渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



型-FORM

Formは日本語に訳すとフォルムとフォームという2通りの言い方と意味があります。
その意味するところがとても違うので面白いと思っていました。フォルムは形のこと
でどちらかというとシルエットに近いでしょうか。しかし、フォームというと型とか
形式のことです。小説でストーリーは分かっているのに何度も読み直したくなるもの
があります。たぶん夏目漱石やシェイクスピアなどがその代表ではないでしょうか。
その理由を柄谷行人は、形式自体に人間がどうしようもなくかかえている問題や魅力
が潜んでいる場合に、何度も読んでも新鮮なのではないかと書いていました。また、
構造主義の構造とは“形”ではなく“働らき”のことだとも書いています。“関係性”
でも書きましたが、それぞれの登場人物や背景はカッコに入れて、その関係や相互の
働きのことを形式というのだと思います。その形式が普遍性を持った関係性であれば
こそ、心に引っ掛かるものがあるのだと思うのです。
建築でも似た様に、形を造るのが目的ではなく、そこで生活したり使った時に感じる
関係や働きを造るのが目的だと思っています。それは、それぞれの場所や各部分の魅
力というよりも、そらの間の関係=形式に魅力があると何度も訪れたくなるのだと思
います。それは写真に撮せることではなく、実際に訪れて歩き回らないと感じられる
ことではありません。それが、表わしにくさ、分りにくさの原因だとは思うのですが、
そのような何度も訪れたくなる場所が造るのが一番したいことです。

2008/3/26

都市の1/10000(ヴェネツィア/モロッコ/京都/パリ)

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