2003.05.01朝日オープン第4局 静岡県伊東市の「わかつき別邸」
角換り腰掛け銀48飛型
深浦康市VS堀口一史座
三度目の誘惑
実況&分析=マシュダ一家
シーザーは勝ち将棋を逃して今夜は寝つけないであろう。33銀-42銀の三回のループ=マシュダ一家風泡踊りを体得したシーザーの戦術には我々も熱狂していた。残念である。敗因は技術力ではない。名人戦で森内が羽生に負けた図式と全く同じである。名人戦第1局では以下の構図であった。
誘惑手58手め37歩成=羽生は攻めさせる。
相停滞65手め34銀=森内は金か銀かで迷う。
誘惑手76手め38と=羽生はもっと攻めさせる。
相転換77手め52歩=攻めなくては負けるという強迫観念で森内は局面を悲観し直接手を誘発。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030420meijin1.html
シーザーもここで攻めなくてはならないという三回目の強迫観念で66歩という大悪手を指して一瞬で負けにしてしまった。この悪手を誘発したのは遡れば深浦の77手め79飛という故意の緩手であったと言えば行方は驚くであろうか?
ということでこの指し手の部分の実況は故意に我々は外したのである。
谷川が本筋では勝てないと書いたが裏筋とはこのような指し手である場合が多い。
48飛成-56香-19馬に55香なら同馬で後手優勢。この馬が44まで来れば完璧であった。65桂なら同銀。先手は歩切れで継続手がない為19馬まで間に合う展開。シーザー無念。終始勝機を感じていたはずが二度も躊躇した66歩が三度目で裏目にでてしまった。三度目の正直という格言はしばらく信用できないであろう。
以下簡単な並べ詰め。149手まで。見事な大逆転。深浦新選手権者おめでとう。
形作り。47飛車成でも一旦受けられて上部が厚いためにすでに手は尽きた。先手は最後まで入玉が最大の防御であり武器となる。
シーザー迫真の猛攻だが
馬にあたっていたと金が手順に63地点まできた為に慌てて打ったしまった桂馬。桂馬が二枚あるのでサザンクロスを狙ったが96桂でも76桂でも98玉と逃げて攻めは切れる。
53桂成が飛車あたりではつらい。52金では53歩の追い打ち。64馬と引いては55銀で為す術もない。28馬筋に期待。
これで先手陣は銀を補充しつつ鉄壁。桂馬の両取りが残った為にカナ駒二枚に歩が一枚で攻めが途切れず勝勢確定。
どうやら格言を信じて諦めてしまった。
ついにと金一枚で桂馬の両取りがかかってしまった。終盤の両取りは逃げるべからずというが
ついにと金が前線に。飛車あたりの為に手抜きできない。
一瞬で地獄へ叩き落とされるがまだ勝負の綾はある。負けても成るしかない歩。
これで逆転。深浦の頭突きがガーンと決まってしまった。
これで完封勝ちと楽観したようだが
これは痛い。後手の飛車が閉塞すると先手のと金が間に合ってしまう。
なぜ48飛成としないのであろう?
他に手がないので好きにしてくれということである。
ここで66歩としても58銀と逃げられ馬筋が57地点まで利いているので57銀と進出できない。逆に先手から47香打が不愉快なので歩が利くようにする双頭手。48飛成も次に狙う。
後手に便乗した歩だけの双頭手。これでと金作成と馬の利きが47地点へ開通。
二度目の色気。ここでも66歩があるが危ない橋は渡らず逃げる。もともと遊び金であったがここまで来ると惜しくなる。
後手が色気を出した為有効な歩成。
深呼吸の反動。ここでは66歩が最強。同銀ならば同銀-同銀で76桂打が厳しい。58銀ならば56銀と出て手順に馬筋が73地点まで通る。
必然。これで持ち駒は香車と桂馬。自陣が固いので先は長い。気力勝負。先手は入玉が最大の武器。
後に66歩を打つ空間作成。効果的な犠牲。
最後の歩をここで使う。もう1歩あれば13歩から行きたいが
74歩で桂馬が死ぬのは覚悟の上。
すぐに59飛と銀にあてたいが馬の紐付の為に効果がない。そこでなんとか馬の利きを狭めて行くしかない。76手め28馬は手番を取る為に当然。
空から地面に叩き落とされた上にここでスリッパで叩かれては涙もでない。
先手には既にこれしかない。同歩には74歩しかないが後手にも75桂打が残り捨て身の攻撃。
同馬では48歩の楽しみが消える。
15歩からの狙い筋だったがすでに在庫処理。
金は引く手に好手有りというが桂馬をこれで二重に守る贅沢なひととき。
こうしてハエのように地面に叩き落とされると人間は落ち込むものであるが深浦は挫けない。
シーザーは既に勝利への道を確信しながら行くのみ。34歩も取らせない信念の銀。42-33地点をこれで三往復する大活躍である。あの浮いた将校64金には37馬の紐がついているのでここで73馬の切りあいはない。
ふたつの狙いをシーザーに簡単に見透かされたのであとは気を取り直して体力勝負である。まずは桂取り。
本当はすぐにでも11角成として次に43香打を狙いたいが55歩が気になる。64金が浮いているので43銀はない。63銀でも同銀でも64飛-同銀-63金の二枚換えが生じるようだが、一旦飛車を逃げて64金には37馬と二枚換えを取り戻しつつ馬が金に当たるので先手指し切りとなる。ところが19角成には先手はそんな無茶なことはせずに25桂と端攻めを狙ってくる。43香には34飛と横歩を取り先手は持ち歩が二枚となるので12歩からの連打があるのであった。15歩突き捨ての効果。
これで先に香車を入手し歩も1枚あるのでビッグ4の顔もたった。なにより喜んでいるのは先手の66歩ではなく玉である。これで入玉の楽しみも最後に残されている。メランコリックなシーザーは次に香車を取るか桂馬を取るかで贅沢な悩みを持つ王女となった。
そこでシーザーは敵のビッグ4と自分の64金を見て52飛と中央防御を選択。やはり37桂馬を使われ先手の細い攻めが続いてはあの64金が余りに悲しいと目に映ったのであろう。
先手にはこの角打しかない。飛車が92に逃げれば45桂跳ねで53地点を狙う双頭手となる。52飛車と逃げれば93角成と香車を取り返してなんとかなる。
これでシーザーは勝ったと思うであろう。
もう贅沢は言っていられない。親分だけビッグ4の温泉に浸って前線部隊まで遊んでは後手の駒台で入手した三枚の歩が踊り出す。28角はどうぞ打って下さいと言う玉砕覚悟の進軍となる。
これも実質ただの突き捨てである。後手が最初に33銀から42銀と下がった時に先手に生じた行使できない権利の再現となった。あの時は28角打がある為に飛車先歩交換はなかったが
これを取らずに35歩と行く者は棋界を制覇できるであろう。
ここで35歩を防ぎつつ浮いた64金を狙う46角は後手に涼しい顔で63金と下がられ角の打ち損でやはり手も足もでない。そこで先手は暴れる以外ない。まずはただで歩を渡すことになる。先手はとにかく1歩を入手しないと手がつくれない。
必然。必然三連発で退屈であろうか?しかし次に後手から35歩とされては先手は負けてしまうのであった。
必然
必然
これは先手ビッグ4の堅陣をさらに固めつつ敵の銀を追いやる鬼っ子である。先手の歩に口があれば前線で活躍したかったと言うであろう。一見深浦流全開のようであるが実態は逆である。無理でも攻めようという意思表示となる。ここで歩を手放すのでは35歩の傷が残る為に先手には無理攻めしか残らない。
シーザーの突っ張りではなく紳士的おつきあい。ここで11角成を防いで33銀では25桂でターゲットにされる。22角ではあっさり同角で同玉には再度の55角で王手。いずれも桂馬のあたりを作る順。そこで後手は66歩で先攻し銀交換から先手の弱点59地点の銀の割り打ち権利に目移りするが、同銀-同銀-同角に割り打から最後に68飛車と回られると11香成が残る為に後手は33銀などと受けるか放置するしかない。46角の飛車桂取りは67飛。ところが33銀と角成を受けてもあっさり同角と切られ次に浮いた63金がなんと飛車で先手に取られて負けとなる。そこで後手もおつきあいすることになる。
1歩を交換しすでに後手指しやすい。次に後手から66歩と抑え込まれては先手敗勢。しかし66歩と先に歩を打っては54銀-46角-22角で手も足もでない。先手には59地点の割り打&35歩からの桂頭の傷がある為に攻防手を強いられる。55角は一見後手の香取りと後手からの66歩への攻防手のようだが
75歩が先になければ同銀が形。65桂から86歩-59角の割り打ちは完全に無理筋。
これを放置し46角打は立て続けに75歩と突かれ以下55歩には66歩-同銀左-65銀-同銀-同桂-54歩-22角-66歩-55銀で打った先手の角が殺される。
ここで46角打ちを事前に防ぐ22角打は15歩或いは17香-18飛が間に合う可能性がある。そこでもうひとつの手段を選択するのは方針通り。
ここで先手が56銀ならば千日手にする権利と22角打の攻めの権利をふたつとも後手に譲渡することになってしまう。そこで56歩と先手は形を強いられる。これが42銀泡踊り効果であった。次に先手に46角打とされては55歩で54の銀が死ぬために次の指し手も決まってくる。シーザーがそれを先手に強要したことになる。
これは42手めの最初の42銀と違い卓見である。最初の42銀には22角打ちの狙いがあると行方解説では評価したがその玉筋狙いには先手が先受けする権利がある為に後手からの最終戦略明示という負い目だけが残る危険があった。この42銀は先手への容赦ない恫喝である。56歩を突けと催促しているのである。
後手が醜態を晒しているようだが実態は逆である。先手の方が苦しい。腰掛け銀が腰引き銀では後手に仕掛けて貰う以外にない。千日手を避ける為にわざと隙を作ってあげるのである。
手損の明示であるが22玉だと後手から22角打の楽しみが消滅する他、子競り合いとなった時先手に55角の双頭手が生じる。先手も攻める気がないので後手は気長に待つ。
先手の余裕。47金から棒金は角打の傷が残るので難しい。22玉の形ならやる気もでるが31玉では余りに遠い。
先手の深浦が先後同型を避けたのでシーザーは千日手でもいいということである。ここで22玉だと25桂-37角打の時に33桂成が王手となる。また42飛は93香とした為にない。次に先手が44歩と飛車先歩交換をすると同歩-同飛には28角打。
後手が手番を渡されてもねじれたやまびこで応じた為に堂々と入城。
48飛で33銀というトリプル手発生の裏づけが取れたことに満足しここで手を渡す。後手特有のねじり。71角打の隙が生じるが先手に攻めさせるおとり。
次に44歩を許してはいけないので当然の飛車周り。しかし角打の隙が多いので次に25桂と跳ねるわけにはいかない。後手の63金という先受けを下記の理由でそのまま先手が引き受けた形。手番を後手に渡すことになる。
一見63金に続く先受けに見えるがこれは後手特有のトリプル手である。先手の25歩と48飛というふたつの飛車先歩交換を事前に避けつつ直接的には44歩を見せる。63金を双頭手とする為の42飛車回りという逆行相転化もこの手で発生している。また24銀という狙いもある。いずれも37桂という先手の攻防手に対抗する最強の攻防手。
気持ちよいが危険な桂跳ね。後手が63金と先受けした為に局面はこれで決定的となる。この桂馬は25桂を見せつつ45歩を死守する攻防手となる為である。
既に桂馬が飛べない為に75歩-同歩-74歩に備える。この74地点に打つ歩を先手が入手する順は15歩という過激策と48飛の飛車周りから33銀-25桂。45歩の位取りと飛車先歩保留の利点を生かしてはいけない。
これで深浦に夢のまた夢であったブルセラコースも拒否されてしまった。埼玉の最新流行は千日手かもしれない。この66歩は受けの双頭手となる。66銀と下がり守りを固めることができる。先手は右辺からの猛攻ができるようだが互いに角を持っている為に硬直する場合が多い。
控え室の行方解説によると最新研究がみられるとのことである。角換わり腰かけ銀ならば先後同型が最新流行である。古着屋に最新流行のファッションがあるのであろうか?
ここでシーザーが古着屋をブルセラショップと思い込めば65歩という新種の先後同型も有り得る。角打ちには角打ちで対抗するという海賊路線である。しかしそれではヒーロー漫画となるので73桂馬とするしかないであろう。
ハーッとため息が漏れる瞬間。これで角換り腰掛け銀先後同型への夢の対決は水泡と帰す。
ここで44歩とすると先手に45歩からの交換権利を与えてしまう。相腰掛け銀確定。
深浦の遠慮ない銀の進出。ここで37桂はぬるい。
角換りに決定したのはシーザーであったが先手に作戦の岐路を決めてくれとここで深浦に打ち明ける。
角換り腰掛け銀先後同型とするかの気息調整。この誘導権利はすでに先手にある。後手には拒否する権利もある。
ここで73桂とするとヤンキースタジアム風の宣戦布告となる。この41玉によって角換り腰掛け銀の先後同型が示唆される。
この対象交換はこの瞬間だけ先後が入れ替わっている。後手の玉が移動していない1手分の差異がここで生じてしまうからである。
森内名人は61金を保留し41玉-31玉と守備を固めてから74歩とした為に先週の名人戦は序盤から異様な緊迫であった。先手の26歩という飛車先保留に対して急戦を示唆した為である。
後手が居玉のままこの74歩を突くのは先手にとって怖くない。すでに52金とあがっている為である。
なぜ後手からの急戦が通用しないのか?居玉のまま先手の打診に応じて端歩をつき合ったからである。そこで58金と先手が25手めに指すことができる。後手は居玉の為にどこかで玉を動かす必要があり急戦は反動が厳しい。
最初の緊迫であるがシーザーならばノータイムで14歩であろう。この交換で名人戦と全く違う暗流へ。この24手めの局面はすでに後手からの急戦が通用しないのである。
この16歩は後手が22手めに41玉ならば有効であるが51の玉に対しては右玉にしますかという打診になる。或いは74歩から急戦で来いと誘っているとも読める。もっとうがった見方をすれば千日手にしますかと後手に聞いている。
初手以外は名人戦第2局羽生森内戦と同じであったが、ここでシーザーは52金とする。
参考 http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030425meijin2-2.html
この52金は右玉をも示唆し態度を保留する後手の権利である。指し手としては千日手も示唆する。
先手の深浦にしてみれば横歩取りもアリということであったが自ら得意の相掛り28飛はこのカド番で見送ったということである。羽生との挑戦者決定戦から相掛り28飛型-横歩取りと交互に入れ替わってきた為に順番から言うと今日は相掛り28飛型十字架銀となるシリーズ。その流れをマンネリとみなして深浦がようやく竜王戦-名人戦-朝日オープンという流れにしたのであった。シーザーの3手め32金は竜王戦の手。そしてシーザーが34歩ではなく85歩とした為に角換りとなる。タナトラならばここから矢倉にしてしまうが深浦はそのようなマネはしない。以下先週の名人戦第2局としばらく同じ進行となる。
嫌な予感がするので朝日のトップページを開くと「深浦七段、勝って第2代朝日選手権者となる」というタイトルがいきなり目に飛び込む。 よく見れば二行目に「か」がついている。ブラウザを調整し直すと「深浦七段、勝って第2代朝日選手権者となるか」と読める。
間違いなく朝日オープン第4局が実際行なわれている。
深浦の初手は26歩であったが三手めは76歩であった。そこでシーザーは32金とする。以下の進行をみると名人戦第2局と同じである。よくみれば立会人が加藤一二三。もしかしたらこれは名人戦のサイトだったのであろうか?
松井イチロー対決でマシュダ一家は沸きに沸く。脇は何をしているのであろう?
そこでグランド整備チームと共に全員が思わずYMCAにつきあってしまうであった。アレならばジッチャンにもいい肩こり対策となる
第4局 深浦康市七段VS堀口一史座朝日オープン選手権者
本日午前10時開始。持ち時間は各3時間。
対局場=静岡県伊東市の「わかつき別邸」
今までの流れ
http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030501asahiAll.html