映画館がやってきた! 映画鑑賞記

SOSタイタニック

Story

 二等航海士「ライトラー」の視点で描く、タイタニック物語。

感想

 古い白黒の映画なのに、スケール感や 豪華さに不足を感じることはほとんど無くて、タイタニックの遠景のみ「模型だな」と 感じる程度。出来の良さに驚く。
 特に、出航前の港のシーンは巨大な船の感じが良く出ていたと思うし、室内では 一等の豪華さもなかなか。ボイラー室、発電室etc.のメカメカした部分も少しも手抜き がない。さらに沈没で傾いていく船内や、船尾に殺到する人々の描写も迫真。
 おそらく、船を外から見たショットが少なく、いわゆる室内撮影が多いことだけが キャメロン版との映像的な違いで、だからこそ「キャメロンが撮りたかった映像」も 想像できる。

 物語は、主に船長や航海士、設計主任のアンドリュースさん、社長のイズメイの視点で ドキュメンタリー的に描かれ、各等級の客がどのように事故に直面したかという書き込み も結構ある。だいたい、キャメロンのタイタニック同様、実在の人物に似た風貌の役者を 使っているようで、初登場の瞬間に誰だかわかるというのが面白い。
 セリフも、かなりの部分がそっくりそのままどちらの映画でも聴くことが出来、 「実はこういう意味で言っていたのか!」と、キャメロン版の再発見の手がかりにも なった。
 タイタニック映画は何本もあるが、どれも結構出来が良い。こういう映画を見ると、 キャメロンが先輩のタイタニック映画を越えるために莫大な投資を惜しまずディーテイル にこだわり、ジャックとローズの恋物語に仕立てた気持が理解できるように思う。
 これらの古い映画を見て、鮮明な印象が沸いてくるのも、キャメロンの絢爛な画像が 頭の中で白黒映画を補ってくれているのではないかと思う。

 大きく異なるのは、SOSの方はBGMがほとんど無いこと。サロンの楽師の音楽だけ。
 したがって、氷山との激突シーンも、あっという間にぶつかって、もう、淡々とどんどん 沈んでいく、本当に大変なことになるのは、三等の客があわてだしてからだが、確かに 史実では多くの人が沈むなんて思いもせずに死んでいったのだという、そういう不気味 な静けさが表現されている。
 だけど、「キャメロンのタイタニックの音楽は凄いなぁ」という思いも改めて感じさ せられた。リピーターの人たちはみんなオープニングのセシルの歌を聴いただけで泣ける と言うが、確かによい音楽にはそういう力がある。


■関連URL

[戻る]
文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!