渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



乾いた関係

照明や家電や家具などのプロダクトや彫刻などを見ていて、ものの納まりで気付いた
ことがあります。ほとんどのものは、固まりと板状のものと線状のものからなり、そ
の欠けや幾つかの組み合わせになっています。異なるものが組合わさっている場合、
工芸の漆器の象眼のようにぴったりと隙間なく面一で納まっているものと、違うもの
は違うものとして隙間が空きながら組み合わされているものがあります。建築で言う
なら、左官の漆喰や土壁ように液体で溶いたもので他のものを隙間なく塗り込んでい
くものと、ストーンヘンジのように石の柱の上に石のまぐさを乗せるように固まりが
隙間が空きつつ凹凸しながら接しているものです。それを僕は、湿った納まりと乾い
た納まりと呼んでいます。
湿った納まりは技術的にも高度なものが必要で、コンクリートにガラスが面一に納め
られていたり、鉄と石がピタッと揃っていたりするもので、漆器の象眼のように工芸
の世界に近づいていきます。それに対して、乾いた納まりはローテクで原始的で、か
つ異なるものがちょっと段差や隙間があり、風通しが良く、お互いに対話する感じが
してどちらかといえば好きなのです。
ルイス=カーンの言葉に“レンガには、成りたい形がある”というものがありますが、
いくつかの集まり方にも同様なことがあると思います。固まりは大小のものがばらば
らとちょっと離れてあるのが、板状のものも線状のものもちょっと離れて向きが違っ
ているのが好きです。欠損にも似たようなことがあります。固まり状のものは角が欠
けたり中央に穴が空いたり、板状のものは破れてスリットが空いたりめくれたり、線
状のものは途切れたり曲がったりといったことです。
そうしたことを考えながら、建物全体の構成から手すりの金物までをどのように作ろ
うかと考えています。いずれにしても言えるのは、かんばって無理している造形や、
苦労している納まりに見えないことが良いのは確かです。

2007/5/4

ストーンヘンジ *

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