2003.04.21朝日オープン第3局
堀口一史座VS深浦康市 横歩取り
地獄門封じ
実況MashudaBBS2003.04.21
どうやらとっくに終了していた。どこで例の変化球44桂が36桂と跳ねることができるかという楽しみが残っていたようである。王手は追う手の格言は二度目は正解であったらしい。
深浦の凄まじい追い込みであった。
冷や汗をかいていたシーザーはラッキーとVサインで歩を駒台から取り馬にあてる。敵の打ちたいところに打てという格言の方が正しかったと心の中でつぶやいている。
どうやらすでに秒読みの様子。深浦は王手は追う手などという格言に頼ってしまい先に52金と逃げてくれた。
よく見ればこの銀まで歩に当たっている。欲望のトバッチリにしては価値が大きいので廃物利用とするつもりであろうがこんなことをして良いのであろうか?先に王手で67金と打たれたらどうするのであろう?
王手なのでなんとかしなければいけない。先手の最大の欲望をたった一枚の歩で凌ぐ。
先手の最大の楽しみ。これがあるだけで乱暴狼藉が効くという欲望の中枢。
これで長い旅路の果てに先手の金は後手に献上。
きわどくなってきた。怒るとあまりよいことはない。深浦に見せ場をつくってしまった。46桂が金をとりつつ王手となってしまうが同歩の形が47への玉脱出を計れると思っているとしっぺ返しがあるかもしれない。
ここで飛車を取るがすでに後手は1歩入手し81飛車の王手には51歩で凌げる。67とで歩を補充されることを甘く見たツケ。
歩だけの双頭手2回にひき続き今度は桂馬の双頭手。46金を取れば例の残骸44桂が墓場から復活。飛車が玉筋をにらむために同金と取れない。
金を渡してしまうためにさすがに49玉と下がる度胸はない。
深浦もやる気をだしてしまった。これで歩が補填できた為に51歩が打てるばかりか玉を危険地帯へ引き込む双頭手。73歩に続いてなんと歩だけで連続の攻防手が成立してしまった。
成り行き。近くに解説者の久保がいるとこうなってしまうのである。同じA級昇級者でもNHK杯優勝経験者大介ならばここまでやらずに敵の戦意喪失を狙ったことであろう。74桂からバトルとなってしまった。これで100手以上は見込めるので大熱戦と言ってもバレないかもしれない。
深浦もこれで少しはやる気をだしてくれたかもしれない。
シーザーの頭から出ている湯気は昨日の温泉卵からではない。すでに爆発した火山なのでこのくらいは朝飯前。飛車を取れば二枚換えでも攻め倒せるという勢い。このような情熱がどこに潜んでいたのであろうという序盤であった。
あとは次局の為にいかに形を作れるかという将棋になる。このまま土俵を割ったのでは客が逃げる。
この期に及んで歩一枚で双頭手を深浦に打たれてはシーザーの頭から湯気が出ていることであろう。
最後の1歩で飛車取りを防ぐ。爆発した火山への蓋。
ここまで耐えに耐えてきたシーザーの爆発。次に馬で飛車を取り横からの攻めで一挙に敵陣をひねりつぶす怒りの桂馬。
後手がついに味わう靴底の味。54飛では香の田楽刺し。
先手は忍の字をオデコに張ってノラリクラリと攻めをかわしてきた。そしてこの銀もここに逃げる一手で考える必要もないが二度目の攻防手となってしまった。飛車の逃げ場所もすでに一箇所しかない。後手の攻めを波乗りとした気持ちよい手。阿部なら鼻歌を出すところであろう。そう言えば1昨日は阿部の結婚式。復活祭の卵はウェディングナイトの翌朝食べたであろうか?
深浦すでに負けを覚悟。これしか手がない。
出し遅れた証文。すでに狙いの角は馬となって逃げられ76歩は同金でなんでもない。
シーザー忍耐の末に大逆転ホームラン。駒音高くバシッと決めたはず。これで後手期待の角交換は完全消滅。深浦痛恨の変化球に茫然。
ここで76歩に期待した深浦の大誤算。66金と出られては桂馬が全く活用できない。そこで辛いが88と。ここで76歩と歩を使っては香打に対抗できない。
シーザーは最初のチャンスを見送り深浦の強要に従う。次に後手からの76歩は同金や78金ならば55角成-同金-36桂のフンドシ固めが決まり後手勝勢となるが66金と出れば77歩成が甘いとの冷静な読み。
以下の変化で後手敗勢となることに気がついた深浦はここで変化球。金取りで角筋を遮断すると同時に36桂跳ね狙いで46金を強要。2筋への香は打たせても1歩は94歩の香取りへ温存しようとした迷い筋。深浦の細い攻め糸はここで完全によじれる。シーザーがここで強要を嫌い忍耐を放棄することに期待。
次に先手から24香打がある為に94歩は緩手となる。そこで76歩であるが、78金とじっと下がってくれれば55角-同角-同金。しかし66金ならば歩切れの為に香打の痛打が残る。
ここで少考した様子。76歩打ちを避ける為に76桂打や手番を強引に取る為に95銀の色気が先手にあった為。しかし堂々と95同香ならば後手に迷いが生じるはず。94歩で香車を取りに行く選択肢を後手に与えることで迷いの緩手に期待。
攻防手の出現に困惑。香捨てで1歩をもぎ取る。この1歩で76歩打狙い。
ようやく攻防の角打ち実現。76金では88と-96香-87とがひどい。77角成には同角で飛車成を阻止。88角成や88とには91角成で先に香車を取り85香打で徹底防戦。文字どおり攻防の角。99角からすでに見えている筋。どこで打つかという問題だったが絶好のタイミング。
と金へ昇格。5歩損の代償。次に77角成-同銀-87飛車成を許しては先手陣壊滅。
61手め同銀ならば初志貫徹。すでに86銀と自ら蒔いた種は戻したくないという逆転への執念。後手が角を切り飛車を成り込む筋を許しては逆転は見込めない。後手の歩切れだけが先手の命綱。
97桂では同桂-同香で香車に手順に86銀の紐がつくが77桂では手順に金が矢面に立つことに。シーザー迫真の上部開拓への意気込み。
局地戦を制する最後の一歩。これでと金作成と桂交換が保証される。先手からの反撃が攻防の角打しか存在しないために至ってシンプルな局面。
すでに事の重大さに不利を自認した命懸けの金逃げ。先手の方針は打ち砕かれた。角は温存し逆転の攻防筋に期待。
金取り。角で受けるか78金以外ないがいずれも反撃への道はなく先手の攻撃も完封できない。
たった一手の緩手により第1局と同じ展開となってしまった。先手は5枚の歩をどこにも使えないばかりか、角の打場所さえもない。完全に一手遅れてしまった。
当然の角交換。すでに横歩取りの全てのセオリーは消滅し後手の攻めと先手の受けという局地的で一方的な構図。後手の攻めの継続は保証された為にすでに後手優勢。
これで角交換必至となり後手は攻めが切れることはない。先手は一挙に守備オンリーの方針を打ち砕かれ37桂も間に合わないばかりか後手の攻めを完封することもできなくなってしまった。反撃も守備も中途半端にしてしまう86銀となる。即ち深浦が緩手を出さない限り敗着となる。
銀取りである。先手はすでに歩を5枚も得している為に銀桂交換でも構わない。66歩と角交換を拒否し入玉を目指してもよい。
これで先手は5歩得。次に66歩と突けば先手完勝となるが。
先手に有無を言わせぬ手筋。後手が欲しいのは香車であると見せかけて角交換後の99角打を示唆する双頭の犠打。
56同歩では57歩と打たれ同銀には単純な65桂のふんどし固めを喰らう。そこで用意の56同金は当然。地獄門封じの沽券。
地獄門開帳となるべき56歩は46金の地獄門封じのために単なる角筋開帳となる。
先手は受けることだけを考える。これで3歩得となるが貯金を使う場所が無い為に先手からの即時の反撃はない。徹底抗戦を完遂するだけとなる。
後手はあとは殴り込むだけ。ここで14歩だと16歩とされて15角からの筋が消えてしまう。或いはいよいよ37桂馬とされて35歩の突き出しが脅威となる。行くならここしかない。
シーザーならばこの96歩を柔らかいおつき合いと呼ぶであろう。すでに後手の手を殺すという徹底方針であり77銀という処女の頑なさまで見せつけている。ここで37桂では金持ち娘のおねだりとなってしまうと謙虚を貫くのである。95歩とされないうちに96歩とするのであるがこの交換は後手の得となる。後手に95歩と先に突く権利が譲渡される為である。先手の37桂活用前に香車交換となれば後手が優勢となる。
深浦もお株を奪われ襟元を正したことであろう。先手の77銀は頑なである。ここで桂跳ねは歩切れとなり攻めが切れる為にじっと端歩を突く。ここで手番を渡すのは不本意であるが先手の方針にひとまず服従。
86歩を未然に防ぐ77銀。先手は後手の手を殺し37桂馬をまず実現させたい。
先手からの最大の脅威である2筋を緩和したことに満足し後手は8筋に戻る。54飛の地獄門めぐりに固執すると先手の鉄のカーテンに対抗できない。84飛の局面はバランスが戻ったように見えるが先手には次に86歩の合わせがある。同歩-同飛-87歩には76飛と回られ75歩が取られてしまう。
この歩は先手の屈辱ではない。むしろ飛車交換して28飛と角あたりに打つ方が屈辱。というよりアッサリ負けてしまう。すでに先手は2歩得した為に徹底的に受ける態度はむしろ鋼の精神となる。
この飛車の見合いが中原囲いの最大の特権となる。一昨日の名人戦第1局で森内が提示した反中原囲いはこの後手からの恫喝に対抗したものであった。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030420meijin1.html
無論本局はすでに46金とうわずった為に26金とはできない。飛車交換も不可能である。
先手はここで同歩と取る以外の手を選択すると76歩と取り込まれ守勢一貫の方針は崩壊する。後手の欠陥は桂頭でありそれを死守するのが後手飛車の縦横無尽の利きとなる。ここは堂々と取り守勢を貫くのが王道。
後手が先手に許してはいけない手は得点が最も高い37桂。この先手の右桂が後手の73桂と対抗するようになっては歩損が最後まで残る展開となる。そこで先手の桂馬の優位性を誇示する為にこの75歩が有効となる。これは犠牲となる歩であるが既に持ち歩2枚を維持できる為に飛車の性能でリカバーできる。後手がここで一歩損するのは先攻投資となる。この歩が切れるといつでも65or85桂から77歩打が保証され桂交換後の手番が見込める。先手はこの歩を取ると以後は後手からの桂跳ね先攻を絶えず警戒しないといけない。75歩は局面進展の為の双頭手となる。
ここで先手のバランスは崩れる。この力強い金上がりは2筋を放棄し中央に向かった為に28飛の威力が削がれる。地獄門封じの欠陥となる。ここで46金をトリプル手であると解釈するとどうなるか?37地点を解放することにより37桂と先手が活用できるのが最も得点が高い。同時に次に35歩の逆襲から55金という地獄門喰いを後手に見せつけるトリプル手と成り得るであろうか?先手の最大の欠陥は手番が相変わらず後手に譲渡されたままである為にバランス維持がすでに修復できないということ。先手の守勢一貫という方針は5筋の死守である為にこの46金をトリプル手として解釈するとむしろこの欠陥が露出する。
この交換は後手がポイントを取った形。この桂馬は角交換後の先手の角打ちに備えると同時に先手の68銀に対応する。56歩の地獄門開帳を放置し57歩成-同銀左となった時に65桂跳ねが厳しい。先手が角交換後の反撃手が82角打しかない為に守勢一貫の方針と齟齬をきたす。
先手は守勢一貫。この飛車はあくまで横歩取りで1歩取ったことに満足するだけとなりこれで8筋への展開は一切放棄。56歩地獄門開帳から角交換後の後手の44角打飛車香取りを未然に防ぐ。しかし56歩を先手は放置することができるはずである。すでに68銀と48銀により57歩成は怖くない。従って56歩には先に33角成の権利が先手にある。同桂に対して手番を握るのは先手。この権利をも放棄した為に守勢一貫となる。
先手が守勢一貫の方針を露骨に提示した為に後手は遠慮なく桂馬の活用を計る。先手の37金は右辺の要の守備を放棄しうわずっていると後手には解釈できる。
第1局ではシーザーは37銀とした為に深浦に44角と飛車取りに出られ2筋が圧迫されると同時に5筋の守備銀が離れて作戦負けに陥った。今回のシーザーの方針は早めの68銀という守勢維持とこの37金の改良。金を6段目に進出しても36歩が死守できるという構図。この金は同時に55歩へ向かう地獄門封じともなる。その変わりに2筋は第1局のように歩を打って飛車交換防御に躊躇はしないという忍耐策。
第1局の横歩取り地獄門定跡34飛型を深浦は再び選択。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/yusai/030403asahi1.html
34飛へは第1局は30手めで提示。本局はシーザーが29手め68銀と用心した為に30手めに51金と中原囲い完成となる。31手目36歩に対して32手め34飛型へ。