映画館がやってきた! | 映画鑑賞記 |
米ソ冷戦時代に、米国の新ミサイル防空システムを稼働させるための画期的な放射性物質
(ソビエト領内からしか産出しない)が、昔、米国の手で秘密裏に採掘されており、ソビエト
の追っ手を逃れてなんとか米国に持ち込もうとしたが消息不明になっていた。 それが、調べるとなんとタイタニックとともに大西洋の底に沈んでいる。では、秘密裏に 引き上げよう。というのが、そもそものきっかけ。 そして、船内にウレタン・フォーム材のような物を充填して排水し、さらに船外に浮きを 付けて、船底を爆破して引き剥がす。 無事浮上すると今度は、米国のタイタニック(と放射性物質)のお持ち帰りを阻止しようと 魚雷持参で 乗り込んできたソビエトのエージェントが、「そんなのお見通しさ」と浮上した米国の 潜水艦と戦闘機をみて「ああ、そうかい」と引き下がる(それで良いのか!) そういうわけで、何とかニューヨークに曳航されたタイタニックからは結局鉱石は 発見されずに何も起こらずに終しまい。 |
というかなり爽やかでない結末で、いい加減な設定の強引なお話には気分も へなへなの二時間でありました。
撮影には4年をかけたそうだが、特撮は1980年当時の水準を考えれば、しょぼい(?)
タイタニックのミニチュア撮影の出来は「かなり小さいスケールで、高速度撮影
で水の動きをごまかした」というのがよく分かる。言ってみれば、白黒のゴジラ映画
で見られる水の質感で、いくら何でも80年の特撮水準ってそんなもの?と思ってしまう。
引き上げたタイタニックは、船首部分が写るが、これは実物大セットだとか。
ひょっとすると、特撮も1956年の「SOSタイタニック」の方が上では?
考証のリアリティーに関して、タイタニックが煙突が一本折れただけで船体が
完全に残っているというのは、当時の歴史的な事実認識と
「引き揚げてニューヨークまで曳航する」という筋書き上必要なことでは有ろうが、
見張り台などの細長い構造物がまるで折れずに全部残っているというのは、常識で
考えれば不自然極まりなく、「そうかぁ?」と声を上げてしまう。
浮上したタイタニックに、ホワイトスターラインの旗を掲揚するシーンが有るが、
これを撮りたくて細いポールを残したのか。それにしてもその旗を掲揚するワイヤー
も、沈没の1912年から数えて1980年まで、錆びずに残っていたものか?
これらは考証的厳密さなどと言うものではなく、直感的にも不自然というレベルの
ことだと思う。
文:唐澤 清彦 | 映画館がやってきた! |