渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



光と窓

一般的に日本では南に庭があり、そこに面して窓があることが価値があるとされてい
るようです。確かに南の窓は部屋を明るくしてくれて冬には部屋を暖めてくれますし、
夏には庇があり西日を遮る壁があると空調効率も良いとされています。しかし、暖か
さを求めること、明るさを求めること、風を取り入れること、眺めを求めること、は
本来別のことなのです。
南の窓は昼間の日をまともに入れると眩しくて庭は見えずらく、さらにカ−テンを閉
めてしまっては庭の眺めは元も子もなくなってしまい、そもそも都心では、南には隣
家が北側いっぱいに建っていて、南の庭は日陰になって、その向こうにはトイレの窓
や室外機などが見えるだけだったりします。前に”庭”でも書きましたが、庭を眺め
たいのであれば、都心では樹木の明るい緑が見える西か東の庭が良く、それぞれの窓
に何を求めるかで、向きも作り方も変わってきます。そう考えると西欧のように、建
物の断熱性能が上がれば、南向きの窓は必ずしも必要無くなるのに気付きます。
では、室内にどういう光が入るのが良いかを考えると、人の居場所に向かって日が射
すのは眩しくてたまりません。視界としては壁が最も目に入ります。直射日光の当た
る壁もちょっと眩しいので、格子や木漏れ日の陰影が壁に落ちているのを眺めるのが
良いのではないかと思っています。そうして開口と壁の関係を考え、日の高さを考え
ると、やはり開口は南より東や西に傾たた方が良く、窓から袖壁なく続く壁は東西か
ら北の方が有効です。朝日の木漏れ日も良いですし、夕日も天井や壁にバウンドさせ
ると柔らかい光となって良いように思います。


2010/11/3


木の影
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