映画館がやってきた! 映画鑑賞記

レイズ・ザ・タイタニック

(1999.6.25(レンタル)) 1980年作品

Story

 いや〜そういう話とは知りませんでした…。というくらいB級チックなストーリーで、 ツッコミ甲斐のある作品でした。大まかには…、

 米ソ冷戦時代に、米国の新ミサイル防空システムを稼働させるための画期的な放射性物質 (ソビエト領内からしか産出しない)が、昔、米国の手で秘密裏に採掘されており、ソビエト の追っ手を逃れてなんとか米国に持ち込もうとしたが消息不明になっていた。
 それが、調べるとなんとタイタニックとともに大西洋の底に沈んでいる。では、秘密裏に 引き上げよう。というのが、そもそものきっかけ。
 そして、船内にウレタン・フォーム材のような物を充填して排水し、さらに船外に浮きを 付けて、船底を爆破して引き剥がす。
 無事浮上すると今度は、米国のタイタニック(と放射性物質)のお持ち帰りを阻止しようと 魚雷持参で 乗り込んできたソビエトのエージェントが、「そんなのお見通しさ」と浮上した米国の 潜水艦と戦闘機をみて「ああ、そうかい」と引き下がる(それで良いのか!)
 そういうわけで、何とかニューヨークに曳航されたタイタニックからは結局鉱石は 発見されずに何も起こらずに終しまい。

 というかなり爽やかでない結末で、いい加減な設定の強引なお話には気分も へなへなの二時間でありました。

感想

 このへなへなを徹底追及すると(笑)
 まず、科学考証的にはこの映画が「スパイアクション」に分類されるとすれば、 科学なんかどうでも良いのかも知れませんが、深海探査艇も圧壊するほどの水圧下で、 気体の圧力で充填するフォーム材や、浮きが機能するわけが無いというのは、子供でも 分かる理屈。この時点であまりに説得力なし。
 現実的にこの水圧で使用する浮きは、深海潜水艇でも使用しているようにオイル になるでしょうが、単純に考えて、 タイタニックを浮上させるほどの浮力のあるものを、そこまで沈めるための 重りがどれほど膨大になるか、 最低『タイタニックそのものより重い』もので沈めなければ、タイタニックは 浮上しない。当然ですね。それは数学的事実(^^)
 ではともかく、タイタニックが浮くとしましょう(^^;
 映画では潜水艇の事故で、半月先の浮上予定を急遽6時間後に切り上げます。
 またしても「おいおい、大丈夫か?」と思ってしまうのですが、ここでの問題は 3821メ−トルもの深海に、数時間のうちにそう、ほいほいと往復できるもの ではないということです。
 あまりに気軽に往復するので、まるでプールの底ほどの深さしかないのでは ないかと感じてしまいます。
 さらに、浮上するタイタニックのその速度!あれだけのものを、揚がるか否かの ギリギリの条件で浮上させるのだから、しずしずと時間をかけて動くのが当然ですが、 これが凄い勢いで海面に飛び出さんばかりの速度で浮上します。あちゃ〜。
 ソビエトとの駆け引きにも、まるでリアリティーがありません。
 鉱石を回収に来たエージェントにとっては、国防の命運がここにかかっているというのに、 一発先手を打ってタイタニックを沈めてしまえば、それだけの話ではないか!
 あるいは反対に、公然と米原潜がソビエトの巡洋艦を撃沈したらどうなるか、お互い 分かりそうなものだが…どうもこの登場人物たちはわかっていないようなのです。

 撮影には4年をかけたそうだが、特撮は1980年当時の水準を考えれば、しょぼい(?)
 タイタニックのミニチュア撮影の出来は「かなり小さいスケールで、高速度撮影 で水の動きをごまかした」というのがよく分かる。言ってみれば、白黒のゴジラ映画 で見られる水の質感で、いくら何でも80年の特撮水準ってそんなもの?と思ってしまう。
 引き上げたタイタニックは、船首部分が写るが、これは実物大セットだとか。
 ひょっとすると、特撮も1956年の「SOSタイタニック」の方が上では?
 考証のリアリティーに関して、タイタニックが煙突が一本折れただけで船体が 完全に残っているというのは、当時の歴史的な事実認識と 「引き揚げてニューヨークまで曳航する」という筋書き上必要なことでは有ろうが、 見張り台などの細長い構造物がまるで折れずに全部残っているというのは、常識で 考えれば不自然極まりなく、「そうかぁ?」と声を上げてしまう。
 浮上したタイタニックに、ホワイトスターラインの旗を掲揚するシーンが有るが、 これを撮りたくて細いポールを残したのか。それにしてもその旗を掲揚するワイヤー も、沈没の1912年から数えて1980年まで、錆びずに残っていたものか?
 これらは考証的厳密さなどと言うものではなく、直感的にも不自然というレベルの ことだと思う。


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文:唐澤 清彦 映画館がやってきた!