■■■AYAの宝塚歌劇 観劇記■■■


月 組

2001年10月20日〜29日 宝塚バウホール

バウ・ライブアパシオナード
血と砂


観劇日:10月28日(日)
    り列19番

劇場 :宝塚バウホール



メール投稿 劇評。
K.AYA。

「観劇記」更新、安泰続行中。

汐美真帆(ケロ)、主演なんだね。
大空祐飛とW主演って感じか。

嘉月絵理さん。
刑事役 好演とのこと。
私、この方結構気に入ってます。
役をね、こだわって作る人なんですよね、この方。

この「血と砂」。
解説に 以下のことが書かれてある。

−−−また時代考証にとらわれない
   モダンアート的な要素をふんだんに取り入れ、
   スタイリッシュに展開する。−−−

興味ひかれますねー。
東京来るんですよね、日本青年館に。
でもなあ、観に行けないんだよなあ。
悲しいなあ。

では、AYAさんの劇評をどーぞ。




バウ・ライブアパシオナード
血と砂


   原作:ブラスコ・イバニェス
   監修:柴田侑宏
脚本・演出:齋藤吉正


汐美真帆
大空祐飛

         月組組生




<解説>

 文学的評価は勿論、「映画」として長く語り継がれる作品「血と砂」。
颯爽たる闘牛士の栄光と堕落を女性関係を絡めて
より宝塚的にドラマチックに描く。
数々の情熱的スパニッシュナンバーを、
メッセージ色の強い激しい色合いにより、
また時代考証にとらわれない
モダンアート的な要素をふんだんに取り入れ、
スタイリッシュに展開する。
この情熱的な作品に、実力派の汐美真帆、大空祐飛が挑む。
(「歌劇」10月号より)


<感想>

 徹夜して手に入れたチケットをにぎりしめて行きました。
なんせ、今年までも来年からも、バウのチケット取るのは、
至難の技―!
来年からは「宝塚友の会」は抽選のみなんて、
落ちたらもう一般では取れないでしょう。
諦めろということか、あーあ。
と先に愚痴がでてしまいました。
その上、行ったのが前楽、
うー拍手場所など完璧に遅れをとっていた。


まず、内容についてだが、良かった。
飽くところなく、重唱も効果的に取り入れていて
「新進作家」(プログラムより)の作としては
破綻なくできていたと思う。
ただ、時代が上の考証にとらわれない、
とあるがやはりはっきりしておいたほうがいいと思う。
あと、主題歌がもう少し印象的だといいのだが。
(「愛 燃える」は一発で覚えられる主題歌である)
ダンスは振付家3人の手になるもので、
いろんなフォーメーションが見られて良かった。


 さてさて、出演者。
始めに、あまりいいことが書けそうにないので、
各ファンの皆さん、お許しを・・・。
ということを言っておいてから書こうと思う。


 まず、汐美さん。
うーん、彼女の持ち味ってのは
「質実剛健」とか
「渋い」とか
「温かさ」だと思うのだが、
それが闘牛士とは、ちとそぐわない気が最後までした。

私にとって、闘牛士、というと
「哀しみのコルドバ」(再演)のヤン(安寿ミラ)さんだな。
闘牛士って、つきつめれば、商売はギャンブルだし、
やっぱり華やかにやって欲しかった。

ケロさんが悪いんじゃなくて、
ケロさんが闘牛士、ってのがどうもしっくりこないのだ。
それと、声質でしかたないのだが、
ハスキーな声は歌の歌詞は聞き取り難かった。
母親のことを思いやったり、弟はなにをしていても憎めない、
といった優しさは十分いつもの持ち味を発揮してでていたと思う。
あと、ドンニャに堕ちていくところは、
男の脆さみたいのがよく出ていて良かった。
きっと、この初ダブル主演、ケロさんが普通の人の役だったら、
もっと上手く行っていたのかもしれない。
でも、原作があるから仕方ないですね。


 次に大空さん。
「大海賊」の時、
「おっ、大分シャープになったな」と思っていたが、
ただの青年から義賊に変わるところは、はっきり区別できていた。
あと、義賊になっても、許せないと思っていても、
兄のことは肉親として割り切れない、というところは良かったと思う。
ただ、反面、義賊として刑事たちや裕福な者への怒り、
というのをもっと出して欲しかった。
どうも「ゲームをしよう」と言ってカルメンに詰め寄るところなどは、
少し迫力不足のように思った。
ただ、この時期としてはダブル主演としても、
この役に取り組んだのは、後々の彼女の芸暦の為になると思う。
もっとシャープさが切れるようになると男役として、
より充実すると思う。
この役は原作にあるかどうか知らないが、
もしなかったら彼女に合わせた、いい設定だと思う。
ただ、歌の歌詞は汐美さん同様聞き取りにくかった。


 そしてそして、西條さん。
彼女の演技うんぬんの前に、このドンニャ、すごい役だと思う。
ファンの汐美さんと1対1になった途端、
「暑いわね」とスカーフをとり、
「あなたは私に感じている」といい、
「さあ、いらっしゃい、エル・マタドール」
と手を引き、その引いた手を、
バッと脱いだ上着の下の下着の胸の部分に押し当てさせる、
という迫り方である。
(金子「すみれコード大丈夫か!」と叫びたくなった)
そして、ファンが怪我をしたら新しいエル・マタドールに乗り換え、
最後にファンの死体に赤いバラを投げて、
彼女の「アディオス」で芝居が終わる、という役である。
想像するなら、「凱旋門」のジョアンなんてちょろいもの、
「華麗なるギャツビー」のデイジーの上である。
これから、青年館観られる方、
ちょっと気持ちの用意をしていってください。
金子は、即、反動で「エクスカリバー」の
花總さんのお姫様でも観たくなってきた。

で、やっている西條さんなのだが、ベストアクトである。
「有終の美」とでもいうべきか。
ううん、これだけの人材、これからどこへ行くんだろう。
とにかく、これだけの役を真っ赤な口紅に象徴されるように、
女の血が流れるようにやれるのは凄いと思った。
ある意味、最後の台詞が彼女であることからも、
もしかしたら、彼女がこの芝居の真の主役かも知れない、とすら思った。
お幸せに。


 カルメンの椎名さん。
少し、間の取り方が悪く感じた。
あと、貞淑な人妻としては、削りたての鉛筆の芯のような、
すがすがしさが欲しかった。
歌はいいのだから、あと芝居を頑張っていただきたい。
フィナーレのダンスで、肉質的な感じがしたので、
もっと違うタイプの役が良かったのでは?と思った。


 後、やはり美々杏里の歌と確実な演技は良かった。
また、刑事の嘉月絵理の相変わらずの芸達者ぶりと、
初めてワンコーラス聴いた歌は良かった。
ルシアの音姫すなおは清楚で、初々しくて将来が楽しみ。
あと、怪我でファンの付き人にならざるを得なかった、
ガラベエトオの楠恵華の冷めているようで、
人間性を失えない役作りは印象に残った。


 以上、色々書かせていただいたが、
今後の月組の発展のためのいい公演になったと思う。
まだ、チケットが余っているなら、
青年館に足を運ばれることをお勧めする。
以上で感想を終える。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□劇評■筆者□□□□
金子亜矢
bacew609@jttk.zaq.ne.jp
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