渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



変わるものと変わらないもの

建物の中には、長い時間の中で変わるものと変わらないものがあります。前者は構造
体や部屋の関係などで、後者は置き家具・置き物や絵やカーテン・壁紙・カバーなど
のテキスタイルやペンダントライトやフロアライトで、10〜20年では設備や仕切り
壁も変わるでしょう。それは見せないものと見せるものに対応します。変わらないも
のは視覚的に主張しないものでないと気が変わったり長い年月飽きないようにしない
とうっとおしいので見せないものとして造ります。それに対して、変わるものは季節
によって変えたり、気分を変えたいときに変えられるので、日々に潤いや刺激を与え
る見せるものとして置いたり掛けたりします。
インテリアをスッキリさせるためにも、コストを押さえるためにも、見せるものと、
見せないものをはっきり分けることがコツです。例えば照明を考える時にも、見せる
照明器具と、見せない照明に分けます。見せる照明は数種類に押えて、後は見せない
照明としてダウンライトや間接照明にします。収納なども同様に見せる家具は幾つか
に押えて、後は見せない家具として壁のように仕上げます。
それをより進めた Open Architecture という考え方があります。それはオープン
ハウスのような意味ではなく(一部そのような意味で使っているケースもある)将来
使う人や用途まで変わることを想定した可変性や、それを建設/変更/更新していく上
でのオープンなシステムを考えて設計をしていこうということです。持続可能な建築
や環境を考えていこうということで、今後必要になる考え方です。
しかし、一方で特殊な用途の建物を、そのまま他の用途に無理矢理使っていくのも魅
力的だったりします。“新旧の対話”でも書きましたが、意外な空間を別の用途に使
っているものは、以前の用途も感じられてそのギャップも魅力であったりします。将
来を予想するには限界もあることも考えるべきでしょう。また、何にでも使えるよう
にすることは、何に使っても魅力的にならないことがあるように思います。つまり、
可変性を考えるとオフィスのように均質な建築と成りがちなのですが、空間や関係性
は特徴があった方が面白いのです。“建築にしかできないこと”でも書いたように、
薄目を開けて歩き回って魅力のある建築であるべきだということでないかと思ってい
ます。

2011/2/27


イサムノグチ庭園美術館/香川県
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