渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



光のデザイン

心に残った空間を思い起こせば、そこには光がとても魅力的な効果を表わしていたこ
とに思い当たります。中でも大谷採石場や築地魚市場では大きな暗い空間に光が一筋
射して、なにか貴い崇高さを感じさせてくれました。また、チベットの僧院やキリス
ト教の教会では儀式の前には煙を振りまいていたのですが、そうすることで高い窓か
らの光の流れが筋として見えて、さらに遠い部分が霞むことで高さや奥行を感じさせ
ていました。
また、兵庫県の浄土寺浄土堂では夕日が射すと朱色に塗られた頭上を覆う柱梁に反射
して空気まで朱色に染まっていました。そのように、朝日や夕日が射すと魅力的な空
間は、ルイス=バラガンもよく創っています。そのバラガン自邸では、明るい所と、
暗い所が交互に現れるとてもメリハリのある空間を創っていました。暗い場所から明
るい場所を眺めた時の安心感と開放感、暗い場所の向こうが明るいと誘われるように
足が向き、暗さがあるから明るさが際立つ。京都の町家では暗い座敷に目が慣れて振
り返って坪庭を見ると輝いていました。また、地下室の上からこぼれる光にも惹かれ
るものがあります。
一般的に日本の住宅やいろいろな場所の照明はメリハリがなさすぎます。外国から日
本に来た人が“なぜ日本人は鼻の下が黒いのか?”と聞いたそうです。日本では照明
が天井に付いているのが一般的なので、鼻の下が影になることからの発言だったらし
い。満遍なく天井の照明で明るくするので不自然だし雰囲気も良くなく、人も魅力的
に見えません。それに対して暗い場所と明るい場所を作ると、陰影が強調され人の表
情を魅力的に見せます。壁に柔らかい照明を作ると、光が瞳にも映り込み、下からの
反射した光があると年齢も若く見えます。照明をうまく作れば昼と夜の雰囲気がドラ
マチックに変えることもできます。だからできるだけ、天井に照明器具や光源を見せ
ないことやメリハリのある照明を考える必要があります。
そのように、光を創ることはそこの環境や状況を創ることでもあります。加えて、照
明の場合揺らぎなどの動きを加えることも容易にできるのです。
そこで、最近、”木漏れ日の照明”と”波紋の照明”をつくりました。その内動画と
してHPに載せたいと思いますが、その方法を御存知の方教えてください。

2008/10/27


京都、吉田家坪庭

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