローモーションを多用して雰囲気を盛り上げてくれます。この監督はとてもアクションの見せ方がうまいそれだけで持っている作品でもありますがやっぱり2人の俳優の悪役になったときの切れ具合がなんといっても一番の見所ではない でしょうか?1本の作品中で善玉悪玉の両方を演じるのはきっとおもしろいことだと思います。まーこの迫力を体験するには映画館に行った方がよいのですが作品の出来としては平均点ですのでお好きな方はどうぞといったところです。

    7.「ゲーム 」by モノ

    全然期待しないで見に行きました。しかし意味ありげなオープニング主人公のマ イケル・ダグラスのいつもの疲れ切った日常から非日常へ否応なく引きずり込まれるように「何で俺はこんなことに巻き込まれてしまうんだ?」という演技はもうこの人 の十八番です。いやこのキャスティングはマイケルの他は考えられないと誰もが思うはずです。もう一人の重要な役どころで出番は少ないが要所要所に出てきてはすごくいい味だしているショーン・ペンも見逃せない存在です。そして物語のキーを握る謎 の女をデボラ・K・アンガーが演じています。この女がくせ者で・・・・これ以上書くと色々な先入観を持ってみてしまうのでやめにしますが感想を一言「久々にやられました」一応話題にはなっていましたがあまりチェックの対象にはなっていませんで した。今年の前半戦の中ではかなりいい作品と思います。何しろ先が読めないのがいいところですそしてエンディングロールを見ていたら監督が「セブン」のデビッド・ フィンチャーではないですか、なるほどと思っていましたがこの作品の一番の功労者 は脚本のジョン・ブランケートでしょう。とにかくこれは見ておく必要がある作品と して皆さんにお勧めします。最後にこの作品はある意味で「セブン」より怖い物語で あるということをひしひしと感じました。「セブン」は確かにジョン・ドゥーという 特異だが「こんなヤツいるかもなー」的にどこかおとぎ話のような印象でしたが 「ゲーム」は現実に私たちの身の回りに起こってもおかしく無いというのが怖いと思ったところです。

    6.「ドーベルマン」by 犬

    元気がありますね。リュックベッソンも何年も高額な寓話に係わっている内にこの元気さがなくなってしまったんでしょうね。キレそうな役ってのは何も被り物を派手にすればいいんではなくって目で口で額で十分伝わるモノです。元気のイイ若者達がキレキレの刑事達と闘う話です。乾いていないマッドマックス達と言えばいいでしょうか。

    5.「プライド  運命の瞬間(とき)」by 犬

     東映作品です。力作だとは思います。労組が異義を唱えたという事からどこまで寄った内容かと思いましたがやはりソフトにしてあります。どれもこれもソフト過ぎています。見せ場の一つ、東京裁判の論戦場面のチープさ、苦悩ばかりしていてよく意味がわからないパール判事、そしてこれは無用のキャスト、ホテルマン(大鶴義丹)のインド独立関連等など。当時のフィルムの挿入や再現セットなどは力が入っていました、そう言う意味での力作です。それともう一つ、さそりシリーズの伊藤監督はさすがに監獄にカメラが入ると画面がしまり始めます。この際、監獄で始まり監獄で終わった方が良かったかも知れません。やっぱり、東映映画です。

    4.「タイタニック」 by 犬

    勢いがまだまだ止まらないそうです。何度も観る人も居るようです。そういう私もこの異常ヒットにつられて観に行きました。乗り物パニック映画というジャンルがかつて大流行りしました。船が沈没したり、高層ビルが大火災になったり、飛行機が故障したりと大スターを配した大作映画が多く作られました。確かにその一連の映画とそう変わりはないと思います。ただ違うのはその人々が運命に対しての受け入れ方が今までのパニック映画とは違っています。1人のヒーローがスーパーマンになって人命を助けるのではなく、色々な階層の人達がそれぞれのドラマを演じているんです。ある演奏家達はいつ演奏していても誰も聞いてくれてないでも最後くらいは時分達の演奏をしようじゃないか。ある老貴族は最後くらい高級な酒を飲ませろ!!と。ある老夫婦はそっと手と手を取り合ってベットで寄り添う、ある船長は船と運命を共に、そして住む世界の異なる恋人達も。。。広い世代に受けたのもそれぞれの世代に近いそれぞれの人達のそれぞれのドラマが3時間という長編に描かれているからでしょう。どんな困難にも勇気を持って立ち向かう事よりも、逆らう事の出来ない大きな運命の前にはジタバタしないという、生きざまではなく、死にざまを描いています。どう死ぬか、或いは死ぬ時に誰が脇に居るかという事なんでしょう。「船が沈没して何が面白いの?」とある批評家は言っていました。それにはこう答えたいです。「船は沈没しますが、人間の心意気は沈まないんです」と。

    3.「ビーン」 by 犬

    今やすっかりお茶の間の人気者になってしまったビーン。この映画、ビーンの面白さを殆ど理解していない人達が作り上げてしまった映画です。テレビシリーズのあの面白さを期待して観に行くのはよしたほうがいいです。テレビの影響かこの映画ちゃんとストーリーになっていますが、まずそれがつまらない。ビーンって人は謎が多い方が面白いのです。どこに何しに行くのか或いは何の為に来たのかそういうのは要らないのです。彼はたまたまここ(地球)に舞降りて来たのです。

    2.「エヴァンゲリオン Air まごころを君に」by モノ

    とうとう見ました。最終回です。前回の感想文でも言いましたとおりに、今回もTVシリーズを見ていないとちっともわかりません。TVシリーズを見た私でさえわからないのですから・・・・。最終的には皆殺しでした。まあ集団自決とも取れますが、みんな人間どもが死んで次の世代にすべてを託そうという意味なのか、最後に生き残った2人の人間(他にも生き残っているのかもしれないが画面を見る限り2人だけだ)シンジとアスカ、彼らはアダムとイヴなのか。ラストシーンでアスカの首を絞めながら泣いているシンジを目を覚ましたアスカは「気持ち悪い」と吐き捨てるように言った言葉は、監督からこの映画を見に来ている人々に対する思いなのか。はたまた監督自身への自己批判なのか。結局新たな謎というか気になることがでてきてきりがない物語なのだ。 鬼才と呼ばれるように構成は変わっている。たぶん私が見た中では初めてのことだと思うが、一番最後に流れるはずのスタッフ及び関係者の一覧が真ん中に持ってこられていたし、かつそれがDNAモデル図のように下から上に向かってねじりながら進んでいくといったこったやり方をしているところも驚いた。タイトルロール後休憩があり久しぶりに休憩入りの映画を見た。

    1-2.「ジャッキーブラウン」by 犬

    黒人が歩いて黒人音楽が鳴り響く。そういう映画を白人監督が撮った。60年代末期から70年台初頭にブラックパワーに呼応してブラックムービーが量産されたようだが、その中でもちろん日本で未公開であろうB、C級アクションのヒロインだったパム・グリアーには圧倒された。まずスクリーンに登場する迫力が違う。この黒人女優の迫力を見る為だけの映画とも言えそうで、主役級俳優達を脇に配してるからさらにその迫力が増す。タランティーノだからまたまたドンパチするかと思えば殆どなし。何か色々言いたい男達が言えないままに、別にどうでもいい事を話してしまい、そのうち時間や出来事がどんどん進行してしまい、そのまま終わってしまうといったような、短気な人には何か消化不良なそういう、味のする映画です。この味は今のアメリカの味なのか、単にタランティーノの味なのか。

    1-1.「ジャッキーブラウン」by モノ

    タランティーノの「ジャッキーブラウン」を見ました大筋はジャッキーブラウンなる前科のあるスチュワーデスが警察と武器商人との間に挟まれて一芝居うって武器商人の金をかすめ取ろうと言った内容だ。その中でジャッキーと保釈金金融業者とのプラトニックな愛も絡めて描かれている。やっぱりデニーロの存在感あふれるダメ野郎は見ていて大笑いであった。同じくダメ警官のマイケル・キートンもぬけ作を好演している。結局パム・グリアーのための映画であるとしか言いようがない。またタランティーノのマニアックな要素である音楽の選曲も良い。今回はソウルだ。劇中でジャッキーが音楽をかけるシーンがあるが今時レコードである。「金がないからCDに買い換えられない」といっているがどう見てもレコードを出したかったように思える。全体的にバイオレンスは押さえられているがそのぶんここで撃つのかといったタイミングで撃っているのを見て「その男凶暴につき」を思い出した。まあ暇があったら見てもいいんじゃないかという。