アルゼ・セタ杯争奪「第28期女流プロ名人位戦」5番勝負第3局

2002.2.3兵庫県柏原町「三友楼」

女流名人位戦鬼門対決 中井VS斎田

21手め75歩大姉御の反乱

マシュダ談 2002.2.3  UP2002.2.7 12:00


「まだ棋王戦途中ですけど」

「ひどい将棋じゃよ。康光圧勝で終わるがな」

「同じ日にタイトル戦ふたつはもったいないですね」

「中井斎田戦は柏原町でやっておるのか」

かいばらと読むんですね。対局場は三友楼という料亭です」

「ええとこでやるねー。ぼたん鍋おいしーとこ」

「どういうものですか?」

「猪肉使った鍋。黒豆豆腐、丹波シメジ、殿様ネギ、黒豆うどんを合わせ込む。味噌を擦り込むとこが生めかしい」

「なぜ、ぼたんと呼ぶのでしょう?」

「皿に盛りつけた猪肉が牡丹に見える。脂身が赤身と明暗を分けて命を花のごとく発散してね。この猪は丹波の山に棲息する天然。コイツラが町で悪させんように山際にはトタン板が張り巡らされておるよ。三月末までの4カ月半猟師が鉄砲で撃ちまくって牡丹となる」

「煮てね焼いてね食ってね。でも煮るのがいいんですか?」

「猪肉は煮こむ程、肉が柔らかくなる。だから煮る」

「豚だと煮れば固くなりますが」

「だから将棋では局面が煮詰まって手が固くなるとブタ手と呼ぶ。先崎が流行らせた。タコ手とも呼ぶ。一日経つと悪手と呼ばれる」

「ぼたん鍋食べたら、いい手がでそうですね」

「ちょうどええ時期に招かれたね。柏原町というのも縁深い。ここには柏原藩陣屋跡がまだある。対局場から歩いてすぐのとこ」

「柏原藩と言いますと?」

「織田家の公邸。信長の弟、信包が初代藩主。柏原藩は三代続いたが、嗣子が居なかったためお家断絶となり一時天領となった」

「嗣子がなかったのはなにか由縁があるのでしょうか?おまんこしてもできなかった?」

「嗣子が居ないのは時代背景が絡む。明智光秀の丹波攻めがあり柏原の八幡神社が燃やされた。この八幡神社は、もともとは石清水八幡宮の別宮」

「石橋清水と?」

「アホ。千年近く前の話。南北朝時代の争乱で一度焼失しとる」

「関東関西の争乱と?」

「今ある八幡神社は秀吉が造営したもの」

「天下統一ですね」

「統一というより混合。その象徴の一端として柏原の八幡神社には三重塔が今尚現存してる。寺にあるべきものが神社にある。しかも様式美がまるで異なモノが目に見える三重塔としてあるのが興味深い。これは統一ではなく混合と呼ぶ。この三重塔の場合は風景として混在していると読めばさらに正確」

「では秀吉が天下統一したものとは?」

「銭の流れじゃね」

「では棋譜を見て行きます」 (続く)