渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



デザインの振り

インテリアデザインをするようになって、世の中の店舗デザインを良く見るようにな
り、自分ならどうするかを考えるようになって気付いたことがあります。まず、ほと
んどの店舗はなんとなくのイメージで作られていて、そういうことができない自分に
気付きました。なにかコンセプトや意味や理由がないとなにかを作るにも落ち着かな
いというか納得がいかないのです。
20年くらい前ですが、マイケル=グレイブスが建築コンペの審査員をしていて、古民
家に斜めの壁を挿入した案に対して“デザインの振りをしているだけだ”と言って批
判していました。ポストモダンの旗手であったマイケル=グレイブスが そう言うのは
疑問でしたが、“デザインの振り”だというのはとても納得しました。確かに、斜め
にしたり尖ったり丸くしたりやカラフルだったりするとデザインした気がします。そ
うしたスケッチをすると自分でも何かをやったような気にさせてくれるのです。しか
しなんの理由もなくなんとなくそうしたデザインをしても何日かすると飽きてきます。
石山修治がなにかで、そのような小手先の操作を“でじゃいん”と言っていました。
でもそんな過剰な飾りをしなくても、間がもたないことを取り繕わなくても、コンセ
プトがしっかりして、ツボを押さえたものを作れば十分力のあるデザインが生まれま
す。そのようにして生まれたものは飽きません。
そこで店舗のデザインを作る時にまずしたことは、その場所の特徴とその店舗がなに
をめざすのかから考えること。そしてそれを、さまざまな要素の配置を考えることで
それを現せないかということでした。とてもあたりまえのことですが、そこが全ての
原点でもあります。

2008/5/13


キンベル美術館

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