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NEW126 〈道歌教訓・童蒙早合点〉狂歌雀後篇 (きょうかすずめこうへん)
半紙本1冊。源基定作。天保10年刊。[京都]堺屋仁兵衛板。天保9年刊『一休狂歌雀』の続編。正編『一休狂歌雀』とほとんど同じ体裁で、各頁とも下半分を挿絵にあててその上欄に教訓歌や教訓文を置いたもの。後篇では、「正直のかうべ(頭)なければ神達の やどり処やすくなかるらん」「神仏まゐらずとても人は只 わがたましゐ(魂)を清くみがけよ」といった道歌を半丁に6首程度掲げ、所々、寓話等の教訓文を挿入している。
★写真は天保13年再刊本。たわいのない教訓書であるが、稀書のためかかなりの高値で某古書店の目録に出ていたが、その時は諦めた。最近、それよりも少し安いとはいえ、かなりの高価で入手。これで正編・後編の2冊が揃った。



NEW127 〈頭書・便蒙〉国宝用文章 (こくほうようぶんしょう)
半紙本1冊。山田賞月堂作・書。玉蘭斎貞秀画。安政3年作・刊。[江戸]山城屋佐兵衛ほか板。「年始祝儀状」から「手習勧学状」までの92通を収録した用文章。各例文は文章の高下があったり、また一文中に複数の用件が含まれている場合があるため、見出し語では分かりにくい内容を、見出し語に続けて「縁談聞合状、少し目下へ之文」などと補足説明を付すのが特徴。概ね四季順に並んだ四季贈答の手紙文に交えて、商用その他用件の手紙を掲げる。本文を大字・六行・付訓で記す。また、頭書には豊富な記事と挿絵を載せてあり、「日用万字尽(9分類)」「書状認の心得」「年中時候之詞」「高下九段之事」「大日本国尽并郡数」「書初之詩歌」「七夕之詩歌」「人間一代之祝儀」「墨移秘伝」「名頭相生字」「証文手形案文」「小笠原諸礼之式」「苗字尽」等々と盛り沢山である。
★江戸期に出版された用文章を逐一数えたことはないが、恐らく1000種類をはるかに超すと思う。これまでは一目見て「既に調べたものかどうか」すぐに判断がついたが、段々、怪しくなってきた。明治期以降もかなりあるが、明治期の方が把握しにくい。



NEW128 讃岐名所 (さぬきめいしょ)
大本1冊。江戸後期書か。「去月十三日住吉百歌仙興行の節申合候、金毘羅詣の事、近々、御首途可被成候哉」で始まる文章で、讃岐方面の名所を紹介した往来。ご返事次第に同伴いたしましょうと続けて、浪花浦より船路で出発し、須磨・明石・淡路の島や山を見ながら進み、鳴尾の沖を過ぎて、白鳥大神宮を参詣するというように、コースに沿って順々に風景や故事をまじえて綴る。本文を大字・三行・無訓で記す。
★年代不明が残念だが、なかなか奇麗な筆跡の良い写本である。このような名所を紹介した地理科往来も全国各地で作られたであろう。埋もれているものの方が多いかもしれない。



NEW129 浄瑠璃外題艶書尽 (じょうるりげだいえんしょづくし)
特大本1冊。文政6年書。書名の通り、浄瑠璃の題名を詠み込んで綴った戯文風の往来。他の一般の手習い本ととともにまとめて購入したものの中に入っていた手本。このような浄瑠璃を題材にした往来物としてはあまり例が無くユニークであろう。「一筆そめし仮名手本、不及ながら西海の、硯に向ひ笑ひ草、あとや先なる太閤記、誠に美敷賢女鑑を見初めしより、どふしたことの恋女房、心矢口に打渡し、気は亀山や国聖(姓)爺、どうふしやう廿四孝して、紙屋治兵衛へ願こめて…」と七五調の艶書(恋文)仕立てにしてある。本文を大字・三行・所々付訓で記す。
★浄瑠璃を題材にした往来物は初めて見たが、このような感じで作った芝居や歌舞伎などをモチーフにした往来物もあったかもしれない。



NEW130 教則往来 (きょうそくおうらい)
同名で半紙本の往来があるが、それとは内容が異なるもので、本書は中本1冊。鶴田真容作。明治12年刊。[東京]小森宗次郎板。「抑教之有増は、人々心得有るべき事、先以、四海波静にして治まれる聖代に日夜朝暮三綱五常之道を行、国民安寧五穀豊饒之御政体不浅。春夏秋冬戴き、寒暖陰晴雨露風霜之恵、山林竹木千草に至るまで不違其時…」と起筆して、国土・国政・道理・遊興・賭博・貸借など、社会生活上の要語や公民に必要な心得などを列挙し、後半では東京府内の名所や全国の名所、東京湾の魚類や漁業の様子、死亡事故や病気、療治、身体各部の名称までの語彙を大字・六行・付訓で記す。
★東京湾で色々な魚が捕れることを明記した点は、作者の東京びいきであろうか。盛んな漁業の様子も彷彿とされる内容である。