クリスマス・ソングと仏教音楽

 

 年末になると世界中の商店街は美しいイルミネーション輝かし、何処からともなくクリスマス・ソングが流れてきます。特に日本のデパートや商店街はカトリックの国よりも華やかに、クリスマス商品に便乗して商魂たくましく活気に溢れています。

 さて、そのクリスマス・ソングは、もと元、賛美歌ですから、宗教曲と言えますよね。バロック・古典音楽から考えても、ましてや、声明・ご詠歌・和讃と比べると、楽しく、そして、世界中の誰もが知っている親しみやすいやすい曲、敬虔な気持ちになる曲、最も世界で有名な曲など、どれだけあることでしょう。「きよしこの夜」「もろ人こぞりて」「ホワイト・クリスマス」「サンタが街にやってきた」等々、本当に数えきれません。

全世界でクリスチャンは勿論、そうでない人もキリストの誕生を祝うクリスマス・ソングは、必ず一度は聞いたり、歌ったりして、人々を幸せにしてくれいることは事実です。

 昔は生活環境や、情報の伝達がゆっくり流れていました。しかし今や、世界で流行のファッション、映画、音楽は同時進行です。はやっては消えていく、そんな中でいつまでも歌いつがれる曲は、純粋に人の魂に語りかけ、内面から幸せな気持ちを起こしてくれます 佛教で言う「発菩提心」です。世界の人に親しまれる、そんな佛教音楽がぼちぼち日本から、発信できないモノだろうか・・・・・・。と、考えるのは私だけでしょうか???  

 仏教はご存じのように、インドから中央アジア、中国、朝鮮半島、南洋諸島様々な経路を時空を超えて日本に伝わり、また、芸術、美術、技術等あらゆる文化も伝わりました。そして、仏教とともに、その時代、時代において、仏教音楽も先達者が伝承してこられました。

 世界で最初に作られた仏像は、ガンダーラ地方にて、仏教思想とギリシャ彫刻が融合し、均整のとれた美しい仏像として誕生しています。一方、仏教音楽とされる声明(東洋)と、キリスト教のグレゴリア聖歌(西洋)は区別が付かないほど似ている所があります。ギリシャ音楽がローマと奈良を結ぶシルクロードの東西交易で影響し合い、歴史上の主要な都市で独自の文化を作り上げてきたのです。

 つまり、仏教は常にそれぞれの時代で最もモダンな最新の文化の源でもありました。明治以降鎖国政策が終止符を打って以来、日本仏教会も再び音楽と仏教の関係が密接になりました。それまでの声明、ご詠歌、和讃等の単旋律(モノフォニック)から、西洋音楽を取り入れた仏教聖歌なる合唱曲(ポリフォニー)が、盛んに日本浄土仏教系を中心に曲が作られ、また、声明と雅楽の再会(元々、一緒に演奏されていた)の演奏、近代のオーケストラと声明の共演、シンセサイザーとの共演など様々な試みが世界各地でもコンサートとして、或いは音楽法要として行われています。

 キリスト教では、中世時期から今日まで、布教のために音楽を最大限利用してきました。バッハやハイドン、メンデルスゾーンを始めとする大作曲家は大聖堂のおかかえ楽士として、オルガン演奏から管弦楽団を編成してオラトリオやメサイアなど、布教のための作品を作曲して演奏することがメインの仕事だったのです。

また、クラッシック音楽界で現在まで名を残している殆どの作曲家は、レクイエムや様々な宗教音楽を残し、今日、世界中でそれらが盛んに教会やコンサートホールで演奏されています。

 約1300年前に奈良の東大寺大仏開眼大法要が盛大に執り行われた時、海外からも大規模な舞楽団(管弦楽と舞踏)や、声明団(合唱)仏教僧、バラモン僧が公演に来たと言う記録があります。これが、最近、日本のお寺で良く開かれるコンサートのモデルです。

 天台宗では、仏教音楽の視点からみれば、膨大な伝統資料と実績ある声明が中心ですが、各地で新しい仏教音楽を盛んに取り入れた布教コンサートも開かれています。特に、ご詠歌、和讃に続き、現在の生活にとけ込める洋楽的旋律の仏教聖歌が、各地で多数作曲され歌われています。しかし、仏教聖歌の普及と言う点では、浄土仏教系の活動や、新興宗教の活発な活動には、まだ、及ばないのが天台宗の実状ですが、全国各地で、様々な活動が試みられています。

 恐縮ながら、私どもで公演したCDの記録がございますので、もし、よろしければ一度ご拝聴頂ければ、「百聞は一聴にしかず!」いろいろご理解頂けるものと存じます。合唱とストリング・オーケストラ伴奏による「天台宗版聖歌勤行儀」から、西の比叡山、書写山円教寺で平成の大法要が盛大に執り行われた時に初演された「読経と管弦楽の為の般若心経」などが収録されています。 詳しい内容はホームページをご覧下さい。また、CD、楽譜の発送も承ります。   以上 乱文御免ください。 合掌

 

記:1997年12月

 

天台フィルハーモニ管弦楽団&合唱団 音楽監督 長谷川慶悟

 

 

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