渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



家族の関係

これまで様々な住宅を58戸創ったことになります。すると58家族分の様々な関係が
あり、家族とは想像以上に1つ1つ全然違っていて、その形や関係は千差万別なこと
に驚きもしましたし、私自身家族への接し方などで教えられることが多々ありました。
そもそも作今ではテレビも1家族に幾つもあり、携帯電話でさえ見れます。また、食
事も、子供が塾に行っていたり、仕事も深夜まであることが当たり前になってくると
けっこうばらばらです。単身赴任や下宿などが必要なこともあり、サザエさんのよう
な家族の方がまれなようです。そうすると何故一緒に住むのかという根本的なことに
も触れてきます。経済的な理由だけではなく、それでも一緒に住みたいから家を作る
のだという家族の住宅を創ることは充実感があります。
住宅を作る時によく子供部屋の作り方が話題になります。子供がいつ帰ったのか、誰
を連れてきたのかが分かるようにしたいなどということです。子供部屋の有り様は年
齢とともに変わっていくのですが、親は孤立させないようにしたいが、子供本人は独
立もしたいし、テレビや音楽の音がお互いに気になりがちです。その他の寝室や書斎、
家事室とリビングダイニングの関係も区切ってしまうとそれぞれが狭苦しくなってい
きます。敷地が広ければ中庭を間に挟んで向き合うような関係が良いと思っています
が、中庭を作るほど敷地が広く無い場合、つかず、はなれずの関係をつくり出すのが
良いと思っています。それは、様々なコーナーやコ−ジ−なニッシがあちこちにあり
ながら家中が一体観を感じられる住宅です。それには顔は見えるが手元足元は見えな
いような関係であったり、気配は感じるが気にならない距離感や、視線にレベル差が
あって直接向き合わない様な関係がいいのではないでしょうか。そして、あちこちに
あるそれらのコーナーを家中歩き回れて、そこここに佇める場所があるというような
住宅です。引き戸や折れ戸などの可動間仕切りで、普段はオープンですが仕切りたい
時に区切れる仕組みも有効です。いずれにしてもこれまでの様な住宅ではなく、家の
中も外も、人と人との関係、他人との関係、家族の関係に合わせた住宅の形を見直す
時期にあるのではないかと思います。


2009/8/2


つかずはなれずの家

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