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NEW131 教訓謡集 (きょうくんうたいしゅう/おしえうたあつめ)
外題に「一」と明記するが、1冊のみの刊行か。横本1冊。柴田花守作。明治19年刊。[東京]柴田礼一板。明治初年に『幼童訓』や『手習女訓』などの往来物を著した作者が、いくつかのテーマ毎に詠んだ教訓歌に、曲を付けたユニークな往来物。音曲と教訓歌を結びつけたのは、児童の情操教育に音楽が有効であることに着目しての試みであったことが跋文などから読み取れる。「生立」「教導」「五倫」「鰥寡孤独」「花実」「穀物」「養蚕」「住居」「婚姻」「誕生」「年賀」「霊送(みたまおくり)」「霊前」「天長節」「新嘗祭」「皇霊祭」「神地固」「三孝」等々について概ね八首ずつの教訓歌を掲げる。日常卑近かつ生涯に関するテーマで道歌を詠み、音楽を通じて心に深く刻む早い試みとして重要であろう。
★楽譜付きの教訓歌集は初めて見た。貴重な教育資料と思われる。



NEW132 〈甲谷〉問屋往来 (といやおうらい)
甲谷慶兼(浪花堂・浪華堂)作・書。安田管月堂(浪花堂門人)跋。明和三年(一七六六)刊。[大阪]正本屋清兵衛(玉置清兵衛)ほか板。大本一冊。成立年代では宝暦一三年(一七六三)刊『新編書札指南』†頭書「問屋往来」の異本に位置づけられるが、単行刊本としては最初の『問屋往来』。「江戸覃(および)関八州者、惣而小判六拾目之通用也。大坂表者、諸大名之仕送…」と筆を起こし、江戸・大坂・京都・長崎における相場・両替状況、廻船と相場、異国の器材・本朝の名物をめぐる取り引き、容量・重量の見分け、納屋貸・蔵鋪はじめ、問屋の活動に要用の事柄を記したうえで、問屋業に携わる者の心得についての教訓文を掲載する。教訓部分を仮名の多い漢字・平仮名交じり文にするのが特徴。本文を大字・三行・付訓で記す。明和三年板を始祖として数種の板種があり、文化一二年(一八一五)刊『〈頭書画入〉問屋往来』†、弘化四年(一八四七)刊『〈傍訓〉問屋往来絵抄』†、元治二年(一八六五)刊『問屋往来講釈』†等が公刊された。
★従来から家蔵本が唯一だったが、今回後印の原装本を入手。やや後印で、[大阪]河内屋喜兵衛板。やはり題簽付きは良い。



NEW133 女大学教草 (おんなだいがくおしえぐさ)
長瀬好音書。弘化4年板。[水戸]須原屋安次郎板。大本1冊。『女大学』自体は珍しいものではないが、水戸板を初めて見た。従来知られる水戸板の往来物として、江戸後期『女今川教草』や天保6年板『百姓日用訓』などが知られるが、特に前者は、同じ長瀬氏の筆になる往来であり、本書により、『女今川教草』も弘化頃の刊行と分かる。本書の彫刻はやや粗く、田舎板特有の雰囲気を持っている。頭書の挿絵も粗雑で、「男女相性并歌」「同相性極秘伝」「釜なりて善悪」「女はらみ月を知」など暦占関係の記事が大半を占める。
★関東での地方版『女大学』はほとんど出版例がなく珍しい。



NEW134 〈天明新刻〉梅樹用文神徳宝蔵 (ばいじゅようぶんしんとくほうぞう)
大本1冊。天保6年再刊。[江戸]山口屋藤兵衛板(元版・蔦屋重三郎)。「新年祝儀状」から「歳暮祝儀状」までの42通を収録した用文章。本文を大字・五行・付訓で記す。巻頭に「天満宮御教訓」「菅丞相(小伝)」の挿絵と記事を掲げ、頭書に「当流躾方指南」と、本文のバリエーションを増すための用語集である「文章書替用字」、さらに「四季十二月異名」、巻末に「立春書初之詩歌」「十幹の事」「十二支十二神の御名」を載せる。
★天明期の初板本が蔦屋板であろう。



NEW135 義貞奏状・正暦時牒状 (よしさだそうじょう・しょうりゃくじちょうじょう)
特大本1冊。建武2年10月の新田義貞「奏状」と、延元元年6月の正暦寺三千衆徒の「牒状」(興福寺衆徒宛て)の2通の古状を合本した往来。本文を大字・四行・無訓で記す。
★一般の「古状揃」や合本科往来に未収録の古状短篇型往来も、探せば、まだまだ見つかると思われる。