渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



ものの成り立ち

 以前、アメリカで新聞紙再生トイレットペーパーを見ました。それは、元の活字や
カラーページが粉々になりながらちりばめられた面白いものでした。とても魅力的で
再生とはこれでいいのに!と強く思いました。その後、イギリスに再生プラスチック
のプラスチック版が同じように元のプラスチックの色とりどりな部分が残しながら溶
け合ったものを雑誌で見て、なんでこのようなものが日本にはないのだろうと思いま
した。それは、素材の成り立ちが分かるとても面白いもので、かつ再生であることが
新たな魅力を生んでいると思うのです。
 日本人は潔癖性だからなのでしょうか、再生のトイレットペーパーやボール紙もあ
りますが、漂泊して新品に近ずけてしまうのです。それはとてももったいないことだ
と思っていました。すると、ビンの再生ガラス板を作っているメーカーを知りました。
元のガラスの破片の粒が分かる程度に溶かしてあるのです。
元のガラスビンの色の違いと、光の反射や透過率の違いのムラがとても魅力的です。
似たようなことで、絵なども、隅々まで綺麗に描かれているものより所々無くなって
いたり未完成のようなものが好きだったりします。描く時の迷いや省略の跡が定着さ
れているものは、成り立ちの軌跡や時間が読み取れるのです。
それを建築でもできないかと思います。多分、リフォームやコンバージョンでの面白
さはそういう新旧が並置されて、成り立ちがうかがえる所にあるのではないかと考え
ています。その点ではイタリアやヨーロッパのリフォームは古い部分の残し方や、新
しいものの加え方がとてもうまいと感じます。よく見る古民家再生は新旧の対比や見
せ方が分かっていないと思います。

2006/10/6

ビン再生ガラスのサンプル/東洋ガラス、台は活字の見える再生ボール紙

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