渡辺康建築研究所
WATANABE YASUSHI architect & associates



モダニズム

近代とかモダン、合理主義という20世紀初頭前後に始まる考え方があります。その
ことを僕は大雑把に、かつ恐ろしく単純に、“なんとなくではなく、理に合った考え
方をしようよ”ということなのではないかと思っています。
絵画においては、かつては魅力を感じた風景や物をそのまま写していましたが、それ
は写真ができることだとなると現実を写す必要はなくなります。そこで、魅力に感じ
たものそのままではなくエッセンスだけを描けばいいとなり、魅力に感じたものとい
うのも現実にあるものからどんどん抽象的な概念になってきたのが 20世紀の芸術の
歩みなのではないかと、これまた大雑把に考えています。
建築でいえば、なんとなく柱の端や屋根の先や壁、天井が寂しいから装飾を付けてい
たり、石積みのイメージで丸い屋根やまぐさやヴォールト天井にしていたのを止める
と、ただの四角い壁や柱による四角い形になります。そうしてみるとけっこう新鮮に
見えて、プレーンな直方体の美学が新たに発見されました。しかし、それならばと幾
何学的な形を組み合わせても装飾になるという方向がアール=デコやデ=スティルなの
だと理解しています。しかしそれはお分かりのように、また別の形の装飾に回収され
てしまっています。また、生産性の合理性だけを求めたかつての公団住宅、学校建築
も片手落ちです。また、構造的なアクロバットや造形のスタイルといったことは、ア
ールデコのようにまた装飾に回収されてしまうのではないかと思います。
建築は、形を造るのが目的ではなく、そこでの使い方、感じ方を造るのが目的です。
その建築の目指している重要なことを解決するコンセプトが形を導き、魅力にもなる
ことが必要だと思うのです。

2007/1/24


大泉の家 / 傾斜地の接地の仕方、雨.雪の落ち方、日の入り方、室内環境から導かれた理に合った形

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