渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



庭-2

庭の続きですが、屋外を屋内の延長のように感じられれば、住宅の面積は敷地いっぱ
いに感じられ、さらに周囲の良いところも取り入れることができます。しかしそれに
は日常視線の上でも眩しさの上でもカーテンが必要でないような作りにしなければな
りません。その上で屋内から屋外を眺めることと、日の光の入り方の関係をよくよく
考えると、都心では特に、南に庭は造らない方が良いことが多いように思います。大
体住宅地で南に庭を造ると、南隣家の北側にあたり トイレの窓や室外機が目に入りま
すし、隣家が2階や3階なら影になります。南が道路でも道行く人の視線が気になった
り直射日光が室内に射すと眩しいのでだいたいカーテンを引いてしまい、庭と室内の
一体感は失われがちです。
それに対して、よく北の庭が良いという話があります。家が平屋で庭の奥行きが取れ
る場合には、北側の庭は樹木の葉に日が当たる姿が屋内から望められ、屋内は眩しく
ない安定した光が入り、比較的暗い室内から庭を見るととても美しく感じられるから
です。さらには、えてして花も日の当たる方へ咲くのです。それはつまり、庭が南に
あるとそれを眺める屋内は庭の北側になるので、樹木の日陰側を見ることになり、眺
めとしてはけっして良くないということです。
その意味では、都心で2〜3階などにしたい場合は、西や東の庭が良いように思いま
す。また、本来明るさを取る窓と眺める窓は目的が違うのですから一致させる方が難
しいはずで、分けて考えることも必要です。
また、埴栽の魅力は光の当たった葉や陰の葉の重なりや、それらの透けから奥行きの
ある眺めですが、もう1つに、木漏れ日の落ちた地面や壁も美しいものです。風で葉
が揺らぐと影も揺らいでとても心地よい空間になります。
それらのことから、庭はこう創ると良いというものがおのずと見えてくると思います
が、考えてみてください。
他には、朝日のきれいに入る気持の良い場所や、夕日が入ると落ち着く場所などがつ
くれると、より天候や時間や季節の移り変わりをより感じられ、時のうつろいをより
感じられる住いとなります。

2009/6/28


木漏れ日の住宅

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