渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



窓と絵画

窓の機能を考えてみると、様々な要求があり過剰な設備になりがちです。完全に閉め
切るための雨戸やシャッター、空気は通したいけど虫は遮断したい網戸、光や視線は
通したいけど空気は遮断したいガラス戸、光は通したいけど視線は調節したい障子や
カーテン、それらに防犯や断熱や耐火を加え、使っていない時は見えないようにする
といった機能の全てを全ての窓に持たせようとすると重装備になりスッキリとはいか
ないのは想像がつくでしょう。ところが、こっちは眺めるだけで良ければガラスだけ
でよく、あっちは明るさと暖かさを取り入れるだけならガラス+ブラインドだけで良
く、また風をいれるだけなら板戸+網だけで良い、といったように機能を分けたなら
とてもスっきりしていきます。
一服の屏風絵や、切り取られたように描かれた絵画を見ると、窓のようだと思うこと
があります。絵のように空けた窓が先か、窓から観たように描いた絵が先なのか。
そう考えると、明るくなれば良いのではなく、なんでも見えれば良いのでもなく、空
など見えずに緑一色の濃淡のほうが良いわけが分かります。もちろん素晴らしい眺め
が広がる場所に開口を開けられるなら問題はないわけですが、都心では望むべくもあ
りません。そんな時、緑だけが見える開口や古い塀だけが見える開口、大きな開口で
あれば下から閉められるブラインドを付けます。そうすると下の方の雑多な建物が消
えて、空だけが見える窓になります。開口の開け方、切り取り方を考えるのにも絵画
は参考になります。

2010/5/18


源光庵
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