渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates





以前チベット文化圏を訪れた時に、植物の無い山の頂きや尾根道の曲り角や集落のま
わりに色鮮やかなチョルテンと呼ばれる布がはためいていました。こんな荒涼とした
所になんで赤や青き色の極彩色のものがあるのか不思議でした。色々な文化人類学の
本を見ると、アンデス、エチオピアやアフリカといった高地や、平地でも荒涼とした
ところで鮮やかな色の衣服や装飾、モニュメントの写真を見る気がします。それは廻
りが荒涼としているからなおさら鮮やかに見えるのかもしれませんし、荒涼としたと
ころだからこそ、色鮮やかなものが求められるのかもしれません。一方でイタリアの
ファッションやプロダクトが色鮮やかに思いますが、その背景となる街は古色蒼然と
しています。だからなおさらファッションが色鮮やかになるのでしょうか、なにか人
が主役であることを表わしている気がします。
それらを考えると、なにからなにまで色鮮やかにすれば良いわけではなく、要するに
環境の中でのバランスなのだと思います。
建築のおける色というとルイス=バラガンを代表とするメキシコの建築を思い起こし
ます。でも実際に訪れたバラガンの自邸やギラルディ邸、カプチン修道院で感じたの
は空気を色付けて空気の濃度手触りを変えたかったのではないかということでした。
色のついた壁を見せるというより空間が回り込んでいく壁に色を付けたり、太陽が当
たりながら直接見えない面に色を付けて他の壁を色付かせて、その先へと空間が続い
ていくところにアクセントを付けているように思いました。さらには黄色いステンド
グラスを透過した光が赤い壁にバウンドして空間を満たしていて、空気がちょっと重
く濃くなったようにも思えたのは気のせいでしょうか。

2007/10/24

tibet/Lehの斜面にはためく教典

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