ロケットの古代史
THE HISTORY OF ROCKET 1

始まりは不老長寿の薬から?

 古代中国では、仙人になるために、不老不死の妙薬が研究されていました。また錬金術もさかんであちこちから色々な材料を集めては混ぜたり加工したり。特に石薬の一つである硝酸は最も使われる機会も種類も多かったようです。見つかっている一番古い物では、「硝石と硫黄と木炭を混ぜたもの使うと、泥を金に、鉛を銀に変えることが出来る」という淮南子の記述があります。これは火薬そのものです。こうして生まれた火薬が初期のロケットの推進剤となります。いまでも不老不死の薬や、金を調合したり、仙人になる方法は見つかってはいません。しかしロケットとして、天(宇宙)に昇る手段や、宇宙空間での遺伝子や医療薬の研究、新材料の調合などに結びついているのは、本当におもしろいことです。

先祖は火炎放射器

 高圧高温のガスを噴射して空を飛ぶもの、いわゆるロケットが生まれる前に、火をとばす機械の発明がありました。猛火油櫃(モウカユキ)と呼ばれる火炎放射器で、10世紀の中国でのことです。他にも中国には火を噴く武器や、火を飛ばす武器が多くあったようです。また発想はおもしろいけれど構想倒れに終わってしまっただろう資料が多くあります。古代ロケット研究書はロケットの誕生が11世紀の中国としているものが多いのですが、実はこの時代にはまだロケットは生まれていなかったようです。

最初のロケットは14世紀!?

まだ13世紀以前には(後になって書かれた書物や、技術的に現実味のないものを除く)噴射によって推進力を得て飛行する物体は無かったと考えられます。1379年にイタリアの戦争で、ロケッタという武器が使われたという記録が残っています。


14世紀中国の飛火槍


 また飛槍と呼ばれる火薬燃焼噴射の反動で槍を飛ばす兵器が中国の明(1368〜1644)の時代になって使われました。これ以前に飛火槍(上図)というものがありましたが、前方に火を飛ばすことで敵を驚かせる構造だったようです。ちなみに、ロケットの語源はイタリア語の糸巻器(Rocchetto)。形が似ていたのでしょうね。色々な資料を現代の技術に基づいて客観的に分析すると、ロケットの発祥はどうも14世紀のヨーロッパということになりそうです。


中世ヨーロッパの自走ロケット槍

ジャンダルクとロケット

オルレアンの防衛戦(1429)でイギリスと戦ったフランス軍には、ロケット部隊が有りました。この英仏戦争ではロケット兵器が盛んに用いられたのでヨーロッパに広がり、のちにイタリアで打ち上げ花火に改良されたりしました。

ロケットはアジアへ新大陸へ

 16世紀には、世界中にロケットが広がり、関ヶ原の戦に備えて、徳川軍は350本のロケット弾を輸入しました。オランダ船リーフデ号の積載荷物の記録に残されています。
 1779年には、インド軍が東インド会社(イギリス)に抵抗するために、ロケットを主力兵器として使っています。 近代兵器コングレーブロケット フランス軍に、インド軍に、ロケット兵器で攻められる側だったイギリス軍に、強力な兵器が生まれたのが1804年。有名なコングレーブロケットです。ナポレオン戦争、コペンハーゲン攻勢、アメリカ独立戦争、ライプチヒの戦い、ワーテルローの戦いなどで、華々しい戦果をあげています。アメリカでは国歌としてこのロケットのことが歌い継がれています。
 このコングレーブロケットまでは安定のために、長い棒が後方についていました。


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 構成は西條寿雄氏(日本モデルロケット協会)「ロケット発達史研究」、並びに久保園晃氏「龍勢ロケットへの心」をヒントにしています。同書は「日本ロケット物語」として三田出版会(03-3817-7200 \2,500)から出版されています。(図版や文章の一部を許可を得て掲載・引用)
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