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白き滝

鬼島三男

つい最近、何かの文面で、「白き滝、見る人の心を清む」という語句を目にした。そのとき、この短いすがすがしい言葉を残してくれた方は、人柄のいい方だろうなあと思った。


私はもうだいぶ前からすさまじき世相にうんざりするようになってしまった。親子でさえも殺し合う殺伐とした人間関係。他人の迷惑を考えない身勝手な人たち。低俗な番組の氾濫するテレビ。失われていく自然----。


そんな私が『心の風景』に出会ったのは二年前だった。この小冊子は、その善悪正邪や人間関係についての考え方で、私の心を清めてくれたように思う。

第一集が出てから第二集が出るまでに一年半ほどたっているのに、私は長い月日とは思わなかった。ときどき読み直していたからだろう。いい読み物というものは、書いた方についてはただ名前だけしかわからないが、何回か読んでいるうちに、その方の人柄が浮かんでくるようになり、嬉しくなってくる。作者が商業主義とは無関係な方たちだけになおさら親しみがわいてくる。


第二集が送られてきたときに、多くの方の感想が同封されていた。外国からのお便りもあり、随分広い範囲で多くの方に読まれていることを知った。それらの方々が名前だけながら、心の友であると思い、心強く感じた。

きょうもまた、あるページに目を通した。私の大好きな二行である。

星空は見上げる都度、さまざまな思いを呼び起こしてくれる。
同じ音楽も、聞く度に違った感興を誘ってくれるように。

また、ところどころにのぞいているすばらしいさし絵。どんな筆づかいがこのような絵を生むのだろうか。これらのさし絵も見る人の心を清め、なごませてくれる。


美しい自然、美しい心、美しい芸術----それらはそれにふれる人の心を清めてくれる。しかし、すさまじき世相のもとでは、美しいものに出会うことは難しくなっている。だからこそ、ささやかではあっても『心の風景』が世に出る意義があると思う。私も本誌の仲間に加えていただいた。今後とも微力ながら、この活字の白き滝に協力していきたいと思う次第である。


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