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人を悪く言う人

永井 豊

仕事仲間で、人のミスを針小棒大に言う人がいる。ちょっとした人のミスをあらゆる角度から攻撃してくるのだ。なるほど、話の内容を聞いていると、正しいことを言っている場合もある。しかし、本人の仕事ぶりを見ていると、果たして彼自身も同じような過ちを犯している場合がたくさんあるのだ。そして、自分の過ちに関しては、「いやー、僕もこういうところをミスすることはあるけど、君のは云々・・・」

彼は、出来るだけミスをしないように、細心の注意をはらって仕事をしている姿を見かけるが、自分で言っていることに自分が縛られてしまい、大変窮屈な思いをしているのではないだろうか。そこで、ある時私が、「毎日人に注意を与えるのではなく、一週間に一度ミーティングの時にまとめて話をするように。」と指示を出したら、真っ赤な顔をして、「そうですか?」と不満そうな様子をしていた。

さて、ここで考えてみたいことは、彼みたいにミスを恐れてビクビク仕事をしているのと、人間は間違いを犯すことがある、と考えて仕事をするのでは、どちらが創造的で楽しい仕事が出来るのであろうか。答えは後者の方にあると思う。もちろん、その人なりに一生懸命仕事をしている、ということが前提条件であるのは言うまでもない。

これは、人の生き方、人との接し方にも関係してくることだ。つまり、私が彼のそういった短所に気付いたということは、私自身も周りの人達にそのような態度をとっていたことに気が付いたのである。彼みたいに神経質なまでに、ということはなかったのだが、それはやはり五十歩百歩かも知れない。人の振り見て我が振り直せ。そのことに気付いてから、一歩大人になったように思うのだが、いかがなものであろうか。

(平成元年11月16日)


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