短歌十首土肥千保 テレビより流れる古き歌の詩にすべて語らぬ美を見つけたり 賤(しず)ヶ家に外国人も交わりて雛の宴の笑い満ち満つ 年若きドクター患者に背を貸して小腰かがめてゆるゆる歩く 佛画描く己が心を写すかに佛の顔のときにけわしく 目に見ゆる枝葉にのみに気を配り根をおろそかに教育の場 冬枯れの鉢より生(お)うる小さき芽にけなげさ見せてわれを励ます 病み過ぎし若き歳月惜しむかに七十路(ななそじ)の日々細々(こまごま)動く はき違う自由教育今にして日本の美徳いづくにか消ゆ なすすべのなき無力さをなげきつつ人の捨て去る芥(あくた)を拾う 勤め退きていささかのゆとりいでし娘と人生論に一刻過ごす |