渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



水の環境

夏の盛りに丹沢で沢登りした時の気持ち良さの記憶のせいか、暑いときには水に触れ
ているだけで幸せを感じてしまいます。水の存在感はとても不思議で、扱い方でいろ
いろな表情を見せてくれます。
アメリカのダラスにあるウォーターガーデンは水の面白さをこれでもかと見せてくれ
る大きな公園でした。確か3つの部分があり、1つは大量の水がザーッと豪快にすり鉢
状の谷底に流れ落ちるもの、1つは 水がシャラシャラと落ちる僅かに傾いた長い壁に
囲われた広場、もう1つは地面からいくつも霧が吹き出している場所があり、そのス
ケールの大きさに驚きましたし、それぞれに響いている音も魅力的でした。乾燥した
場所では水への憧れが強いのでしょうか、メキシコでもバラガンの建物には水場が設
けられ、水が流れ落ちているのが空間に潤いを与えていました。リゴレッタのホテル
の前庭では水が踊っていて、迫力とスケールが日本とはケタ違いでした。
日本でも水の魅力を生かしたものがたくさんありますが、もっとさりげなく自然です。
貴船神社の川床座敷のように風と音を楽しんだり、鎌倉近代美術館の軒裏に水面の光
の反射が波紋を映す、法隆寺館のように水の上に架けられた橋を渡る、戸隠鏡池のよ
うに反転した景色を映す、もしくはうっそうとした森の中のせせらぎや水たまり、溶
岩石の敷石に溜まった水。
それは、光を反射し、景色を映し、水の音もポトン、チョロチョロ から サラサラ、
ザーザー、ドーーまで、新旧を超越した存在、環境を一遍に抽象化してしまうことも
できる、可能性のまだまだある存在です。

2007/4/5

Water Garden

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