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2005年12月 8日 毎日新聞トップ記事

小田急線高架化訴訟:周辺住民にも原告適格
最高裁が判例変更−−地権者以外も


 小田急線高架化事業を巡り、東京都世田谷区の沿線住民40人が国の都市計画事業の認可取り消しを求めた行政訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕(あきら)最高裁長官)は7日、地権者以外は都市計画事業の取り消し訴訟を起こす資格(原告適格)がないとした99年判例を変更し、地権者ではない周辺住民37人に原告適格を認める判決を言い渡した。行政事件訴訟法の改正(今年4月施行)を踏まえ、原告適格を幅広く認める姿勢を明確にしたもので、今後の行政訴訟に影響を与えそうだ。
 (3面に住民側弁護団長の「ひと」7面に判決要旨29面に関連記事

 大法廷判決を受け、今後は第1小法廷(泉徳治裁判長)で認可の適否を巡る審理が続けられる。

 99年判例は、都市計画事業認可の根拠となる都市計画法について「周辺住民の個別的利益を保護する趣旨は含まれていない」と解釈し、地権者以外の周辺住民の原告適格を否定した。一方、改正行訴法には、原告適格の判断基準として「根拠法令と目的を共通にする法令の趣旨や侵害されることになる利益を考慮すべきだ」との規定が加わった。

 この日、大法廷は、事業認可当時の公害対策基本法と都環境影響評価(アセスメント)条例を「目的を共通にする法令」と位置付けた。そのうえで「基本法や都条例の趣旨を考慮すれば、都市計画法は騒音や振動で健康や生活環境の被害を受けないという住民の利益を保護している」と判断。都条例で定められた「事業で著しい影響を受ける地域(関係地域)」に住む住民37人について原告適格を認めた。

 判決は14裁判官による全員一致の意見。才口千晴裁判官は、就任前に住民に賛同する署名に応じたことから、審理に加わらなかった。

 東京地裁は高架化に伴い設置される側道の地権者に高架本体事業での原告適格を認めたうえで認可を取り消したが、東京高裁は全員の原告適格を否定した。【木戸哲】

【ことば】小田急高架化事業
東京都世田谷区の梅ヶ丘駅付近から喜多見駅付近めでの6,4キロを複々線化し、高架下に道路を建設して立体交差化を図る事業。高架本体は完成し、列車が走行中だが、日照確保のための付属事業である高架北の側道整備は、原告らの反対で用地買収が難航。東京都は今春、工期延長(3年間)申請を余儀なくされた。地下化を求める住民との間で、10件以上の訴訟が起きている。


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