■■■AYAの観劇記■■■



カルメン

梅田コマ劇場(大阪)

2001年10月5日〜31日



観劇日:2001年10月29日(月)(1F11列38番)

原作:ブロスベル・メリメ
作曲:ジョルジュ・ビゼー
脚本:掘越 真
演出:吉川 徹

製作:東宝


  カルメン:大地真央
    ホセ:錦織一清
エスカミリオ:石井一孝
  ミカエラ:鈴木ほのか


AYAさんからのメール感想文だ。

連続投稿だ。

ああ!
大劇場芝居が観たい!!
と思う ここ最近大劇場系舞台を観る機会を逸している私であった。

大地真央さんなのね、AYAさん。
私は宝塚を観る様になったのは、ここ数年なので、
大地真央さんは、もう宝塚をとっくに退団されたアトなのだ。

さて、AYAさんの劇評いってみよう。



[亜矢の観劇評]

「いやあー、連日観劇、それもスペイン物つづき、
 昨日の『血と砂』のヒロインにはやられたしねぇ。
 いやまた今日も強烈ヒロイン物かな、
 でもマオちゃんははずせない」

と思って金子、起きた。

実は「血と砂」のほうは、もう少し早く観る予定だったのだが、
都合で2連チャン、となってしまった。
嬉しいやら、頭の整理をつけるのが大変やら。


 さて、ここで読まれている方は、

「東宝ミュージカルの女王をつかまえて『マオちゃん』とは何事だ!」

と思われるかも知れない。
でも、金子にとって永遠に大地真央さんは「マオちゃん」なのである。
少し話が長くなるが、良ければおつきあい願いたい。

○学生時代、身長が伸びなかったことから、
金子のタカラジェンヌになる夢は殆どかないそうになかった。
しかし、この儚い夢に引導を渡してくれたのが、マオちゃんなのである。
そう、「ジャンピング!」「新源氏物語」をタダ券があったので、
連れて行ってもらった時である。
割と前の方の補助席(今の大劇場にはない)で観れたので、
スターさんたちが良く観えた。
そして、初めて姿を現したマオちゃんに、金子、

「こんな綺麗な女の人がこの世にはいるのだ」

と口ポカン状態で、見上げてしまった。
ここで、もう宝塚行きは諦めた。
この時からファンになり、マオちゃんがトップになっても、
コメディーが多くとも、
鷹に乗ってようとどうでもいい状態になってしまった。

『ガイズ&ドールズ』は
一般にはマオちゃんトップ時代の一番いい作品だそうだが、
「マオちゃん格好いい」しか残っていない。
ナンバーの良さとか、他の出演者のことなど、
どっかに飛んでいってしまっている。
ハイ、来年のはちゃんと観ます。

兎に角、
マオファンで私の宝塚ファン歴は始まったと言って過言ではない。
よって、いまだに私にとって大地真央さんは「マオちゃん」であり、
12月の同劇場でのワンマンショーは毎年通っている。
このショー、結構普通の人が観ると
「あっはっはー」
で内容がないそうだが、私はマオちゃんを拝めればそれでいいので、
顰蹙を受けつつも通っている。(今年も行く予定)
それと、毎年1回ぐらいは
マオちゃんのミュージカルが同劇場であるので、
これも外せないのである。

今回の「カルメン」も
「えっ、BS2でやったの見たのに行くの?」
とかなりの顰蹙ものだったが、やはり行ってしまった。
それもSS席で。
もうファンだからしょうがないと思ってください。
という前置きで感想はお読み下さい。


 さて、マオちゃんのカルメン。
ファン心理は置いておいて、その、迫真の演技でし
た。カルメンという女は「血と砂」のドンニャ
(わかりにくかったら、拙稿の「血と砂」をお読み下さい)
よりずっと情がありますね。

例えば、ミカエラが「ホセの母の命はあと3ヵ月なんです!」
と訴えると表情が変わり、
次にホセに「あの田舎娘と一緒に静かに故郷でくらせば」と言う。
ホセのことを思いやっているんですね。
それと最後の「殺すなら殺しなさいよ!」という台詞の奥には、
「あんたは私から別れて田舎で静かに暮らすのが性に合っているのよ。
 ナイフを持っていても、
 あんたの度胸ではあたしを殺すこともできないし、
 罪人にもなりたくないでしょうよ。」
という意味だと金子は取った。
ホセへの愛が強くなるにつけて、
自分は彼の社会規範にのっとった生き方には同調できない、
ということでしょうか。

カルメンって情熱的でファム・ファタール(運命の女)と
一般的にはとられていると思うが、
哀しい人なんだな、と今回は思えた。
エスカミリオに乗り換えるのも、ホセの怪我を治すため。
心の奥底では、ホセこそ唯一の男なんですね。

何度も涙を流すシーンもあり、
また最後の首だけ台から落ちて、
目を開けたまま死んで行くのも印象的でした。
(ただ、このポーズ「あしびきの山の雫に」でも
 やってましたね、マオちゃん)
ただ情熱的ではなくて、
カルメンの哀しさを感じさせる演技力はさすが、と思った。

歌はキーの高い「ハバネラ」などは
BS2より大分上達されているように感じた。
ただ、地声から裏声に変えるところがはっきりしすぎていて、
これは弱点だと思います。ハイ。

でも、やはりやはりマオちゃんの本領はミュージカルコメディーで、
うーん、次の「パナマ・ハッテイー」など観たいです!
(ポーターの曲だし)
いつ大阪に来るんでしょうか?

いや「風とともに去りぬ」も観たいぞ。
SUNさんの評を読むとそう思ってしまった。
兎に角、マオちゃんには明るいものがいいのです。
1ファンとしての主観ですけど。


 ホセの錦織一清さん。
あのー凄く言いにくいのだが、もう少し痩せてください。
ホセはどうしようもなく格好悪い役だから、エスカミリオとの対比で
「えーこんな1人の女で無茶苦茶になる男イヤ」
とおもいっきり思わせれば思わせるほどいいのである。
その点はしっかり押さえられていたと思う。

特に1幕の最後の、
「あなたは自由を得たのよ!」と手を差し伸べるカルメンに対して、
うずくまってしまうところが良かった。
どうしても、社会の一線の倫理を超えられない、
という感じが良く出ていた。


 一方エスカミリオの石井一孝さん。
どちらかというと今まで
「レ・ミゼラブル」とか「ロス・タラントス」
の繊細な青年のイメージが先行していたのだが、
今回はいい意味で裏切られた。
豪放磊落で大胆な闘牛士。
ホセに対してか、思いっきりキザっていた。
宝塚の男役でも観たのか?と思うほど、
少し襟が曲がったらすっと直す、とか。
有名な「闘牛士の歌」も歌いこなせていて良かった。
BS2よりずっと良かったと思う。


 ミカエラの鈴木ほのかさん。
高音は悔しいけれど、マオさんよりずっと出ていたし、聴き易かった。
髪の色はポスターと違って赤毛だったが、私は金髪がいいと思う。
訳はないのだが。

「田舎娘」とカルメンに一笑されてしまうのだが、
心の温かさみたいなものはよく出ていたと思う。


 占い師の江波杏子さん。
存在感が凄い、と思った。
台詞が1つも分からないところがない、というのがベテランの域だ。
でも、今回は全員の台詞がよく分かった。
(3階席にいくと大分分からなくなくらしい)


 印象に残ったのは、ホセの上官の藤堂新二さん。
女ったらしの出たところ勝負の軽い男で、
「こんなんの命令には従ってられないわな」と思われた。


 あと、宮川浩さん、福井貴一さんといった、
ミュージカル界でその名を知られた人が出ていたが、
役が小さいこともあって、余り印象に残らなかった。


 また、セットが3階だてになった
コロシウムみたいなものが回るのだが、
これが効果的で
「家」
「部屋」
「闘牛場」
と変化するのはなかなかであった。

また、宝塚のように銀橋があるのだが、
ここを使っての芝居や歌は宝塚に習っているようだが、
これまた効果的だった。
宝塚の強み、というのが一部分かったような気がした。


 最後に、
『エリザベート』の時は、スタンディングオベーションだったのだが、
今回はそれもなくて、カーテンコールもなくて寂しかった。
私一人でも立てば良かったのかな、と今後悔している。
千秋楽近くに行ったので、余計そう思った。

それでは、今回の感想を終える。長々と有難う。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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