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小岩井駅 |
田沢湖線の小岩井駅です。
今から78年前の今日、(当時橋場線の)小岩井駅のこの場所から賢治の旅が始まりました。
その日の天気は曇り、作品に「わたくしはずゐぶんすばやく汽車からおりた/そのために雲がぎらつとひかつたくらゐだ」とあるとおり、時には日も射す陽気だったようです。
賢治が駅に着いた時刻は10時54分でした。
今日も曇りですが、陽射しはなく今にも雨が降りそうです。
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スタート |
まきば園のスタッフの説明で、「賢治ウォーク」がスタートです。
駅前の当時の状況が、詩の本文にそって説明されます。
「あのオリーブのせびろなどは/そつくりをとなしい農学士だ/さつき盛岡のていしやばでも/たしかにわたくしはさうおもつてゐた/このひとが砂糖水のなかの/つめたくあかるい待合室から/ひとあしでるとき……わたくしもでる」
この部分では、「砂糖水」を実際に作って、「つめたくあかるい待合室」をイメージしてみて下さいと説明!思わず納得。
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旧農場入り口 |
駅から、網張街道に出て、まっすぐな道を西へと進み、旧農場入口付近にさしかかったところです。
途中、七つ森の緑が遠くにきれいに見えました。
説明をしているのは、高山さんです。
以前、「まきばの天文館」にもいただけあって星にも詳しい方です。
「小さな沢と青い木だち/沢では水が暗くそして鈍つてゐる」そのままの雰囲気です。
ここからはしばらく未舗装で、賢治の歩いた70数年前とほぼ同じ風景が続きます。
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池 |
旧育馬部付近にある大きな池です。
ここは、当時プールとして利用されていたそうです。
詩の中で、賢治は冬にここを訪れた時のことを回想していて、「冬にはこゝの凍つた池でこどもらがひどくわらつた」としています。
冬になると、氷ついて天然のスケートリンクとなっていたのですね。
昔は柵がなかったそうですが、子供がおぼれたため取りつけられたそうです。
また、池の水は付近の沢から引いているため、とても冷たいのだそうです。
(後日談2001年2月27日追加:最近の調査で、当時はこの池が存在していなかったらしいことが判明しました。
また新しい発見があるかも知れません。)
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本部付近 |
旧本部付近です。
今は赤い屋根ですが、当時は柾葺き(木の板を薄く割って葺いたもの)、また建物も部分的に増築されたというお話がありました。
当時、この付近には桜が植えられていたそうです。
今では、となりの郵便局の横に老木が残っているだけだそうです。
木に近づいてみると、まだ花が少しだけ咲いていて、なんだか嬉しくなりました。
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聖なる場所 |
車が激しく行き交う県道にでると、いかにも農場らしい起伏に富んだ風景が続きます。
賢治が「聖なる場所」と呼びたいと言っていたところです。
賢治は、「そのキルギス式の逞ましい耕地の線が」と言っています。
この辺りから雨がだんだん降ってきました。
四つ森の横を過ぎて、旧小岩井小学校の跡地へと向かいます。
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旧小岩井小学校 |
旧小岩井小学校の跡地です。
まだ桜もいくつか花をつけていました。
つつじの花や野草も花をつけていてきれいです。
ここから農場の道を北上して四階倉庫へと向かいます。
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四階倉庫 |
大きな木造の建物は、四階倉庫です。
現在では文化財の登録を受けています。
大正5年(1916年)に建てられた総木造の建物で、4階構造となっています。
写真は「賢治はこの建物を3階と思っていたようです。」と高山さんが説明しているところです。
今回、賢治ウォークということで、特別に建物の内部に入れてもらえることになりました。
普段は外からしか眺めることができませんが、今回はラッキーでした。
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四階倉庫内部 |
写真は四階倉庫の4階部分です。
内部はとても広々としています。
作物を蓄える場所として使用されていたことや、エレベータで4階まで運ばれ、乾燥しながらだんだんと1階へと下ろされたことなどが説明されました。
作物を下の階へと下ろすために、床にはところどころ穴があいています。
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4階からの風景 |
4階から県道付近を見た風景です。
ガラスが今のものと違い、ところどころ歪んでいて、でこぼこしています。
「小岩井農場」のパート1で、「ガラス障子はありふれてでこぼこ」という表現がありますが、これとぴったり一致するガラスを見ることができました。
付近の樹木がかなり伸びてしまいましたが、当時は木もまばらで、4階からの眺望はなかなかのものであったようです。
この倉庫は、賢治の文語詩などにも登場します。
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おきなぐさ |
四階倉庫から再び県道沿いに進み、天然の冷蔵庫の横を過ぎ、上丸牛舎の資料館の展示を見学して解散です。
資料館の前には、「小岩井農場」のパート1や、賢治の童話にも登場する見事なおきな草が植えられていました。
パート1の方では、「くらかけ山の下あたりで/ゆつくり時間もほしいのだ/あすこなら空気もひどく明瞭で/樹でも艸でもみんな幻燈だ/もちろんおきなぐさも咲いてゐるし/野はらは黒ぶだう酒のコツプもならべて/わたくしを款待するだらう」と書かれていて、賢治もおきな草を見るのを楽しみにしていたことがわかります。
この時間になると、雨も小降りとなり、だんだんと明るくなってきました。
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