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NEW016 備前国邨名尽

[年代等] 妹尾徳風(雪斎)書。明治五年(一八七二)刊。[岡山]岡山県蔵板。渡辺源米売出
[サイズ] 半紙本1冊 225ミリ×155ミリ。
[内容等] 明治初年、岡山県下八郡の村名・地名を列記した往来。上道郡・邑久郡・和気郡・磐梨郡・赤阪郡・津高郡・児島郡・御野郡の順に、村名等を楷書・大字・三行・付訓で記す。

●古書目録では、聞いたことのない書名だったので、「活版かも」とあまり期待していなかったが、原物を見て和装本の往来なので歓喜した。これまでに存在が知られなかった往来で、地方版としても面白い。原装題簽付きの上本。




NEW017 十二月往来(異本)

[年代等] 江戸前期書。
[サイズ] 大本1冊 245ミリ×188ミリ。
[内容等] 数種の異本を持つ、古往来の『十二月往来』の一異本。これまでに存在が知られなかったもの。一年一二カ月往復の二四通からなる往来だが、残念なことに一二月状往復を欠く。装丁その他から江戸前期の古写本であることは間違いない。内容等については、石川松太郎先生にも鑑定して頂きたいと考えている。古往来の流れを引くものか、近世初頭に成立した消息科往来なのか、後日改めて報告したい。

●古書目録で見た時の、「もしかしたら『十二往来』の異本かもしれない」という予感が的中。ただし、末尾に明らかに切り取られた跡があり、目録に「末尾不備あり」「末尾数丁欠」などの表示をしない古書店主の無神経さには閉口した。そのような見当がつかないとすれば、古典籍を扱うプロとは言えないし、知っていて目録に明記しないのであれば、これも誠実さに欠ける。本書最終丁の裏頁が切り取ってあり、あたかも本文の終わりかのようにカモフラージュするために、別筆で書き入れがしてあるのは旧蔵者の仕業であろうが、先の古書店主以上に、このような歴史的資料を故意に改竄する行為に憤りを感じた次第である。




NEW018 〈童子初学〉富貴用文世海蔵

[年代等] 琴山子作。寛延四年(一七五一)刊。[京都]勝村治右衛門(文徳堂)板
[サイズ] 大本1冊 255ミリ×185ミリ。
[内容等] 異称『〈初学〉富貴用文世海蔵』『富貴用文』『富貴用文章』。享保一五年(一七三〇)刊『示童宝鑑』に「富貴用文」を増補した往来。まず『示童宝鑑』の前付四丁を掲げ、続く第五丁以下に「富貴用文」、最後に「示童宝鑑」を収録する。このうち「富貴用文」は、「新年祝儀状」から「歳暮祝儀礼状」までの二〇通を収録する。移徒祝儀・元服祝儀・婚姻祝儀・平産祝儀や、種々交際・諸用件の手紙などを載せ、各例文を大字・四行・付訓で記す。なお「富貴用文」の頭書に「諸進物書付仕様」「小笠原流折形」「太刀折紙法式」「目録調様」「注文調様」「折鳥目等目録書様」「香奠書様」「女中目録書様」「女中方折紙書様」「廻状書様」「口上書之法」「百官名尽」「東百官」「諸道具字尽」を掲げる。

●江戸中期の往来物には面白い物が多く、まだまだ未発見のものも少なくない。本書の新発見だが、その後半に収録されている「示童宝鑑」は教訓系の往来で、単行本としては享保年間に刊行されている(享保板は未発見)。



NEW019 〈五字折句〉いろは歌教訓

[年代等] 作者不明。江戸後期刊。刊行者不明
[サイズ] 半紙本1冊 222ミリ×147ミリ。
[内容等] イロハ教訓歌系の往来。表紙を含め三丁の小冊子。半丁を上下二段・四列ないし五列に区切り、各欄にイロハ順に同音の漢字四字を「以・伊・委・意」のように掲げてそれぞれ字訓を付し、次に見出し語(片仮名)と同音の漢字一字(篆書)を「イ・已」のように示し、さらに「いく千代も、いでくらしなば、いかほどの、いゑやしきでも、いく世さかへん」のように五七五七七の冒頭が同音になる教訓歌一首を掲げたもの。表紙に、書名と「永字八法」「編冠構字尽」を載せる。

●この手の往来物も際限なく見つかるが、イロハ教訓歌の形式をとる往来物も数多い。この種の教訓歌もいずれきちんと整理してみたいと思うが、考えばかりで月日が過ぎていくのが現実である。



NEW020 勧学之文

[年代等] 油口山人(見明・憲徳)作・書。寛延四年(一七五一)書
[サイズ] 特大本一冊。274ミリ×210ミリ。
[内容等] 中国聖賢の勧学の教えを列挙した往来。「真宗皇帝勧学」「仁宗皇帝勧学」「司馬温公勧学」「柳屯田勧学文」「王荊公勧学文」「白楽天勧学文」「朱文公勧学文」の七人の教訓文を大字・五行・無訓で記し、末尾に「いたつらにすくる月日はおほけれと、花見てくらすはるぞすくなき」の教訓歌一首を置いて結ぶ。

●直接勧学を説いたものとしては、安永二年書『勧学状』、安永八年刊『勧学筆記』、寛政六年刊『童子進学往来』、文化元年刊『勧学童蒙訓』、土屋宗鑑『学問を奨める歌(仮称)』、明治年間刊『勧学まりうた』、明治八年刊『訓蒙勧学以呂波今様』、明治一二年刊『〈両点〉進学往来』などがある。本書は、そのうちの『童子進学往来』に酷似するが、刊本よりも早い写本として興味深い。