松五郎の玉手箱
MASTUGORO'S TAMATEBAKO
ここは我輩の情報保管箱です。(メール、新聞・雑誌の記事、手紙・葉書の投書 等々)

【保管ファイルNo.23】産経新聞 00.8.8「正論」より                  (cf.1304)

「ゼロ・トレランス」が教育を救う

子供たちを不良品にするな

高崎経済大学助教授 八木 秀次

大人社会の寛容な姿勢

 先日、ある地方都市で驚くべき光景に出くわした。平日の日中、駅前の交番脇に止めてあるパトカーを15、6歳の少年二人がニヤつきながら何度も蹴り上げている。気が付いた警察官が「何をしているんだ」と注意したところ、少年たちは待ってましたと言わんばかりに警察官に食ってかかり、ついには肩で警察官を小突き出した。少年たちは恐らく長野県で警察官が拳銃を抜き懲戒免職になった事件を知っているのだろう。少年法で守られていることも知っている。警察官の方も下手に手を出せば首が飛ぶという不安も走るのであろう。警察官は声をあげるばかりで為す術がない。結局、少年たちはやりたい放題を働いて、原付きバイクを二人乗りして爆音とともに立ち去っていった。

 使えない拳銃や警棒なぞおもちゃも同然である。そのことを知っている少年たちには警察でさえ怖い存在ではない。何をやっても制裁を加えられないと思っている。悪事に対する大人社会の「寛容」な姿勢が彼らをますますつけ上がらせていく。

立ち上がった米国の父母

 このような我が国の現状に比して、今、アメリカでは「ゼロ・トレランス」すなわち「寛容さなしの指導」という考え方によって、学校に見違えるほどに規律が戻り、教育が正常化されつつあるという。このことを紹介した中京女子大学名誉教授、加藤十八氏の近著『アメリカの事例から学ぶ学校再生の決めて ゼロトレランスが学校を建て直した』(学事出版)によれば、アメリカの公立学校では細かい校則を作り、規則違反の生徒にはただちに罰則を施行する。程度に応じて、場合によっては「オルタナティブスクール」という矯正のための学校に送致し、身をもって罰を体験させて、反省し立ち直れば元の学校に戻すという方式をとっている。また教科科目においても学問的に高度な内容を子供たちに学習させ、学力の向上を図っている。規律の中で子供たちはむしろ伸びやかで自由で明るい学校生活を送っている。

 「ゼロ・トレランス」は元来、産業界から起こった不良品を絶対に許容しないという理念であったが、これが教育の分野に応用され、子供たちを「不良品」にしないような政策がとられたのである。よく知られているように、かつてのアメリカの教育界の荒廃振りは尋常ではなかった。その原因は1960年代から70年代の前半にかけての新左翼思想の影響にあった。学校の「自由化」「人間化」「社会化」の名の下に従来の学校をすべて解体させ、伝統的な管理体制に縛られない非管理的な教育を行うべきだという理念が主張され、実践されたのである。この結果、アメリカの学校から規律が失われて荒廃し、犯罪が横行した。また学力も著しく低下していった。

 これを憂えて立ち上がったのは当時の父母たちだった。父母たちは草の根で「基本に返れ!」という運動を展開した。学力とは読み・書き・算数の向上であるとし、その向上と、規律の厳正を求めたのである。これにレーガン政権が呼応し、ブッシュ政権が引き継いで、現クリントン大統領も1997年2月に「(学校の)規則を強化し、ゼロ・トレランス方式の確立」を全国民に呼び掛けたのである。これらはルソーやデューイ、新左翼の影響を受けた「自由教育」、「体験教育」、「非管理教育」から決別して、厳格なピューリタンの古き良き伝統に回帰しようという動きであった。と同時に、規律正しく平均的学力の高さを誇っていた我が国のかつての教育のあり方に学ぼうという姿勢でもあった。

規律失わせたゆとり教育

 翻って我が国の現在の教育政策はといえば、かつてアメリカが実施し、手痛い思いをして今や撤回してしまった政策を今ごろやろうというものである。校則を全廃するか緩やかにし、教科内容を易しくすることで子供たちに「ゆとり」を与え、その中で自由に生き方を選択させるというものである。しかし、この「ゆとり」と「自由」が子供たちから規律を失わせ、怠惰で無気力な大人を大人とも思わない暴力的な子供たちを生み出している。

 現在の荒れた子供たちは規律と秩序を重視せず、自由と個性ばかりを強調する「フル・トレランス」な教育行政の所産でもあるのに、文部省は言うに事欠いて、彼らを制御できないのは教師の力量に問題があると無理な注文をする。教育行政がまずやるべきことは現在の「自由」「個性」「ゆとり」重視路線を止め、学校に規律を取り戻して、ごく普通の教師が教科指導に専念できるような体制を確立することではないのか。

 加藤氏が紹介しているアメリカの高校生の言葉は印象的である。「若いときに良い教育を受ければ、将来良い人間になれる」。どういう人間にもなる可能性を秘めた子供の時期に人として身に付けておかなければならない徳目を体得させ、高い学力を付けてやることは当の子供たちにとっても有用なことである。私たちは子供たちにあまりに「寛容」になってしまったのではないか。「自由」や「個性」の名の下に子供たちを「不良品」にしてはならないのである。(やぎ ひでつぐ)  (cf.教育関連資料11)


【保管ファイルNo.24】             『正論』産経新聞社、2000.9月号

 広島県安浦町は私の生まれた安芸郡倉橋町の近くで高校の同級生にもいたように思う。

塾を経営しているとイヤでも小中学校の実態、教員の実態が見えてくる。塾の仕事の一つに私立学校の情報収集がある。学校運営、校長・教頭の人柄、教員の指導力、人間性、言葉遣い、服装。そこに通う子供の姿、言葉遣い等は要チェックポイントである。「高い学費を払って行かせる」私立学校の校長・教頭・教員に対するのと同じ採点基準で公立小・中学校の校長・教頭・教員を測るとその7割に「要注意」マークがつくような気がする。

 数年前、議員時代に広島県の某自治体に視察に行った折、応対してくれた議会事務局の局長が私の高校の先輩で視察終了後、市役所の議会事務局を小学校の教頭をしている高校時代の友人との待ち合わせ場所にさせていただいた。待ち合わせ時間の6時過ぎまで母校の現況(進学実績)などについて話していた折、『もう広島の公立はだめよ。』『うちの教育長は「行政が教育から手を引いて公立を全部、私立にしたら広島の教育はようなるで」と言っている。』と言っていたのを思いだしている。中間管理職の「教頭」氏にこれをぶつけると、驚きもしなかった。それにこっちが驚いた。数年前から、自治体幹部の中には今回の安浦町の「公設民営の学校を開設」は教育改革のカードとしてあったのであろう。

***

公立学校に見切りをつけた私の決断

広島県安浦町長●おきた・のりひこ 沖田範彦

聞き手 本誌・桑原 聡

 広島県は呉市近郊の安浦町で、義務教育に一石を投じる試みが、沖田範彦町長を中心に進められている。部落解放同盟広島県連合会と広島県教職員組合の支配でがんじがらめになっている公立の小中学校に並立する形で、公設民営の小学校を開設し、町民に学校の選択権を与えようというのだ。6月28日、上京した沖田町長に真意を聞いた。

 無力な文部省の是正指導

――町長自らが公設民営の学校を設立しようと考えるのは、現実の公教育に絶望したからでしょうか。安浦町の公教育をめぐる状況についてお話ししていただけませんか。

沖田 終戦後、広島県の教職員組合が立ち上がり、日教組ができた段階で、日教組と合流します。その後、共産党系の全教がそこから分かれた。ところが小森龍邦氏が社会党を辞して新社会党を立ち上げた時点で、広島県教職員組合と広島県高等学校教職員組合は小森氏に追随して日教組から離脱し独自の道を歩み始める。広教組の組織率は県で約40%ぐらいですが、安浦町のある豊田郡から東側は約90%にもなります。

――県の東側というのは部落解放同盟広島県連の強い地域ですね。

沖田 そうですね。県レベルの話になりますが、昭和60年に外部団体の公教育介入を認める八者懇談会合意文書(八者とは、広島県知事、広島県議会議長、広島県教育委員会教育長、部落解放同盟広島県連合会、広島県教職員組合、広島県高等学校教職員組合、広島県同和教育研究協議会、広島県高等学校同和教育推進協議会)なるものが交わされ、平成4年には県の教育長が、部落解放同盟広島県連合会と広島県高等学校教職員組合の委員長に、反日の丸、反君が代、反天皇教育を認める文書を出してしまいます。そういう経緯を経て広島県の公教育は隘路にはまり込んでゆくわけです。平成10年4月、業を煮やした文部省が県に立ち入り調査を行い、十数項目にわたる是正指導を行いました。たとえば職員会議の項目では「職員会議の位置づけ、運用において、校長の権限が制限されることのないよう、各市町村教育委員会及び各県立学校を引き続き指導すること」と県教委に要請しています。ところが、ご存じのように広島には広島県同和教育研究協議会がありまして、その下部組織に豊竹同教、その下に安浦同教がある。安浦町では校長、教頭以下全職員が安浦同教に参加しているため、安浦同教で決まったことだから、校長はそれに従えという論法で、学校の運営を牛耳っているわけです。一事が万事で、現場では文部省の是正指導は無力なんです。

 私は校長、教頭に安浦同教から抜けたらどうだと勧めるのですが、絶対に抜けるとは言いませんね。黙って下を向いていますよ。抜けることに対する恐怖感といいますか、私たちには窺い知れぬことがあるようです。

――抜けることで、学校運営に支障をきたすということは理解できますが、そのほかに精神的、肉体的恐怖が存在するということですかね。

沖田 なければここまで頑なにならないでしょうね。広同教に対して、県もどこの自治体も腰が引けていて、予算をつけていたんです。広同教に県が約50万円、豊竹同教にも豊田郡の十町から予算が出ていたんです。安浦町負担が18万円です。安浦同数へはうちの町から30万円出していましたが、三年前から全額カットし、豊竹岡教に対しては今年度から郡内十町が足並みをそろえてカットすることにしました。

 年に500回以上の会議

――安浦町の小中学校では、何が問題になっているのでしょう。

沖田 まず出張が多い点です。平成10年度ですが、安浦同教の会議は340回で、執行部役員なら75日から99日、非役員でも24日から64日も会議にとられる。これに加えて豊竹同教で118回、広同教、全同教で111回も会議がある。

――想像を絶する回数ですね。これでは自習を強いられる児童も多いのでしょうね。

沖田 子供たちは「先生は出張が多い」と言っていますからね。おかしなことに、県は旅費と日当をつけていたんですよ。それが年1億円に上ると言われている。

――現在も支払われているんですか。

沖田 県は広同教を研究団体として認めない方針を打ち出してくれました。よって支払われないことになります。それとですね、豊竹同教は毎週火曜日を集まる日にしているんです。郡内には島がありまして、そこの学校は規模が小さく教員の数も少ないわけです。そして会議には陸路で行けないので一日仕事になる。学校の教育がおざなりになるのは必然です。

 人事への介入も甚だしいですね。うちの町から隣町の中学へ異動させたことがあったんです。隣町まで10キロしかないんですよ。でも「母が病気でいざというとき間に合わないじやないか」と猛然と抗議する。

 また、教育指導主事が学校の授業内容を見て回る制度があるんですが、安浦では絶対に受け入れないんです。他人に見てもらわなくてもちゃんとした授業をやっていて、指導を受けなくてもよいという主張です。これはいまだに改善されていない。

 安浦中学校の運動会に招かれたら、国旗も校旗もない。ちょうど広島でアジア体育大会が開催されていたので、あいさつの中で、国旗国歌に対する心構えを話したら、安浦町の全教員の名で「何人も教育に介入してはならない。謝罪せよ」という抗議文が届けられた。さらに日教組安浦支部、解放同盟安浦支部、自治労安浦支部からも同様の抗議文が届けられた。私は自治労と解放同盟の幹部を呼んで、「何人も介入してはならない、というのなら、あなたたちも介入すべきではない」と言ったんです。

 安浦には自衛隊員の子弟がたくさんいるんです。呉が近いですから。安浦中学で教員が社会の時間に、自衛隊は憲法違反の存在だから、そこで働く人間は悪いやつだと言ったそうです。細かいことを挙げていたらきりがない。

 そうそう、文部省の是正指導の中に指導要録の記入という項目があったのですが、現実を見てやろうと息子の中学時代の指導要録を閲覧したんです。それがこういう状況なんです(指導要緑の写しを示す)。ご覧のように何も書いてないでしよう。

――教師は何をやってるんですか。

沖田 何もやってないんですよ。それでね、文部省の是正指導の前は、「氏名」の「氏」がいけないという理由で線を引いて消している。もちろん元号も消して西暦に直している。現住所も安浦町まで。それ以上記入すると差別になるという。

 指導要録の記入は教員にとって神経を使う大変労力を要する仕事です。それを一切放棄しているわけです。広同教で書かないと申し合わせているそうです。

 是正指導の後で、次男の中学校時代と小学校時代の指導要録を見たのですが、何も変わっていない。給料を戻せといいたいですね。これがいまの広島県の公教育の実態ですよ。

――完全な職務放棄ですね。

沖田 ひどすぎるでしょう。学校で子供がどういうことを刷り込まれているか、親にはまったくわからない。学校の先生がそんなに悪いことをするはずがないというのが、普通の親の認識ですよ。そこに付け込んで教員は何をやっているのか。腹がたってしようがないです。

――今年の卒業式はいかがでした。

沖田 昨年の中学の卒業式は町の教育長が職務命令を出して、君が代をテープで流したんです。「まさか安浦町で実施できるとは思わなかった」と県も驚いていました。それで安心していたら、今年は卒業生が青いリボンを付けて入場してきたんです。

――ピースリボンですね。

沖田 そうですね。でも最初は分からなかった。式が始まって国歌斉唱と号令がかかると、生徒はいったん立って、次の瞬間バタバタと座り出したんです。一番前の来賓席にいた私は「立ちなさい」と二回怒鳴ったんです。しかし生徒達は躊躇しながらも9割は座ったままでした。

――教員は。

沖田 教職員も3人を除いて全員座り、3、4人は式場から出ていったんです。そして国歌斉唱が終わると戻ってきた。ですから、卒業生が式場から出て行った後、私は教員たちを怒鳴りつけたんです。そして、「法律は遵守せよ」「偏向教育はやめよ」「義務を果たせ」「常軌を逸した安浦同教に異議あり」といった内容の文書を全教員に配ったんです。

 腹立たしいのは、国旗国歌に反対しているある教員が、自分の子供を私立中学に進学させ、その入学式では起立して国歌を斉唱していたというのです。ふざけるなですよ。

――戸塚ヨットスクールの戸塚宏さんが、日教組の学校と非日教組の学校を並立させて、自由に選択できるようにすれば、日教組の教員は自分の子供を非日教組の学校に入れるだろうと言っていました。まさにこれを地でゆく話ですね。

 誇りと自信に満ちた日本人を育てたい

――曲がった釘は真っすぐにならないように、いまの公立小中学校は手の施しようがない。それなら理想を求めて新しい学校を作った方が早い。

沖田 まあ、そういうことですね。

――具体的には。

沖田 有志の方に新たな学校法人をつくってもらって、そこに校舎を提供しようと考えています。町内に小学校が6校あるんです。最初はそのうちの一校を空けてあてようと考えていたのですが、住民の理解を得ることが難しいので、25年前に廃校になっている小学校の校舎を利用することにしました。タイミングよく地域の人達から、校舎を利用した施設ができないかという要望も出ているんです。ですからこの校舎を修復して新たな施設も作って、地域の人達にも利用してもらいながら学校を運営しようと考えています。

 最初1年生から6年生までいっペんに募集しようと思ったんですが、予算の計算をしたらとても無理なので、1年生のみ募集して、6年かけて全学年がそろうようにしたいですね。

――地方の場合、大都市と違って小中学校の選択の余地はほとんどありません。どのような教育が行われていようと、そこに預けざるを得ない。そこに選択の余地が生まれるというのは大変意義のあることだと思います。さらに、民営の学校が同じ町内に存在することで、公立の教員の意識も変わってくる。

沖田 それもねらいです。教員の中には、「自分たちの職場がなくなるのでは」といった危機感をもつ者もいます。もってもらわなくては困るんです。

――実現にはどれほどの予算が必要なんでしょう。

沖田 30人の1クラスでスタートするとして、初年度は土地購入費、宅地造成費、既存校舎改修費、世代間交流センター建設費など合わせて3億2800万円が必要です。議会の承認をとって来春になんとかスタートさせたい。

――見通しはどうですか。

沖田 昨日、自治省に行ってきたんですが、公設民営の学校を世代間交流事業の拠点とすれば、地域総合整備債といういわゆる補助金が使えるんです。何とかその方向で進めてゆけそうです。ところが、県の学事課は行政財産を民間に貸すというのはいかがなものかという。安浦の子供たちのためなんだからそう堅いことを言わないでと言ってるんです。運営資金についても町として年間2〜3千万円ほど出そうと考えているのですが、これも賛否両論です。つまり、既存の公立学校を充実させるべきという意見も強い。

 私としては、とにかく1学年からスタートさせて、子供にどのような変化が現れるか確認したい。

――教員はどうやって採用するんですか。

沖田 最初は1学年ですから、理事の中に教員免許をもった方がいるので、それで対応できます。一年後は別途雇う必要が出てきます。クラス担任の教員については、町役場の職員並みの給料を払っていこうと考えています。あと、英語やコンピューターの授業については、常時必要ではないので、いわゆる非常勤講師のような形で雇用したい。

――1学年30人という定員ですが、安浦町の子供が優先ということですか。

沖田 そうです。50人の応募があれば、抽選とか先着順とか、何らかの形でふるいにかけなければならない。

――授業料は月額2万円を予定されていますが、町民の子弟の場合、町が全額を補助するわけですね。

沖田 そのように予算化したい。そうすれば公立と同じ条件になりますから。

――一番肝心な点ですが、どのような教育を行うのでしょう。

沖田 「しっかりとした躾」「きよい心」「かしこい頭」「たくましい体」「生きるカ」「豊かな心」を教育目標に、基礎学力の充実を図り、日本の伝統、文化、歴史を正しく伝え、21世紀の国際化社会を担うにふさわしい誇りと自信に満ちた日本人を育てたいですね。

 また、1年生から英語の学習を取り入れ、コンピューターを道具として活用させる。給食も自分たちで調理をさせたいと考えています。また、田植えや稲刈り、漬物、味噌の作り方などを、地域の人々との交流の中で学ばせたい。

 この学校が動き始めたら、公立学校の教員もだいぶ性根が変わってくると思いますよ。

 

 資料1 設立趣意書

 現在の子供たちを取り巻く教育環境、とりわけ公教育の現状は目をおおうばかりの惨状です。低学年からの学級崩壊、不登校、保健室登校、陰湿ないじめ、教師のノイローゼ、学力低下、非行の低年齢化と凶悪化、所かまわず座り込むジベタリアン等の退廃した状況がひろまるなかで教育改革が声高に叫ばれています。小渕前総理は教育改革を国政の重要政策として打ち出され、森現総理も引き続きこの問題に取り組むことを力強く表明されておられます。

 広島県におきましても、かつての教育県といわれた面影はなく、大学入試状況に見る学力も全国で最下位あたりと低迷し、県立高校より広島大学に合格する率もかつての三分の一となっている現状です。

 加えて、高等学校の中途退学者も県下全般で異常に多く、これらの現状の原因を考えてみますと、基礎課程の段階である小・中学校の義務教育期間に、十分な基礎学力がついていないためと思われます。一昨年4月、かねてより指摘されていた広島県公教育の現場に文部省の調査が入り、九項目にわたる改善命令が出されました。その中では授業時間が大幅にカットされ、道徳の時間を「人権」にすり替え、国語を日本語と呼び変えたり、国の基準を大きく逸脱している現状が指摘されていました。また、一方では平和学習を言うあまり、かつての大東亜戦争等のなかで日本が行った負の部分だけを取り上げ、ことさらに「日本はアジアを侵略し、相手国を苦しめ、悪いことをしてきた」と教え込み、児童、生徒の心を我々の父や祖父たちがいかにも野蛮で卑劣な人間であるかのごとく洗脳する偏向教育を行っています。

 また、広島県自体が「同和教育を基底におく」としているため、全ての授業や活動が同和問題を中心としてとらえられ、同和問題が持つ本来の意義が忘れられ、差別や人権問題にいたずらに過敏になるあまり、学校全体がそれに振り回され、教職員たちもあまりにも多くの時間を費やすことを強いられ、束縛され、本来の学力の保証をすべき授業がおろそかになっているために、児童生徒たちが学ぶ権利を奪われているといっても過言ではありません。

 教職員の多くが加盟している広教組、広高教組は、一部運動団体と共に勢力を拡大していこうと打ち出す深い関係にあり、その思想は運動団体のそれであり、教職員がその実践を担う活動部隊のようになっています。これでは公平な教育が疎外され、純真無垢な子供たちが一方的な、偏った思想に染まり、完全にマインドコントロールされてしまうことになってしまいます。

 このように、公が偏ってしまう事は、日本の国自体を大きく揺るがす大問題です。今ここで正常な軌道に修正しておかなければ、将来に禍根を残すことになります。

 これまで、文部省なり、教育関係者は高等教育を行う大学や高校の設置ばかりに目を向けてきたようですが、今ここで最も注目しなければならないのは、人間としての基礎をつくる義務教育の段階に視点を移すということではないでしょうか。

 その義務教育のほとんどは、公が行っている公立学校であり、その公立学校で行われている公教育は崩壊寸前となっています。正に制度疲労をきたしており、子供も保護者も全く選択する余地がなく、仕方なく現状に甘んじなければならない状況になっています。

 このように惨めな教育環境から、将来の日本を背負って立つ大事な子供たちを解放し、まともな大人として育ってもらうためには、よりよい学習環境をつくることが、我々大人の重大な責務であると考えます。まともな子供を、まともな大人にするための、しつかりした教育理念を掲げる私立学校を設立することによって、現在の憂える状況を改善する一石を投じられるものと強く確信するものであります(後略)。

平成12年4月吉日

設立発起人代表 佐伯泰男

 資料2 公設民営小学校の概要

学校法人名 新風学園

理  事 佐伯泰男(元広島県立高等学校校長)、高橋一郎(元小中学校校長、前安浦町教

     育長)、児玉克彦(元県庁職員)、森元勝正(英語塾経営)、荒銭寿美子(元小学

     校教諭、東進塾経営)、加瀬英明(外交評論家)、中條高穂(アサヒビール名誉

     顧問)、勝田吉太郎(鈴鹿国際大学学長、京都大学名誉教授)、都倉俊一(作曲

     家)、津川雅彦(俳優)

監  事 岡野賢太郎(会社役員)、片岡寿一(安浦町監査委員)

設置場所 広島県豊田郡安浦町大字中畑713番地旧安浦 町立野路西小学校

学級人員 30人学級

授業料  2万円

運営資金 授業料、入学金、寄付金、私学助成金


BACK to 再生計画案
    BACK to 松五郎の玉手箱「一覧表」
ご意見、お問い合わせ
E-Mail:k-sigeki@tau.bekkoame.ne.jp