渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



材質感

よくタイルの目地は汚れることから嫌われます。以前知人が、大判のタイルが発売さ
れたというのでさっそく浴室に貼ったところユニットバスのような味気なさになって
しまったことがありました。どうもタイルの材質感は目地に負うところが大きいよう
です。同様に、いくらムクの木でもツルピカに仕上げ、角も表れないとプリントと見
分けが付かなくなります。かえって傷があったり角が欠けている方が中身の詰まった
ムクの存在感があります。材質感やムク感はエッジに表れます。似た話で、音楽の音
で何の楽器なのかは、 立ち上がりと消えていくときの音の切れとザラつき方で認識す
るのだそうです。立ち上がりと消えていく部分を消してしまうと、何の楽器の音なの
かはほとんど分からないのだそうです。ものの見え方も端部の扱いかたしだいで良く
も悪くもなるのだと思います。
また、ツルピカのものは出来た時が最も良く、時が経つと細かい傷は付き光沢もなく
なり、メンテナンスをしないとどんどん価値が減る宿命にあります。対してムクその
ままに近いのものは、傷や欠けや汚れることで、感じ方によりますが、使っている人
にとっては価値が上がります。そこには時間の積み重ねが感じられるからでしょうか。
それはなにも木や石や土壁や和紙のような自然素材だけではなく、ムクであればコン
クリートや金属やガラスにもあてはまります。あまりそれを求めたり作ったりすると
骨董の世界に近づいてしまいそうですが。

2006/8/24

中目黒の家

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