王将戦第三局2002年2月12&13日

羽生善治佐藤康光

サタン降臨

トリトヌスと大悪魔の戦い

実況と分析 マシュダ&ファミリー 2002.2.14up


おいジッチャン呼んでこーい! No: 157 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:12:15

「今衆院予算会議中ですが」

「なんでもいいから呼んでこい!どうせ民主の質疑応答だ」


お疲れのとこですが No: 158 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:27:07

「まーだ機密費がどーのこーの言っとるアホおるからイヤンなる。半年以上先日手やってよー飽きん」

「順子さんどーですか?」

「前任者よりマシ。落ち着いたモン」

「民主も汚い言葉のコピペ好きですね」


では初手から再現します No: 159 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:30:45

「羽生王将の先手で76歩」

「落ち着いておるね」

「当たり前の手ですが」

「いーや。羽生が主導権握るつもりなら26歩とすべき」


対して佐藤九段は34歩です No: 160 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:41:11

「横歩取り後手番やるか!」

「先週のA級、佐藤谷川戦は横歩取りで最も激しい順を選びましたが」

「あれには眩暈を覚えた。とても人間ワザとは思えん。康光にあそこまでやられては谷川とて為すすべない」


羽生王将、飛車先を突きました No: 161 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:48:33

「振り飛車にはしないということですが」

「そりゃ羽生は先手じゃ飛車振らん」

「角換りは?」

「康光は角換りで後手の先日手はやらんね。横歩取りするか羽生が聞いとる。康光に引導を渡したとゆーこと」


なんと4手め54歩です! No: 162 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:51:19

「うぉおおー!!」

「じっちゃーん!」

「み、水!」

「大丈夫ですか!」


救急車呼べ! No: 163 [返信][削除]投稿者:摩修陀一家 02/02/12 Tue 15:53:53

じっちゃんは口から泡吹いてます。しばらく実況は中断します


「じっちゃんおかえんなさーい!」 

「病院いかがでした?」

「ナースは優しい。また行きたい」

「佐藤九段にまた凄い手やっていただければ?」

「息止まるかと思ったがな。あれUPしたの間違い。でゴキゲンやったの?」

「羽生王将が5手め長考で飛車先延ばしましたから」

「堂々とした歩突き」

「6手めで52飛車です」

「よーやるよ。病院行ってよかった。今の康光にこんなん一手一手つきあったら発狂する」

「佐藤九段は最初から予定だったそーですが」

「たまらんな」

「14手め33角ですが」

「やはり最も過激な順」

「羽生王将同角です」

「羽生なら当然の交換」

「18手め22飛車」

「あーだからいやんなる」

「飛車先の歩交換さけて穏やかですが、別の手もあると?」

「それ考えたら気が狂う」

「一応進めます。18手めの問題の局面です。次の羽生王将の手がむずかしそーですが」

「この局面、羽生は悠長に囲う暇ない」

「といいますと?」

「後手は62銀としたからね。囲いの進展性を自ら制限した換りに康光は過激な順を選択すると想定できる。最近康光は常軌を逸しとる。銀をいきなり53に持ってくるかもしれん」

「歩腰銀にすると?」

「康光の陣形の最大の利点は54歩。53地点のトリトヌス効果はもう何度も話した通り。対して羽生はゴキゲン中飛車対策で46歩を突かされておる。康光はこの歩を突かせるのが作戦」

「角換り腰掛け銀でも突く歩ですが?」

「それは互いに同型だから通用する。居飛車の感覚でみてごらん」

「なるほど。46歩は変ですね」

「そこでなぜ変なのか検証してみる。

A=54歩は取られた方が良いが46歩は取られたら歩損

「どういうことですか?」

敵玉に近い歩は切れていた方が有利

「なるほど」

「次に銀の進行。

B=53トリトヌスは62銀と31銀の両側の銀に対して引力を持つ。羽生の47地点は?」

「47銀としかあがれませんね」

「そっ。従って18手めまでの局面はすでに康光指しやすい」

「確かに後手は両方の銀の自由が保証されています」

「これが53地点の最大効果」

「なぜ悪魔の音程=トリトヌスと命名したんですか?」

「攻守ともに可塑性ある最も重要な要の音を発するから」

「18手めまでの局面は佐藤陣優勢?」

「いや。次は羽生が指す番。では羽生の思考順序を検証。現在羽生は康光陣のトリトヌス効果で46歩の価値が低い」

「46歩の一手より54歩の方が価値が高いということですね。その理由は銀の自由度であると」

「そっ。ところが羽生の左銀は77に行くことができる」

「初手76歩と空けましたから」

「羽生はこの相違についてまず考える。この利点を利用して現在の68銀が77銀に進展すれば、敵のトリトヌス効果に対抗できるのではないかとね」

「しかしいきなり77銀は形を決めすぎですよね」

「その形を決めすぎってどーゆー意味?」

「ただ経験的に表現しただけですが」

「意味がある。それは響きがある空白地点を駒で埋めるということ」

「なるほど」

「こう覚えたらええ。将棋は響きを多く増やすように指せ

「はい」

「そこで羽生は77銀と指す前にもうひとつ引力が必要と考えるはず。これが最前線棋士の直感と呼ばれてきたものの正体。では進めて」

「19手めは75歩です。玉頭位取りですか?」

「その言葉は先入観が強すぎて使わない。終盤で意味をもつ位という先入観ではだめ。序盤を理解するためにこの延びすぎた歩は誘因歩と呼ぶ」

「先週、女流名人戦第三局で中井広恵先生が指した21手めの75歩もやはり玉頭位取りではなく誘因歩と?」

「そっ。この19手め75歩は羽生の決断の一手。残虐極まる」

「この19手めの局面どちらが良いのですか?」

「康光が優勢直前」

「はは?」

「この75歩は疑問手」

「まさか?」

「そのまさか。64角と打てば確実に歩得となり康光優勢が確定する。あとはじわじわと指し進めれば必ず歩得が生きる。鑑賞譜とはならんが、羽生が攻めて来なければ康光はいとも簡単に先日手にできる。だから75歩は疑問手」筋違い角の打ち合いは28飛車が狙われる。

「なぜわざと疑問手を指したんですか?」

「羽生が作戦負けの気配をその時点で察知したから、勝負手をいきなり放ったということ。羽生ほど鍛錬された棋士になると、54歩と46歩の違いが如何に自分に不利になるか直感的に悟る。そこで46歩のデメリットをさらに助長する疑問手をわざと放った。冷たい世界では大悪魔と呼ぶグランサタン

「なぜ羽生王将はわざと疑問手を放ったと?」

53地点の悪魔の音程に対抗するためには、さらに大きな悪魔を呼び込む必要があるということ」

「それでじっちゃんは?」

「魂まで持っていかれてはかなわん」

「では先を」

「必要ない。大悪魔を咎めるには冷たい世界に住むしかない。暖かい世界の住民には決してこれを咎めることはできん」

「どういうことですか?」

「康光は後手番の角換り腰掛け銀をやって先日手も選択できたが、そーゆーことせんの」

「前回のふたりの対局では、棋王戦第1局で羽生棋王が後手番の先日手を目指しましたが?」

「羽生は冷たい世界の住人じゃからね。平然とそれができる。康光はやらんのよ」

「ということは?」

「この将棋は康光負けてもえーんじゃね」

「あれは大悪手ではなく、大悪魔手と!」


羽生は巧みに右辺に戦線を誘導。欲しいのは桂馬。佐藤九段が36手め同桂とできない理由(米長永世棋聖は同桂を考えた)。

羽生の思考原点は最大の急所74歩が効く順。

37手め21角で右辺は羽生の期待通りダミーの修羅場となる。

佐藤九段、勝負所の昼食休憩はテレビでオリンピック観戦。その心境推理「今日は受けちゃおー」昼食後38手め41角と自陣に打つ。

42手め、佐藤陣の要64銀が逆行し53のトリトヌス空間の響きを消す。

53手め、羽生24角打でついに待望の桂馬入手。

56手め31香。佐藤九段は長期戦を避け最短手順の最強手選択。

58手め42銀打。棋界史上最も残虐な三角銀。これはもともと羽生の右銀。米長トトカルチョをコケにした康光風ジョーカー。暗黒の冷笑。ブラックユーモアとも。

59手め74歩。哄笑の渦中、ついに羽生の悪魔の罠が康光陣をえぐる。


大悪魔75歩によって羽生85手にて勝ち。2002.2.14up