渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



逆に・・そもそも・・

デザインする時、最初に着想が必要です。 それはなにも1から新しいものを生み出す
ことではなく、ものを見るこれまでと違った視点、考える上での新たな切り口があっ
て、よくあることでもちょっと見方を変えるだけで別なものが見えてくるといったこ
とではないかと思います。それはコロンブスの卵的なことです。
それには頭を柔らかくしていないといつも思います。そして、ものを斜から見たり、
裏返してみたり、ちょっと引いてみたり。その時に、“逆に〜”とか“そもそも〜”
とか言ってみてその後に自分から出てくる言葉を待つということもしてみます。例え
ば、玄関がここにしたいが駐車場がうまくない時に、“逆に”駐車場はどこだといい
んだ?とか、手すりの形がなかなかしっくりこない時、“そもそも”手すりはどうし
て必要なのか?といった具合に。“逆に〜”というのはものごとを反対側や違う方向
から見直すことだし、“そもそも〜”というのはそのことから身を離して前提条件か
ら見直すことです。だから、こうすることは行き詰まった時に特に有効です。よく、
そのものだけしか見えなくなることがあります。そのような時に、広く周りとの関係
の仕方や、隣との見え方から考え直すと良いことがよくあります。
そのように、そもそもイスとは・・と原形をさぐって、逆に置かれる空間から考える
と・・と思って椅子を作ってみました。ちょっと腰掛けたり物がおけるだけで、要素
を最小限にしていくと線だけになります。そして四角い空間に消えてしまうような存
在感の無いものにならないかと考えました。この背の角度は背中の当たる角度なので、
見ためほど堅くは無く座りやすいのです。正面があまりなくどこから見ても空間に溶
け込み、重なって見えても楽しいイスになりました。

2006/11/19

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