ヤッホー!ザ・TCB・バンド
―TCBバンドが参加しているCD達―

梨沙 真理

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このシリーズをはじめるにあたって

 いやあー、すっかり、惚れてしまいました。4人の男達に。その名は「ザ・TCB・バンド」
 ジェイムス・バートン(ギター)、グレン・D・ハーディン(キーボード)、ジェリー・シェフ(ベース)、ロニー・タット(ドラム)という、四人の侍だ。
 69年、70年代のエルヴィスを、ライヴで、そしてスタジオで支えた、すばらしい演奏家達です。
 『オン・ステージ』『オン・ツアー』『ジャングル・ルーム・セッションズ』そのほかで、皆さまには、もうおなじみの、エルヴィスのバック・バンド・メンバーですね。

 1999年11月に行われたETC(エルヴィス・ザ・コンサート)東京公演に行きました。コンサートで、初めて彼らの生演奏に直に接し、そのすばらしいプレイに、圧倒されました。
 公演終了後、舞台袖で、他の観客ともみくちゃになりながらも、なんとか彼ら全員と握手できました。とてもとても感激しました。エルヴィスを長年支えてきた彼らに触れることが出来て、まるで夢をみているようでした。
 また、ほんの少しだけですが、オフ・ステージでの彼らの姿を銀座の路上で拝見することができました。その気取らない、スター然としていない屈託のない態度に、好感を持ちました。今でも、目を閉じると、あのジェイムスの人なつっこい笑顔が浮かびます。ほんとうに、ほんとうに、いい人達でした。惚れたぜ!乾杯。

 以前から、断片的には、彼らの経歴のものすごさを、うわさに聞いて知っていました。しかし、ETC以前の私は、そのあたりを深く追究するところまでは、まだ至っては、おりませんでした。
 好きになった人のことは、とことん知りたくなるというもの。ETC以後の私は、本筋のエルヴィスの道とは別に、彼らが演奏している音源の探求も始めました。
 エルヴィス道(どう)には、いろいろな道があります。たとえばエルヴィスの歌った曲のオリジナル曲をコレクトしたり、映像におけるエルヴィスの魅力を探ったり、50年代エルヴィスだけにどっぷりつかったり、アナログ・レコードだけを蒐集したり、エルヴィスになりきって歌う人になったり……などなど。その数ある道の枝葉の中のひとつである、TCBバンドを極める旅に、私は一歩踏み出したというわけです。
 調べていくと、エルヴィス以外にもたくさん、たくさんある、彼らが参加したアルバムの数の多さと、そのアーティストのものすごさに、吃驚仰天し、驚きながらも、その深い森の中に迷い込んでしまった私。すっかり、冥府魔道の世界にはまり込んで、抜け出すことが出来なくなってしまいました。
 そして、知れば知るほど、彼らがいかに素晴らしいプレイヤーであり、偉大なるミュージシャンであるかということが、ますます分かってきました。本当にすごい、すごい人達です!!!
 「まさに世界最高の実力者集団といえよう。」
 エルヴィスのニューヨーク・ライヴCD
『アフタヌーン・イン・ザ・ガーデン』の解説で、岩崎邦明さんは、こう書かれておられます。けだし、名言です。

 

 このようなグレイトな達人達をバックに、エルヴィスは歌っていたんだと思うと、また一段と感慨深いものがあり、その音楽的興味は尽きることがありません。
 また、このことから裏返して、エルヴィスってほんとにスッゴイ人だったんだ、ということが、あらためて、深く認識させられました。

 この連載は、私が知ったそんな彼らの凄さを、少しでも皆さまにも知っていただきたいと思い、始めるものであります。
 ザ・TCB・バンドの連中が、各々参加しているエルヴィス以外のCDを、私の知る範囲内で紹介し、それにつたない私の知識と解説とサムシングを付するものであります。話はエルヴィス本人からは、はずれてしまうものでありますが、リラックスして読んで、楽しんでもらえれば、うれしいです。
 そして、そんなグレイトな彼らをバックに従えて歌っていたエルヴィスの音楽的な凄さも、アナザ・サイドから再認識していただければ、筆者には望外の幸せであります。

第1回:"A Black And White Night Live"  Roy Orbinson And Friends

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